(P[ふ]2-4)船に乗れ! III (ポプラ文庫ピュアフル)

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著者 : 藤谷治
  • ポプラ社 (2011年3月4日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591124017

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(P[ふ]2-4)船に乗れ! III (ポプラ文庫ピュアフル)の感想・レビュー・書評

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  • 評価の分かれる作品だと思う。
    秒速5センチメートルを最後まで描き切ったような作品。
    今の自分には、サトルの選択や、結末を「そういうものだ」と受け入れることが出来、読後感は爽やかなものだった。

    南絵里子のあまりにも自己中心的言動に生理的な嫌悪感を抱き、それに対するサトルの反応ももっと怒りを持って対応するのが普通ではないかと疑問を持ちながら読み進めていったが、結局南に対する掛け値ない愛情がそうさせているのかと理解した。
    金窪先生に対するサトルの行いも、その不条理(南の行為と結末)に対する怒りを南に向けることが出来ないための衝動的なものだと解釈した。

    色々と考えてしまう。
    「どうしようもないこと」だと受け入れることは金窪先生がいう船酔いに慣れて、海が凪いでいると勘違いすることではないかと。
    「生き抜くための逃げはあり」(マンガの銀の匙)なのか、それとも「船が揺れ続けていることを忘れてはいけない」のか。
    現実はどちらか一方を取るという二元論ではなく、バランスの取り方なのだろうが、こればかりは正解がないからいつも悩んでしまう。

  • 久しぶりにズンと余韻に浸らされるような小説を読みました。読み終わって暫く世界観を引きずらされた感じです。多少フィクションは入っていると思うのですがある程度作者の過去だったのかと思うとさらに痛いですがそれだけじゃなく考えさせられるというか。
    金窪先生の言葉には泣かされました。謝罪は受け取るけれども許しはしない。あの状況でそれでも彼の為に言葉を伝える先生は立派だなあ。自分には到底不可能だ。

    世の中には思いもしない出来事が起こり、その中で喜怒哀楽し、他人と生きていく。それだけのことが何故これほど難しいのか。それだけなんだけれどもそれだけでは無い。ままならないなあと思うのです。

    天才ってひとつのことを続けられる才能を持った人たちじゃないのかなあってつくづく思います。勿論天性の才もあるのでしょうが。
    スポーツや音楽を専門にしている人は人よりも早い段階でかなり厳しい現実を突きつけられるのかなあと思うと怖いなあと思うのです。
    ある程度年を取り、小ずるくなって周囲や自分を誤魔化せるようになる前に自分の限界を突きつけられたら…と思うと背筋が寒くなる気がします。主人公の彼は芸術家では無かった、とありますがその感性は確かに繊細で音楽に対して真面目なことはひしひしと伝わります。もう少し上手く立ち回れれば、とは思いますがそうしたら彼の持ち味は無くなってしまうのでしょう。

    努力すれば何でもかなうよ、というような青春モノを読むと努力出来ない人間はじゃあダメですねえと皮肉を言っているような自分にはなかなかずしんと来る小説でした。面白かったです。そのうち買おうかな。

  • 2巻の試練を経て、主人公に迫りくる新たな試練。
    結末としては幸福でも不幸でもない終幕。それでも、主人公が様々な人々と共有した音楽の優しく美しい切ないこと。
    電車で思わず涙が溢れました。


    サトルと南について書かれる方も多いですが、私は伊藤君がすごく印象に残りました。
    サトルと南の失われた恋の裏でこっそり息づいていた伊藤君のサトルへの思慕。それがすごく美しく、また切なかったです。

  • 音楽一家に生まれた主人公が音楽高校時代を振り返る形式で書かれた青春小説。

    若さゆえの純粋さと残酷さ、時を経てそれを自覚したときのなんとも言えない後悔や恥ずかしさは共感するところ。
    一般的には「大人」になった今でも、今の自分を数年後に振り返ったら、程度の差こそあれ多少は同じ感覚を味わうのだろう。
    一生その繰り返しかもしれないが、年を重ねるのは面白いと思う所以でもある。

  • 高校1、2年のころまでは自分の可能性に疑いを持たず自由に生きていけるけど
    高校3年、大学生につれてとだんだんと自分の器や可能性などが見えてくる
    そして、社会人になって学生の頃に思っていた自分と現実との違いにどうしたらいいのかと戸惑ってくるけれど
    ちょうどそれが書かれている感じがした。
    自分が全力をささげてきたことに対して、自分の器が見合わないことに気づいていく
    読んでいくうちに「これって現実だな」と思うことが最後に向けてたくさんあった。
    挫折をしていくこと、取り返しがつかないこと、今でも許せないこと、たくさんあるけれど、それを持ったまま進まなきゃいけないこと。
    Ⅰのときはすごく読んでいて楽しかったけれど、Ⅱ、Ⅲと読むにつれて、あまりの現実っぽさにちょっと暗くなった。
    フィクションだからこそ、「よかったね」と思えるような、明るい未来を書いて欲しかった気もすれけど、この現実っぽさがよかったのかと思う。
    自分はともかく、学生に是非読んで、少しでも後悔しない未来を進めるようこの本から学んでほしいなと感じた

