ゼラニウムの庭

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著者 : 大島真寿美
  • ポプラ社 (2012年9月13日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591130759

ゼラニウムの庭の感想・レビュー・書評

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  • ある一家には100年以上守り続けた秘密があった。
    明治末期に生まれた双子の女の子、豊世と嘉栄。
    嘉栄は人よりも時間の流れが遅く、ゆっくりとゆっくりと成長する。
    豊世がすっかり中年の女になった頃も、嘉栄は輝くような若さを放っていた。
    豊世の葬儀の際も、嘉栄は女盛り。

    歳を取らない本人ではなく周囲の人々の思いが色濃く反映されているのが、ありがちな不老不死の物語とは違うところか。
    嘉栄の苦悩や孤独よりも、むしろ豊世が嘉栄の存在によって引き起こされる不安感や厭わしさが物語全体を覆っている。
    双子で生まれて誰よりも近しい存在になるはずなのに、敢えて存在と遠ざけてしまう愚かしさ、哀しさ。
    小説全体に流れる幻想的な雰囲気とあいまって、三島さんの文章力はさすが。

    話は飛ぶが、知人の家にミーちゃんと言う猫が一匹飼われていた。
    確か私が小学校の頃から飼われていたように思う。
    我が家もその後、犬を飼ったり猫を飼ったりしていたがとうに亡くなっている。
    しかし、みーちゃんはまだまだ生きていた。
    私が成人しても、結婚しても、まだまだ確かに生きていた。
    亡くなったのは私が30歳を過ぎてからのことだろう。
    おそらく、ミーちゃんのいた時間は軽く20年を超えていたのではないか。
    猫の年齢は20年を超えると化け猫の域とどこかで読んだことがあるが、猫は何年生きようが家族にひた隠しにされたりしない。
    長生きだねー、で終わりである。
    もちろん、猫同士で短命の猫が長命の猫を羨んだりもするまい。
    人間てなんと愚かな生きものだろう。

  • これは物語なのか。
    実在する一家の記録なのではないか。
    書かれていることが信じられるかと言われれば、信じるのはとても難しい。
    でもそれを信じるしかない状況に置かれてしまった人達の心の動きには、これは現実なのかもしれないと思わせる説得力がある。

    語り手は小説家の「るるちゃん」。
    彼女は祖母に教わった秘密を記録した。
    曾祖父が隠すことに決めてしまったことで守るしかなくなった秘密。
    どんなに怖くても逃れられない呪縛のような秘密。
    そしてその中心にいるある人のことが、好奇心と畏れの両面から書かれている。

    嘉栄さん程に極端ではないにしても、誰もがみんな違う時間の流れの中で生きているのではないだろうか。
    死ぬ年齢はバラバラだし、老い方も人それぞれ。
    他人と生きるということは、そのずれを受け入れることなのかもしれない。
    豊世さんが嘉栄さんとのずれを受け入れざるを得なかったように。

    先に老いていく辛さと置いていかれる辛さ。
    自分のこととして想像するとどちらも恐ろしい。
    では、身近に嘉栄さんのような人がいない私には、この恐ろしさは他人事なのか?
    たぶん、そうではない。
    私はいずれこれに近い恐怖を感じることになる。
    一緒にいられると信じていた人から切り離される日がきっと来る。

    その時にきっと豊世さんと嘉栄さんのことを思い出すはず。

  • 明治に生まれた、人の倍の時間を生きる不思議な女性の話。
    太古の昔から人類が憧れた不老不死。一昔前に比べ平均年齢は伸び、いつか不老不死も夢ではないのではと思う。でも、長く生きる事には覚悟がいるなと。周りの人達がどんどん年老い死んでいくのに、自分はまだ若い姿のままそれを見届け、ひっそりと隠れながら生きなくてはならない。なんて不自由!長い長い人生で自由を手に入れる事は難しいんだな、実際。
    希望を抱くのではなく、絶望を持って生きていくと決めた嘉栄さんの姿が哀れで辛かった。周りの人間が嘉栄さんに翻弄されて行く中、るるちゃんの娘・葵が結構飄々としていて好きでした。

  • 一族が隠しつづけてきた女性の秘密を祖母から語られた小説家の「るるちゃん」は、誰にもみせることのない、その女性と周りをとりまく人々ー主にに双子の片割れである祖母の言葉を借りてー綴っていく…

    私も付記はなくてよかったタイプです。ただ、彼女自身が自分を神聖視して欲しくない、と思っていることを表現するためには必要かな、と思った。

    本棚にある、曽祢まさこ『ブローニィ家の悲劇』を思い出した。

    不老は憧れだけど、周りの人が先に逝くのはどんな気持ちだろう…




    (同じ雰囲気の本)
    …時をさまようタック
    …裏閻魔

  • 18世紀ヴェネツィアが舞台の「ピエタ」の次は、、、←実は文庫化待ちで未読。

    ポプラ社のPR
    「人は永遠の若さを願うけれど。
    彼女の秘密はあまりにも切ない。
    2012年本屋大賞第3位『ピエタ』に続く、大島真寿美の次なる傑作。

    おそらく、信じてはもらえまい。こんな話、信じるほうがおかしい。でも、たしかに彼女はそこにいる――
    双子の妹は、その存在をひた隠しにされて育てられた。
    秘密の存在は、それを知る人々に、何もなければ意識せずに済んだはずのことを見せつけ、深く、大きな影響を与えていく。
    生きることの孤独と無常、そして尊さを描き出す物語。」

