わが盲想 (一般書)

  • 248人登録
  • 3.87評価
    • (24)
    • (42)
    • (32)
    • (1)
    • (1)
  • 45レビュー
  • ポプラ社 (2013年5月15日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591134573

わが盲想 (一般書)の感想・レビュー・書評

  • <日本より「数段広くて数段暑い国」からやってきた、ゆるすごおもしろい視覚障害者の軌跡>

    著者は、高野秀行さんの本(『移民の宴』等)に出てきた盲目のスーダン人である。これらの本を読んだ方であれば、「ああ、あの」と思われるだろうし、また、高野さんの著作を読んだことがないという方も楽しく読めるであろう1冊である。

    盲目であり、日本にはほとんど馴染みがなく、点字もいまひとつ苦手であった、1人のスーダン人大学生が、ひょんなことから日本に留学して鍼灸を学ぶことになる。一家に君臨するライオンのような父の反対を押し切って来日した青年は、さまざまな困難を乗り越え、多くの人の助けを借りて、盲学校から短大、大学へと進学し、研究者への道を歩んでいる。私生活では二女の父でもある。

    そう書くと、非常に意志強固でリッパな人物であるようなのだが、著者、アブディンは紋切り型の優等生ではない。
    短期間のうちに日本語を習得し、苦手だった点字も克服し、パソコンを使いこなし、ブラインドサッカーで活躍し、大学院への進学も果たすのだから優秀なのには違いない。だが、試験が出来ないといって泣き伏し、遠くの寮から近くの寮に引っ越したため油断して遅刻し、イスラムの戒律で禁じられていた酒を一時は嗜み、といった姿は非常に人間的である。
    ユーモアに富んだ彼には、不思議とさまざまな人が手を差し伸べる。
    中でも、最初に留学した福井の人々との交流がすばらしい。
    ホームステイ先のご主人は「おやじギャグ」の得意な人で、なんとアブディンはこの「おやじギャク」をバネに、飛躍的に日本語(特に同音異義語!)への理解を深めていくのだ。冒頭に挙げたひと言の「数段広くて数段暑い国(=スーダン)」も、アブディンが考え出したおやじギャクである。
    また、日本語習得には、民放ラジオの野球中継が非常に役立ったというのも眼から鱗だった。ゲーム展開の説明、またゲームの進行が遅いときの風景描写などというのも、なるほど、ラジオのアナウンサーに勝るものはないかもしれないと思う。

    アブディンに笑わされ、ほろりとさせられ、驚かされ、「何だ? このおもしろいスーダン人、何者!?」と思いながら、いつしか、考えさせられるのだ。
    壁を越える力とは何なのか。常識とは何か。人が何かをしようとするときの原動力とは何か。障害とは、健常とは何か。
    アブディンの眼から見た新卒者の就職活動は異様である。日本人の常識を持たない彼は、新卒で社会人にならなければならないという風潮はまるでカルト宗教だと断じる。それは事情を知らない一外国人の暴論、では済まされない説得力を持つ。

    安易なことは言えないが、常識を持たなかったり、視覚がなかったり、いわゆる「ハンディ」があることで、雑音なしにくっきりと知覚できるもの、というのもあるのかもしれない。少なくとも、思っても見なかった別の方向からの見方、というのはあるのだ。
    アブディンの「盲想」はその1つの証拠であると言えるかもしれない。

    いやいや、私のこのカタい説明では、ユルくてスゴいこの本のおもしろさは半分も伝わらない。アブディン本人が音声読み上げソフトを使って書き上げたこの本、機会があれば手に取ってみてほしい。

  • 先日、図書館の新着案内を見ていたら、この本が紹介されていた。なんせ高野秀行さんプロデュースだからね、たくさん読まれてほしいと贔屓しているのだが、よく見ると、ジャンルが「闘病記」となっている。闘病記! そ、それはないでしょう~。

    高野さんも書いていたが、まあ確かに中味が紹介しにくい本ではある。「全盲のスーダン人の若者が、縁もゆかりもない日本にやってきて、東京外大の大学院生となる現在までのことを語る」 大ざっぱに言えばこういうことなんだろうけど、普通、じゃあこんな内容じゃないかと想像するようなものとは微妙にずれている。

    そりゃあ大変だっただろうなあと誰でも思うわけだが、彼の面白いところは、「盲人であること」「外国人であること」を特別なこととして、そこを強調するわけではない点だ。もちろん、目が見えないことでの苦労は当然いろいろあるし、全く文化が違う国(しかも最初の三年は福井県にいた)での生活に戸惑いがないわけがない。

