あん (一般書)

  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591132371

作品紹介・あらすじ

線路沿いから一本路地を抜けたところにある小さなどら焼き店。千太郎が日がな一日鉄板に向かう店先に、バイトの求人をみてやってきたのは70歳を過ぎた手の不自由な女性・吉井徳江だった。徳江のつくる「あん」の旨さに舌をまく千太郎は、彼女を雇い、店は繁盛しはじめるのだが…。偏見のなかに人生を閉じ込められた徳江、生きる気力を失いかけていた千太郎。ふたりはそれぞれに新しい人生に向かって歩きはじめる-。生命の不思議な美しさに息をのむラストシーン、いつまでも胸を去らない魂の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 今年最初の本。年末から読み続けていたけど。
    映画になると知って読んでみた。「餡子」にも興味があるし。
    なかなか深かったな~
    どら焼き屋さんに突然老人が働かせてくれと来て、餡子を手抜きしてたからあまり売れてなかった店が、
    おばあちゃんの手作り餡子のおかげで人気に。
    だけどおばあちゃんはハンセン病を昔患っていた・・・
    それに気付いた客のおかげでまた売れ行きが落ち込み・・・

    おばあちゃん吉井さんの人生、どら焼き屋の店主千太郎の人生。
    生きてる意味ってなんだろうって誰もが考える事だけど、
    それを教えてくれる一冊だった。
    新年早々良い本に出会えた。

  • ウチの高校生が部活で朗読の課題になってると言っていたのがきっかけで読んでみた。
    映画化されていたのでタイトルくらいは知っていた。なるほど、2時間くらいのドラマにするにはちょうど良さそう。
    人生を諦めかけた男と人生のほとんどを理不尽に奪われた高齢の女性が出会い、心を通わせる物語。
    ハンセン病については知っているつもりで知らなかったのかもしれない。こうやって物語を読み登場人物の一生に思いを馳せると、事の重大さに心が苦しくなった。

  • 内容紹介 (Amazonより)
    線路沿いから一本路地を抜けたところにある小さなどら焼き店。千太郎が日がな一日鉄板に向かう店先に、バイトの求人をみてやってきたのは70歳を過ぎた手の不自由な女性・吉井徳江だった。徳江のつくる「あん」の旨さに舌をまく千太郎は、彼女を雇い、店は繁盛しはじめるのだが……。偏見のなかに人生を閉じ込められた徳江、生きる気力を失いかけていた千太郎、ふたりはそれぞれに新しい人生に向かって歩き始める――。生命の不思議な美しさに息をのむラストシーン、いつまでも胸を去らない魂の物語。



    アマゾンプライムで映画化を観て とても感動したので原作を読みたくなりました。
    ほぼ原作通りのストーリーでしたが 千太郎ともう亡くなってる店主の印象が少し変わったかも...映画より悪い人の印象でした。
    原作を読んでみると 樹木希林さんの演技が素晴らしかったと再確認しました。
    何気ないしぐさや言葉使いが とても伝わっていた気がします。
    そして、映画でとても綺麗な情景を観ていたので 原作を読んでいてもその情景が浮かんできました。
    桜の花びらを見ると これからは徳江さんを思い浮かべそうな気がします。
    どら焼き、食べたい!

  • もっと若い頃に読んでいたら、主人公のどら焼き屋店長目線で読んでいたはず。
    半世紀生きた今は、隔離施設で生き抜いてきたハンセン病元患者の徳江さん目線でもストーリーを追い、映画の撮影現場にいるような、どら焼き屋が隣家のような、深い味わいのある物語でした。
    樹木希林さんの映画も観てみたい。
    ブラウスのシーンでは目頭が熱くなりました。
    桜のきれいな徳江さんの故郷も、まさかの近所。春になったら行ってみよう。「吉井徳江」として生きたひとりの少女のことを思って。

  • 映画を見ていたので、内容は、知っていた。ただ、やはり、活字で伝えられる中の深い思い、苦しみ、悲しみそして、希望は、より心に響くと思う。桜シーズンに思い出す本になる。

  • 読んでいて涙が止まらなかった。
    和菓子屋に勤めてはいるが、いいかげんに生きていた主人公と美味しく『あん』を炊く謎のおばあさんの、柔らかいやりとり。
    次第に明らかになるおばあさんのつらさ、悲しさと、物語のそのような柔らかい空気間があいまって読んでいて、涙が止まらなくなった。
    大好きな本。

