赤ちゃんのママが本当の気持ちをしゃべったら? (一般書)

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制作 : Naomi Stadlen  曽田 和子 
  • ポプラ社 (2012年7月9日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591130049

赤ちゃんのママが本当の気持ちをしゃべったら? (一般書)の感想・レビュー・書評

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  • 育児をしていて、楽しいことはたくさんあるけど、最近はつらいことが心を占めることが多かった。
    子どもに愛情を感じるし、育児で忙しいけど最低限の家事はやれている。
    転居したので知り合いはとても少ないけど、夫は家事や育児を助けてくれる。
    それなのに。なぜだろう。

    違和感を感じていた。

    その違和感を、この本が私の代わりに言い表してくれて、私はたくさんの涙とともに、久しぶりにとても爽快な気分を味わった。


    『赤ちゃんのママが本当の気持ちをしゃべったら?』
    (原題は『What mothers do especially when it looks like nothing』なんにもしてないように見えるときに、お母さんがやっている特別なこと)
    ナオミ・スタドレン著 曽田和子訳 ポプラ社


    この本はイギリス人の筆者が、自分の子育ておよび、育児カウンセラーの仕事を通して感じたことが書かれている。
    日本とはちょっと事情が違うこともあるけど、おおむね日本の母親たちにもうなずける内容だ。

    母親たちはみんな、自分のことや自分の生活を、
    「なにもやっていない毎日」「なにもしていない」と表現して自信を失ってしまうという。
    「仕事をしていたころに比べて、自分の能力はあまりに低い」と。

    それは現代の女性たちが、学生時代・社会人時代の自分の生き方と、育児生活があまりに異なるものだと感じているからだ。

    課題があり、それにむけて準備・企画し、努力し、結果があり、その後に休息(≒報酬、またはその両方)、そして次の課題があった。
    周囲には同じ課題にむかう仲間があり、将来を描ける憧れの人物もいた。

    育児は違う。
    課題があり〜結果があり、ここまでなら今まで通りの流れだった。
    それが出産である。
    本を読んだりして自分で勉強して、出産に挑んだひとは多いはず。
    違うのはその後、休息も報酬もなくいつのまにか他の課題が複雑にいくつも始まっている。
    そこに、核家族ならではの孤独が加わる事も多い。
    (周囲の母親とは、子どもがいるというだけの共通点で、深く話しあえる関係には発展しないことも多い。私が社交的でないからかなあ)
    育児書はあっても、方向性はバラバラで、すべてに「個人差があります」、では参考になるだろうか。
    その後も、休息はいろんな意味で存在しない。
    自分が眠れないのはもちろん、子どもが寝ている間も、人にあずけて自分は外出している間も、「子どもについて全責任を負う担当者である母親」という重みが、本人にも周囲にも無意識に存在して、休まるときはまったくない。

    「すこし時間をくれないか。
    ここは私の知る世界とはあまりにも違っているんだ」
    by中嶋陽子 とでも言いたくなるでしょう。

    そして、一日がんばったところで、
    ≪今日、あなたがやったことにより、
    お子さんの、足だけで階段をうまく上る動作は
    2%前進しました。
    また、弁当箱のふたを自力で開ける動作の完了には
    あと四日間同じ練習が必要となります。≫

    そんなこと誰も教えてくれない。
    自分がやったことが、子どもの将来にどんなふうにどのくらい関わっているのか、全くわからない。
    あるブログにて、「子育ては、正しいかどうか分からないゴールに向かって、結果の分からない闘いを挑み続けること」「ときには一人で」とありましたが、ウンウンと思いました。

    出産前から、本にネットに育児雑誌に、情報はあふれている。
    しかし私は、実感はなにひとつなかった。
    昔は女性たちのコミュニティはもっと濃密で、近所付き合いのようなものや、親族のつながりのなかで、小さいころから女性たちは、自分の周りの女性たちが育児する様子を長い時間にわたって見ていくことができた。

    私もそうだったけど、出産するまでほとんど赤ん坊を触ったことはなかったし、赤ん坊のいる生活(24時間365日)がどんなものか間近で見る機会はなかった。

    現代の社会で、中心にいるのは、母親や子どもではない。
    昔は女性は母になってはじめて社会の中心になることができたが、今はむしろ社会のスミに追われた気さえする。
    母になった人たちは
    「子どもがいなかったころは、外にでかけて、おいしいもの食べて、映画みて、買い物して、友達とおしゃべりして、美術館にいったのに」
    と思う。

