ピエタ

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著者 : 大島真寿美
  • ポプラ社 (2011年2月8日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591122679

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ピエタの感想・レビュー・書評

  • よりよく生きよ、むすめたち。
    よろこびはここにある。

    司祭という肩書から自由になりたかったヴィヴァルディ先生が
    宗教ではなく、音楽というかたちで、ピエタの娘たちに与えた祝福。

    本を閉じても、ゴンドラの上でロドヴィーゴが口ずさむ歌や
    光あふれるピエタ慈善院の庭で、少女たちが奏でる弦楽の調べが
    いつまでも胸の中で鳴り響いて、心ごとヴェネツィアへ連れ去られそう。
    音楽を愛するすべての人に読んでもらいたくなる、素敵な本です!

    超絶技巧で音楽を征服するかのようなヴィルトゥオーゾの演奏も素晴らしいけれど
    母から娘へ、父から息子へ、親方から弟子へと、口づてで伝えられる歌や
    「ここを大きな音で弾きたいの!」と、ピアノの椅子の上で飛び跳ねるように
    小さな子が全身を使って弾くフォルテッシモや
    テクニックが追いつかなくても、その曲が好き、という気持ちだけを溢れさせて
    アマチュア楽団が一生懸命に奏でる音楽が、どうしようもなく尊くて
    かなわないなぁ、と思う瞬間があります。

    この物語も、『四季』で有名なアントニオ・ヴィヴァルディが
    捨て子たちに弦楽を教えたピエタ慈善院を舞台にした物語なのですが、

    天賦の才能でヴァイオリンの名手として名を馳せるようになるアンナ・マリーアも
    奏者としては大成できないと気付き、ピエタを経営面で支え続けるエミーリアも
    小さいうちに音楽を諦め、薬草の知識を生かして薬剤師となったジーナも
    裕福な貴族の娘の教養として音楽に触れ、寄付でピエタを支えたヴェロニカも
    高級娼婦の身分ながらヴィヴァルディ先生を愛し、寄り添い続けたクラウディアも

    才能のあるなしや、生れ育ちに関わらず、
    音楽を愛すること、ヴィヴァルディ先生を慕い、崇拝することにかけては
    眩しいほどに平等なのです。

    ヴェネツィアを離れ、遠いウィーンで亡くなって
    父親に押し付けられた司祭というくびきからやっと自由になったヴィヴァルディ先生。
    その温かい祝福を天から浴びて、ピエタの庭で和やかに合奏する
    もうおばあさんになったエミーリア達の姿が
    いつしか、音楽の美しさに初めて触れた頃のあどけない少女の姿に変わって
    心に焼き付いてしまう、美しくいとおしい物語でした。

  • この本が話題になっていた当時は、全く食指が動かなかった。
    18世紀?ヴィヴァルディ?ヴェネツィア?
    それを日本人の作家が書いちゃうのか・・・。
    変なのー、と。

    あー、自分の浅はかさに腹が立つ。
    もうね、最初のページからずっぽりタイムトリップ。
    私もピエタの娘になった気分。
    華やかな音楽がそこかしこに流れる都。
    行った事もないヴェネツィアに思いを馳せ、仮面をかぶりカーニバルに紛れ込む私。なんて素敵。

    それに登場する女性達の名前が良いんですよ。
    エミーリア、アンネッタ、ヴェロニカ、クラウディア・・・。
    イタリア人の名前っていいなぁ。
    ロシアの小説に出てくる名前より断然ロマンチックな響き。
    個人的な見解だけど。

    それはさておき、この作品で最も私の心に響いたのは女性たちの姿勢。
    孤児、娼婦、貴族。
    どんな境遇にあろうともそれに折れることのない心の強さ。
    まっすぐ前を向いて自分のあるべき場所で最善を尽くすその姿に共感を感じる。

    この小説はファンタジーなのかもしれない。
    巷で話題の“養護施設”の裏の部分も、血なまぐさい権力闘争も、汚い部分には蓋をされているのかもしれない。
    仮面で隠された顔のように。でも、いいじゃないか。
    仮面で隠しているうちにいつかはそれが真実になる日がくるかもしれない。そうありたい。

    大島作品を読むのはこれが二作目。
    舞台も設定もまるで違うが、前回読んだ「三月」とこの作品は本質的には変わらないと思う。
    女性の生きる姿と、絆の強さ。
    「むすめたち、よりよく生きよ」 
    やっぱり、これで決まりですね!

