- Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591130162
作品紹介・あらすじ
祈祷師の家に暮らす中学生の春永は、父親とも母親とも血の繋がりがない。実の娘である姉の和花とは違い。自分だけが血が繋がっていないということを自覚し始めた春永は、なんとも言えない所在なさを感じるようになる。複雑な想いを抱えきれなくなった春永はある日、生みの母親を訪ねることに。そこで春永が目にしたあるものとは…。話題作『きみはいい子』で注目を集めている著者による隠れた感動作、待望の文庫化。
感想・レビュー・書評
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祈祷師をしている『おかあさん』、力がある『おとうさん』と和花。しかし主人公の春永だけには力がない。誰とも血がつながっていないから。
祈祷師という特殊な設定だが、それが上手く生かされていた。
人に見えないものを見る力、時に『ばけもの』と呼ばれる状態、それでもそれが欲しいと思うほどに春永の思いは切実だった。
周囲はいい人ばかりだし最後もホッと出来た。
それでも春永には苦しいこともあるだろうけれど。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
きみはいい子が大好きだから、期待して読んだ。期待を裏切らないのが凄い。ちょっと不思議なお話で、でもファンタジーではない面白さがある。はるちゃん、いい子。強い子だ。春と和。祈祷師とか鬼子母神とか、全然馴染みがないけど、本当にあんな感じなのだろうか。だとしたら選ばれたくないって思っちゃうけど。ひかるちゃんに幸せになって欲しい。みんな幸せでいてほしい。久美となんとかくん(名前忘れちゃった)はなんなんだろ、って思ったけど、でもまあ、いるよね。そういう人も。
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2019.05.24.読了
ここのところ、なかなかイイ小説に出会えなかったので海外の翻訳ミステリーにどっぷり浸かっていた。
だから久しぶりの日本の小説。
題名通り、祈祷師家族を描いた作品。
第二次世界大戦後、日本は世界的にみても平和な国の一つに数えられると思われますがそれは無宗教の民族であることが大きく影響してると私は考えます。
正月には漠然とした神様に詣るため初詣に出かけ、お葬式では突然仏教徒となり、なんの躊躇いもなくチャペルで結婚式を挙げる。無節操なくらい自由奔放(笑)
でも、割と信心深いのが日本人→困った時の神頼みやら、お百度詣り、仏様に守ってもらおうとおばあちゃんの仏壇に手を合わせ、修学旅行ではお寺を巡りまくる。
よくよく考えると信仰宗教など含めるとなんと!多宗教なことか?
これって日本だけなの?疑問
この小説を手にとって、もー、胡散臭いジャーン、ぷんぷん臭ってるジャーン、やだなー、拝み屋かよーという気持ちで読み始めました。だから中脇作品でなければ手を出さなかったかなー
それでも、神様が個人に降りてくるわけないじゃんよ、ガンバレルーヤじゃないんだからとか
フォーク曲げたりしないでよ!とおちゃらけ気分で読み進めてしまいました。
ところがですね、さすがの中脇先生、とても大事な問題提起を毎回してくださいます。
イタコさまとか拝み屋さんとか全然信じてない私にもまた全然違った大切なこと大事なことが伝わってくるのです。
最後には胡散臭くもないか。。。みたいになったりしちゃうんですよ。。。
なんだか話がまとまりませんが、とにかく良い物語だし、柔らかくふんわりした雰囲気の中に中脇先生が考える教訓がしっかり隠されているのです。
読んでよかったと浸っている今現在があります。
オススメです。 -
鋭く思春期に切り込む物語。自分は自分として生きる。それしかない。涙が溢れた。
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自宅は祈祷師という珍しい職業だが
そこに住む、誰とも血が繋がっていない。
家の職業以外は、平凡…な日々。
いや、幼馴染の女の子のせいで、非日常?
確かにこの女の子、幼馴染でなかったら
放置したい感じです。
悪気はないのでしょうが、このヒロインっぷりは
勘違いしてない? と女子に陰口叩かれるレベルです。
なりたいけれど、なれない祈祷師。
なりたくないのに、ならないといけない祈祷師。
望んでも、手に入れられないもの。
自分の持つものの素晴らしさに気が付きましょう、と
言われている気がしました。
が、自分の持っている『素晴らしいもの』とは
一体何か、という疑問も…。
人に安らぎを与えられるものって、何でしょう? -
祈祷師という珍しい仕事をしている家で育つ中学生の春永は、家族の誰とも血のつながりがない中で暮らしている。姉の和花は「おかあさん」の実の子で祈祷師の力があるようだが、自分にはない。自分は平凡な中学生。いつも周りを観察し、自分を押しこめていることが多い春永が、自分はどういう存在なのかに悩みながらも、それを乗り越えていく、という物語。
『フツーの子の思春期』という本の中で、「理不尽な思いを自分で抱え、自分の分をわきまえていくという」、「大人になるための大切なプロセス」を描いた小説として紹介されていたので、さっそく読んでみた。
最初は祈祷師とか、「いろんなものを拾ってきてしまう」子とか、「屋号」って何?とか、物語の中で出てくる「山中くん」状態で読むので、なんか読みにくいと思ってしまったが、中盤からは本当に読みやすく、読みにくいと思っていたその土地のことばが逆に良いと思ってしまう。火事になった「香取さま」のくだりはミステリーっぽくもあって面白いが、純粋に思春期の子が成長していく物語、として安心して楽しめる。「金魚」の描写とか、なんか国語の問題になりそうだなと思った。文庫版はなんかラノベのような装丁がされていて、残念。もっと純粋に面白いのに、と思ってしまう。(15/09) -
祈祷師の娘、である話。途中、すごく面白かったけれど、全体的には淡々と進む感じだ。
2015/8/11 -
なんか深かった‥‥‥‥‥‥
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血のつながらない家族のもとで暮らす春永。
不思議な力がある家族の中で自分だけ「普通」の人。
自分に何ができるかを考えながら暮らすのは結構大変だと思う。他の人から見れば、そこまで気にすることはないとは言えるだろうけど、自分が何のために一緒に暮らしているのか。理由がほしいのは理解ができる。
でも、中学生でここまで周りのことが見えて、ほかの人のことを考えられるのはすごいのではないかと思えた。