クローバー・レイン (一般書)

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著者 : 大崎梢
  • ポプラ社 (2012年6月6日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591129661

クローバー・レイン (一般書)の感想・レビュー・書評

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  • 罪つくりな本です。

    だって、大感動で読み終えたあとに、作者の大崎梢さんが本の中に登場させた
    もう1冊の本『シロツメクサの頃』を、読みたくてたまらなくなって
    どうしてそちらもちゃんと書き上げて、一緒に刊行してくれなかったの?!
    と、恨みがましい気持ちになってしまうから。

    大手出版社「千石社」の文芸部門の編集者 彰彦が、
    とある作家を自宅に送っていった際、炬燵の上で見つけた原稿。
    鼻の奥が痛くなるくらい泣き、心に得も言われぬ余韻を残した
    この『シロツメクサの頃』を、ぜひ本にしたい、預からせてください、と
    彰彦が頼み込むところから物語は始まるのですが。。。

    本が大好き!と言いながら、知りませんでした。
    1冊の本(ことに、人気が下火になった作家の本)を出すことが、こんなに大変だなんて。

    大手出版社なら資金もツテも潤沢にあることだし、
    これは!と思う原稿はすいすい出せるんだろうな、と思いきや
    大手だからこそ、作家や作品のランク付けが厳しくて
    確実に売れる人気作家の作品の陰で、何年もヒット作のない作家が書いた
    『シロツメクサの頃』は、どんなに内容が素晴らしくても会議にすらかけてもらえない。

    中小出版社からなら出してもらえるだろうから、さっさと手放せと言われても
    惚れこんだこの作品を、絶対に自分の手で世に出すのだと、
    編集長に直談判し、編集者の仕事から逸脱しても、手作りのプレゼン資料を作り、
    ありとあらゆる関係部署に頭を下げて配って歩く彰彦。

    「一冊はいつかきっと百冊にも千冊にもなる。
    数年後の誰かのために、その人を感動させるために、
    今、種を蒔いたり水をかけたりするのだ」と、頭の中では緻密な戦略を練り
    書店員にはジャニーズばりの爽やか笑顔を振りまきながら
    販売スペースを拡げ、好意的に扱ってもらうよう骨を折る、営業の若王子。

    大御所ならたやすく手に入る献本を断り、1500円払って書店でこの本を買い
    頼まれもしないのに、大手の全国紙に読後感を綴ってくれる
    気骨の大御所作家、柴山。

    手書きのPOPに思いの丈を綴り、工夫を凝らした飾りつけで
    本を手に取ってもらえるよう、店に並べてくれる書店員たち。

    心を揺り動かされた作品をきちんと本にして、書店の隅に埋もれさせることなく
    なるべくたくさんの読者のもとへ届けるために
    最大限の努力を惜しまない人たちがいるからこそ、
    私たちはこうして素晴らしい本に巡り会えるのですね。

    タイトルと装幀を見て、「うん?女性向け? というか、少女向け?」
    なんて誤解して手を引っ込めた方(特に男性)も多いと思いますが
    本が好きなら、ぜひぜひ引っ込めた手を戻して
    読んでいただきたい1冊です!

  • 知らなかったなぁ・・・
    たくさんの本を読んできたけど、本1冊が出来上がるまでにこれほど時間と労力が必要とするなんて。
    売れてる作家さんならまだしも、売れていない作家さんが素晴らしい原稿が書けたとしても、それが世に出てくるのには多くの人の並々ならぬ努力が必要としてたこと。

    編集者、営業者、書店員の人たちが1冊の本を売り出すのに、こんなにも熱い思いがあるのかぁということを知り、今までの本、これから出会う本の1冊1冊が愛おしく感じるようになった。
    そんなことを感じさせてくれる1冊でした。

