あずかりやさん (一般書)

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著者 : 大山淳子
  • ポプラ社 (2013年5月8日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591134672

あずかりやさん (一般書)の感想・レビュー・書評

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  • 素敵だと思いませんか?
    一日たった100円で、どんなものでもあずかってくれる、あずかりやさん。

    0点のテストだろうが、高級自転車だろうが、
    なにやら物騒なものが入っていそうな包みだろうが
    事情は一切詮索せず、平等に、大切に、期日まであずかってくれる。
    約束の期日を過ぎたものは、あずかりやさんのものとなる、という約束なので
    中には捨てる手間や処理費用を浮かすため、一日分の100円だけ払って
    粗大ゴミを押し付ける不届きなお客もいるというのに
    明らかにそうとわかる品物でも、盲目の店主は涼やかな笑顔で受け入れるのです。

    仄暗い部屋で、点訳された本を静かに指先で辿りながらお客を待つ、店主の桐島透。
    店先で揺れるのれん、お客が持ち込んだ自転車、ガラスのショーケース、猫など
    彼を見守るモノや動物の視点から語られる、彼の佇まいの美しいことったら!
    読んでいる間ずっと、私の脳内では店主=綾野剛さんで映像化されていました。

    母猫から、瀕死の状態であずけられた子猫も
    手の平で大切に温め、育てあげたあずかりやさん。
    ずっと彼に寄り添って生きてきたその猫が年老いて
    あずかりやさんと同じように光を失ったとき。
    猫とあずかりやさんは初めて、同じ景色を見るのです。

    『コンビニたそがれ堂』や『ぶたぶたさん』、
    『東京バンドワゴン』シリーズがお好きな方は、ぜひ!
    ひとりと一匹が見た、奇跡のような愛おしい景色を一緒に眺めてください。

  • 商店街にある小さな店、そこは‥
    何でも預かってくれる「あずかりやさん」の物語。
    ほのぼのと切ない、心休まる空間での出来事です。

    明日町こんぺいとう商店街の西のはじにある目立たない店。
    藍染めのシンプルなのれんに、やさしい「さとう」の文字が抜かれているだけ。
    空っぽのガラスケースの向こうの薄暗い部屋で、本を読んでいるのは店主の桐島透。
    目が見えない青年の物静かなたたずまい。

    一日百円で、何でも預かってくれる。
    料金は前払いで、取りに来なければ店のものとなり、使えるものは使う、売れるものは売る、処分するしかないものは処分するという。
    どうするか決めかねるものや、家において置けない事情があるものを預けに来る人たち。

    点字の本を届けてくれる相沢さん。
    紙を預けていく小学生の女の子。
    何年も前に、事件を起こした危険なものを預けていった男。
    人に託されたかばんを持ってきた少年。
    大事な書類を預けていく執事。
    高性能な自転車とお古のあずき色のママチャリを交互に預けていく男の子。
    自転車の気持ちが泣ける‥!

    視点がほとんど人間でなく、のれんに自転車、ガラスケース、猫と変わっていき、これが過不足なく描かれているところは上手いですね。
    そのために店主の家庭の事情もなかなかはっきりはしないのですが、物と人との関わり方に感じるものがありました。
    一人暮らしの静謐さと、おだやかな彼の淡々とした寛大さ、心がまれに揺れ動く様子、瀕死の子猫を育てた懸命さも、しんみりと心に入ってきます。

    店主の手のひらで息を吹き返し、そのとき生まれたと思っている白い猫。
    「社長」という名前を貰うが、ポーチドエッグがいいと思っている可愛さ。
    猫の語りは一番わかるところで、そうねえ、そうだよねえ‥と陽だまりにいる猫ちゃんに、微笑みかけたい気持ちに。

    テイストとしては「コンビニたそがれ堂」が近いかな? 「薬指の標本」というよりは。
    もっと言葉少なく抑えた筆致ですが、ほのぼのと心温まります。

  • 誰しも身の回りの物にまつわる思い出は、一つ二つはあるでしょう。
    若いころ、恋人に買ってもらった宝石なんかは、その場面とともに
    忘れ得ぬ記憶として残ります。
    引き出しの奥を探ると、長い間眠っていた記憶とともに、何でもない
    物が出てくることってありますよね。