    でも、そういうことと同じ調子で、彼は一人の若者としての悩みや喜びを率直に語っていて、読んでいるとつい、彼が目が見えないことを忘れてしまう。日本行きに反対していた厳格な父との駆け引き、寂しくて彼女がほしい気持ち、勉強のしんどさ、日本へ来て知ったプロ野球の面白さなどなど、得意のダジャレをまじえつつ披露されるエピソードがとても面白い。

    まったく「普通ではない」経歴の持ち主が、いたって自然な明るさで普通におしゃべりをしている感じ、とでも言うのかな。「感動」方面に行かないところがいい。でもまさにその点が、高野さんの期待したようにどーんと売れるというわけにはいかない理由でもあると思うよ。みんなお涙頂戴が好きだもの。そういうのがキライな方におすすめ。

  • とにかく日本語が堪能な方です。
    語彙から文章から、そのすごさが伝わってくると思います。

    スーダンの人が身近に感じられることがないので、
    この、モハメドさんはわたしにとってスーダン代表のようになりました。

    これだけ日本に住んでいるので、きっとお会いしてお話したりすれば、
    きっと日本人ぽいところも感じられるのかもしれませんが、読み進めていくと思ったよりもスーダン人を感じる部分がたくさんあって、
    やっぱり外国の方だなーと苦笑する部分もありました。

    ふと忘れてしまいがちですが、盲目で、慣れない環境で生活しているということを思わず忘れそうになるくらい、この本ではモハメドさんの言葉がいきいきしています。

    もうちょっと読んでみたかったことが書かれてなかったので☆☆☆

    追記:
    スーダンでは近親での結婚がけっこう当たり前らしく、その影響でモハメドさんも視力に難を受けたとのこと。
    それを受け入れる意識にカルチャーショックだったのをふと思い出した。

  • 日本の生活習慣、家庭、学校、さらにはサラリーマンの日常や就職活動に至るまで、この社会の外側から感じたこの社会の姿が、とても新鮮な作品。
    普段この社会で暮らす自分たちに着いている、先入観や思い込みを持たず、ありのままの日本を、視覚以外の感覚すべてで感じ取っている著者の、感性の結晶のようなエッセイです。

    とにかく、緊張したり、わくわくしたり、驚いたり、楽しかったり。著者の体験を自分たちも体感できる、臨場感に満ちています!

  • 日本と全く縁のないアフリカ出身の盲人が、日本語でこんな本を書けるようになるとは。

    感じを習うとか、きっとその時々は大変だったことだろうと思うが、作者一流のユーモアでしばしば笑ってしまう。

    続編が出たら、きっと読んでしまうと思う。

  • 気さくな人柄が文面からも感じられました。縁ってすごいなぁと思います。また、声色で感情を把握する著者にとっても、日本の就活の様子や、社会人になった友人の変化はとても奇妙な感じなのだな、と思いました。カルト宗教、と称していたのが印象に残りました。

    スーダンでは思春期の若者は親に反抗して口をきかなくなるというようなことはなく、むしろ饒舌になり、議論をふっかけるようになる、という話も面白いなぁと思いました。

  • いろんな人におすすめしたい!
    私の知らない世界を教えてもらった。
    知ってると思ってた自分の傲慢さを思い知らされた。
    想像もつかない苦労をされたんだろうけどそれを感じさせないユーモア。
    飾り気のない率直な文章。
    最後は電車の中で泣きそうになりました。

  • 鍼灸を学ぶために来日、けっきょく外語大で国際政治の研究をすることになったスーダン人の著者による話題のエッセイ。さくさく読めすぎて、著者が目が見えず外国人であることをつい忘れそうになりますが、異国で15年間、ひとりで道を切り開いてきたそのバイタリティはすごい。どなたかも感想で書いていましたが、こういう人に「ここに来てよかった」と言ってもらえる日本であり続けたいですね。プロデュースした高野さんえらい。ユーモアにまぶしつつ、平和で民主主義があるはずの日本で学生が政治談議を避けたり、会社人間というカルトにはまっている状況をちくりと批判しているあたりもナイス。それにしてもスーダンの情勢が落ち着くといいですが。彼の本業の研究も読んでみたいもの。

  • 新聞広告で見ていてすごーく気になっていた本が、図書館にあって飛びついた!
    盲人のスーダン人の著者様が、日本語も分からないまま日本へ留学に来て、15年。勉強したりその間結婚したりと、ユーモア溢れる日本語で綴られていてびっくり。
    本当は日本人が中の人で、文章書いているんじゃない?と思いたくなるほど楽しいエッセイでした。続編あるのかな?あったら読みたいです。

  • スーダンからやってきた全盲の著書の来日直前前から現在までを自動音声ソフトの力を借りながら執筆した自伝的エッセイ(?)です。他言語の方と思えない文章が魅力的です。中身も信じがたいエピソード満載です。