  • それぞれの人生には決して外からは見えない様々な顔がある、とも、1人の人間の生は、幾多の他の人生と、それがたとえつかの間であっても混じり合うことで次々創り出されていく、とも…とにもかくにも、人生の不可思議さや奥深さをしみじみ堪能し、色々なことを思いながら読み終えました。

    舞台は爛熟した17世紀のヴェネツィア。
    ピエタという、合奏団を抱えた教会兼児童養護施設のようなところで捨て子として育ったエミーリアという中年女性が、ふとしたきっかけからピエタの音楽指導員でもあった有名作曲家ヴィヴァルディの喪われた楽譜を、長い長い年月をかけて巡ることから紡ぎ出される静謐な物語です。

    孤児だったけど幸せだった子供時代のこと、かけがえのない親友であるアンナ・マリーアのこと、不思議な友情で結ばれた貴族の娘ヴェロニカのこと、自分を捨てて一度も顧みなかった両親とのこと、在りし日の魂で結びついた儚い恋、壊れた縁談、ヴィヴァルディ先生を取り巻くたくさんの人々のこと、先生の秘密を追う先で出会った彼女や友の心を導く高級娼婦のクラウディアのこと、生まれ育ったヴェネツィアという国のこと…。

    実に多くのことがこの本には詰められていますが、それをあちこち追うことが少しも苦にならないどころか、エミーリアの静かで透明な語り口に導かれるように、まるで寄り添うように彼女や周囲の人々の人生を辿りながら、いつの間にか私自身のこれまでの人生にも思いを馳せ、少し感傷的にはなりましたが、最後はとても穏やかな気持ちで読み終えることができました。

    晩年のエミーリアがしたように、いつの日か、自分の人生や過去に出会った人々とのかけがえのない時間に静かに思いを馳せられるようになれたらいいな、と思いました。いえ、そうなれるように、生きていかなきゃな、としみじみ思いました。

    ヴィヴァルディの<l'estro armonico>という、この物語の中で挙げられている音楽を聴きながら読み終えたのですが、物語の最後の鍵を開ける「…むすめたち、よりよく生きよ。むすめたち、よりよく生きよ。…」という節を持つ詩が、旋律にのって流れてきそうな濃密な時間でした。

  • ピエタというと、バチカンの聖ピエトロ寺院にあるミケランジェロ作のピエタ像しか浮かばない。
    ピエタとは、十字架から降ろされたイエスの亡骸を聖母マリアが抱く様子を描いた聖母子像のことなのですが、このミケランジェロの像は、本当に美しくなんというかほんと後光が差しているかのごとく神々しく慈悲深いのです。

    この話はピエタ像は無関係で、18世紀ヴェネツィアにある孤児院・ピエタ慈善院で育った少女たちのお話なのですが、このピエタ像のイメージが離れず、悲しみの中にも美しさと強さを感じるお話でした。

    ピエタ慈善院にある音楽院の教師だったヴィヴァルディ先生。
    「四季」くらいしか存じ上げないのですが、何ともドラマチックな人生です。
    出てくる女性がみんないざという時に凛としてて素敵。

  • ヴィヴァルディ先生が亡くなった。

    18世紀 水の都ヴェネツィア。
    孤児たちが暮らすピエタ慈善院は 音楽の才能のある子供たちを教育し 
    演奏会を開き、その収益が運営の要になっていた。
    そこの音楽教師をしていたのが アントニオ・ヴィヴァルディ。

    彼の遺品の一枚の楽譜を探す事によって 出会い 心通わせる人と人。
    ピエタで育った 孤児のエミーリアとアンナ・マーリア そしてジーナ。
    恵まれたその生まれを嘆く 貴族の娘ヴェロニカ。
    高級娼婦のクラウディア。

    華やかなカーニヴァル。仮面を付けて行き交う人たち。
    運河のゴンドラ 美しい風景 美しい音楽。
    ゴンドラを漕ぐロドリーゴの歌声!