    「シロツメクサの頃」世にでてこないかなぁ・・・
    読みたくて仕方ないんだけど。

  • これは、とてもよかったです!
    大崎さん、ちょっと変わった‥?
    満を持して書かれた感のある、出版社で出したい本を出すために編集者が奮闘する話。

    工藤彰彦は29歳。
    老舗の出版社・千石社に入社7年、文芸部3年。まずは順調なキャリアを送ってきた。
    ベテラン作家の家永の原稿を読ませてもらい、「シロツメクサの頃」というその小説に惚れ込む。
    ところが、既に盛りを過ぎたという評価のある家永はランクが低く、慎重に作品を選ぶ千石社では、会議にすらかけて貰えない。
    工藤の熱意で、何とか編集長を動かすことに成功するが‥

    ライバル社の相馬出版の国木戸は、うちからなら出せるから譲れと持ちかけてくる。
    千石社の営業担当で「王子」とあだ名される人気者・若王子の存在を知り、協力を求めるが‥?

    一方、作品中に娘の書いた詩があるのが問題かもしれないと家永。
    娘の冬実に掲載の承諾を得るため、会いに行くが断られてしまう。
    その詩はやはり作品の核になっている。
    工藤は承諾を得ようとするうちに、気まずくなっている父娘の仲も何とかしたくなるのだった。

    中盤、すごくいいなーと思いつつ、主人公のキャラがいまいちはっきりしないことぐらいかしらと考えていました。
    優等生的なのか、それほどでもない普通の男が成長する話なのか?というあたりが。
    実家に帰ったときに「打ち解けない息子」だとは、前半ではまったく気がつかない。(ちらりと伏線はあります)
    どういう人間なのかは、後半で明らかになっていきます。
    大好きだった「なおちゃん」の行方は。
    仕事にかける思いや、この作品に入れ込んでいく経過も含めて、重層的に盛り上がっていくのです。

    本好きにはこたえられない作品の素晴らしさと本への愛情、かかわる人の熱意や工夫、上手くいかない部分も含めた人間模様の親しみやすさ。
    しみじみと満足な読み応えでした。

  • あたたかい雨がじわーと心に染み入って、この本に出会えてよかったなという気持ちにさせてくれるお話でした。

    ここのところ、大崎梢さん何冊か読んだけどダントツでいい。
    本に関わる仕事をしている人のお話で、今回は文芸書の編集さん。
    今まではエンタメ色の強い話だったけど、これは作中の「シロツメクサの頃」のように普遍的な感動作ですね。
    気分転換にちょっとだけ、と思って読み始めたら、結局最後まで読んでしまいました。
    シビアな出版業界のビジネスの裏側を垣間見れるところも、いつもながら本好きには興味深いところ。

    本屋さんのレビュー集「The Books」を直前に読んだこともあり、多くの人に読まれるベストセラーだけでなく、一人でも二人でもその人の人生を変えてしまうような本がたくさんあるんだなぁ、ということをすごく実感を持って感じることが出来ました。
    日々、いろんな本を読んで勝手に感想書いているけど、もっと一冊一冊大事に読んでいこうと思いました。

    いい本を届けたい人たちの想いと、家族への不器用な愛情がいい具合に合わさって、それぞれのビターな部分をやさしい春の雨が少しずつ少しずつ溶かしていくようで、みんな誰かの雨になれるんだなと思えたラストもよかったです。

  • 2012年6月発行 
    大手出版社“千石社”の若手編集者 工藤彰彦は、業界パーティーの帰りに過去の人になりつつある家永嘉人の新作原稿に出会う。一読しただけで、その作品の虜となり、一編集者として世に送り出すことを誓う。

    そこからの展開は、出版業界事情が自然な起伏を作る。が、それ以上に 作家や編集者が ひとりの人間として抱く「特別なだれかに読んで欲しい」という強い願いが物語を牽引する。

    出版は、実際には文字だけで本という一つの世界を作り出そう、という生業。強烈な自我や、疑心暗鬼、嫉妬などなど、見たくないものだらけの中で棲息しているんじゃないか?という気もする。

    でも、そんなことはサラリと流して、ただただ良い作品が世に出て欲しいという希望が込められている。
    万感の思いを伝えるために、膨大なエネルギーを注いで何かを生み出す。 物語たるもの、そうであってほしい、と。

    いささか時間の経過がわかりにくかったり、心理描写なのか?大げさなのか?ごじゃごじゃしてしまったり、だれか風っぽい?と感じさせたりするところはままあるけれど..........