  • 一日で2と3、ぶっ通しで読んでしまった。

    本当は主人公が一生懸命努力して、成長していく物語が好きなんだけど、
    でもこの本も好きになれた。

    音楽にガッチリはまったときの彼らの描写は、見ていて自分も一緒に弾きたくなるくらいキラキラしていて羨ましかった。

    音楽を仕事にするってのは、やっぱり辛そうだったけど。好きだという気持ちも努力も通用しない世界に、進むのも、そして諦めるのも同じ位キツいんだろうな、それがよくわかった。

    この本にはあの時僕はこうしていたらよかったのに、という表現が割に出てくる。
    その度に、そうだよ何でそう後悔するような行動するんだ...と思うんだけど、自分もそんなようなことがいっぱいあるなって自覚した。それが人生なんだなって思った。

    月並みだけど、青春の時間ってのはかけがえのないものなんだな、と改めてわかる。
    大人はちょっとつまんなさそうだ。
    私の大人の時間はこれからだけど、彼らみたいな一生懸命さを持った大人でいたい。

  • 音楽科でチェロを専攻している男子高校生の高校生活3年間の話。
    毎年ある文化祭やオーケストラの発表会などに加え、恋愛あり挫折ありの若き日の思い出。
    音楽に情熱を注ぐ高校生たちや先生たちが主な登場人物なので当然音楽用語がたくさん出てくるのだが、フェルマータやらアルペジオやらデミュニジェンドやらを楽器を習ったことがない人には理解できるのだろうか?
    あと、主人公の彼女だった女子がどうしても好きになれない。やることなすことが全て自分のため。相手のことを思ってやったことはひとつもなく、あげく主人公を裏切る。全く理解ができない。
    物語としては全3巻、長いようであっという間に読める。主人公によって辞職に追い込まれることになる倫理社会の先生の話もおもしろい。
    音楽だけでなく、そういった話も入ってくるのでそこまで音楽に親しみがない人でも読みやすいと思う。

  • 本屋大賞、2010年7位。青春音楽小説。武士道シックスティーンや一瞬の風になれと同じように、高校生活の3年間が大体1年ごとの3分冊になってる小説。オーケストラの演奏シーンの臨場感が圧巻。本当にその場で自分が演奏してるような体験ができる。こういった自分の経験したことない世界を説明なしで疑似体験させてくれるやつはお得感あります。表現力半端ないです。基本的にスポコンもの好きで、武士道とかもすごく良かったけど、この本は上を行くかも。1巻は演奏シーンががんがん迫ってくるしそれだけで感動的だし、底抜けにに楽しいストーリーも秀逸で歴代1,2を争う大傑作。2巻の最初は若干説明的で中だるみになるけどその後持ち直す。それ以降は、青春小説にありがちな、ハッピーエンドに向けて予定調和的なマンネリ化することなく、予想外の悲劇的な展開で一気読みさせる。悲しいできごとや苦悩ときちんと向き合うことでしっかりとした話になっているし、読後感も良い。落ち着いて読めるのは、作者の思想に共感する部分も多いからかとも思う。
    ”母親が子供にできることは多いが、子供が「良い人間」になるためにできることは本当はひとつしかない。それは子供を安心させることだ。”

  • 3冊目でようやく題名の本当の意味がわかるのね。
    金窪先生との再会の場面は感動的。
    淡々と綴っていらっしゃる文章だけど
    熱い想いがしっかりと伝わってきました。
    音楽って素晴らしいのね。心からそう思いました。

  • 単行本で感動し、文庫版になってまた読んでみた。
    またしてもガツンと来た。
    しかし正直、南のことは忘れていた。ああ、こんな別れ方をしていたっけ、と。
    心を揺さぶり、衝撃と感動を残したのは、金窪先生と、臨場感ある演奏の場面であり、その中でクヨクヨする主人公だったのだ。
    最後に短編が追加されていたが、佐野元春の名盤「SOMEDAY」の中の「サンチャイルドは僕の友達」のように、高ぶった気持ちを静めるような役割をしていた。

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(P[ふ]2-4)船に乗れ! III (ポプラ文庫ピュアフル)の作品紹介

三年生になろうとしているある日、伊藤は言った。「津島、大丈夫か?チェロが、おとなしくなってる」。津島の懊悩をかえりみることなく、学校は、音楽エリート育成に力を入れ始めた。津島は、自らの未来に対する不安を胸に、チェロを弾き続ける。そして、運命の日が訪れた-。生きることの"歓び"と"ままならなさ"を歌い上げた青春音楽小説の金字塔、堂々完結!津島と伊藤の二十七年後を描いたスピンオフ短編「再会」を特別収録。

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