    楽譜をめぐる真相に 感極まります。
    運河の流れのように ゆったりと 美しい物語でした。

     

  • 「むすめたち、よりよく生きよ」 この物語はこの言葉に尽きます。余韻がすばらしい。
    作曲家ヴィバルディと彼が音楽指導した慈善院ピエタに捨てられた娘、ピエタに通った貴族の娘・・・ヴィヴァルディに関わった女性達が、遺された1枚の楽譜を探し求める。楽譜はあるのかないのか。
    実在の人物を描きながらもとてもファンタジックな雰囲気でとても素敵。ヴィバルディ聞きながらもう一度読みます。

  • 感想を書きそびれていたのでこのタイミングで。

    予約していたのをすっかり忘れていたので、
    なぜこれを借りたのか、しばし思い出せずにいたが、
    「そうか。藤田香織さん絶賛だった!」とリツイートをさかのぼって確認したという。それでも三浦しをんよりか!と高まる期待。

    同じ頃「小野寺の~」http://booklog.jp/item/1/4803001669も手に入っていたから、はて、どうしようと思案したが、そんな心配無用でありました。
    先に小野寺~をさくっと読み終え、どちらかというとこちらはゆっくり読み進めていく感じ。

    当初舞台が明らか外国だということを読み始めて知ったという(そんなことさえ知らずに)、一体このストーリーはどういう方向へ進んでいくんだろう・・・と思案しましたが、どうしてどうして、その瞬間瞬間に見せる場面がときにはスリリングに、それでいて人間の奥深さを絶妙な描写で見せてきたり。

    とにかく読後感が、いつまでも胸に残るので結果☆5つ。
    淡々と描かれるストーリーの中に、味わい深い人生の機微というか、
    すごくシンプルだけど奥深い命題がしっかり描き出されていて、
    読み進めているときに面白かったり、味わい深くても、読み終わった後にはたいていぼやけてしまう印象が、これについては今でも断片的にふっと胸によみがえる。

    これこそまさにうまい作品の特徴なのかも。
    藤田さんが言うのも納得。

    というわけで、ぼちぼち落ち着いたら「船を編む」を読みたい。
    今始まったことではないが、よくよく考えたらわたしはいつも
    本屋大賞2位以下ばかりを好んで読んでいる気がする。

  • この小説は、18世紀のイタリアが舞台なのですが、当時の風俗がとてもわかりやすく描かれていて、すっと物語世界に入ることができました。実在の人物「アントニオ・ヴィヴァルディ」を中心に、彼の周囲にいた女達の過去が紐解かれ、彼女たちの人生にわずかな変化をもたらす…。初めは、バラバラに存在していた彼女たちがしだいに深い関係性を持ってくるところがよかったです。謎解きの要素もあり、ラストでは感嘆とともに涙しました。セリフの多い小説なのですが、とにかく彼女たちの言葉ひとつひとつに熱がこもっていて、これが小説だということを忘れてしまうくらいひきこまれます。登場人物全員が、それぞれの悲しみ、強さ、愛情を持っていて、読んだ後は、温かく深い読後感に包まれました。

  • ヴェネツィアのピエタ(捨子養育院)で、その生涯を送ったエミーリアが、静かに綴る物語。巧みなのは、ヴィヴァルディの死から物語を語り起こし、追想の中に在りし日々を蘇らせる構成だ。つまり、全盛時をあえて描かないことで、物語りをロマネスクな覆いで包み込むのである。一方、ヴェネツィアのピエタ、ヴィヴァルディがそこで果たした役割などを、ほぼ史実通りに描くことで、物語に強固な枠組みをも与えている。ピエタでは、花形のヴァイオリニストでも歌手でもなく、地味な事務長役に徹したエミーリアを語り手に選んだことも成功している。
     また、エミーリアが、カルロの一家と遭遇したときに「生まれてから一度も、わたしはああいうふうに家族の一員になったことはなかった」と想うシーンは涙を誘うのだが、物語の結末は宗教的な光と、ある種の法悦に包まれている。
     ヴィヴァルディの音楽は、まさに革新的であったと想う。また、彼は合奏団のメンバーにそれぞれ活躍の場を与えるように、例えばファゴット協奏曲など、実に様々な楽器のための協奏曲を作っている。合奏団を、娘たちを愛していたんだろう。彼は司祭でもあったのだし。

