翔ぶ少女

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著者 : 原田マハ
  • ポプラ社 (2014年1月9日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591137277

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翔ぶ少女の感想・レビュー・書評

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  • 19年前の1月17日早朝から始まる物語。

    長田区のパン屋さんの三兄妹イッキ・ニケ・サンクは、いつもの朝を迎えるはずだったその日に、目の前で両親を失う。
    三兄妹を助けてくれたのは、同じ町で心療内科を営むゼロ先生こと佐元良だった。
    その後、ゼロ先生は兄妹を引き取り、日々は過ぎ4人は家族となっていく。

    読み始めてすぐ、涙をこらえられなくて、「しまった」と思った。
    読み進めて今度は、混乱した。
    ――えっ、こういうお話?どういうこと?
    そこにファンタジーの必要を感じられず、また「しまった」と思った。
    少し冷却期間を、と間に別の本を挟んだ後、続きを読む。
    今度は混乱しながらも読みきった。
    読み終わったら、先ほどまで不要だと思っていたニケに起こる奇跡を柔らかく受け止められていた。

    読後感はとてもいい。

    だけど、やはり別々のお話にしてほしかった気持ち、優しくて希望に溢れたお話をありがとうって気持ち、いろいろ複雑な気持ちが湧いて、なかなか感情を整理できない。
    この物語を読んで、前を向けるようになったり希望を持てるようになったりする人(とりわけ子どもたち)が一人でも多いといいなと思う。

    でもわたし自身は今はまだ、好き嫌い良い悪い、どんな評価もつけることができない。



    ・・・・・・・・・
    逸騎・丹華・燦空と兄妹の名前がいわゆるキラキラネームっぽいのは許容範囲なのだけど、
    ゼロ先生の苗字が「佐元良(サモトラ)」は、ちょっとやりすぎかと(^^;)

  • この本の発行日は2014年1月17日。
    その19年前から物語は始まります。

    枕元の目覚まし時計は5時45分を指し、主人公の少女は布団の中で夢を見ていた。
    その一分後からの現実を知っていると、何ともやりきれない緊張感が高まりました。
    もちろんこれ自体はフィクションでも、同じような思いをして同じような境遇に陥った人がたくさんいました。
    彼女たちの姿に重ねて、あの日あの時の自分の体験をまざまざと思い出してしまいました。
    19年たっても、受けた傷口はまだ完全に癒えてなくて、ふとしたきっかけで容易に開くものです。

    「震災のまえとあとでは、何もかもが一変してしまった。
     被災した人すべての人生に、多かれ少なかれ、変化が訪れたのは間違いない。」からね。

    ここで、わたしの経験や思いを書くと取り留めなく長くなった挙句に全部消す羽目になりそうなので、最近思ったことを一つだけ。

    ソチオリンピックで金メダルに輝いた羽生結弦くん、仙台出身で東日本大震災で被災して、優勝後の記者会見でも「被災地のために何ができたのかな」みたいなことを言っていました。
    今19歳なので、震災当時の3年前は16歳。
    私が阪神大震災を被災したときと同じ年です。
    あの当時、「被災地のために何ができるだろう」なんて考えたことなかった。
    もちろん生まれ育った地元の状況を目の当たりにして悲しかったし、考えたことなかったようなことを色々考えたりはしたし、毎日一生懸命頑張って生きていたけど、まぁ自分のことしか考えてなかったよね。
    被災地の復興とかは大人たちがやってくれると思ってた。
    なので結弦くんを見ていると心底えらいなぁと感動を覚えると同時にもっと自分のためにスケートしてほしいなぁと思ってしまう。
    まぁなかなか複雑ですな。
    (ちなみに結弦くんはシニアデビューのころから大好きです)

    だいぶ話がずれました。
    さて、本の感想ですが、震災後どんどん時が進んでいくので、時々気持ちの整理がつきにくいのと、後半のファンタジーな展開をどう受け取るかで評価が分かれそうなお話ではありました。
    正直、阪神大震災を題材にしているという点では評価しにくいのですが、よくある喪失と再生の物語としてとらえても十分満足できる内容でした。
    はじめから最後まで涙、涙で、「大丈夫だよ」って背中をそっと押してあげたくなりました。

  • 1995年、神戸市長田区。
    地震の後の火災で両親を目の前で失った、イッキ、ニケ、サンクの三兄妹。
    そのとき3人を救ってくれた医師のゼロ先生。彼も妻を震災で失くしていたのだった。

