- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591137284
作品紹介・あらすじ
弓の道、剣の道と交わる茶の道って、何――?
曲者ぞろいの茶人たちに翻弄されつつ成長する
弱小家元Jr.の奮闘を痛快に描いた
大傑作青春エンタテイメント、第2弾!
弓道、剣道、茶道を伝える坂東巴流の家元Jr.友衛遊馬、19歳。
弱小流派を継ぐのを厭って家出中の身ながら、ようやく茶の湯に目覚めた――
かと思いきや、なぜか比叡山の〈天鏡院〉で修行中?
一方、弟行馬を巻き込んだ宗家巴流の跡継騒動や、
お目付け役カンナの結婚話にも、新たな展開が……。
めっぽう面白くてじんわり泣ける大傑作青春娯楽小説、待望の第二弾!
〈解説・大島真寿美〉
松村栄子(まつむら・えいこ)
1961年静岡県生まれ。筑波大学第二学群比較文化学類卒業。
90年『僕はかぐや姫』で海燕新人文学賞を、92年『至高聖所(アバトーン)』で芥川賞を受賞。
著書に、『雨にもまけず粗茶一服』(ポプラ文庫ピュアフル)、『ひよっこ茶人、茶会へまいる。』(朝日文庫)、
『京都で読む徒然草』(京都新聞出版センター)などがある。
共著『明日町こんぺいとう商店街』(ポプラ文庫)には、本シリーズのスピンアウト短編を収録。
京都市在住。
感想・レビュー・書評
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シリーズ2作目。前巻は上下巻に分かれていて、主人公にまったく感情移入が出来ず、イライラしました。しかし、この作品はなんとなく落ち着いて読めました。相変わらず、遊馬はなんだか意味不明ながらも、もがきつつ1つのことを成し遂げようとしてます。 その他のキャラたちもいろいろストンとおさまるとこにおさまって、おさまりすぎてちょっとご都合主義なような気がしないでもありませんが。前巻よりは読みやすいです。それにしてもお茶のシーンやほかの箇所で専門用語やお茶碗他の解説多すぎ。飛ばしたくなりました。でも続編、期待します☆詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
おもしろかった。少しの突っ込みどころを残して…
このシリーズの本との出会いは新聞の下の広告。新聞を読む楽しみの一つがこの広告との出会い。
ただ紹介されていたのは続編で、これまでこのシリーズを読んだことがなかったため、まずは初めからと思って、3冊を読了。
続編がどこまで描かれているのか知らないが、まずは遊馬のその後が知りたい。そこが描かれないまま終わったので、ちょっと不完全燃焼のような気分…
一つ一つの物事を深く考えず、感じたまま行動するように見える中に、鋭い観察力があったり持って生まれた才能や性分のようなものが人を引き付けたり、思うままに動かす遊馬は、とても魅力的だと思う。
この子が現代では簡単には体験できない『修行』を経て、何を感じどう変わっていくのか。もしかすると周りを変えていくのかもしれないので、今よりもっと東と西が仲良くなればいいのになと期待しておこう♪ -
雨にもまけず粗茶一服の続編、というか後日談。
かなり序盤で、これ、あの人のことかな、というのに出会います。こういう時、実はミスリードでそれがお約束というお話も多いのですが、そういう楽しみ方をする本ではありません。。
心がほどけていく過程を固いつぼみがほころんでいくところを眺めるように素直に味わうのが、吉です。
雪麿さんとカンナさんの結納の時の茶事の奥深さ。伝統と格式のある家の間の婚礼で、全く違う文化が背景にあれば、にっこり笑いながらの鞘当のようなものはあるのがむしろ当然。その中で、相手に迎合するでもなく、対立するのでもなく、もてなしながら自己主張は忘れず、これからの関係を結んでいこうとする、それでいて、他にはない行き届いた美しさ。高度の外交のようでした。そうそう、東京vs京都というのは、東京vs大阪以上に難しい関係かも知れません。
同じ茶事でも、荒れ寺の一室で、大工の卵やら匠の域に達している畳屋さんやら、縁のあったいろんな人の知恵や手や力を借りて、拾い物やらなんやらをかき集めての「山賊の茶会」。作法も何も見よう見真似でお客は擦り切れたTシャツ姿やら作務衣やら。そのあっけらかんとした空気が読む方にもご馳走。
でも、主人公は、自らの求める茶の道は、この楽しい山賊の茶会ともまた別のところにありそうと感じる。つり橋上の一畳の畳の先にそれはありそうと言う。彼がこれから見つける茶道はどんなものになってくのか、興味津々。
最終盤のカンナさんと家元の茶会でのやりとりも、どこかすれ違ってて、ふと含み笑いがもれます。結局、彼はこまったおじいちゃんってとこでしょうか。
茶道をテーマにした小説は、意外に少ないのでしょうか。いろんな「景色」が見えて、楽しゅうございました。 -
茶道の虚と実を
長男が受け継ぐという家元制度に生まれ合わせた
若者たちが
その理不尽でもある重圧と摩擦の体験から
外目線の社会的価値観と内目線の精神的自律を学ぶ
年令を問わない青春物語
空を飛べるがごとくの仙人のように
体力も気力も人智を超えた人ですら
マンネリに陥っていることに気付けず
傲慢になっているという気付きの無限性をも描いている
ここにお互いの自在性と対等性による調和のあり方を
学ぶことが出来るのだと悟るチャンスがある
目からウロコの市民達の開眼によって
過去の唯物的権利と競争に引きづられた虚の依存的政治を
こうした視野の広い実の意識にまで成長させたいものだと思う -
まわり道したが比叡山の寺に修行に入ることになった遊馬。好きによべと言われたからって、師を、クソジジイよばわりし。喰うや喰わずの生活から、弟分もでき、京の町、実家の面々との交流もつづき、深まり、成長していく遊馬。/カンナ「折っても惜しくないような弓を持って、なんとなく出場してみるだけのおつもりならおやめになったがいいと言っているのです。/遊馬「お茶って、誰のお茶とか、彼のお茶とか、あるの?」/師匠「そこへいくと、おまえさんの相手は楽でよいわ。クソジジイでおればよいからの」/鶴了さん、幸麿さん、哲哉さん、志乃さん…個性的な面々に囲まれ、そして宗家の夭逝した跡取り息子の気持ちを後追いしてひとつの結び目をほぐした時、山から下りる事に決めた時、いっそう強く、成長した姿を見せてくれてすがすがしい。
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面白かった。武家茶道坂東巴流家元の若様・遊馬の比叡山修行編。
前作の『雨にもまけず~』に嵌ったのだが、まさか続きがあったなんて嬉しい!
茶の湯を疎んじていたはずの遊馬に群がる茶人たちの、ユニークな個性は相変わらず。遊馬はやっぱりちゃらんぽらんだけど、前作を読んでると「成長したなあ……」と妙に感慨深い。
遊馬は自分本位で生きていけそうだけど、その分弟の行馬が割を食いそうで不憫。報われて欲しいなあ。
テンポの良いストーリーと語り口で茶道の世界が描かれ、粋で奥深い茶会が目白押し……だけど、今回は山奥なので、前作よりは茶の湯のシーンは少なめ。
お茶には少々苦手意識がありましたが、肩肘張らずに楽しめる話。
前作の勢いそのままの続編に、やっぱりこのシリーズ好きだなあと改めて感じ入った。
今作で閉じても問題ないくらい、すっきりとした読後感だが、願わくは、続きが出ますように!