(P[ふ]2-3)船に乗れ! II (ポプラ文庫ピュアフル)

著者 :
  • ポプラ社
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感想 : 74
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591124000

作品紹介・あらすじ

北島先生とともに臨んだホーム・コンサートを期に、距離感を縮めた津島と南。高校二年生となり、さらに音楽漬けの日々が続く。新入生たちのレベルの高さに焦燥感を覚えながら、それぞれが責任のある立場でオーケストラ発表会に向けての練習に取り組む。だが、平穏な日々は長くは続かなかった-。青春の"きらめき"と"切なさ"を奏で、怒涛の展開に読み出したら止まらない青春ストーリー、衝撃の第二巻。

感想・レビュー・書評

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  • 相変わらず津島は自尊心と自意識が過ぎていて共感しづらいが、段々と音楽の道の険しさが迫ってきて、この頃の僕を振り返る今の僕はたまらないだろうなぁ…と思う。
    出来ないことを出来るようになるために、繰り返し練習する、ただひたすらに努力を積み重ねる。音楽でもスポーツでも、同じなのだろう。
    作品後半は読んでいて苦痛になる。もう読みたくないとも思うのだが、津島が犯した過ちとどう向き合っていくのか、このままでは終われない。

  • 1巻の流れのまま明るい青春ストーリーかと思っていたら、まさかの展開になってきてびっくりした。この後どうなってしまうのか怖い。

    サトルが夏休み中の、ハイデルベルクでのレッスンで言われていた
    「弦を鳴らしているが楽器を鳴らしていない」
    「あなたは音楽をしているのではありませんでしたね。勉強をしていましたね。音楽に勉強は必要です。しかし、その勉強の上に音楽がありますよね。音楽はあなたです。勉強はあなたではありません。」
    という言葉は、とても自分に響いた。
    「僕が「チェロを弾く」ということと、先生が実現してみせた「音楽の演奏」の間には明らかな隔たりがある。指が動く、背筋が伸びる、音程を把握する、リズムを意識する、そんなことはスタートラインでしかなく、その先にあるものが「音楽の演奏」だ」

    金窪先生の最後の授業では、静かだけどとても激しい怒りが伝わってきた。

  • 読み始めはもったいぶった書きぶりが鼻に着いたものの、慣れると作品世界にどっぷりつかって大満足だった前巻。
    今作は最初の音楽漬けの日々が面白かっただけに、後半が失速したかな。

    若いころを振り返って書いているという体裁なので、思わせぶりになるのもしょうがないけれど、ちょっとそれが甚だしくて、5分に1回はCMが入るテレビ番組のように煩わしい。
    「この後悲劇が!」とか「それはまだ序の口だった」とか、いらないよ。
    ヤングアダルト向けだからだとしても煽りすぎだし、読み方を誘導されているようでちょっと不快。

    金持ちで音楽の才能に恵まれた主人公が、三流の音楽高校で仲間と切磋琢磨しながら、音楽の才能を伸ばしていく(ほのかな恋愛あり)。
    そんな前巻からの今作は、序破急でいうところの破。

    学校の課題に学校祭にオーケストラ発表会にイベントでの生演奏というバイトに短期海外留学。
    演奏することと、楽器を奏でることの間にある大きな違い。
    演奏レベルが上がった時に思い知る絶望的なほどの無力感。

    その辺りの描写が本当に素晴らしいのね。

    それだからこそ、恋愛のゆくえのありきたり感。
    フラグが立ちすぎて、うんざりしながらイラッとしながら読んだ。

    この先主人公は音楽までをも手放すことになるのか。
    彼女が選択した人生はわかったけれど、その時の彼女の正直な気持ちは次巻で明かされるのか。
    音楽のシーンがすばらしいのだから、音楽は捨てないでほしいなあ。津島も南も。

