(068)白 (百年文庫)

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  • ポプラ社 (2011年3月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (153ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591121566

(068)白 (百年文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 百年文庫68『いのちの初夜』が収録されていたし、冬で白い世界なので…安易な考えで「雪」と「白」の2冊を借りる。「白」星4.5

    『冬の蠅』梶井基次郎 星4…教科書の『檸檬』以来なんじゃないかな。思わず3度読みした。とても洗練されていてモダンな雰囲気に驚きました。梶井さんっていま生きていた方が時代にあっていたんじゃないかな…と思うくらいハイセンス。焦燥や倦怠感をふり払うかのように夜通し暗闇の中を歩きぬく姿を想像した。“歩け。歩け。歩き殺してしまえ。”=17ページ=は、何度読んでも悔しさや焦りが伝わってきた。車のライトが夜の山道を照らしながら走ってくるシーンも、明暗がはっきりしていてすごく好き。他の作品も読んでみたいです。


    『春の絵巻』中谷孝雄 星3.5…二つの作品が凄すぎるせいか、正直「かすむー…」と思っていたけど、じわっといい雰囲気で2度読みした。地味なんだけど印象に残る。「春の絵巻」というタイトルがぴったり合っている。青春キラキラな絵巻の中にひそむ岡村の死が主人公たちを引き立てている。(私は岡村の方に共感しちゃった)。民子の「でも、死んじゃつまりませんわ」という一言が心に残った。(そう堂々と言える民子がうらやましい…)


    『いのちの初夜』 北條民雄 星4.5…いつか読みたい!って思ったいた。だけどきちんと読めるか不安で文庫本も買えずにいた。だけど手にしてよかった…と心からそう感じた。本を読んで涙が出る時は…私の場合、自分で「あ、ヤバイ泣きそう…」ってわかるけど、これはそう思う前に勝手に涙が次々に出てきて止まらなかった。主人公、尾田と佐柄木の真夜中の二人の会話。いのちや魂の対話に圧倒された。終らない闇夜の深さ、それと対照的に夜は明けていき空が白んで朝日がのぼる。そういう日常の一コマも、なにもかも激しくて尊い…と感じた。(あわせて川端康成の『寒風』読みたい。)

    『白』ってあらためて死に近い色なんだと3作読んでそう感じた。セレクトが絶妙な一冊でした。なんだかすごかった…。

  • 佐伯一麦「芥川賞を取らなかった名作たち」で取り上げられていた北條民雄の「いのちの初夜」を読みたくて買った本。
    短編アンソロジーの百年文庫のなかで、生と死をテーマにした巻。
    編集者の意図を尊重し、順番に梶井基次郎「冬の蝿」、中谷孝雄「春の絵巻」と読み進み、最後が「いのちの初夜」。

    やはりすばらしい作品でした。戦前の発表ですが、文章に古びたところがなく、重い内容ながら最後には希望のようなものもあります。

    これと比べると旧制高校生の青春を描いた「春の絵巻」が浅薄なものに感じてしまいます。こちらも青春小説としてなかなか良いんですけどね。

  • 北條民雄「いのちの初夜」
    ハンセン病に罹った主人公・尾田は、人生に絶望して死のうと思いながら、死に切れぬまま病院まで来てしまう。病院でハンセン病に罹りながら重症患者の世話をする義眼の男・佐柄木に出会う。彼とのやり取りの中で、新しい生きる道を模索し始める。本書の冒頭で、「死のうとしている自分の姿が、一度心の中に入ってくると、どうしても死に切れない、人間はこういう宿命を有(も)っているのだろうか」と言わせている気持ちが良く分かる。人は死のうとして死ねるものではない。しかし、ふとした瞬間に死ねるものでもある。狂おしいほど死にたいと考えるほどに死ねないのだと思う。当時、人が醜悪なものとして扱い、誰もが遠巻きにするハンセン病、主人公はなんと深い闇に落ちたものか。それでも死ぬことよりも生きることを考え始める姿が力強い。著者の北條氏自身がハンセン病を病み、若くして亡くなった。生への、あるいは、創作への強い意欲を感じる作品である。世の中にあまり知られていないことがもったいないと思う。

  • 梶井基次郎『冬の蝿』
    中谷孝雄『春の絵巻』
    北條民雄『いのちの初夜』

  • 2012.10.8読了。

    「白」というテーマで、三編とも最終的に「生命」につながるかー。『白』の出し方はそれぞれなので面白いんだけど。

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(068)白 (百年文庫)の作品紹介

朝遅く、宿の窓辺に閃々と降り注ぐ光の中で、冬の蠅は手を摩りあわせ、弱よわしく絡み合う。-透明感溢れる文章が綴られた美しい療養地の情景が、冷酷な真理を際立たせる、梶井基次郎『冬の蠅』。「初めて春に逢ったような気がする」そううそぶいた級友の岡村は自死を遂げた。-若者の胸に去来する青春の光と陰を描いた、中谷孝雄『春の絵巻』。「癩病」を患い虚無に浸る尾田は同病の義眼の男に出会い、その死生観を大きく揺さぶられる(北條民雄『いのちの初夜』)。真摯に生き、紡ぎだされたもう一つの青春。

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