(068)白 (百年文庫 68)

  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (153ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591121566

感想・レビュー・書評

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  • 白で、死をイメージした小説ばかりだった。


    「冬の蠅」
    体調がすぐれないわりに、元気に出歩いているではないか。
    なんて、つっこみたくなってしまった。
    水を打ったような静けさの中、谿と対峙している、その展望の厳しさとその時の心持が「白」なのだろうけれど、この人の日々の生活は「灰色」のように、私には感じた。

    「春の絵巻」
    石田の不器用さがリアルに描かれている。
    経験のなさ、若さがほほえましい。
    岡村の死には、あまり共感ができない。
    登場した姿が死を予感させたが、その饒舌さからの死は、私にはリアリティがない。
    ひどくコンプレックスを持っていた、何かつらい過去があった、ということは感じられるが、ここに描かれている岡村からは、力のようなものを感じる。
    そんな人が、亡くなる、という違和感を描きたかったのかな。

    「いのちの初夜」
    この小説は心に響く。
    作者の命を削って書かれた作品なのだろう。
    そんなに簡単に死ねるものではない。
    死ねないということは、実は生きたいということなのだ。
    ライ病は恐ろしかったろう。
    コロナなんかよりも、100倍も恐ろしかったろう。
    絶望しただろう。
    嫌悪しただろう。
    人間でなくなった、と思う。
    それでも、苦しみ悩み生きている命を強く感じる。
    体は朽ちていっても、全力で生き抜こうという決意。
    そこにたどり着くまでに、どれほどの絶望を味わったのだろう。
    普段は考えないようなことを感じさせられた思いがした。

  • 2012.10.8読了。

    「白」というテーマで、三編とも最終的に「生命」につながるかー。『白』の出し方はそれぞれなので面白いんだけど。

著者プロフィール

明治34年(1901年)大阪府生まれ。同人誌「青空」で活動するが、少年時代からの肺結核が悪化。初めての創作集『檸檬』刊行の翌年、31歳の若さで郷里大阪にて逝去した。「乙女の本棚」シリーズでは本作のほかに、『檸檬』(梶井基次郎+げみ)がある。

「2021年 『Kの昇天』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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