(P[ふ]2-2)船に乗れ! I (ポプラ文庫ピュアフル)

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  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591123997

感想・レビュー・書評

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  • 若きチェリスト・津島サトルは芸高受験に失敗し不本意ながら新生学園大学附属高校音楽科に進む。
    そこでフルート専攻の伊藤慧やヴァイオリン専攻の南枝里子と出会った津島は夏休みのオーケストラ合宿、初舞台、ピアノの北島先生と南とのトリオ結成、文化祭、オーケストラ発表会と、慌しい一年を過ごし……

  • 読み始めて30ページくらいして一度中断。
    大人になった語り手が、自分の高校時代を思い出して若者に語りかける自意識の過剰や、若気の至り。
    それをもってまわったような言い回しで語る。
    恥ずかしい。恥ずかしすぎる。
    よほどリタイヤしようと思ったが、読み進めるうちに青春のあんなこんなよりも、目に見えないはずの音楽の描写に惹かれてぐいぐいと読み進める。

    芸大付属高校の音楽科。
    クラシック音楽について情緒的に語る、または本で得た知識の焼き直しでは伝わらない、曲が持つ力強さや流れのようなものを、楽譜を読み解き分析することによって目に見えるように伝える力が圧倒的に強い作品。

    私なんかよりも音楽をよく知っている人の方がより理解できる作りになっているのではないだろうか。
    正直、人物の造詣についてはまだまだ足りないと思えるところも多いし、語り手の未来がある程度透けて見える部分も多いのだけれど、若い頃の自意識と守られていることの安心。
    相反する二つの心のベクトルのバランスが、身につまされるほどに緊張を伴って迫ってくる。

    “アンサンブルには二種類ある。「合奏」と「協奏」だ。全員がひとつの音楽を奏でるために、気持ちをひとつにして、大きなハーモニーを作り上げていくのが、合奏。自分が全体の部分であることをわきまえて、一人ではできない音楽を全員でめざす。(中略)反対に、一人ひとりがせり合って、隙あらば自分が前に出ようとする、ときにはそのために共演者の音を食っていこうとさえする、それが僕のいう「協奏」だ。そこでは人を引き立てるために自分は我慢するとか、相手の腕前に合わせるとか、そんなことはしない。誰もが自分こそ主役だと主張して音を出す。たとえば、協奏曲とはそういう音楽だと思う。”

    「合奏」のようなことを強要されることは、割とよくある。
    けれど、「協奏」することによってたがいに成長したり、ただ単純に自己を表現することの快感だったりは、あまり世間では言われないことだけど、人生に必要だと思う。

    音楽だけではなく、スポーツでもなんでも。
    自分を主張して、主張している相手を尊重して、思いもかけない一面を発見しながら人は成長していくのだから。
    そして、こういう経験を通して、人は他人を全否定しないことを学んでいくのだから。

    作中、倫社の授業風景に結構なページを割いている。
    クラシック音楽と哲学の親和性はわかるけど、ソクラテスと弟子の対話のような倫社の授業は、実際には無理だと思うので、クラシック音楽を勉強している学生は、ここの部分だけでも読んでおくとよいと思う。

  • 若い子特有の、そのときならではの真剣さがすごく好き。帯に「2009年の話題の本」とあるので、物語の中心が音楽だとしても何かにのめり込んだことのある人、のめり込みたかった人にとって共感できるところが多いんだろう。もちろん音楽をかじった人は言わずもがな。
    なんで今まで読んでいなかったんだろう?もったいないことをした。

  • 早熟だった高校生が恋に落ち、恋に破れ、
    自分の才能の限界を思い知らされ、
    と青春のほろ苦さや痛々しさを
    自伝的な味わいで飾らずに描いた作品。

