- Amazon.co.jp ・本 (157ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591121771
感想・レビュー・書評
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ウ~ン、佐多と北條は執筆当時の諸々の背景が頭に入っていないと読みにくいか。特に北條誠はあえてそういう筆法で効果を狙っているのだろうが、どうにも鼻に付いてしまう。
唯一、久保田万太郎だけは今にも通じるわかりやすさ。60/100詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「舞扇」
読みにくかった。
放蕩をつくした2代目の、頼りない姿が描かれている。
最後に、自分の店のあり方へのこだわりをみせる。
格を下げてあり続けるよりも、客方が信じてくれる店として倒れるほうが粋じゃないか。
迷いの消えた伝兵衛の、最初で最後の筋の通った仕事だったのだろう。
頽廃すべきは頽廃すべきにまかせて、去り際も実に粋だと思った。
「きのうの今日」
人生の終盤。
寂しい変化が増えてしまう。
そんな、暗さを秘めた話だった。
短い作品の中に、わびしさが詰まっている。
「レストラン洛陽」
女のきつさと弱さとが描かれている。
ああ、私は女は苦手だ。
男がいい、というわけではないけれど。
女は、しんどい。
プライドと見栄と保身のため、嘘で固めたお千枝の人生の苦しさを思うと、怖くなる。
どの女の人生も、胸が痛む思いがする。
洛陽と運命を共にしているかのような、女たち。
せつなく苦しい話だった。
女の描く女は、リアルでこわい。 -
北條 誠『舞扇』
久保田万太郎『きのうの今日』
佐多稲子『レストラン洛陽』 -
百年文庫22冊目は「昏」
収録は
北條誠「舞扇」
久保田万太郎「きのうの今日」
佐多稲子「レストラン洛陽」
どれも初めて読む短編。没落していく様を書いた小説というのはわりと好きだ。例えば『ブッデンブローク家の人びと』のような。3篇とも失われていく世界への思いを書いたもの。「レストラン洛陽」なんてタイトルからしていい。
「レストラン洛陽」はとりわけこの3篇の中でも悲しい結末。佐多稲子というのはほかにどんなものを書いているのだろう。少し興味がある。