    皆さんが書いているように本好きにはたまらない。
    一気読み。
    スィートだけど、とっても良かったです。
    人にすすめたくなる本。

    これからはどこから出た本なのかも 気になりそう。
    そんな本を出したのは、
    ポプラ社 でした。

    映像化するなら...... 瑛太と 若王子は三浦翔平 どうかな

  • 大崎さんは、成風堂書店の頃から好きで読んで
    いるけど、これは、中でもピカイチに好きな作品。
    タイトルのつけ方も素晴らしくて、じんわり心に
    響いてくる。
    雨のイメージが大きく変わった気がする。

    いわゆる「優等生」の若手編集者が、1つの原稿と出会い、
    なんとしても本にしたいという思いに突き動かされ、
    周囲の反対を押し切って行動していく。
    その後ろにある思いや、いくつもの出会い。
    この作品のこと、語りたい思いもあるけれど、
    自分の中に取っておきたいような気持にもなる。
    まだ読んでない人には、多くを語らずに、
    手に取って読んでみてほしい。

  • 大手出版社の若手編集者が、偶然出会った素晴らしい原稿。
    けれどその原稿は大手であるが故、すぐには出版できない壁がある。
    何事もそつなくこなしてきた彼が、その原稿を世に出す為に、奮闘し成長していくお話。

    本好きには嬉しい。
    読み終わるのが惜しかったが、一気読みしてしまった。

    一冊の本が世に出るまで、多くの人の手に届くまで。
    そこに関わる作家、編集者、営業、書店員の努力や想いに、
    自分が今手にしている本への感謝が膨らむ。

    正直、少し物事が上手く進みすぎな上に、周りの人達もいい人すぎるのだけど、そこが熱くなりすぎずに、優しい雰囲気を保っているんだろう。
    読後感も温かく、しばらく余韻に浸った。
    「シロツメクサの頃」皆読みたいよなぁ(笑)

    僕も優しく降り注ぐ雨になれたのだろうか。
    『きらきらひかる』や『夜は短し~』など知っている本の話に、つい感情移入してしまう。

  • 図書館で借りたんですが一読してすぐ買いに走ったほど良かった。

    既に全盛期を過ぎ、出版社でもお荷物になりつつある作家・家永の埋もれた原稿を、ひょんなことから手にした主人公は、その素晴らしさに胸を打たれ、世に出そうとする。
    だが売れ筋じゃないので上司からはNGを出される。
    それどころか作家本人も渋っている様子。
    作家本人が渋るのには家庭的な事情もあるらしく、主人公の編集者は編集者の枠を超えて奔走する。

    もちろん、本筋の、家永の小説「シロツメクサの頃」が世に出るまでの過程は心に響くものがありました。
    家永と娘と主人公の関係、主人公の家の事情、この辺もうまく絡まりながら話は進みます。
    途中、若王子や国木戸という魅力的な好敵手みたいなキャラも出てきて、話が膨らみます(若王子は本当に魅力的で、彼を主役に一本書いてほしいくらい。彼の捨て身の作戦はびっくりしつつ笑いましたw)。
    本は無事に発行され、それぞれの抱える物語も一段落し、穏やかに幕を引きます。

    これだけで本当に十二分に素敵な話なんですが、終盤も終盤、思わず人目もはばからず泣いてしまった箇所があります(喫茶店で読んでいました)。
    「シロツメクサの頃」が無事に出版され、それを自ら購入した大御所作家・芝山が、新聞のコラムに寄せた記事に関する描写です(P275-P276)。
    全部で315ページほどある本作の、最後の方のほんの2ページ。ここが一番心に残りました。
    引用するには長いので、ぜひ読んでいただきたいです。