  • 「懸命に生きる女性たちへ―これはビバルディのエールなのです。」

    親に捨てられヴェネツィアの慈善院「ピエタ」で育ったエミーリア。ピエタの音楽の師であるビバルディの存在は彼女を始めヴェネツィアに生きる女性たちにとって忘れえぬものであった。彼の死によって浮かび上がる彼女たちの人生の軌跡を繊細な筆致で描く。

    表紙の装丁やエミーリアと彼女のピエタの親友、アンナ・マリーアの二人がビバルディ先生の死を語り起こす冒頭の印象から、これはこの二人の女性の友情物語なのかと感じましたが、読み進めるうちにそうではないことが分かります。

    カーニバルの喧騒に象徴されるように都市国家としては爛熟期にあったヴェネツィアを舞台に孤児や貴族の令嬢、高級娼婦など様々な運命の下に生まれた女性たちが、司祭でありながら一方でイタリア・バロックのアーティストとして一世を風靡したビバルディとの関わりを定点として描かれています。

    彼女たちはさながらビバルディという太陽を中心にそれぞれの軌道を保ちながら静かに回り続ける太陽系の惑星のよう。ビバルディは音楽を通して彼女たちを照らし続け、死してなおその女性たちの絆を結び続けていたのでした。

    よりよく生きよ、むすめたち―

    物語のクライマックスでビバルディの信頼を得ていた老ゴンドリエーレの謡うこの一節は、自らの運命を静かに受け止めて懸命に生きる、彼が関わった全ての女性へ贈られたエールであったに違いありません。

  • 孤児院「ピエタ」にゆかりの深いヴィヴァルディが、遠く離れた土地で亡くなった。その事実からほどなくして、彼の特別な譜面を見つけてほしいという依頼を孤児院で育ち今はそこに勤めるエミーリアは受ける。その依頼が、ヴィヴァルディの隠された一面を知り、その一面にかかわる人々との長きにわたる縁をつむぐことになるとも、知らずに。
    ・・・なんとも静かな、深い余韻の残る話でした。静かに静かに水面にいつまでも波紋が残るように、読み終えたあとも残る深い想いがありました。感動というのか、長いあいだにわたって積み重なれていった人と人との深く静かで、けれどつよい絆というものの崇高さに、胸をうたれたのでした。
    音楽にゆかりがなくても、ヴィヴァルディを知らなくても、描かれているのはいつの時代どの国でも変わらない、女性たちの気高くも弱い、弱くも強いありかたなので、とても親愛を覚えます。
    ステキな物語でした。

  • 「四季」で有名な作曲家ヴィヴァルディと、彼が音楽を教えていたヴェネツィアのピエタ慈善院を題材にしたお話。
    ヴィヴァルディ先生の死後、「先生が作った世界でひとつの楽譜を探してほしい」と頼まれたピエタのエミーリアは、彼の交友関係を辿っていくうちに不思議な巡り合わせを経験する。

    登場人物の言葉の言い回しが優しく丸い感じで好き。
    ヴィヴァルディ先生を中心に、人がつながっていく様。
    ラストは暖かい気持ちでいっぱいになった。

    アンナ・マリーナは実在の人物だとわかったけど、
    他の登場人物も実在していたのだろうか。

    クラウディアさん、ヴェロニカ、ロドヴィーゴ。
    この3人の巡り合わせは本当に素敵。
    そしてそれをつなげたエミーリアやジーナ。
    ヴェロニカが、たった自分のためだけに作られた楽譜を見つけた瞬間、
    久しぶりに、「よかったね」と泣きそうになるくらい暖かく優しい気持ちになった。