    作品とは関係ないんだけど、主人公のいちばん心許せる友達ってのが伊藤慧っていうんだけど、どうしてもHey!Say!JUMPの伊野尾慧に変換されて脳内にぽこって出てきます。
    だってフルート王子こと伊藤慧は、線の細い評判の美少年なんですってよ。
    美少年かどうかは評価の別れるところでしょうが、線が細いは間違いないもんね。
    ああ、また薄汚れた読書をしてしまった…。

  • 第一巻の最高の終わり方、そしてこの第二巻の幸せな始まり方。
    その後の「どん底」・・・。
    自分の感情の奥深いところを揺さぶられて、しばらく立ち上がれませんでした(苦笑)

  • もう、なんか読んでて苦しい。

    きらきらしてた幸せの青春時代とその苦しさが描かれてる。
    学生時代の自分に重ねてしまう部分が多々あって、本当に読んでて辛い箇所がたくさんあった。
    外国での挫折とか、環境が変わって思い知らされる自分の愚かさとか…もう自分もこうだったーって気持ちになってヘコみます。

    音楽や青春時代を書いた小説としての面白さだけではなくて、金窪先生の哲学授業など、深く考えさせられる所の面白さもあって思い入れの深い1冊になる予感。
    なぜ人を殺してはいけないのか、についての授業のところがすごく好き。

  • 読んで良かった。
    はじめて「こころ」を読んだときと同じ読後感が、薄く漂った。
    ヒロインが気持ち悪い。狭量な主人公が語り部である所為かもしれないけど。

  • 2010.1

  • 南枝里子との恋がうまくいっていたのだがドイツ留学をきっかけに従弟との妊娠、結婚の道を進むというサトルの急転直下の物語。ショックが大きかったと思う。自殺も考えたそうだ。主人公の気持ちになって読める。後半は金窪先生の哲学の話も面白い。カント、ソクラテスの弁明、哲学とは考えること、尋ねること、退職前の最後の授業でソクラテスの弁明を持ってくること自体粋だと感じた。

  • 辛い。仮に、本作と似た境遇の作者の体験に基づく話だとしたら、到底凡人には書き切れない。仮に完全なフィクションだとしたら、それもまた凡人には書けない域。

  • しんどい終わり方だったな。実際こんなことってあるんだろうか…
    ・今うまくいっているのは、まさに僕たちが触れずにいるからなのかもしれないのだから。触れればうまくいかなくなるかもしれないのだから。
    ・モーツァルトって、ほんとに天才だね!あっいい曲、って思っても、すぐまた次にいい曲が来るもんね ねえ。いい今日のわんこそばみたいだよね
    ・自分にどんな音楽が合っているのかを決めるには、どんな音楽もやってみるしかない
    ・あなたが弾くとき、あなたは弦を鳴らしています しかし楽器が鳴っていません
    ・チェロの音楽は音程を定める左手ではなく、弓を動かす右手、そして奏者の全身によって作られる
    ・音楽に勉強は必要です。しかし、その上に音楽がありますよね。音楽はあなたです
    ・諸君、死をのがれることは困難ではない。むしろ悪をのがれることこそ遥かに困難なのである。それは死よりもはやく駆けるのだから。
    ・バッハの音楽、とりわけ小規模な、単旋律の音楽には、アドリブの要素がはっきりと残っている(ジャズのプレイヤーたちがバッハを好む理由もそこにあるんじゃないだろうか)

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著者プロフィール

1963年、東京都生まれ。2003年、『アンダンテ・モッツァレラ・チーズ』(小学館)でデビュー。2014年、『世界でいちばん美しい』(小学館)で織田作之助賞を受賞。主な作品に『おがたQ、という女』(小学館)、『下北沢』(リトルモア/ポプラ文庫)、『いつか棺桶はやってくる』(小学館)、『船に乗れ!』(ジャイブ/ポプラ文庫)、『我が異邦』(新潮社)、『燃えよ、あんず』(小学館)など多数。エッセイ集に『小説は君のためにある』(ちくまプリマ―新書)など。

「2021年 『睦家四姉妹図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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