わが盲想 (一般書)

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  • ポプラ社 (2013年5月15日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591134573

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わが盲想 (一般書)の感想・レビュー・書評

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  • <日本より「数段広くて数段暑い国」からやってきた、ゆるすごおもしろい視覚障害者の軌跡>

    著者は、高野秀行さんの本(『移民の宴』等)に出てきた盲目のスーダン人である。これらの本を読んだ方であれば、「ああ、あの」と思われるだろうし、また、高野さんの著作を読んだことがないという方も楽しく読めるであろう1冊である。

    盲目であり、日本にはほとんど馴染みがなく、点字もいまひとつ苦手であった、1人のスーダン人大学生が、ひょんなことから日本に留学して鍼灸を学ぶことになる。一家に君臨するライオンのような父の反対を押し切って来日した青年は、さまざまな困難を乗り越え、多くの人の助けを借りて、盲学校から短大、大学へと進学し、研究者への道を歩んでいる。私生活では二女の父でもある。

    そう書くと、非常に意志強固でリッパな人物であるようなのだが、著者、アブディンは紋切り型の優等生ではない。
    短期間のうちに日本語を習得し、苦手だった点字も克服し、パソコンを使いこなし、ブラインドサッカーで活躍し、大学院への進学も果たすのだから優秀なのには違いない。だが、試験が出来ないといって泣き伏し、遠くの寮から近くの寮に引っ越したため油断して遅刻し、イスラムの戒律で禁じられていた酒を一時は嗜み、といった姿は非常に人間的である。
    ユーモアに富んだ彼には、不思議とさまざまな人が手を差し伸べる。
    中でも、最初に留学した福井の人々との交流がすばらしい。
    ホームステイ先のご主人は「おやじギャグ」の得意な人で、なんとアブディンはこの「おやじギャク」をバネに、飛躍的に日本語(特に同音異義語!)への理解を深めていくのだ。冒頭に挙げたひと言の「数段広くて数段暑い国(=スーダン)」も、アブディンが考え出したおやじギャクである。
    また、日本語習得には、民放ラジオの野球中継が非常に役立ったというのも眼から鱗だった。ゲーム展開の説明、またゲームの進行が遅いときの風景描写などというのも、なるほど、ラジオのアナウンサーに勝るものはないかもしれないと思う。

    アブディンに笑わされ、ほろりとさせられ、驚かされ、「何だ? このおもしろいスーダン人、何者!?」と思いながら、いつしか、考えさせられるのだ。
    壁を越える力とは何なのか。常識とは何か。人が何かをしようとするときの原動力とは何か。障害とは、健常とは何か。
    アブディンの眼から見た新卒者の就職活動は異様である。日本人の常識を持たない彼は、新卒で社会人にならなければならないという風潮はまるでカルト宗教だと断じる。それは事情を知らない一外国人の暴論、では済まされない説得力を持つ。

    安易なことは言えないが、常識を持たなかったり、視覚がなかったり、いわゆる「ハンディ」があることで、雑音なしにくっきりと知覚できるもの、というのもあるのかもしれない。少なくとも、思っても見なかった別の方向からの見方、というのはあるのだ。
    アブディンの「盲想」はその1つの証拠であると言えるかもしれない。

    いやいや、私のこのカタい説明では、ユルくてスゴいこの本のおもしろさは半分も伝わらない。アブディン本人が音声読み上げソフトを使って書き上げたこの本、機会があれば手に取ってみてほしい。

  • 先日、図書館の新着案内を見ていたら、この本が紹介されていた。なんせ高野秀行さんプロデュースだからね、たくさん読まれてほしいと贔屓しているのだが、よく見ると、ジャンルが「闘病記」となっている。闘病記! そ、それはないでしょう~。

    高野さんも書いていたが、まあ確かに中味が紹介しにくい本ではある。「全盲のスーダン人の若者が、縁もゆかりもない日本にやってきて、東京外大の大学院生となる現在までのことを語る」 大ざっぱに言えばこういうことなんだろうけど、普通、じゃあこんな内容じゃないかと想像するようなものとは微妙にずれている。

    そりゃあ大変だっただろうなあと誰でも思うわけだが、彼の面白いところは、「盲人であること」「外国人であること」を特別なこととして、そこを強調するわけではない点だ。もちろん、目が見えないことでの苦労は当然いろいろあるし、全く文化が違う国(しかも最初の三年は福井県にいた)での生活に戸惑いがないわけがない。