    2013.08.17追記
    レ・ミゼラブルに似たものがある。
    登場人物はみんな辛い環境にいるけど、最後に救われる感じ。

  • ヴィヴァルディとピエタ修道院との関連を示す、伝記。伏線としてコルティジャーノ(高級娼婦)が登場する。ヴェネッツィアが舞台となっていることから、貴族が登場、カーニバルの時期が背景となっている。主人公のエミーリア45歳から物語が始まるので、終盤までには10年くらいの歳月が流れる。皆、長命である。
    ヴィヴァルディは司祭であり、ピエタとの関係など、全く知らなかった。ヴェネツィアで活躍していたことも全く知らず。17世紀、バロック音楽の時代であるのも分かった。音楽(作曲家?)の栄枯盛衰を示したのか?演奏会、オペラという陽とカーニバル、娼婦と陰の対比でヴィヴァルディの人物像の全容を描こうとしているようだ。ピエタの登場人物には年齢を感じない。エミーリアや、アンナ・マリーア、終盤に出てくる歌の文句、とても希望に満ちていると思う。しかし、ヴェロニカが少女時代に書いたと思うと、出来すぎではないか?

  • 30年前くらいでしょうか、日曜日の19時30分から「世界名作アニメ劇場」とかやってましたよね?(名称違うかもしれませんが)そういった世界を思いだしました。
    内容、文体も饒舌で、決して子供向けの作品といいたいわけではありません。(というか、どう表現したらいいかわかりませんが・・・素晴らしいです。)

    語り手はすでに少女ではないし(中年?)高級娼婦も登場、
    孤児院で過ごす語り手と両親のくだりは、子供アニメでは描けないと思うので

    実際この作品がアニメになることはないだろうけど、本の中に流れる空気が上品で、非常にやさしくて柔らかくて、
    「アルプスの少女ハイジ」とか「赤毛のアン」「ペリーヌ物語」とかとかが好きな少女時代を過ごし、
    今でも別に
    「アルプスの少女ハイジやペリーヌ物語のアニメを
     テレビで2時間ダイジェストで放送してくれたら娘と一緒に観るし、
     ワタシも感動するかも~」な女性には☆5つだと思います。
    ・・・ワタシはそういうタイプなアラフォーなので☆5つです(照笑)。

    読後も甘く、やさしい余韻に浸れます。
    よりよく生きよ。

  • 18世紀ヴェネツィアの孤児院ピエタとアントニオ・ヴィヴァルディを題材にした小説。
    歴史小説といってもいいんじゃないかと思うほどヴェネツィアと時代背景が細かく描かれていて、スカフェータやコルティジャーナのような繰り返される固有名詞にもその時代を感じました。

    主人公のエミーリアはピエタで育ち、ピエタで仕事をする女性。
    ある日、エミーリアはピエタの重要な後援者であるヴェロニカに頼まれごとをされる。
    ヴェロニカに裏に詩の書いてある楽譜を探すことを頼まれたことでエミーリアは今まで合う事も想像つかなった人と出会い、恩師であるヴィヴァルディの知られざる一面を知ることになる。

    お話はエミーリアの一人称で進んで行くのですが、言葉や行動からキャラクターの個性や理念が伝わり生き生きとしていて登場人物がほぼ40台以上の女性というのを忘れました。
    特にヴェロニカは貴族の家柄でありながらも裕福であることを鼻にかけるわけでもなく、エミーリア達に引け目を感じるわけでもなく振る舞う姿から本当に頭の良い女性なんだろうということが伝わってきました。
    エミーリアはピエタで生まれ、ピエタで仕事をし、多分このままピエタで一生を終えるのだと考えると、親捜しのために夜毎出かけたカーニバルの夜の事やコルティジャーナのクラウディアと出会う事は想像も付かない出来事だったのだろうと思います。
    そのためカーニバルの彼との思い出が忘れられず苦しむのですが、クラウディアと出会い、彼との夜を過去のものにできた事を思うと、必然的に出会ったのかもしれないと思いました。
    エミーリアとクラウディアが出会う事で人生が変わったのは、クラウディアも同じことだと思います。エミーリアと出会わなければ晩年のクラウディアは悲惨なものになっていたでしょう。またヴェロニカもクラウディアとめぐり合うことによって救われた一人です。
    このエミーリアとクラウディア、ヴェロニカの出会いすべてにヴィヴァルディの姿があることを思うと、人と人の邂逅の妙に胸を衝かれます。

