翔ぶ少女

著者 :
  • ポプラ社
3.59
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感想 : 207
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591137277

感想・レビュー・書評

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  • 阪神淡路大震災で両親を亡くし、脚も不自由になった少女、丹華の物語ということで、重たい話かと身構えていたが、違った。

    兄の逸騎、妹の燦空。
    3人兄弟のテンポのいい口喧嘩が元気いっぱいだし、ゼロ先生とのやり取りも明るい。

    〈心のお医者さん〉であるゼロ先生たちを通して触れる、被災者たちとのやりとりも、あたたか。

    もちろんつらいこともあるけれど、前向きな作品。

    後半は突然のファンタジーで、しっくりこなかった。

  • あの日の朝、「ん?何だろう?ゴーって聞こえた?」と、思った瞬間、揺れた。しかもものすごく長い時間、大きく。家がミシミシ言って、鉄筋に立て直したばかりの実家は、折れてしまうのではないか?と、思うくらい揺れた。怖かった。とにかく怖かった。

    家は壊れななかったし、木造の離れも何ともなかった。私の部屋は2面がクローゼットなので、タンスもないし、置いているのはピアノだけなので、倒れたものの下敷きになることもないが、冬のフローリングは寒いので、隣の和室で寝ていた。和室もテレビしか置いていないので、この部屋でも倒れたものの下敷きになることもない。天井が抜けることもあるかもしれないが、幸にして、長く続いた揺れの後も何も損傷なく、身体も無事に起床の時間を迎えた。

    ただ、服を着替えるために自分のフローリングの部屋に入って、びっくりしたことがあった。なんと、ピアノが15センチくらい壁から離れて前に移動していたことであった。

    それくらいの変化があったくらいだったので、慌てることもなく、いつものようにダイニングに行くと、テレビがついていた。映像は長田区の大規模火災だった。「今朝の地震は?火事もあったの?」しばらく状況がわからなかったが、この地震によるものであるとの解説があった。火災の原因は、生活が開始する朝の時間的な要因であったようだ。

    私の場合は、近隣県に居住していたので、この程度であったのかもしれないが、友人の中にこの地震の建物倒壊によりご親族や一緒に居住していたお祖母様が亡くなられた方もいた。

    本作はそんな地震により両親を亡くした主人公・丹華とその兄・逸騎、妹・燦空、そしてこの3兄姉妹を救い、育てるゼロ先生こと佐元良医師との家族としての絆の話しである。

    地震直後の長田の町は、家屋が倒壊し多くの人がその下敷きになっていた。丹華自身も倒壊した住まいの瓦礫に足を挟まれ、身動きが取れなかった。そこにゼロ先生が現れ、丹華を救出する。しかし、瓦礫に下敷きになっていた母は、助けることができなかった。自分の命が終わってしまうことを受け入るしかなかった母は、子供達のことをゼロ先生にお願いする。
    そして、震災で、両親を失った丹華兄妹と家族を失ったゼロ先生は、共に暮らすようになる。ゼロ先生は、丹華たち兄姉妹を養子に迎え新しい家族として、出発する。震災後、彼らは、真の家族のごとく絆で繋がれて生活することになる。

    震災による精神的な障害を持ち、さらには丹華の場合は、足の障害も負うことになる。学校での友達からの同情や冷たい言葉を受ける中で、家族の愛があったからこそ、少女は、震災の傷を治していくことができたのであろうが、そんな幸運な被災者は少ないだろう。時が記憶を包んでいくまでに、その悲しい経験を思い出し、亡くなっていく人もいただろうと思うと、前回読んだ「決壊」の言葉を思い出してしまった。「人は自分から遠いところで起こっている悲劇に、真に心を痛めることはない」

    大規模震災を経験した丹華たちの真の恐怖を私は全く理解していないということだ。

    文明の進歩により、見た目の復旧は、思った以上に早かったかもしれないが、人間が負ったダメージの回復はさらにもっと時間がかかるだろうし、消えないかもしれない。もしかしたら、25年経った現在に於いてもそのダメージに悩まされ、生活を脅かされている人がいるかもしれないと考えてしまう。

    本作の不思議は、丹華の肩甲骨に生えた羽。人の体に羽が生えるなんて、まかり間違ってもないことであろうが、それは天使の羽のように、読者は受け入れる。人と人とを繋ぐキューピットの矢ではなく羽は、今回、ゼロ先生と、ゼロ先生の息子・祐也先生の断絶していた絆を繋いだ。足の不自由な丹華にとっては羽は想いを届けるための足であり、丹華の気持ちがキューピットの矢として人の心を動かす。今後、丹華が恋をした時も羽が生えてきて、恋を成就させることになるのであろうかと考えると、著者が表現するシーンを文字で読んでみて、想像してみたいという気持ちになる。

    それは、私が丹華の初恋の心のを表現しているこの文章が愛らしく、私の心に響いたから。「その瞬間、胸の中の小さな箱に、いっぱい詰まっていたきらめくビー玉が、いっせいに、きらきら、からから、ころころと、心地よいメロディを奏でながら転がり出すのを、丹華ははっきり感じた。丹華の胸の中では!色とりどりに輝くビー玉が、きらきら、からから、ころころと、転がったり、ぶつかったり、くるくる回ったり。にぎやかなメロディを、奏でている。」
    近い将来に起こる丹華の成長した恋心がビー玉以外で表現されているのか?成長した丹華の気持ちがの表現がとても気になる。

