([ほ]3-2)かなりや (ポプラ文庫 日本文学)

著者 :
  • ポプラ社 (2013年2月5日発売)
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本棚登録 : 135
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591132401

作品紹介・あらすじ

高校生の広海は、祖父である大和尚の仕事を手伝っている。ある日、同級生のサチがお寺にやってきた。ふたりは次第に親しくなるが、彼女は母親との関係に苦しんでいて-東北の町を舞台に、人生につまずいてしまった人たちが再び歩き始める姿を描く、凛としたやさしい物語。

感想・レビュー・書評

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  • 彼女が子供の様にしゃくり上げて号泣している涙と、私が止められず流し続けている涙が同じ種類のものだと気付いた瞬間、私はまた泣きました。世の中に自分の本当の苦しみを理解してくれる人は、居ないのだと諦めていた。居るのだ。例え出会えなくとも、お互い気付かなくとも、その事実だけで、蕾が花を咲かせた気がした。
    神だ奇跡だ運だとか、自分で決めればいい。貴方が私の闇を許し、貴方のおおらかさを私が愛す。それを私は奇跡と呼んでいます。
    誰でも自分が幸せになりたいのは同じ。だけれどこう、本を読んでいると、架空の人物だろうと、誰かの幸せを想っている気持ちに気付くのです。だとしたら、何処かの見知らぬ誰かが、優しく幸せを願ってくれていると信じること、それが生きていける理由でも構わないのではないでしょうか。
    苦しいと歌う歌は、孤独だと歌う歌は、決して悲哀の歌ではなく、解るよ、救いたいんだ!と叫んでいる。
    どんなに辛く寒い冬でも、ちゃんと季節は巡っていく。雪どけと共に覗かせた小さな花に、私は希望を信じたいと願うのでした。

  • 苦しい思いをして、つらい思いをして、それでも人は生きていく。苦しさの中に見える、人と人との関わりの優しさ、温かさに心をじんわりと暖められるお話でした。

  • 「これからの誕生日」の読了感がすごく印象的だったので、
    さらに評判のよかったこちらを読んでみた。

    思いのほか中盤まで読み進めるまで失速したものの、後半から
    ぐんぐん物語りに引き寄せられたのは、ここのストーリーに決して人事ではないエピソードを感じたからかもしれない。

    当初は「ツナグ」(辻村深月)に似ていると思ったが、あちらは死者とのつなぎ。

    こちらは自分で命を断とうとしている人間を引き戻す。

    そういう意味ではこちらのほうが建設的なのか。

    昨年、映画「北のカナリアたち」に感動したこともあるが、タイトルでもある「かなりや」という曲が、ここでも後半の物語に色を添えており、印象的。

    それにしてもこの穂高明という人も、登場人物をシンクロさせるのが巧いなと思う。

  • 誰もが秘密を抱えている。やるせなさを感じている。
    でも、それでも格好悪くてもいいから生きていこうと思える、そんな作品。
    (かといって完全な前向きな話ではないところもしっくりくる)
    一つ一つが全くの単独の話ではないのもまた面白い。

  • 舞台や登場人物は共通で4人の主人公の生活、生きることが描かれた物語。ファンタジー小説だけどあまりそうと感じないもっと日常に近い4つの話だった。
    人の優しさを感じてじんわり出来て前向きになれる本。

  • 東北(おそらく仙台)を舞台にした連作小説。
    感情をコントロールするのが苦手な母と住み単身赴任中の父を待つサチ。
    就職で縁もゆかりもない東北のスーパーに転勤中の俊二。 
    パニック障害の知代。
    情緒不安定な妻と離れて暮らしている道雄。
    各章の主人公達はギリギリのところで生活していて、友人の突然の死や薬の飲み過ぎ仕事と私生活での気を使いすぎで一線をこえます。
    しかし、主人公達は戻る途中の舟の中の会話で自分の思い込みに気がつきます。
     また、各章を続けて読むと、主人公以外の人物達の事情や気持ちも書いるので、主人公達が悪いだけじゃない。周りには自分が思いつかない悩みがある。と考えられる本です。

  • 2回目か3回目。物理は苦手なのでそこの部分で、星ひとつ減点。悩みのない人はいない。幸せってなんだろう。自分らしく生きるとは?お金を稼ぐとは?などなど考えてしまう。何かの役割を全うするために生きるのだろうか。完璧に全うなどできなくても。

  • 人生につまずいてしまった人たち、か。 
    人は一人で生きているんじゃないと思わせてくれる。

  • 現代の病…虐待・パワハラ・ストレス症候群・職業病。自ら一線を越えた者たちを連れ戻すお寺の住職と孫たち。大和尚さんはさりげなく、広海と実生ちゃんはストレートに、、。込められる対比は数えきれない…表と裏・科学と仏門・海と川・生と死など、、連れ戻された人たちは境目に気づき、やがて新たに歩みだす。時間差の連鎖を絡めた各短編は、物静かに見守る奥深さと少々のファンタジー色♪。

  • 各話、ちょっと意外な登場人物が順番に主人公になっていて、主観と客観の読み比べ面白かった。
    短編の中の登場人物は繋がっていて、そのために物語も繋がってはいるのだけど、物語の核となっている主人公の影が薄いと感じた。
    短編を跨ぐ、1冊を通しての軸が半分より手前でポキッと折れていた感じ。最初の2つが連続した話だと思っていたらいきなり他人の話が始まって、「え、なになに?」って感じで、その後特に触れるわけでもなかったので、最初のあれは何だったの?という思いが残った。
    あと、各話にいちいち裏の世界の説明が入るのが面倒くさかった。

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著者プロフィール

一九七五年、宮城県生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了。二〇〇七年『月のうた』で第二回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞。同作は、傑出した筆力を書評家などから絶賛された。他の著書に『かなりや』(ポプラ社)、『これからの誕生日』『むすびや』(双葉社)、『夜明けのカノープス』(実業之日本社)がある。

「2019年 『青と白と』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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