- Amazon.co.jp ・本 (153ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591121566
感想・レビュー・書評
-
白で、死をイメージした小説ばかりだった。
「冬の蠅」
体調がすぐれないわりに、元気に出歩いているではないか。
なんて、つっこみたくなってしまった。
水を打ったような静けさの中、谿と対峙している、その展望の厳しさとその時の心持が「白」なのだろうけれど、この人の日々の生活は「灰色」のように、私には感じた。
「春の絵巻」
石田の不器用さがリアルに描かれている。
経験のなさ、若さがほほえましい。
岡村の死には、あまり共感ができない。
登場した姿が死を予感させたが、その饒舌さからの死は、私にはリアリティがない。
ひどくコンプレックスを持っていた、何かつらい過去があった、ということは感じられるが、ここに描かれている岡村からは、力のようなものを感じる。
そんな人が、亡くなる、という違和感を描きたかったのかな。
「いのちの初夜」
この小説は心に響く。
作者の命を削って書かれた作品なのだろう。
そんなに簡単に死ねるものではない。
死ねないということは、実は生きたいということなのだ。
ライ病は恐ろしかったろう。
コロナなんかよりも、100倍も恐ろしかったろう。
絶望しただろう。
嫌悪しただろう。
人間でなくなった、と思う。
それでも、苦しみ悩み生きている命を強く感じる。
体は朽ちていっても、全力で生き抜こうという決意。
そこにたどり着くまでに、どれほどの絶望を味わったのだろう。
普段は考えないようなことを感じさせられた思いがした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2012.10.8読了。
「白」というテーマで、三編とも最終的に「生命」につながるかー。『白』の出し方はそれぞれなので面白いんだけど。