    読破したあとにカナレットの絵画をみて、ヴィヴァルディはこんな感じで舟に揺られながらロドヴィーゴと音楽を楽しんでいたのかな~と想像できて、また読みなおしたくなりました。

  • なんと透明感のあることか。

    いや、最初はなんともスカスカで、水の上面だけを進んでいくような頼りなさを感じながら読み進めていたのだけど。

    水の都ベネッツィアにあるピエタという孤児院が舞台。いつの時代なのか、いつの時代といっても通りそうで。

    とはいえ作曲家ヴィヴァルディが重要な登場人物なので、まぁその頃のお話。


    この話の中にエミーリアがカーニバルの夜に仮面をつけてコルティジャーナのクラウディアに初めて会うシーンがある。ゴンドラに乗って会いに行くのだ。

    この本の最後を読み始めたとき私は、人々を運ぶゴンドラの代わりに地下鉄に乗り、仮面の変わりに眼鏡とマスクをつけた。この仮面のおかげで誰にも見られていない、誰も私をわからないという安堵感につつまれ、思い切り号泣しながら読んだ。
    勿論声は出さないが号泣。職場に着くと、目は目の周辺も含め真っ赤、幾筋もの涙の後は赤く腫れていた。体全体熱っぽい気さえした。

    なんていうか、、、読んでよかった。
    以前、たなぞうで紹介されていた本。まだまだたなぞう貯金で読んでます。

  • とても良かったです。現在進行形で物語は進んでいるのに、なんとなく、お婆さんが、暖炉の前で思い出話をしているような雰囲気がありました。悪いことは忘れ去り、思い出すのは古き良きヴェネツィア。ピエタはいつもヴィヴァルディ先生の音楽で満たされている…。この本を読むととても穏やかな気持ちになれます。表紙の絵もイメージぴったりです。

  • 18世紀のヴェネツィア。
    ピエタという慈善院があった。そこでは育児に断念した母親の赤ん坊を受け入れていた。
    エミーリアとアンナ・マリーアもそこで育った。
    ピエタは、音楽院でもあって、<合奏・合唱の娘たち>という選抜されたチームを持っていた。そして、その指導に、アントーニオ・ヴィヴァルディが関わっていた。
    エミーリアが45歳になった時、ヴィヴァルディ先生がウィーンで亡くなったという知らせが入る。
    あれほど、ヴェネツィアを愛していた先生がなぜ高齢になってウィーンに行かれたのか、これがこの物語の謎のひとつ。
    そして、もうひとつは、貴族の娘、ヴェロニカがエミーリアに依頼した探し物のこと。
    彼女にとってそれは特別な楽譜だった。
    彼女も<合奏・合唱の娘たち>に所属していた。有力な後援者の娘という所で特別に受け入れられていた。しかし、特別な才能のない彼女には稽古についていくことも難しかった。
    そこで、先生が彼女のために特別に譜面を作ってくれた。そして、彼女はその裏に自分の思いを詩にして書いていた。それがいつの間にかなくなってしまい、彼女はそれを探していた。エミーリアには見つかったら大口の寄付をピエタにすると約束して。
    ピエタの財政難ということだけではなく、先生の謎を知りたいという思いもあって、エミーリアは引き受ける。
    そして、エミーリアの冒険がヴェネツィアのカーニバルと日常の中で始まっていく。

    以前より、気になっていたが、外国の話は苦手で読まず嫌いを決めていた。
    同じ作者の「ゼラニウムの庭」が面白く、その帯に「ピエタと並ぶ」というようなことが書いてあり、手に取った。
    冒頭からひきつけられる。
    あの「四季」で有名なヴィヴァルディの死とピエタという特殊な場所。そこで育った孤児が主人公。
    そして、いっしょに育ったアンナ・マリーアという天才ヴァイオリン奏者。
    母親を探しに厳格なピエタの私設を抜け出し仮面を被ってカーニバルの中をいくエミーリア。そこに手を差し伸べる仮面の紳士。彼との一時の恋。そして、ヴェロニカの兄との結婚話と破談…。
    とにかく、次から次へ、エミーリアとともに冒険する自分がいるのを感じるのだ。

