([に]1-2)きのうの神さま (ポプラ文庫 日本文学)

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591130421

作品紹介・あらすじ

村からただ一人、町の塾へ通っているりつ子は、乗っていた路線バスの運転手・一之瀬から突然名前を呼ばれ戸惑う。りつ子は一之瀬のある事実を知っていた(「1983年のほたる」)。人の闇の深さや業を独自の筆致で丹念に描き出し、直木賞候補になった傑作が待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 離島や田舎の山村など、主に地域医療を題材にした短編集。
    著者の西川さんは映画監督が本業で、この短編集に収録されている「ディア・ドクター」を原案とした同名の映画も撮っています。(映画の内容はまったくの別物みたいだけど)

    田舎特有の密接すぎる人間関係の描写が秀逸。“頼りになる”と“面倒くさい”の狭間にあるあの独特な感じって、実際そこそこの田舎に住んだことがある人にしかわからないと思う。
    何よりも、素知らぬ顔をして暮らしている人々の心の奥底に隠された暗部のえぐり出し方がすごい。仮面に隠れた本当の表情を垣間見たような。
    視覚的な部分を大事に描いているのは映画監督的かもしれない。

    「きのうの神様」
    このタイトルの本当の意図はわからないけれど…
    昨日まで信じて心の拠り所にしていたものが、たった1日の、何かの出来事によって変わってしまう、ということはある。悲しいけれど、どうしようもなく。
    もうひとつ
    神様、としばしば比喩される医師という存在。彼らは医師であるから神様なのであって、その立場を失ってしまったら?
    立場を変えた瞬間、非情にもきっと彼らは、人々にとっての神様ではなくなる。
    辞めたり、死んでしまったり、裏切ったり…医師だって“神様”である前にひとりの人間だ、ということ。

  • この人にしか描けない世界観だ。映画監督だからこそ…とか、そんなわかりきった説明をするのは何だか陳腐で嫌だけど…うまい言葉があてはまらずもどかしい。田舎独特の閉塞感や、無為に日々を重ねていくことに対しての倦んだ感情を、こうも静かに、じわじわと沁みるように描くなんて。ただただ圧倒させられた。
    初めて読んだ彼女の作品にここまで心を揺さぶられたからには、映像作品も是非見てみたい…のだけど、その前に、小説家としての彼女の紡ぐ言葉の美しさを堪能したいかな。他の作品も、まずは活字で彼女の世界に浸りたい。

  • 情景や心の動きなどの表現はとても繊細で、ありありと感じることができるのだが、このひとつひとつの短編を完結させるように理解するのが、難しいなと思った。

    『1983年のほたる』はとても面白いと思ったのだけれど、えっ?続きは?って思いながら、全編終わる…という…

  • ポプラ文庫の新聞広告を見て、何だか良さげな雰囲気だったので買ってみた。
    作者が映画監督であることも、その取材の過程で集めた話が元であることも後で知った。
    僻地医療を題材にしたとあるけれど、医療の描かれ方には濃淡あり、むしろそれに纏わる人のあり様を色んなテイストで描く。
    澱んだ田舎の日常や老人たちの臭いが立ち上ってくる話があれば、専業主婦となった元看護師の日常の歪みを描いたり、医師の父を軸に夫々の道を歩いた兄弟の話になったり、変幻自在、ある種、捉えどころのない短編集。
    読み終わってみたら、巻頭の、村からバスで町の塾に通う小学生のお話が、医療の色は最も薄いけど、一番物語物語していて良かったかなと。

  • ときどきドキッとします。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      あっ文庫になってる。読まなきゃ!
      あっ文庫になってる。読まなきゃ!
      2012/09/26
  • ディア・ドクターだけは良かった。あとはどうでも良い感じ。

  • 西川美和、映画も好きですが、小説も好きです。人間を見る視点が自分好みです。

  • 短編集。
    一番最初の話以外は医療関係が絡んでいて、そういえば私は医療関係の話が好きではないんだった…と思いながら読み進めてなんとか読了。「ノミの愛情」は看護師だった妻目線の話で、少しシニカルな内容が面白かった。
    映画『ディア・ドクター』の原作になった話も入っており、これは映画も見てみたくなった。

  • 文体があまり好きじゃないけど、とてもよい作品だった。特に、ディア・ドクターというお話がよかった。

  • 第141回直木賞候補作。
    これもなるほど候補作w

    映画監督、脚本家でもある著者が、僻地の医療をテーマに取材し、「映画の時間軸では語りきれなかった」ものを小説化。


    慣れたり飽きたりした上に積み重ねていける奴もいるんだよ。


    病やその治療とともに生きる厳しい日常。
    だれにだって訪れる。
    神様なんていないって、私は知っている。

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著者プロフィール

1974年広島県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。在学中から映画製作の現場に入り、是枝裕和監督などの作品にスタッフとして参加。2002年脚本・監督デビュー作『蛇イチゴ』で数々の賞を受賞し、2006年『ゆれる』で毎日映画コンクール日本映画大賞など様々の国内映画賞を受賞。2009年公開の長編第三作『ディア・ドクター』が日本アカデミー賞最優秀脚本賞、芸術選奨新人賞に選ばれ、国内外で絶賛される。2015年には小説『永い言い訳』で第28回山本周五郎賞候補、第153回直木賞候補。2016年に自身により映画化。

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