    でも、そういうことと同じ調子で、彼は一人の若者としての悩みや喜びを率直に語っていて、読んでいるとつい、彼が目が見えないことを忘れてしまう。日本行きに反対していた厳格な父との駆け引き、寂しくて彼女がほしい気持ち、勉強のしんどさ、日本へ来て知ったプロ野球の面白さなどなど、得意のダジャレをまじえつつ披露されるエピソードがとても面白い。

    まったく「普通ではない」経歴の持ち主が、いたって自然な明るさで普通におしゃべりをしている感じ、とでも言うのかな。「感動」方面に行かないところがいい。でもまさにその点が、高野さんの期待したようにどーんと売れるというわけにはいかない理由でもあると思うよ。みんなお涙頂戴が好きだもの。そういうのがキライな方におすすめ。

  • とにかく日本語が堪能な方です。
    語彙から文章から、そのすごさが伝わってくると思います。

    スーダンの人が身近に感じられることがないので、
    この、モハメドさんはわたしにとってスーダン代表のようになりました。

    これだけ日本に住んでいるので、きっとお会いしてお話したりすれば、
    きっと日本人ぽいところも感じられるのかもしれませんが、読み進めていくと思ったよりもスーダン人を感じる部分がたくさんあって、
    やっぱり外国の方だなーと苦笑する部分もありました。

    ふと忘れてしまいがちですが、盲目で、慣れない環境で生活しているということを思わず忘れそうになるくらい、この本ではモハメドさんの言葉がいきいきしています。

    もうちょっと読んでみたかったことが書かれてなかったので☆☆☆

    追記:
    スーダンでは近親での結婚がけっこう当たり前らしく、その影響でモハメドさんも視力に難を受けたとのこと。
    それを受け入れる意識にカルチャーショックだったのをふと思い出した。

  • 日本の生活習慣、家庭、学校、さらにはサラリーマンの日常や就職活動に至るまで、この社会の外側から感じたこの社会の姿が、とても新鮮な作品。
    普段この社会で暮らす自分たちに着いている、先入観や思い込みを持たず、ありのままの日本を、視覚以外の感覚すべてで感じ取っている著者の、感性の結晶のようなエッセイです。

    とにかく、緊張したり、わくわくしたり、驚いたり、楽しかったり。著者の体験を自分たちも体感できる、臨場感に満ちています!

  • 日本語が分からないまま鍼灸を学びに来日した全盲スーダン人男性の、15年間を綴ったエッセイ。フィクションならば特徴が多すぎてかえってキャラ付けに困るところだが、文章はとても軽妙。
    父親との衝突、外国語を学ぶ苦労、進路が決まらない閉塞感など、どこの若者にも共通する感情が描かれている。その中にもやはり国や文化の違いを感じるところはあり、たとえば父親を説得するのに父親の友人に話をつけてもらうこと、志願兵になって戦死した同級生のことを思う場面など。
    一方で自分の靴紐が結べないコンプレックス、漢字学習では割り箸で粘土に書いて形を覚えるなど、目が見えない人ならではの苦労話もある。そもそも日本語自体を知らない状態から日本語の点字を学ぶのは大変だろう…と思ったら、点字テキストには漢字がないので外国人にはとっつきやすかったらしい。
    友人としてさらっと名前が出てくるのが「謎の独立国家ソマリランド」の高野秀行というのが凄い。

  • 著者は日本で暮らすスーダン人。
    目が見えない彼が、なぜ日本に来ることになり、どんな暮らしをしてきたのか。


    目が見えないということは、不便ではあるだろう。
    だけど、私たちが思っているよりもずっと「普通」なのかもしれない。
    見えている私たちは、彼らのことを過剰に「(何でも)できない」と想像してしまっているのかもしれない。

  • 日本と全く縁のないアフリカ出身の盲人が、日本語でこんな本を書けるようになるとは。

    感じを習うとか、きっとその時々は大変だったことだろうと思うが、作者一流のユーモアでしばしば笑ってしまう。

    続編が出たら、きっと読んでしまうと思う。

  • 気さくな人柄が文面からも感じられました。縁ってすごいなぁと思います。また、声色で感情を把握する著者にとっても、日本の就活の様子や、社会人になった友人の変化はとても奇妙な感じなのだな、と思いました。カルト宗教、と称していたのが印象に残りました。

    スーダンでは思春期の若者は親に反抗して口をきかなくなるというようなことはなく、むしろ饒舌になり、議論をふっかけるようになる、という話も面白いなぁと思いました。

  • いろんな人におすすめしたい!
    私の知らない世界を教えてもらった。
    知ってると思ってた自分の傲慢さを思い知らされた。
    想像もつかない苦労をされたんだろうけどそれを感じさせないユーモア。
    飾り気のない率直な文章。
    最後は電車の中で泣きそうになりました。

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