さらさらさん (一般書)

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591133880

感想・レビュー・書評

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  • 10篇の対談と、エッセイやコラム。
    先ほどの乙武さんやBRUTUSの編集長の糸井さん、
    「逝かない身体」の川口さん、重松清さん、
    医療政策学者の猪飼さんなどなど、年齢も職種も
    バラエティー豊かな方々との対談がおさめられています。


    どの対談も大野さんならではのスピード感に満ち溢れており、
    大野さんならではのうまいレトリックとユーモア(或いはペーソス?)
    が随所に散りばめられていて、とてもスムーズに
    読めるものではありませんでした。「困ってる人」で油断していた。


    相当勉強していらっしゃるんだな、というのが素直な感想。
    自分の語れる範疇を知っていらっしゃるというのも。
    ミャンマーでフィールドワークをしていたという
    学生時代の強烈な経験がものを言わせている感が大いにあります。ありすぎます。


    一言でまとめることは不可能なので、
    詳しいところは読んでいただくとして私が印象に残ったところをご紹介。




    ・糸井さんとの対談で出てきた「事実婚(結果論)」という概念。
    制度や社会の仕組みはあとからついてくるものだ、事実の追認という考え方。
    最初に突破してしまったら、それにあわせるしかなくなる。



    ・中島さんとの対談。
    「日本は笑いよりも他者をさげすむ嗤いになってしまっているのではないか」
    痛みを一種のスティグマに化して「嗤い」にする(p126)

    これは怖いくらいよくわかる。
    TVで見る人が生身の人間だという想像力の決定的な欠如がありますね。



    ・「リハビリの夜」の著者の熊谷さんとの対談。
    自分のニーズがわかりにくい人、テキストの弱者。
    特に固定的な障害でなく、「ゆらぎ」を持っている人たちの立場の脆弱さ。


    そもそも、この「テキストの弱者」という言い回し自体
    テキストの弱者には理解不能なのではないのか、という自家撞着。
    自分の障害やニーズ、症状を言語化する能力ではなく、
    それを言語化する言葉が社会にないという。


    ・同じく熊谷さんとの対談。
    以下引用。

    「最近、就労や教育、司法などの領域で、マクロな社会的構造が
    原因で排除されている人のことを『発達障害』というレッテルを貼って
    個人的・身体的なレベルにすり替えて処理していることがあるけれども、
    これは社会モデルと医学モデルのあいだを狙った巧妙なレトリック」

    先ほどの記事で書いた、医学モデルと社会モデルの話です。
    社会的要因を個人的要因であるかのように見せかける。
    社会性の障害という記載には大いに問題がある。


    ・医療政策学者の猪飼さんとの対談。

    コンシューマリスム(消費者主義)と医療について。
    コンシューマリスムは相互不信を根底においてしまう。
    よい医療を受けさせなければ訴えるぞ、という言説に代表される。


    ・パラダイムシフトの定義。(今までの福祉から、
    社会モデルを軸に置いた福祉への大きなシフト)

    大野さんのパラダイムシフトのイメージは「半径5メートルの細部への回帰」
    猪飼さんは、パラダイムシフトというのは次のものを提示しないといけない。
    「これは駄目だ」といってばかりではそれはshiftすることにはならない、と。


    散漫たる文章になってしまった…
    一読、いや幾読もの価値あり。

  • 明確にしにくいもの、見えにくいものを、どう捉えたらよいでしょう?
    例えば、「発達障害」といわれるものも、その1つ。
    周囲の人に「障害」が見えにくく、
    また、「発達障害者」があるという人でも、
    人それぞれ、「困っている」ことがが異なり、「障害」の内容が多様だそうです。

    私は、「障がい者」という言葉を、どうしても好きになれません。

    できるだけ使いたくないのですが、
    「発達障害」について考えるとき、
    「困っている」という状況や、その内容を、
    周囲の人に分かりやすく伝えるためには「言葉」が必要な気がしています。