  • 三十代半ばのスーダン人~1978年,スーダンの首都ハルツームに生まれる。生まれた時からの弱視で,12歳のときに視力を失う。19歳のとき来日,福井県立盲学校で点字や鍼灸を学ぶ。その後,母国スーダンの紛争問題と平和について学びたいという思いから,東京外国語大学に入学,現在同大学院で研究を行っている。この世で最もうまいと思っている食べ物は寿司。広島カープの大ファンで,好きな作家は夏目漱石と三浦綾子。ブラインドサッカー(視覚障害者サッカー)の選手としても活躍しており,「たまハッサーズ」のストライカーとして日本選手権で優勝を3回経験している。~  大学の教員の職を探していて,それがなかなか見つからず,結局就職できなかったという状態で終わったテレビ番組だったなぁ

  • スーダンから来た盲目の青年のエッセイ。日本語もわからない状態で点字から勉強するってすごい。しかも鍼灸の勉強って。ものすごい大変なことだけど人間やればできるんだなぁと思った。奥さんとの話もよかった。
    今後、どうやってスーダンや日本に関わっていくのか応援したい。

  • ブログに掲載しました。
    http://boketen.seesaa.net/article/392186800.html
    困難にも、ほどがある

    困難を克服して生き延びた話は、人をひきつけずにはおかない。
    戦火、差別、貧困、難病、探検…それらと必死で闘った本人からのレポートは、数多い。
    べつにそれらと較べる必要はないが、本書の著者アブディン青年の克服した困難は、ちょっと類例がない。。

    世界の失敗国家の上位に常にランクされているスーダンに生まれ、弱視から全盲へと進行する病をかかえて生きている少年が、19歳にして日本に留学し、鍼灸を学ぶ。
    もう、設定からして「ありえないだろう」と思わされる。

  • 面白い!
    本当に盲目?って聞きたくなる程、前向きでアクティブ!
    自分も頑張らないと。と思える本。

  • 私と同じ目の病気のスーダン人アブディンさんのお話。こんなにも勇気と好奇心があれば、失明するのも全然怖くない!と思わせてくれる素晴らしい本でした。
    ここまで外国語を自由自在に操れることもすごいし、ポジティブオーラ全開なところも魅力的だし、だけどちょっとだらしないところもあったりする彼の人柄も素敵!

  •  数ページ読んだところで、スーダンのことがもっと知りたくなり、中程まで進むと表紙の著者(最初は見知らぬ外人のおっさんにしか見えなかった写真)に親しみがわいてきました。さらに目次をあまり見ずに読んでいったので、後半の展開にはびっくり。ぜひ、2冊目、3冊目と日本語で本を出して欲しいものです!

     先日読んだルイ・ブライユを紹介した本は、イラスト部分に点字の間違いがいくつかあってがっかりしたのですが、こちらはもちろん大丈夫。中のページにちゃんと凹凸のある点字(墨字も併記)で、タイトル・著者名などが記されています。

  • とても面白かったです。
    この人は本当に海外の人なのか?!と疑いたくなるほどのユーモアたっぷりの文章で読みやすかったです。
    目の見えない状態で単身で名前しか知らないような異国の地に移り住む決意や、聞いたこともない言語を学び、大学院にまで進学してしまうんだから凄いよなぁ…でもところどころで表れるアブディンさんのダメ人間っぷりに親しみを感じます。そこがいいです。
    スーダンでは親戚同士の結婚が多いため障害をもって生まれる子が多いなんて全く知らなかった。日本と遠く離れたスーダンを考えるきっかけになってくれたアブディンさんに感謝。

  • 2014/01/03
    アブディンさんのバイタリティと努力と、稀有な人生が垣間見れる作品

  • おもしろいです。
    スーダンからきた弱視からどんどん視力がなくなっていった、男性のエッセイ。
    明るく、鋭く、書かれています。
    学生の就職活動のこと、タクシーの乗車拒否のことなど。
    日本を気に入ってくれてありがとうっていいたくなる、エッセイでした。

  • エッセーの中ではすきなやつ。

  • 1978年スーダンの首都ハムツール生まれで盲目のモハメド・オマル・アブディンさんが父親(ライオン)の反対をかわし19歳で来日するいきさつやら福井の盲学校生活での三ヶ国語(日本語、福井弁、東洋医学の専門用語)習得、筑波技術短期大学での情報処理の勉強、東京外語大での国際政治などなど滞在約16年の日本生活記。

    盲目のアブディンさんが感じた日本、日本語習得、などなどがうますぎる日本語でつづられている。音声読み上げソフトで書かれた。

    スーダンのいう国の事情
    盲目など障害を持った人が多いという事情
    イスラム教の家庭の父と母
    盲目用の自転車
    スキー
    ブラインドサッカー
    おやじギャグ

