(003)世界の美しさをひとつでも多く見つけたい (ポプラ新書)

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591136324

感想・レビュー・書評

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  • 作家になりたい、ルポタージュを書きたい、と石井さんが思うようになった生い立ち。
    本を出すための行動、海外への取材。出版後の反響。
    海外だけではなく、東日本大震災で被災した地域を取材したときのこと。本を書いて、読んだ人の気持ちを動かすということ。

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    石井さんのコンプレックスは成城育ちということらしい。お金持ちなんでしょ、ボンボンなんでしょ、という偏見が嫌だったらしい。お金持ち=生意気というレッテルを意識す過ぎるほどだった、とのこと。
    石井さんのルポタージュは何冊か読んでいるが、石井さん自身のことはまったく知らなかった。
    石井さんは尊敬できる人だ。リスペクト。

    インドネシアの歌うストリートチルドレンについての話が印象的だった。

    路上で貧しい暮らしをしながら、歌う子どもたち。かつて、同じように路上で上手に歌っていた人がスカウトされてプロの歌手になって、大金持ちになったらしい。彼らもスカウトされて成功する未来を夢見ている。
    しかし、レコード屋の店主は、路上からスカウトされた人なんていないという。
    すべてはストリートチルドレンたちの妄想。希望なんてない。ありもしない希望を妄想のなかに見出していた。
    それを石井さんは「小さな神様」と呼んでいた。
    生きていくためには希望がなくちゃならない。もし希望がないなら無理やり「小さな神様」を作って、希望を持つしかない。

  • 貧困を主なテーマにデビューしてはや14年。物乞う仏陀を読んだ最初の衝撃は今でも思い出せます。
    自分から現地の人々に立ち交って、泥と汗にまみれて取材するスタイルの出来たいきさつや、子供の頃から今に至るまでのコンプレックスるや苦しみ、とことんまで自分を追い込んで、精神的に崩壊しそうになりながら取材したあらゆる苦しみの形。そんな貧困の中から生まれる優しい光を誰かに伝えたいという使命感が胸を打ちます。打たれ過ぎてあばらが折れるのではないかと思うほどでした。
    印象的だったのは、どんな境遇にあっても、誰の胸の中にもある「小さな神様」「小さな物語」の存在でした。本当に神に祈るわけではなく、どんなに困窮していても、心の底にある良心や希望の事を指しています。
    昔から、何故こんなに苦しい事ばかり取材するのだろうか。やはりてっとり早く話題になりたいからなのか?と思った事もありました。でもこの本を読んで、心の隅に巣食っていたそんな疑問は雲散霧消です。彼の視線を信じる事が出来、世の中のどんな絶望的な状態からも光を見つけ出すための指針となる素晴らしい本でした。

  • 千葉さんと、赤ちゃんを亡くした夫妻との再会。両者をつなげた石井さんの本の力。
    現場を体験し、当事者となった責任。
    小さな神様、小さな物語が誰にでもある。
    12歳の自分ならどう言うか。
    自分の恥ずかしい部分も出さなくては。

    題名にふさわしい内容。これからも石井さんの本をたくさん読みたい。

  • スラム貧困街や被災地など、文明も社会保障もない本能むき出しの人間が生きる場所を取材し、住人たちの声を書き続けるライターの自伝。

    著者の作品を読んだことがある人なら、おそらく持つであろう疑問。なぜ、そんな危険を犯してまで書くのかという点に答えている。

    その答えはズバリ、タイトルにある。貧しく悲惨な場所でも人は生きようとする。未来には絶望しかなく、死んだ方がマシという状況でも、人は妄想で都合の良い「小さな神」を生み出し、それにすがる。そこから生み出される生命力を著者は何よりも美しいと感じる。そして、自分の心を突き動かされたことを人に伝えたいと思う。それが、著者の揺るがない作家精神だ。

  • 静かで温かく、しかし熱い。発信者。

  • 石井光太氏が如何にしてドキュメンタリー作家になったのか、なぜドキュメンタリーを書くのかを綴った本。
    好きな作家さんなのでバックグラウンドを知れたのは良かったのだけど、過去の書籍のプレイバックもあり、興味深く読めた。
    根底にあるのは、人間が極限で見出す「小さな神様」を発見し、それを社会に伝えたい、という願望。救いの根源。小さな物語。宗教的ではなく、神は心の中に存在する。人は優しさを求める。
    バングラデシュのストリートチルドレンのレミジーの話を読んだ時、全身の毛がざわっとなるのを感じました。

  • 初めてこの方の作品を読みましたがとても面白いですね!
    引き込まれるようにして一気によんでしまいました。
    伝えたい!という熱い気持ちが伝わってくるようです。
    容赦の無いリアルな描写に、思わず読むのを中断したり、顔をしかめたりもしました。
    ウソみたいな驚きのエピソードがたくさん描かれているのです。
    精神が壊れそうになりながらも、数々の作品を描き続けたというのは本当にすごい。
    過去の作品も遡って読んでみたいと思います。

  • 読みやすくて、めちゃくちゃおもしろい本でした。
    石井光太さんが好きな方は、絶対に読んだほうがいい一冊。
    著者にとってのルポを書く意味、その使命感が伝わってくる。
    光太さんの現場を見に行くことに懸けた思い、とても共感する。社会の見えにくいところにこそ、ひとの美しさはあると思う。
    自分はまだまだこのひとのように強くはないけれど、いつか、このひとみたいになりたいと思った。少しずつでも、ひとのことを救えたら。

  • 「現場に行くという事は、当事者になるということ。」フィールドワークを得意とする著者の言葉を重く噛みしめました。

著者プロフィール

1977(昭和52)年、東京生れ。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。ノンフィクション作品に『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『遺体』『浮浪児1945-』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『本当の貧困の話をしよう』『こどもホスピスの奇跡』など多数。また、小説や児童書も手掛けている。

「2022年 『ルポ 自助2020-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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