肌 (百年文庫 60)

  • ポプラ社
4.14
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本棚登録 : 43
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (181ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591121481

作品紹介・あらすじ

「落ちるところまで落ちた」-そんな思いで住みついたアパートみどり荘で、川上は隣室の若い女にふとした好奇心を抱く。憐れみから惰性へと関係を深めてしまう男女のあやうさ(丹羽文雄『交叉点』)。執筆のためカンヅメにされた旅館で、あれやこれやと「私」を世話する仲居の鈴音にはもう一つの顔があった(舟橋聖一『ツンバ売りのお鈴』)。零細映写機会社の支社長と事務員。恋して暮らして二十年、別れを迎えてなお高まる愛しさ(古山高麗雄『金色の鼻』)。ときに不可解な男女の性愛を描いた三篇。

感想・レビュー・書評

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  • 丹羽文雄、古山高麗雄、舟橋聖一。
    似た年代の作家たちだが、殆ど馴染みがなかった。男女の関係について、今とは少し違ったどことなくゆるい感覚が面白い。
    そこが三作にはなんとなく通じるものがあるように思う。37/100

  • 全体的に読みやすかった。

    「交叉点」
    友子みたいな女、いるよね。
    自分から不幸に寄っていく女。
    寂しくて幸せになりたい気持ちが強くて、相手の心が読めず、思い込んでしまう。
    貞操観念が無いと、結局自分を安くしてしまう。
    固すぎるのもどうかと思うけれど。
    人と人との関係の薄さが、リアルだった。
    まさしく交叉点。
    人生が交わるのは一瞬だ。

    「ツンバ売りのお鈴」
    え、掏られたのに、そんなにあっさり許してしまうの?
    それは、一種の見栄か?
    私には理解ができない。
    馬鹿にされてるだけのように思える。
    私には、そんなに魅力のある女性にも思えなかったし。

    「金色の鼻」
    ん?
    未練の話か?
    決定的な別れの理由などないけれど、惰性で続けた結婚生活を終わらせることとなった男の、うじうじ感がある。
    確かに、こういう時、女はすぱっと線引きができる気がする。
    続けている間にうじうじするのが女で、終わりを迎えてうじうじするのが男な気がする。
    まあなんにしろ、頼りないとりとめない男のように思える。
    まあ、せいぜい金色の鼻でもなぜ回しておればいい。
    なぜか、そんな風に突き放したくなるような読後感が残った。

  • 丹羽文雄『交叉点』
    舟橋聖一『ツンバ売りのお鈴』
    古山高麗雄『金色の鼻』

  • 戦争が終わった頃の二編の話が、明治期ころの一遍をサンドイッチしている。男目線での情愛が絡んだ話。

    丹羽文雄『交叉点』、男と女の成り行きは、平行に走っていた道が不意にクロスする交差点のようなもの、実際そんな感慨に浸ったこともある。ふとしたきっかけから女が男に、また、男が女にはまる場面がさらりと描かれている。
    舟橋聖一『ツンバ売りのお鈴』、カンヅメした旅館の女中から身を落とした女と作家の話。女性がこれくらいしたたかで明るいと、気にかけても後味が悪くはない。
    古山高麗雄『金色の鼻』、20年連れ添った夫婦が別れの届けを出すときに、男が同じ会社にいた支店長と事務員だった二人のなれそめから結婚生活を回想するような話。男と女の覚えていることは、全然別のことであるような気がする。男は幻想を見がちで、女はこれからのことが第一のよう。女は過去を振り返らない。
    いまなら、テレビドラマで描かれそうな話。当時は小説がこんな心情を描いていたのだ。実際に体験したような気になる。若い読者がこれを読むのも社会勉強の一種に成りうるか。

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