    作中で主人公もこのエッセイを読み、放心したとありますが、読んでいるこちらも2ページしか書かれてないのに、ここだけで小説一本読んだ気分になりました。

    一つ一つのエピソードがどれもしっかりしていて、読んで良かったです。

  • カテゴリを選ぶのがホントに難しい1冊だった。
    編集者の仕事での奮闘ぶりを中心に据えつつも
    家族の物語としても、友情の物語としても、ラブストーリーとしても読める。
    纏めていうと、工藤彰彦という29歳の出版社員の成長譚ということになるのかな。

    『シロツメクサの頃』を媒介にしてクロスしていく糸は
    家族の葛藤や愛情やいろんなものを絡め取りつつ
    途中の困難や横槍で千切れそうになりながらも
    国木戸さんや営業王子や芝山先生や書店員さん…
    いろんな人の手を伝って本と一緒に広がっていく。
    ただ無尽蔵に散り散りに広がるんじゃなくて
    そこには確かな温度と繋がりが存在していることが読み取れた。
    読了した瞬間から嬉しさがじわじわと湧いてくる不思議な感覚。
    今回は図書館で借りて読んだけど、いつか手元に置きたい1冊である。
    文庫化されたら間違いなく買う(文芸書で買えよ/爆)。

    最終的にはサンフランシスコにいるなおくんにまで繋がったと判る一方で
    彰彦くんと冬実さんが結局どうなったのか曖昧にしたままのところが
    なんとなく放置プレイの体で(爆)堪らない。
    井辻くんシリーズではそこでやきもきしたものだが
    どうやらこの投げっ放し感が特性であり魅力のようなので諦めるしかなさそうだ。
    きっとふたりは相思相愛だ。うん。そう思っとこう。

  • 元書店員の大崎梢さんの作品は、本好きの人にとっては本屋さんや出版関係の事情が伺えて面白い。
    「配達あかずきん」から始まる成風堂書店事件メモシリーズで好きになった大崎梢さんの作品で、読んでいないものがあったので図書館で手に取ったのですが、返却日が来たのに読んでなかったので今朝、読み始めたらもうガッツリその世界に捕らわれてしまいました。

    どちらかというと小気味よい作品が好きだった大崎梢さんですが、これは一番かも。うん、今年読んだ本の中でも、読後の気持ちよさは一番です。

    大手出版社の千石社で働く彰彦は、期待通りの仕事をそつなくこなす編集者。
    ある出版パーティーで最近全く売れていないベテラン作家の家永を自宅まで送ったところ、まだどの出版社とも話を付けていない新作小説に巡り会う。
    “行き先の決まっていない原稿があり、予想以上の感動作であり、自分は出版社に勤める編集者だ。”
    彰彦は、すぐに本にしたいと望むが、家永の言葉はつれなかった。

    「やめてくれ。よかったと言ってもらえるのは嬉しいが、しょせん君とは縁のない原稿だ。きれいさっぱり忘れてくれ。

    作家が創造した物語を、本の形に整えて、その本を読む人に届ける文芸編集者、の話。
    家永が書いた小説についてはストーリーだけが語られるだけで、物語は彰彦が作家、上司である編集長、営業担当、書店、同業のライバルなど周囲の人々とのやり取りが描かれています。
    正直な所、主人公である彰彦が抱える家族のバックボーンと作家・家永が抱える家族のバックボーンがあざといくらいに重なることや、物語の展開が早すぎるかなという荒っぽい実感はあるのですが、ラストのある人物からの届くことを考えていないメッセージにはやられました。危うく涙腺が緩みかけました。

    物語に登場する家永が書いた小説「シロツメクサの頃」のように、シンプルに著者が読者に届けたい言葉がある小説だと感じました。
    と、読み終えてすぐにこうやってレビューを書いているあたり、何か受け取った印です。

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