    電車に乗るのも、郵便局で用事をするのも、ご飯を食べに行くのも、まわりに気を使ってハラハラしてしまう。
    そんな母親たちのために、子どもが走りまわれるカフェは、「子連れカフェ」という名前で存在する。
    そこには、子どもと無縁の女性たちは少ない。(子ども向けの内装はおしゃれではないし、うるさくてゆっくりお茶なんかできないので)
    むしろ、分離がキッチリしてしまったため、子持ちは子持ちで固まってしまう。
    社会のスミにいる気分はいよいよ顕著で、一方、子どものいない女性が、子育てについて実感を得られる場所は減っていくのだ。


    一日、バタバタと育児をしている。
    つねに中断される作業を同時にいくつもこなして、睡眠不足で頭がまわらないなか、育児と家事をして、ようやくようやく子どもが眠って解放される。
    そして夫が帰宅したとき、今日いちにち私は何をしていたのかな、と思う。
    家事はほんのわずか、最低限しかやれていないのに、この疲労はなんなんだ。
    このとき、夫に今日はなにをしていた?と聞かれても、「なにも」と女性は答えてしまうそうだ。

    それは、母親のやったことが≪言葉になる以前のもの≫だから。
    ≪表現のないもの≫だから。とこの本は言う。

    「今日は子どもがこのおもちゃを、ここに乗せることができたのよ」

    言葉にしても、ただそれだけ。
    そこに至るまでどれほど、二人でたくさんの練習をして、失敗して努力して、成功して感動したのか。
    それを言葉では伝えられないのだという。

    「今日は病院につれていって注射したんだ」

    ただそれだけなら、大人なら一時間もあれば終わる用事だが、子ども連れなら半日作業だ。
    病院にいくまでの方法を検討し、いろんな状況に合わせて持ち物を準備し、出発して段差に気をつけて、前から自転車がきてハラハラして、病院についても抱っこしながらの受付作業や、子どもが暴れる待ち時間をクリアし、注射という大事業を終えて、泣いて暴れる子どもを抱っこして財布からお金を出す大変な仕事があり、家に着くころは二人ともぐったりしている。

    これを説明することができない、しても共感を得られるとは思えない。
    母親たちはションボリとしてしまうだろう。

    表現する言葉がない世界。
    それが赤ん坊と母親の世界なのだそう。
    大人の言葉での表現と、まるで一致しない。
    しかし、母と子は、ものすごいことをやって、ものすごい関係をつくりあげ、ものすごい時間を過ごしているのだと。

    一見簡単にみえる、無意識にやっているあらゆる動作も、私たちはかつて、かなりの時間をかけて努力して会得したものだった。それを子どもは教えてくれる。

    報酬もまた、言葉にはならない。
    小さくてあたたかくて愛らしい(親にはそうみえる)生き物が、
    自分に対して、ただひとりの、絶対の信頼と愛情を寄せてくれる。

    特別なことなど何もしなくても、
    母親であることって、すごいことなんだと思えて、私は心が軽くなりました。

  • 原題は、What Mothers Do especially when it looks like nothing。全く以てよく言ってくれました!な本だ。育児の辛さについて、自分の時間がないとか、パートナーに不満を感じるとか、一日中家にいていやだとか書かれているものはいくつか目にした。本書では主にお母さんが赤ちゃんと関わっている、名前のない行為について書かれている。お母さんが一日の大半を費やすその行為は、学びに満ち、不可欠であり、価値のあることであるにもかかわらず、名前がない。その結果、言葉にすると「今日は赤ちゃんと一日遊んでいただけ」となる。
    今までと全く違う時間ペースや価値観で動く世界に入ってしまったお母さんはひどく戸惑う。そしてその世界に適応していく。そんなお母さんたちの声を集め、解説していく。まさに今の自分に当てはまるコメントがいくつもあり、自分の今の苦しさを言語化してもらったよう。現代においてはほとんど人目に触れなくなってしまったお母さんたちの仕事が、世の中に理解され、自分も含め世の母親たちがより誇りをもって子育てできるようになることを祈る。

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赤ちゃんのママが本当の気持ちをしゃべったら? (一般書)の作品紹介

核家族化した現代の育児がどれほど困難に満ちた偉大な挑戦となっているか。それは母親たちの、ときに孤独で、献身的な努力によって支えられてきた。この本は、新しい視点から「お母さんは毎日、何をしているのか」を描き出し、驚くべき発見と感動をもたらしてくれる。大学での講座、育児カウンセリング、「マザーズトーキング」の主催など、悩める母親たちの育児サポートに全力を注いできた著者が、温かい眼差しで描き出す「育児の世界」。子どもと共に歩み、新しい未来を願うすべての人たちに贈る本。

赤ちゃんのママが本当の気持ちをしゃべったら? (一般書)はこんな本です

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