    明日街こんぺいとう商店街の外れにたつお店、古い「さとう」ののれん
    を営業の合図に、今日も様々な人が思いの詰まった物を預けていき
    ます。あずかり料は1日百円、受け取りに来ない物はお店の物に。
    目の見えない店長は、見えないが故に預かる物も、預ける人の秘密も、
    大切に保管していきます。

    お話しの最初に出てくる少女。学校へ行く途中に預けた1枚の紙。はて
    何か?と思いましたが、お話しの後半で大人になった少女がお店を再
    び訪れるとき、なるほどと理解しました。
    心の底にいつも引っ掛かっている想い、前に進もうとするときに何かを
    変えたい。そんな気持ちが預け物に託されていきます。

    物語全体の雰囲気もほんわりとしています。時々個性を持った”物”が
    物語ったり、のれんをサラリと吹き抜ける風のようにお話が進んでいき
    ます。

    さて、自分の周りを見渡すとどうだろう。何度も思い出す過去の失敗、
    苦い思い出、物ではないが預けっぱなしにして流してくれたら少しは
    楽になるでしょうか。

  • 盲目の青年が営む、一日百円でどんな物でも預かる「あずかりやさん」。第一話はアンソロジー「明日町こんぺいとう商店街」で読み、その作品世界にすっかり夢中になったので、一冊まるまる「あずかりやさん」ワールドを堪能できるのが嬉しくて!
    預かるものは実に様々。店主はあえて、どうして預けるのかといった理由を一切詮索しない。
    「あずかりやさんを訪れる人間は、大なり小なりなんらかの問題をかかえており、それを棚上げにするために来るわけですから、好奇心を封印した店主のやり方は正解であり、これこそが誠意あふれるサービスといえます」
    だからこそ生まれるいくつものドラマはしんみりするけどほのかにあたたかい。語り手が物や動物というのも、店主の真摯さを際立たせているように感じる。
    一話完結ものかと思いきや、意外な形で登場人物やエピソードがリンクしていてびっくりする(思わずページを遡って読み返したり)。一方で、もっと膨らませて欲しかったエピソードもあり…あえて読者の想像に委ねてるのかなとも思うけど、自分の解釈に自信のない部分もあり、若干物足りなさを感じたかな。
    一番好きなのは「ミスター・クリスティ」。素敵な自転車が出てくるのだけれど、この自転車を巡るストーリーが何とも切なくって…。高校の入学祝に、離婚した父に買ってもらった自転車を誇らしく思いながらも、そのことを母に言い出せない男子高校生。それぞれが大切な相手の幸せを願っているはずなのに、うまくかみ合わなくて…悩んだ末であろう結論に胸がぎゅっと締め付けられました。
    スピンオフでいいから、また「あずかりやさん」シリーズが読みたいな。店主の透さん、佇まいが素敵で、静かなあたたかさが印象的なキャラクターです。

  • 毎月購入している「asta」で「明日町こんぺいとう商店街」
    にあるお店の連作の1つとして掲載されていた「あずかりやさん」。

    大好きなお話だったので、単行本化されてうれしい!!
    「asta」に掲載されていた1話目を始まりに
    あずかりやさんの4話の新作とエピローグで成り立つ連作短編。

    店先の「のれん」やガラスのショーケース、自転車、オルゴール
    と、人ではなく物からの視点で多くが語られる物語。

    明日町こんぺいとう商店街の西のはじにある
    のれんには藍染にしろぬきで「さとう」と優しい字で
    書かれてあるけど、本当のお店の名前は「桐島」。

    和菓子屋さんだった頃のそのままを残しているあずかりやさん。
    ガラスケースの向こうに小上がりがあり、その六畳間の片隅の
    文机で大きな本を開いて読んでいる店主。
    店主の横に置かれた、ふっくらとした座布団の上には白い猫の「社長」。