    そして、最後に二つの謎が解ける。自分は嬉しくて、悲しくて泣いてしまった。

  • 18世紀、ヴェネチアで、ヴィヴァルディとピエタ慈善院の少女達がはぐくんできた音楽はきっとすばらしいものだったんだろう。
    ヴェネチアという不思議な、美しい街の描写がとても綺麗。仮面をつけて行き交う浮き足だった人々が容易に想像できた。その中を、会いたい人のもとへ急ぐエミーリアも。
    船をこぐおじさんロドヴィーゴの歌、原っぱで遊ぶ裕福な家庭の子供達。クラウディアさんという知的なコルティジャーナを送ってゆく最後のシーンがとっても印象的。
    設定がなんとも魅力的で、キャラクターも自然でわかりやすくて、すいすい読んでいけるのに読み応えはある、そんな本だと思いました。

  • 「18世紀ヴェネツィア」と「音楽」と「家族というものの縁が薄かった女性たち」のお話。興味をそそられない感じの題材だけれど、ぐいぐいと読めてしまう。さすが数年前の本屋大賞の候補作。

  • ラストの最高潮の波に流されて、少し涙が溢れました。素晴らしいです。ピエタで育ったエミーリア、アンナ・マリーアと恩師ヴィヴァルディとの心暖まる交流。恩師が残してくれた音楽や人々とのふれあい。一つの楽譜を巡っていくうちに明らかにされるエミーリアの過去と葛藤。同時代を生きた友との間を漂う温かな交情、嫉妬、嫌悪、疑惑。全てがラストで昇華される。年老いて、時代は移り行く。時代に取り残された者たちは、それでも見えなくなった目で、快活に歩けなくなった足で、次の世代と共に生きて行く。「よりよく生きよ。」エミーリアの沸き起こらんばかりの幸福感がラストを包み込み、読後はとても幸せな気持ちになりました。常に話の中で感じたヴェネチアの熱気も良かったです。しばらくの間余韻覚めやらず、感動が収まりません。

  • 音楽家のヴィヴァルディが活躍した時代、ピエタという慈善院で生きるエミーリアの話です。

    今よりなんだかのんびり?というか、時間の流れ方が違っていたような、そんな空気を文章から感じ取りました。
    のんびり…というわけではないのだけど…出てくる人がみんないい人だからそう感じるのかもしれない。ゾーエもいいやつやったしね。
    (よく旦那さんと言う、「嫌なやつがいない」状態。私はそういうのとっても好きです)
    でも、それでも辛い想いはあるし、挫折もあるし、切ない想いもある。それを全て受け入れて迎えるラストはとっても素敵。きらきらとした音楽と、風と、日の光と、希望みたいなもの、幸せみたいなものに包まれていました。

    私は音楽方面は(ピアノも習っていたのに)さっぱりだったのです…
    (でもヴィヴァルディの「春」は好き(…だったような……死))
    そんな私でも、この本を読んだら音楽がきこえてくるようです。

    そして、カルロがかっこよすぎてしびれます…。エミーリアの遠い思い出の中で語られ、ヴェロニカの話の中で語られ、実際に現在のカルロとエミーリアが言葉を交わすシーンはないんだけど、それなのに(それだからこそ?)魅力的。
    カルロ………よだれだらだらになりました…

    エミーリアがカルロのこと、クラウディアがアントニオのこと、大切に思って、思い出を抱いて、そして前を向いて生きている感じがよかったです。
    これは、もうちょっと生きないと達することができない境地かも?はたして自分はそこまで辿り着けるのか?(たどりつきたい)
    そんなことも思いました。