  • 昔、子どもの頃教会学校のサマースクールでハンセン氏病の方たちが暮らす施設を訪問したことを思い出した。そこは、塵一つないくらい清潔で、修道院のような静けさと祈りの気配に満ちていた。かの人達の運命を考えれば、憤りや怒り倦怠の気配が漂っていてもおかしくないのに、そうではなかったことを覚えている。
    この物語に登場する人達と、あの時の記憶が繋がり、過去の一地点のことではなく、今もなお続いている現実なのだと再認識した。

  • ワケアリの千太郎は、どら焼き屋の雇われ店主。
    中国産の出来合い餡子を挟んだぱっとしないどら焼きだ。
    ある時、徳江というおばあちゃんがあらわれ、どうしても店を手伝いたいと言い出して、無茶苦茶安い給金で餡子を炊き始める。。

    社会的弱者というか、社会からはじき出された者たちの生きるよすがを書きたかったのでしょう。
    決して上手い小説じゃない、ぱっと読めちゃう、たぶん、その一言のために書いたのかな。

    なんというか巷に溢れるケーザイ競争に夢中になって吐き出される文言が どれほど白々しく嘘くさいか。
    本書のヒットは、そういうことを感じている人はたくさんいるんだろう、と認識させてくれる。かな。

    普通の中学生におすすめ

  • 本書の存在は全く知らなかった。たまたま何かで本書を原作とした映画が公開されること、ハンセン病を患った老婆との交流の物語であることを知って読んでみようと思い立った。

    あまり長い話でもなかったせいもあるだろうが、1時間半足らずで一気に読み、そして泣けた。
    差別にその一生を苦しめ続けられた老婆から、生きる意味を考えさせられる人生に躓いた主人公。難しいテーマが重くなりすぎずに物語に織り込まれ、社会の問題に触れつつも、若者を勇気づけ、読む者に自分自身を見つめなおさせる、切なくも希望の見える美しい物語となっている。
    中高生の読書感想文の課題図書になったというのも頷ける。

    久々に良い読書をしました。
    著者は、製菓学校で学んだ経験もあるんですね、納得。

  • 『あん』 ドリアン助川  ポプラ社

    どら焼き屋「どら春」の雇われ店長千太郎は、店の前の桜が満開の季節に76歳になる吉井徳江に懇願され、彼女をアルバイトに雇う。

    何回断っても、時給が低くても、働きたいと言う彼女を雇う気になったのは、徳江が作って来た「あん」が、あまりに美味しかったから。

    徳江が作るあんのおかげで「どら春」は繁盛し始めるが、ある日を境に急激に客足が減って行く。その理由とは…。

    小豆の声に耳を傾ける、と言う徳江のあん作りは、惰性でどら焼きを作って来た千太郎が驚くような気持ちのこもった物だった。そして、若い頃の病気で曲ったと言う彼女の指からたどる人生を知った時、生きる事の根本を揺り動かされる千太郎。

    徳江の人生と、彼女の気持ちに、堪え切れずに泣けて来て、でも最後、桜の花に包まれたような優しい気持ちになれる小説だった。

    私の愛読書『生きがいについて』、昨年読んだ『夜と霧』。どちらも深い所でこの話の底に流れる物に繋がっていた。

    6月に河瀬直美監督、樹木希林主演で映画が公開される。

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著者プロフィール

ドリアン助川 訳
1962年東京生まれ。
明治学院大学国際学部教授。作家・歌手。
早稲田大学第一文学部東洋哲学科卒。
放送作家・海外取材記者を経て、1990年バンド「叫ぶ詩人の会」を結成。ラジオ深夜放送のパーソナリティとしても活躍。担当したニッポン放送系列『正義のラジオ・ジャンベルジャン』が放送文化基金賞を受賞。同バンド解散後、2000年からニューヨークに3年間滞在し、日米混成バンドでライブを繰り広げる。帰国後は明川哲也の第二筆名も交え、本格的に執筆を開始。著書多数。小説『あん』は河瀬直美監督により映画化され、2015年カンヌ国際映画祭のオープニングフィルムとなる。また小説そのものもフランス、イギリス、ドイツ、イタリアなど22言語に翻訳されている。2017年、小説『あん』がフランスの「DOMITYS文学賞」と「読者による文庫本大賞(Le Prix des Lecteurs du Livre du Poche)の二冠を得る。2019年、『線量計と奥の細道』が「日本エッセイスト・クラブ賞」を受賞。翻訳絵本に『みんなに やさしく』、『きみが いないと』(いずれもイマジネイション・プラス刊)がある。

「2023年 『こえていける』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ドリアン助川の作品

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