([は]4-1)星をまく人 (ポプラ文庫 は 4-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591122167

作品紹介・あらすじ

せつなくて思わず涙がこぼれる、ハートウォーミングストーリー!!

父は刑務所ぐらし、母は行方不明に……わがままな弟とともに気むずかしい曾祖母のもとにあずけられた11歳の少女エンジェルは、
厳しい現実にけなげに立ち向かっている。
名前のとおり天使のような心を失わないエンジェルは、ある夜不思議な「星のおじさん」と出会い、星空を見る喜びを教わる。
絶望的な気分になってしまうときも、何万光年の彼方から光を届けてくれる星々を眺めれば、心が安らいだ。
そして、星の本を探しに行った小さな図書館で知り合った優しい老女リザさんとの交流も、エンジェルの心の支えとなっていく。
だが、突然あらわれた母親は弟だけを連れてふたたび姿を消し、大好きな星のおじさんにもなぜか会えなくなってしまう……。
悲しくてせつなくて、でも、かぎりなくあたたかい。
読み終えると生きる勇気がわいてくる珠玉の物語。

【解説】東直子(歌人・作家)

【著者・訳者プロフィール】
著者●キャサリン・パターソン
1932年中国生まれのアメリカ人。1957年から3年間、宣教師として日本に滞在。『テラビシアにかける橋』『海は知っていた』で二度のベリー賞を受賞。1998年には<子どもの本のノーベル賞>といわれる国際アンデルセン賞を受賞。
訳者●岡本浜江
1932年、東京生まれ。東京女子大学文学部卒業。英米文学翻訳家。修道士カドフェル・シリーズなど大人向け作品のほか、キャサリン・パターソンの主要作品など140冊あまりの訳書がある。2003年、日本児童文芸家協会より第42回児童文化功労賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 父は服役中、母は何も言わずどこかへ消えた。エンジェルは弟のバーニーと曽祖母の家で過ごすことになる。バーニーは泣き虫で我儘、絶賛イヤイヤ期。エンジェルは家族を信じようと必死になるが...

    学校では父親についての噂や嫌がらせが絶えず、家に帰っても曽祖母やバーニーの世話に明け暮れる。いつまで経っても母親は帰ってこない。11歳が背負うにはあまりにも重すぎる。どこにも居場所がなかったエンジェルはある日、「星」に出会う。晴れた夜にしか会えない星のおじさん、素敵な本を薦めてくれた図書館員のリザさん。
    好きなものを大切にする。自分の気持ちを貫くって日本人にとっては難しいものかもしれないけれど、それも強さの一つだと気付かされる。
    出会いも別れもたくさん出てくる。その度に悲しかったり寂しかったりホッとしたり。
    小さなエンジェルがこのまま優しい人に育つといいな。

  • 少女が星を生きがいに、厳しい現実世界に向き合っていく様子が健気で愛おしかった。

    登場人物がどれも不幸を背負ってて、
    ただ、不幸の中にもオレンジの星の欠片のような温かみもあり心がぽかぽかした。

  • ここまで主人公が追い込まれる話と思わずいつかは幸せになれると思って読んでいたら、いつまでも来ず。
    一筋の光もことごとくぶった斬られ、全てを背負い、それでも生きて強く生きる姿に脱帽です。11歳なんてわたしはのほほんと生きてました。また病院から出てきた母に振り回されることなく、天文学者、またはそれに準ずるひとになってほしい。そして幸せになってほしいです。

  • 人よりちょっとだけ早く大人にならざるを得なかった誰かに送りたい本。いつも気を張って、友だちや親の顔色を窺っていた子ども時代の自分の枕もとにそっと置いてあげたい本。

    主人公のエンジェルは11歳の女の子。わがままな弟と、短気で気まぐれな母親、そして刑務所に入っている父が彼女の家族。
    母がエンジェルと弟バーニーを連れて、ある日突然ひいおばあちゃんの家に引っ越した。不安を覚えながらも、ここで新たな生活が始まるのかと思いきや――あれ?母のベッドが空のまま。
    青ざめるエンジェル・・・そう、幼い二人は母に置いてけぼりにされてしまったのだ。
    ここにあるのはお菓子ばかり欲しがるバーニーと、へそまがりだけどちょっと優しいひいおばあちゃん、そして晴れた夜に会える「星のおじさん」、天体望遠鏡を持っていて、エンジェルに星のことを教えてくれるのだった。一家の大黒柱として買いものと料理と弟の世話をこなるエンジェルは、次第に星への好奇心を募らせていく。

    エンジェルのひたむきな家族への愛情と、一生懸命大人の代わりをしようとするけなげな姿に心を打たれました。
    星のおじさんが教えてくれた星空についてのことがどれだけエンジェルを子どもに戻して、救ってくれたのかと思うと涙がでます。なんだかあったかい涙です。
    社会から、そして家族からも見放されたエンジェルが、どんな気持ちで満点の星空を見て、どんな風に「どうにかなりそうな気がする」と立ち直れたのか。きっとこの時、フリではなく、本当にエンジェルは大人になったのでしょう。

    ――「でも聖書の作者は自分の質問に答えているのよ。<あなたは人間を天使たちよりも低いものとして造られたが、栄光と栄誉の冠をさずけ……>って」
    「はあ?」エンジェルはなんといわれたのかよくわからなくて聞いた。
    「天使たちより低いものだけれど、栄光と栄誉の冠をさずけられたの」
    「本当の天使ですか?信じます?」
    ・・・・・・中略
    エンジェルはなにもいえなかった。リザさんの言葉には苦しみがある。大きな苦しみ。でもそのほかになにかがある。星をあおぎ見るときだけに感じるなにか。おそろしいような静けさ。それがこのことなんだろうか?栄光。
    エンジェルは、しゃべれないほどいっぱいになった心と、三冊の本をかかえて図書館を出た。

  • 生きることに精一杯で、自分のことは全部後回しにして家族に尽くすエンジェルの姿が痛々しくて、苦しくなりながら読んだ。
    エンジェルが名前の通り“天使”のように純粋で、良い子すぎて、一気に読むことが出来なかったのだけど、たぶんそれは子どもの頃の自分を少し思い出したからだと思う。(純粋さはさておき、)自分が置かれていた状況が、エンジェルと通じるところがあったから。
    良い子であらねばと子どもの割に自分を抑制していたところが。

    心に星をおいて生きていく。
    佐藤春夫の「夕づつを見て」という詩を思い出した。

  • このお話、好きです。となりのトトロと火垂るの墓を足してそこからケモノ成分と少しだけ悲惨さを引いてアメリカンな味付けをした、若干ハードなのですがどこかしらジブリ作品を思わせるこのお話、好きです。もし自分が、主人公の11歳の女の子・エンジェルの立場だったらきっと絶望して、誰かを憎んでそれでおしまい。となりそうなのですが、星の輝きに励まされ健気に生きる彼女の姿はどこまでも応援したくなります。つらい状況だけれど「この子悲惨だろ? 悲しいだろ? 泣いて頂戴よ」みたいな同情を強要するような事はないこのお話、好きです。

  • エンジェルが"エンジェル"じゃなかったら、読み続けられなかっただろう。
    一筋の希望の光が空に瞬いていることに深く感謝。

  • それほど…じゃないはずなのに一気読みをしてしまった。

    一生懸命ひたむきに生きている。それだけで、周囲の空気を変える力が十分にある。

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