  • 1700年前後のヴェネツィアを舞台にした、1作。
    生まれてすぐに捨てられ、慈善院(ピエタ)で育てられたエミーリアを主人公に、ヴェネツィアに生きる女性達の人生が、ピエタで音楽を教えていたヴィバルディの行方不明の楽譜を縦糸に、重層的に香り豊かに描かれる。女性たちが思うに任せぬ人生を助け合い、支えあって生き抜いていく様が心に沁みる。終盤、行方不明だった楽譜を巡る謎が解ける場面にはカタルシスを感じた。
    一つの時代が終焉に向かうときの静かなうねりのようなものが、仮面をつけた人々が美しい迷路のような道々を踊り抜けていく妖しいカーニバルの雰囲気と絡み合って、印象的。
    上質な外国映画を見終わった後のような、深い満足感と余韻を残す作品だと思った。

  • 面白かったです。
    ヴィヴァルディが少女の音楽指導をしていたのは知っていましたが、
    その場所がピエタだった、ということは知りませんでした。
    どこまでが実際にあったことで、どこからが物語なのかが、わからなくて、
    それがとても魅力的でした。
    全体的に静かな流れですが、読みだしたらグッと引き込まれる感じがしました。

  • (No.13-29) ちょっとだけミステリアス。

    『18世紀ヴェネツィア、様々な事情でピエタ慈善院に赤ん坊が連れてこられる。運河に捨てるよりはまし、と。
    ピエタ慈善院は音楽院でもあり、開催する演奏会の収入や寄付で慈善院は運営されている。
    45年前に捨てられエミーリアはここで育てられ、今も経営のための事務の仕事をしている。一緒に育ったアンナ・マリーアは音楽の才能に秀でていて合奏・合唱の娘たちとして活躍、今は重要な役目についている。

    かつて教えてくださったヴィヴァルディ先生が遠くウィーンで亡くなられ、二人は悲しみにくれる。
    貴族のヴェロニカはピエタ音楽院で二人と一緒に学んだ縁があり、エミーリアは時々寄付を依頼しに訪ねる。先生が亡くなられた後、ヴェロニカはエミーリアにある特別な楽譜を探してくれるように頼む。もし見つかったら大口の寄付をする約束と共に。

    エミーリアは楽譜を探し始めるが、その過程で今まで知らなかったヴィヴァルディ先生の過去を知っていく。』

    私は音楽関係の知識がなく、興味もあまりありません。ヴィヴァルディは名前はさすがに知っていましたが、司祭だったとか、音楽を教えていたとか、そもそも生涯について全く知りませんでした。
    この小説を読むにはそういう知識は全く必要なかったのが私にとっては良かったです。音楽好きの人だと、あれが書いてないとか、それは違うとかいうのがあるかもしれませんが・・・・。

    ヴェネツィアはファンタジーなどでもよく扱われるので、何となく馴染みがあります。雰囲気は私が擁いていたイメージどおりでした。

    読み始めたときはエミーリアとアンナ・マリーアの話かと思ったのですが、いつの間にかアンナ・マリーアは蚊帳の外になっちゃって、ヴェロニカの比重が大きかったです。
    こうしたのは、同じような生まれ育ちの二人より、一時交差したけれどまったく境遇が違う二人の方が物語りに深みがでるからでしょうか。
    主役はエミーリアですが、この物語の中心になったのはヴェロニカだと思います。途中ではクラウディアが一番魅力的かなと思いましたが、最後まで読むとヴェロニカの方が貫禄も魅力も圧倒してました。

    この後ヨーロッパを襲う嵐のことを私たちは知っています。ピエタの娘たちはその時をどう生き抜いたのでしょう。
    「よりよく生きよ、むすめたち。よろこびはここにある。」

    先日読んだ「ゼラニウムの庭」がとても良かったので、評判が良いこれも読みました。
    読んで良かったです。

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ピエタの作品紹介

18世紀、爛熟の時を迎えた水の都ヴェネツィア。『四季』の作曲家ヴィヴァルディは、孤児たちを養育するピエタ慈善院で"合奏・合唱の娘たち"を指導していた。ある日、教え子のエミーリアのもとに、恩師の訃報が届く。一枚の楽譜の謎に導かれ、物語の扉が開かれる-聖と俗、生と死、男と女、真実と虚構、絶望と希望、名声と孤独…あらゆる対比がたくみに溶け合った、"調和の霊感"。今最も注目すべき書き手が、史実を基に豊かに紡ぎだした傑作長編。

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