  • いや、恐ろしいお話でした。ゆっくりと成長するということは、継続したひととの関わりをもてないということが。そして、たくさんの死を見送り、取り残されるということが。
    「るるちゃん」の視点で進む物語は、喜栄さんによって解き明かされることもあるけれど、その喜栄さんにもわからなかったこともある。それを想像してみるのが、読者の特権であるのかもしれない。
    この家の、家系図が載っていてほしかった。

  • 主人公の祖母、豊世の双子の姉妹、嘉栄。
    異質な時間を彼女は生きる・・・ゆっくりと長く・・・彼女は生き続けた。


    この小説は、小説家の主人公が公表しないつもりで書いた記録、
    という形をとっている。

    奇抜な設定なのに地味に感じ、異形を描いているにもかかわらず、現実感を伴う。
    前作「ピエタ」が大好きなので、ものすごい期待して読みはじめ・・・・
    んー・・・やっぱ越えられない感があるかな・・・と思いつつ読了。

    「嘉栄附記」として描かれる後半、
    嘉栄が異形の立場から観る主人公「るる」とその周辺・・・が面白くて、(ソレ以前は☆3つ、これがあるから☆4つ)。
    嘉栄附記を読んだ後、もう一度最初から読みなおしました。
    一度目より、二度目に読んだほうが面白く、胸に沁みるものがあります。



    やさしい言葉遣い、
    夢の中のようなやわらかい、独特な世界観は健在です。
    (ピエタは甘かったけど、これは甘くないかなー。)

  • 大島作品、初読み。資産家一族の抱えている“嘉栄さん”に関する秘密とは一体何なのか、出だしから謎で引き込まれました。。嘉栄さんはどうして、何の為に生まれたのかという事柄自体を追求するのが重要な物語でなく、時の流れの異なる者と係わることでの葛藤や人間模様を紐解くドラマで面白かったです。

  • (No.13-24) ミステリに分類しても良いのかな?

    『私の名前は、るみ子。子供の頃から呼ばれていた愛称はるるちゃん。実はまったく別の名前があって、それは小説家としてのペンネーム。だけどいま書いているのは小説ではない。この記録を書きたくて、でも書き方が分からないのでいろいろやっているうちに小説家として日々を送るようになった。だからいまから書く、決して公表できないものが本当に書きたかったものなのだ。

    祖母が亡くなった時。最後に話した日に祖母から委ねられたこと。
    書いておくれ、みんな書いておくれ・・・。私があんたにしゃべったことをみんな。
    そんなことをしていいの?ずっと秘密にしてきたことを。
    あれからずっと考えてきた。いまもまだ迷い続けている。』

    うわ~、これから何が語られるの?もう興味津々。
    現在のるみ子の生活。祖母から聞いたこと。調べて分かったこと。関係者にそれとなく聞きまわったこと。
    それらが行きつ戻りつしながら、段々に秘密にしなければならなかったことはなんなのかが読者に分かってきます。

    必然的に、ある一家の何代にもわたる年代記になりました。
    これは家族構成をしっかり把握しないと分からなくなりそう!と、途中で家系図を作成しました。
    いろんな人がでてくるのに、名前の時もあれば、祖母、曾祖母、祖父、父方の祖父、叔母など、名前以外の呼び方で説明されてたりして混乱しちゃったから。
    この書き方は雰囲気作りには良い感じでしたが、自作家系図は役立ちました。

    秘密がなんだったのかがわかると、こういう題材は今までもよくあった話だわと思いましたが、切り口がなかなか良い。
    そして、不思議な出来事なのに、とってもリアル。そう、周りの人の行動はこれしかなかったんだろうな、と納得できたの。
    どこかで忸怩たる思いがあって家族関係がきしみながらも、どうしようもないので結束しなければならず。その苦しみが伝わってきました。

    ずっと読んできて、もどかしい思いがありました。視点がるみ子なので、ある人がどう思っているのかが分からなくて。
    でも最後に附記がありました。
    欲しいと思っていた視点が、はいっと差し出されすっきりしました。うまい構成だなと感心しました。

    苦しさや辛さもあるけれど、とても素敵な物語でした。

    作者は沢山本を出されていますが、私にとって初読みの作家さんです。
    そして、この本の情報をどこで拾ってきたのかすっかり忘れてしまった・・・。
    誰かのブログで見かけたんだと思うのですが、教えてくださった方ありがとう!

  • 大島真寿美さんの作品は中学だったか高校時代から読んでいる

    ゼラニウムの庭、この一冊は今まで読んできた作品とはまるで違う印象を受けた
    ファンタジーに近いからだろうか
    何かこう、真に迫るものを感じる



    やさしい言葉遣いが好きだ
    読み始めると、するすると引き込まれてゆくところも
    夢の中のような、午後の昼下がりのような独特な世界観もどこか中毒性がある

    初めて宙の庭を読んだときみたいな心地になりました

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ゼラニウムの庭の作品紹介

人は永遠の若さを願うけれど。
彼女の秘密はあまりにも切ない。
2012年本屋大賞第3位『ピエタ』に続く、大島真寿美の次なる傑作。

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