    その言葉が、「発達障害」という言葉なのかもしれない。
    と考えたりしています。

    大野更紗さんの著書「さらさらさん」に収められている、
    熊谷晋一郎さんとの対談『「ゆらぐ」障害者』。

    この対談の中で、熊谷さんが、下記のような指摘をしていました。

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    振り返ってみれば、
    これまで、障害を語るときには、
    「質と量」しか言ってきませんでした。

    たとえば、「目が見えない障害」であるとか、
    「耳が聞こえない障害」であるという「質」でまず分類して、

    あとは目が「どれぐらい」見えないかとか、
    耳が「どれぐらい」聞こえないかという「量」で判定する
    というように、一人の人の中での「ゆらぎ」が十分に記述されていない。

    (中略)

    今の自立支援法では、当事者のニーズではなく、障害の「質と量」に関する判定結果が
    支援量を決めている。

    となると、「ゆらぎ」のある人が一番割りを食うでしょう。
    明らかに重度の人はお金が下りるかもしれないけど、ゆらいでいる人、軽度の障害、言語化されにくい障害や苦悩を抱えている人には、とてもとても厳しい。

    (中略)

    そもそも、生活というのは、障害のあるなしに関わらず、ゆらぐものですね。
    急用が入ったり、体調が変化したり、何をしているわけでもない待ち時間や、
    余暇が突発的に生じたりする。

    必要な支援や制度設計を考えるときに、このようなゆらぎを考慮に入れる必要があります。

    生活を「家事」「介護」「外出」など、スケジュールごとに細かく分けて、
    それに必要な支援の量を計算するというやり方で、真っ先に削られるのが、
    何をするでもなく見守りをしたり、寄り添ったりするための時間、いわば「ゆらげる時間」です。

    ゆらぎの中でこそ、意識や、言語や、イメージや、対話や、新しいアイデアが生まれるのですから、これを無視した制度設計を認めるわけにはいきません。

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    見えにくいもの、明確にしにくいものを捉えるためのキーワードが、
    「ゆらぎ」かもしれません。

    障害のある・なし関係なく、
    質とか量とかでは計れない部分、要素こそ、
    「人間らしさ」のような気がしています。

  • エッセイやら対談やら、字体や構成やイラストやら、いろんな形態で楽しめるし、文章自体は読めるけど、
    『困ってるひと』同様、彼女のなんかお嬢さん的なところ、上から目線にとれるようなところはそのまま、
    私はあまり好きではないんだな。
    それが彼女の持ち味なんでしょうが。

    乙武さんとの対談がとてもよかった。
    乙武さんの話が、だけどね。

  • エッセイや対談、手書きPOPまで
    「困ってるひと」以降あらゆる記録をまとめた1冊。

    賢さと若さが前面に押し出されて
    特に若手同士の対談は読みづらい。
    何よりフォントがバラバラで疲れた。
    統一してくれい。

    「祭りと祀り」は秀逸。

    【図書館・初読・4/17読了】

  • 出た―――――!!さらさちゃんの新刊です!
    『さらさらさん』てダレ?ってひとはデビュー作の『困ってるひと』を読みましょう。

    さらさちゃんのてんこ盛り。さらさちゃんのバイキング。さらさちゃん食べ放題状態。な一冊。
    はっきり言って、読んでもわからない話も多い。
    福祉に関する激論なんて、最初から最後までもう全然わからない。
    でも、さらさちゃんがいかに本気か、必死かということはわかる。もののたとえではなく、そうしないと「生きていけないから」。

    一冊目、『困ってるひと』でのさらさちゃんを知っているから、という信頼感で読み進むことができる。
    明日も読むのが楽しみである。

  • 対談は、読みづらい。

  • 「さらさらさん」というタイトルなのに
    なかなかさらさら読めない

    でも
    それがイイ

    大野更紗さんは「困ってるひと」で
    ご自身のことを「難病女子」と書いていたが

    彼女は本当にマルチな才能に満ち溢れていて
    というか他方向にしかも深く社会を見ていて
    それを実にさらさらといろいろなところで
    書いたり話したりしているのだけれど

    そこに私の知識の幅や深さが追いつかず
    その度に立ち止まったり
    検索したりを繰りかえす

    でも
    それがいいんだなあ

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