    生まれてすぐ死の淵にいた猫の「社長」。
    その社長を手でくるみ、温め、店主の手のひらから
    花のつぼみをひらくようにして生まれた
    こんぺいとう生まれ、こんぺいとう育ちの社長。
    あだ名は「ポーチドエッグ」。

    1日百円でどんなものでも預かってくれる「あずかりや」さん。
    聞かれるのは預かる日にちとナマエだけ。
    理由や中身、その人の人となりは目の見えない店主の
    あずかり知らぬところで、商売が続いている理由の1つ。
    純粋に預かることを仕事としている。
    期限が過ぎたものは、売れるものは売り、使えるものは使い、
    処分すべきものは処分する。

    あずかりやさんにやって来る人たちは
    大なり小なりなんらかの問題をかかえ、それを棚上げするために預けにくる。

    預けたものを取りに来る人、来ない人。
    戻るも戻らないもその人の意思で、店主はただただ待つのが仕事。
    いつまでも変わらず待ってくれている、
    「あずかりやさん」はみんなの帰る場所。

    「星の王子様」の本の中で宇宙旅行をし、
    社長と一緒に暗闇に美しく幸せな光を見た店主。
    最後に吹いた風が、店主と社長にとって幸せな風だと信じたい。

  • 明日町こんぺいとう商店街の西のはじにある「あずかりやさん」
    元は和菓子屋だった藍染ののれんには、白抜きで「さとう」と書かれているけれど、屋号ではない。
    1日100円で何でもあずかってくれる。
    店主は、桐島透。
    静かなたたずまいで、点字の本を読んでいる。

    こんぺいとうという商店街の名前、(アンソロジーだったそうですが)
    「星の王子さま」の表紙の絵には、黄色いこんぺいとうのような星が散っているのを思い出す。
    店主は目が見えないけれど、目が見えないからこそ見えるものもあり、しかし万能ではないから、目が見えないゆえに分らないこともある。
    光は差さないし、孤独だけれども、静かであたたかく、しあわせな世界に生きているらしい。
    この本の中にも「星の王子さま」の本が出てくるが、作品自体がそれをなぞっている部分もあるかもしれない。

    登場するお客さんたちは、思いつめた表情で(見えないけれど、多分)のれんをくぐる。
    そして、店主の人柄に遇って、気持ちが落ち着いていくのだ。

    剣呑なものを預けに来た人や、預ける人を探している人。
    人が預けたものを知りたい人。
    風を感じて通りを走りたい自転車や、店主の手のひらから生まれた猫…
    少しの不思議があって、でもみんな、落ち着くところに落ち着く。
    店主にもしあわせになってほしいと願います。

    あずかりやさん/ミスター・クリスティー/トロイメライ/星と王子さま/店主の恋/エピローグ

  • 盲目の店主が営む「あずかりやさん」が舞台の物語。
    どんなものでも1日100円で預かってくれる不思議なお店です。
    物語の語り手が店主ではなく、物だったり猫だったりで面白い。
    店主以外の視点で描かれることで、店主の穏やかで誠実な人柄が引き立っているように思います。
    様々な事情を抱えた人々が持ち込む預け物の背景やエピソード。
    「ミスター・クリスティ」が特に良かったです。
    児童文学のようなふんわりとした優しさを感じさせる反面、切なさやほろ苦さをも内包していて、じんわりと心に響く物語でした。
    とても良かったです。

  • 目が不自由な店主が経営する1日100円でなんでもあずかる「あずかりや」
    店主の存在感もさることながら、のれん、ガラスケース
    自転車、白猫の社長の視点からの語りが実にユニーク。
    児童文学のように、温かみのある優しい文章に引き込まれていつの間にか読んでしまった。

  • 泣いた 電車で読んでて、危なかった

  • 先に「明日町こんぺいとう商店街」を読んでいて
    続きがあればいいな…と思っていたらこんなところに
    あったとは(驚喜)
    トロイメライが一番よかったです(^^)
    若干最後の方が急ぎ足かなぁ?と思わないでもないですが
    この商店街を舞台にした作品、また読みたいです。

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