    仮設住宅で新たな暮らしが始まり、復興を願う町の人たちと共に一歩一歩前を目指していく4人。
    震災のときのけがにより、足が不自由なニケは親のいないことも併せて、級友からの表面的な同情と残酷さを受け入れられず孤立を深めていく。

    それでも彼らは、仮設住宅のコミュニティーに助けられ、町の大人たちからも気にかけてもらい、また、尊敬し寄り添える大人たちから自分を認められて居心地のよい居場所を得ていく。

    それにしても、目の前で大切な、かけがえのない人を失くすとはどのようなものか。想像もつかない。
    目の前で消えゆく命をただ手をこまねいて見ていることしかできず、
    自らの命も危険にさらされる中で、放置して立ち去らねばならなかった。
    それは仕方のないことだったと人がなぐさめてくれたとしても、
    自らを許すことはできず、想像を絶する辛さと苦しさを感じ続けるに違いない。

    それでも、人は生きていく。
    自分の辛さや悲しみを受け入れて、人の哀しみに寄り添いながら、一歩ずつ歩いていく。
    マハさんはそんな情景を丁寧に描いていく。
    言葉を選びながら紡ぎだされる物語。

    マハさんの言葉の選び方は私の好みに合っている。
    実に納得できることが多い。
    だからこそ感じる個人的な気持ちですが、
    ネーミングにこだわらなくてもよかったのではないかと思うし、
    ファンタジーを織り交ぜなくてもよかったように思う。
    リアルな日常を描きつつ、人の力による再生の物語を読んでみたかったなあ。
    人の持つ力にもっともっと圧倒させられたかったし、マハさんの持つ言葉の力に読み手の感情を委ねたかったなあと思う。


    がれきの山に埋もれた瀕死の母親に火の手が迫ったとき、子ども達に向かって呟く。
    「あんたらが、うちの子で、よかった・・・」(P21)

    この言葉が、残された子供たちの背中を少しでも支えてくれたと信じたい。

    自分が発する言葉が人を傷つけたり、不快にしたりすることなく、少しでも人を勇気づけ、笑顔にさせることができたらなあ・・・。
    何気なく話す言葉も疎かにできないな、と感じた。

  • 災害のテーマのものを読むと考えてしまうこと。

    被災した地域の人だけ
    なぜ咄嗟に人生最大の決断をしなくてはならないのか。
    それでなくとも大変な環境なのに、畳み掛けるように我慢我慢を強いられるのか。
    なぜただ生きていこうとしているだけなのに長い間憐みの目でみられてしまうのか。
    なぜ被災前のような『普通の日常』に戻れないのか。

    阪神大震災発生からはじまるこの物語も
    涙しながら理不尽なこんなことを鬱鬱と考えてしまいます。

    ほとんど関西弁だからでしょうか。
    笑いが日常のそこかしこにある関西人が登場人物だからでしょうか。
    主人公である、イッキ・ニケ・サンクの兄妹と
    その兄妹を助けて一緒に生活をするゼロ先生の明るさに助けられ
    時々泣くことから脱出し、笑ったりしてしまいます。

    ニケに起こった奇跡。
    これは必要かな…と読み進めるとラストの盛り上がりで
    そういうことだったんだ、こういうことの表現だったんだと判りました。

    さすが勝利の女神!と納得の一冊です。

    しんどいときほど笑い飛ばすゼロ先生がカッコいいです。
    笑いと誰かを想う強いエネルギーで
    温かい気持ちに包まれてます。マハマジックですね、これは。

  • 泣いた、泣けた。
    ニケの切なさに、純粋さに。
    ゼロ先生の優しさに、男気に。
    至る所で涙が零れて仕方がなかった。

    阪神淡路大震災で被災し、両親を亡くした三兄妹の物語。
    主人公ニケの幼い関西弁が、そのやるせない心情を見事に表現している。
    心と体に深い傷を負ったニケ。
    でも、そこに現れたスーパーマンのような優しいおっちゃんゼロ先生。
    そして、ニケの他人を思いやる純粋な気持ちが奇跡を起こす。