    あまりにすべてのことをゆるやかに受けとめ、自然にクリアしているアブディンさんに拍手
    本当は大変なことだと思われることもアブディンさんにかかるとなんだか楽しそう。
    そういうふうに生きていかれるといいな~



    ポプラビーチ連載
    http://www.poplarbeech.com/

  • 図書館で数人の予約待ちをしていたのが届く。私のうしろにも数人の予約待ち。
    もとは、ポプラビーチで連載されていたものらしい。ポプラビーチ発の本は、なかなかおもしろい。有名なのは大野更紗さんの『困ってるひと』とか。

    この『わが盲想』の著者、モハメド・オマル・アブディンさんは、スーダン生まれ。本の時点で35歳のおっさん。19歳で来日し、福井の盲学校で学び、その後いろいろあって東京外語大へ。いまもそこで研究を続けてはるらしい。

    この本は、音声読み上げソフトを使って、アブディンさん自身が書いたもの。漢字変換がちょっとへんだったところは、編集者が指摘して直したりもしたというが、母語が日本語でない人が、しかも漢字圏の出身ではない人が、そして見えない人が、的確に漢字を綴っていることに、すげーと思う。

    『We』で、みんぱくの広瀬浩二郎さんにインタビューをもうしこんだとき、初めていただいたメールで、私の姓名がきちんと漢字変換されていて、ほんとうに驚いた。見える人からのメールでも違う漢字で変換されることがしょっちゅうあるので、読み上げソフトでどのように漢字を選ぶのか、そしてたとえば「冠」という字はどう説明されるのかと思った。

    弱視だったのが12歳で視力を失うなど、アブディンさんは、ちょっと広瀬さんに似ている。おやじギャグをかましまくるらしいところも似ている。この本の章タイトルも、最初がトライ(try)と渡来をかけてあったり、とちゅうでは「酒って避けては通れない道」とか、ダジャレにまみれている。スーダンの広瀬浩二郎か?という感じである。本のタイトルも、『わが闘争』ならぬ"盲想"だ。

    スーダンはどんな国と訊かれたら「スーダンは日本より数段広くて、数段暑い国だ」と答えたり、スーダンの位置を訊かれて「ヨルダンという国があるでしょ?その隣にヒルダンがあって、その真南にアサダンとスーダンがある」と言ってみたり。

    耳から字を学ぶ、というのは、音で言葉を扱うということで、同音の言葉を使い分けていくことに長けるのかなと思った。アブディンさんもこう書いている。

    ▼日本語は子音が少ないだけに、作れる音のパターンも少ない。すると、違う言葉を同じように発音することが多くなる。いわゆる「同音異義語」というやつだ。…同じ音の言葉がたくさんあるので、これは漢字を見て判別するしかなくなる。しかし、漢字を見ることができないぼくは、おやじギャグを使って同音異義語を覚えていった。ぼくにとって、音の似た言葉を見つけて言葉遊びをするのは、見える人に比べて日常的なことなので、すごく簡単にでき、それを楽しむこともできた。(p.177)

    日本語がまったく分からないで、19歳で来日したアブディンさん。ご苦労も多かったと思うし、苦悩の日々もこの本には綴られているけれど、新たなことに出会う楽しみ、喜びが明るく書かれているのがこの本の魅力。

    ▼この15年間の日本生活は、新しい発見と、自らの再発見に満ちたものでした。その間、何度となく、ぼくは悲しみと歓喜の涙を流しました。目標を失いかけて、ふらふら過ごす日々も少なくありませんでした。(p.272)

    そして、そんなふらふら学生だったアブディンさんは、結婚し、二人の子どもがうまれた。
    ▼この本は、ぼくの盲想をフルに働かせて書いて来ましたが、今後は日本語のわからない妻、見えないぼく、子ども目線の娘二人というユニークな四人体制で、日本という面白世界を探索していきたいと思います。(p.275)

    スーダンにいたころ、日本へ留学するという話をもちだしたときの、ライオンのような父との交渉風景も、かなり笑える。だが、スーダンの政情は笑えることばかりではなくて、アブディンさんの友人の多くが10代後半... 続きを読む

  • いつか話してみたいと思う。

  • スーダンからやってきた盲人留学生のユーモアあふれる日本生活奮闘記。オヤジギャグが同音異義語の習得に役立つとは思いませんでした^o^ 
    目の見えない人がどう生活していくのか、スーダンという国の状況など、どきっとする状況が見えつつ、ユーモラスな文章で楽しく読めました♪

全45件中 1 - 25件を表示

わが盲想 (一般書)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

わが盲想 (一般書)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

わが盲想 (一般書)を本棚に「積読」で登録しているひと

ツイートする