    震災という波に呑まれる以外なすすべがなった2家族が、1家族として誕生し本当の家族となっていくその復興に心が暖かくなる作品であった。

  • 夢中で読みました。
    泣いてもーた。
    ありえない話だから
    リアル好きな自分の好みではないんだけど、
    子どもたちのセリフが
    かわいくてかわいくて
    何回も泣いてもーた。

  • 阪神淡路大震災で両親を亡くした三人兄妹と、彼らを助け引き取る事にした医師。この四人が懸命に生きる姿を描いた、心温まる物語です。

    1995年1月17日。幸せな夢を見ていた少女・ニケがふと目を覚まします。時刻は午前5時45分。その1分後、ドーーーン!!と、世界が一変する未曾有の大惨事が・・。
    この序盤の地震の場面で、もう胸が締め付けられて泣きそうになる私。
    その後、医師のゼロ先生こと佐元良是郎に助けられ、仮設住宅で共に暮らすことになった三人兄妹。震災孤児になってしまった子供たちとゼロ先生の温かく強い絆がとても微笑ましいです。
    地震の時に足を大怪我を負い、家では明るいのに学校では疎外感を感じて孤立してしまうニケや、ゼロ先生と息子さんとのすれ違い等、しんどいこともあるけれど“家族四人”が助け合い、乗り越えていく様に心からエールを贈りたくなります。
    ニケの“羽”のくだりは好き嫌い別れると思いますが、こういうファンタジーな展開もフィクションならではなので私的には嫌いではなかったです。
    ただ“羽”の描写が妙に生々しくて、限局性恐怖症の傾向がある私は“う・・(汗)”となってしまいました。できれば描写もファンタスティックにして頂きたかったです。
    ラストは、希望にあふれていて、明るい気持ちで読み終わりました。
    因みに、本書の登場人物の名前が、ゼロ先生(0)長男・イッキ(1)長女・ニケ(2)次女・サンク(3)と、遊び心にあふれていて、さらに原田さんらしいのは、主人公のニケとゼロ先生の苗字佐元良(さもとら)→『サモトラケのニケ』(『ミロのヴィーナス』と並ぶ超有名彫刻ですね)と、お得意の美術ネタ(?)を絡めております。きっと、ニケの翼のように羽ばたいてほしいという意味があったのかなぁ。と思いをはせた次第です。

  • 阪神大震災で両親と家をいっぺんに亡くし、ゼロ先生に救ってもらう三兄妹。羽の存在は現実なのか夢なのか。どちらだとしても人を大切に想うと人は変わっていく。強く生きて行くのはツライけど、生きていかなきゃならない。頑張ろうと思える作品でした。

  • 3.8
    さもとら家のニケ・・・
    イヤイヤ!
    マハさん無茶やで!とツッコミながら読み出したが、 なんと、羽まで生えてきて、どうしようかと・・・。

    阪神淡路大震災で両親を失った三兄妹・逸騎、丹華、燦空。被災時、まさに命を失いかけた三兄妹を救い出したのは、たった今妻を失ったばかりの医師・通称ゼロ先生こと佐元良是朗だった。

    少しずつ復興して行く神戸の街と、成長して行く三兄妹。取り巻く人々の人生。

  • 阪神淡路大震災をモチーフにした、震災で両親を亡くした3人の兄妹と、兄妹を救った医師の話。

    悪くないんだけど…ちょっと表面的過ぎるというか、浅いというか。
    ネーミングも、個人的にはあまりいいと思えない。

    テーマがテーマだけに、あまりに真面目に深読みで描くと重くなりすぎるという懸念があって、ネーミングやら、正直ちょっと唐突すぎるファンタジー的設定やらを取り込んだ、という著者の狙いなのかもしれないけれど、そこのところが私にはマイナスにしか感じられなかった。
    著者は割と好きな作家だけれど、著者が狙ったところが自分には今ひとつ、ということが時々あって、今回はそのパターン。残念。

  • 阪神・淡路大震災が舞台だということと
    原田マハさんの作品ということで
    手に取った1冊。

    最初の数ページで既に涙涙。
    苦しすぎて読むのやめようかなと思ったぐらい。
    でも,読み進めていくと
    ゼロ先生と子どもたちの絆が強くて,
    すごく素敵で心がホカホカした。
    ゼロ先生の心が広くて深くて。

    ただ,ちょっとファンタジー要素が
    いつもより強かった気がする。
    大地震とファンタジーが
    うまいこと絡みあえてなかったような……(小声)

  • 甘ちゃんやな って自分でも思うけど
    泣けちゃったよ。

    急な変身とか、普段の私やったらヒくのになぁ。
    スっとはいって、しみ込んできた。

    原田マハさんのお話はハッピーみたいなエンディングが多くて好き。
    辛いのはリアルに溢れているもん。
    このお話みたく
    原田マハさんのキャラも前向いたことやし
    私も顔あげてみっか ってね、そう思えるんだ。

  • 背中の羽について色々考えを巡らせてみたけど、もう少し理解が追いつかなかった。ギリシャ神話知らないからなのかなぁと思ったので勉強してみようとは思う。

    原田マハでなくても良い感は感じてしまった

著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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