    “大丈夫、翔べるって。
    こうしてな、こうして・・・・・・ほうら。
    翔ぶねん。“

    原田マハ、何でも書けるんですね。
    その抽斗の多さに脱帽です。

  • 久しぶりに涙腺の刺激された作品。
    主人公の背中に羽が!現実にはあり得ない現象だけど、愛する恋人のもとへ、あるいは、かわいいわが子のもとへ、飛んでいきたい一途な気持ち、その象徴が羽ではないか。
    SF小説ではないが、十分納得できる展開。

    心の病気を治すのが、心療内科=ゼロ先生。
    心に灯りをともすのが、原田マハ。

  • 目で見た事は全て真実ではあるが、
    受け止められない現実も中にはある。

    ある日、何気なく眺めていたTV画面に地獄が映った。
    (何これ?)
    まるで巨人が踏み潰した後の様な街。
    陥没した道路。
    堕ちた橋。
    瓦礫と化した建物の間から
    幾筋も立ち上る炎の柱。

    大きな地震によって壊滅した街は
    ほとんど地獄の様相を呈していた。

    ぶるぶると震えながら
    とにかく頭を駆け巡るのは
    ここで生き残った人達は今、どうしているのだろう。

    著者である原田さんの目は
    離れた所からこの地獄へと入り込んで
    苦しむ人達の下へと届いてしまった。

    そして
    どうしようもなく
    救いたい、
    救いたい、
    どうにかして救いたい!

    と、思われたのではないでしょうか。

    著者の強い思いは
    ある少女に捧げる翼になった。

    目には見えない架空の翼は
    祈りと同等の強さを秘めている。

  • 阪神淡路大震災をモチーフにした、震災で両親を亡くした3人の兄妹と、兄妹を救った医師の話。

    悪くないんだけど…ちょっと表面的過ぎるというか、浅いというか。
    ネーミングも、個人的にはあまりいいと思えない。

    テーマがテーマだけに、あまりに真面目に深読みで描くと重くなりすぎるという懸念があって、ネーミングやら、正直ちょっと唐突すぎるファンタジー的設定やらを取り込んだ、という著者の狙いなのかもしれないけれど、そこのところが私にはマイナスにしか感じられなかった。
    著者は割と好きな作家だけれど、著者が狙ったところが自分には今ひとつ、ということが時々あって、今回はそのパターン。残念。

  • またもや内容を知らずに読み始めて、頁をめくる手が止まる・・・う、震災の話だったか。。。
    いずれにしても読むのですが、だから知らずに読み始めてしまった方がいいのですが。

    心を決めて読み進めるが、また止まる・・・え?そっち系の話!?(そっち系ってどっち系だか知りませんがw)

    それでも懲りずに読み進める・・・ふむ、書かれてあった非現実的な出来事は棚上げにしてよい感じの希望と救いと、思いのこもった物語でしたね。

    受け止め方は様々かもしれませんが、ご一読をお勧めいたします♪

  • 神戸の震災で大事な人を亡くした3兄弟と一医師が一緒に立ち直ろうとする姿勢に涙がこみあげてきた。
    両親を亡くした幼い3兄弟がどんなに心細い思いをしたかと思うと、胸が押し潰されそうになるが、救いの手があったことにホッとする。
    また、途中から”羽が生える”という非現実的な事が描かれていたが、大切な人に会いたいという思いが、羽を生やしてでも飛んでいきたい、となっているのだと素直に受け止められた。

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翔ぶ少女の作品紹介

泣き叫ぶことしかできなかった、あの朝。
二度と大切なものをなくさないように、あたしは強くなりたい。

1995年、神戸市長田区。
震災で両親を失った小学一年生の丹華(ニケ)は、
兄の逸輝(イッキ)、妹の讃空(サンク)とともに、
医師のゼロ先生こと佐元良是郎に助けられた。
復興へと歩む町で、少しずつ絆を育んでいく四人を待ち受けていたのは、
思いがけない出来事だった――。

少女の強く切なる祈りが起こした、やさしい奇跡。
『楽園のカンヴァス』の著者が長らく温めてきた、心ゆさぶる再生の物語。


原田マハ(はらだ・まは)
1962年、東京生まれ。85年、関西学院大学卒業、96年、学士入学した早稲田大学卒業。
アートコンサルティング、キュレーターを経て、2005年、『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞し、翌年デビュー。
12年、『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞を受賞。
著書に、『ユニコーン ジョルジュ・サンドの遺言』『総理の夫』『ジヴェルニーの食卓』『生きるぼくら』『旅屋おかえり』など、
共著に『エール! 3』『東京ホタル』などがある。

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