    甘さも苦さも両方をきちんと書こうとしているので
    リアルで心に響いてくるものがあって、
    引き込まれる読み応えがあった。

    小説的な魅力というよりも、
    身近であり特異でもある体験談の魅力に溢れていた。

  • イメージ 1
    『船に乗れ!』 藤谷 治

    友人のチェロ弾きから「面白いよ」と薦められて読んだ本です。

    全3巻。
    Ⅰ 合奏と協奏
    Ⅱ 独奏
    Ⅲ 合奏協奏曲
    と副題がついているように、音楽が題材になっている物語です。

    物語は、30代後半の「僕」が自分の高校時代を振り返る形式で語られる青春小説。

    エリート音楽一家に生まれ育った主人公のサトルは、祖父が学長を務める音楽高校に入学し、
    初めて手に取ったチェロと格闘しつつ、ヴァイオリンを専攻する枝里子と出会い、
    クラシック音楽という共通項を通して夢や恋を膨らませていく。

    その描写はすごく甘酸っぱい。
    気持ち悪くなるくらい甘酸っぱい。

    (かっこ内は私のつっこみです)
    もらった手紙に
    「演奏している津島君は、最高にきれいです。 南枝里子」

    「私、あの先輩のヴァイオリン、嫌い」
      ・・・中略・・・
    「僕のチェロはどう?」
    「好きだよ」
    (チェロはというあたりがぎこちない 笑)

    「僕とオペラ見に行かない?」
      ・・・中略・・・
    「あのさ、オペラさ、デートなんだけど」
    「分かってるよ」
    (初デートがオペラかよ!)
    一巻は、さわやかな青春小説として王道ともいえる物語展開。

    こういうのは、ずっとは続かないんだよねー

    なんて、ニヤニヤしながら読んでいたのですが・・・

    その展開は私が思っていたよりずっとずっと衝撃的で・・・

    ネタバレになるので、詳しくは書きませんが、

    2巻のP232のたった一言で胸がズキンとなり、
    それから涙がドバーっと滝のように流れました。

    そんなことってねーだろーそんな気持ち。

    絶望と挫折。

    3巻はその後「僕」がとった結論と話は進んでいきます。

    友人は「面白い」といって薦めてくれましたが、
    私にはあまり面白くない作品でした。
    面白いというよりは痛い。

    なんか、心の後ろにたまった膿をチクチクつつかれる
    そんな痛さ・・・。

    クラシックの知識がなくても読めます。
    クラシックの知識があると、どんな曲か分かります。
    子供のころからクラシックを弾いていると、僕の気持ちが痛いほど分かります。

    2010年本屋大賞にノミネートされている本です。

  • 専門用語バンバンでてくる。
    分からなくても、だいじょうぶ。

  • 音楽には多少携わってはきたけれど、クラシックや管・弦楽器に関しては全くの知識なし。そんなあたしでも難なくどっぷり物語に浸ることができました。

    高校生という目線でかかれた話なのにどこか客観的であったり、そうかとおもえば初々しい恋の話が織り込まれていたりと緩急の付け方が絶妙。Ⅱ、Ⅲと続いていくのが楽しみでしょうがない♪

  • 音楽好きにはたまらない♫

  • 『船に乗れ!』特設ページ | ポプラビーチ
    http://www.poplarbeech.com/pureful_pickup/005598.html

  • 高校生がチェロに青春をぶつける
    音楽と真摯に向き合い、恋愛もする

    音を奏でる難しさが良く伝わってくる。
    特に、オーケストラのような多人数での演奏の難しさ。クラシック音楽に感動できる人になりたいと思った。

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著者プロフィール

1963年、東京都生まれ。2003年、『アンダンテ・モッツァレラ・チーズ』(小学館)でデビュー。2014年、『世界でいちばん美しい』(小学館)で織田作之助賞を受賞。主な作品に『おがたQ、という女』(小学館)、『下北沢』(リトルモア/ポプラ文庫)、『いつか棺桶はやってくる』(小学館)、『船に乗れ!』(ジャイブ/ポプラ文庫)、『我が異邦』(新潮社)、『燃えよ、あんず』(小学館)など多数。エッセイ集に『小説は君のためにある』(ちくまプリマ―新書)など。

「2021年 『睦家四姉妹図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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