阿恩(あおん)こと呉承恩(ごしょうおん)は、14歳くらいのひ弱で、書を読むことの好きな少年。父親は呉鋭(ごえい)、淮安府(わいあんふ)の商人。息子には科挙(かきょ=官吏=役人になること)を望んでいるが…
そんなある日、商売で訪れた徐州で書を食べる少女「玉策(ぎょくさく)」に出会い、事件に巻き込まれる。
「玉策」とは何者か?彼女と阿恩の運命は?
タイトルがちょっと残念かも~と思いつつ、ぴったりのタイトルってどんなんだろうか?
③内容
・対象: 高、YA
・特色&ジャンル 明の時代の中国を舞台にしたファンタジー
・時代 明代、正徳九年(せいとく)1514年
・舞台 中国
・主人公 阿恩
④キーワード
・オススメ 中国の有名な物語とその文章がたくさん引用されている「三国志」「封神演義」「西遊記」「白蛇伝」などなど
⑤コメント
・著者情報 渡辺仙州(わたなべせんしゅう)
・出版情報 ポプラ社
・翻訳の場合は原題
・背景
P183「そうじゃない。劉将軍もおっしゃっていたけど、むしろその逆だ。ぼくは『三国演義』のような講談は大好きさ。こういうのは、正史は正史、演義は演義としてわりきるべきなんだ。彼らのつかう武器は後漢のものではないし、歴史的矛盾をつくことはいくらでもできる。けど、それは重要じゃないんだ。正史との相違に目くじらを立てる人もいるけど、それは演義の読み方じゃない。演義っていうのは、物語が面白くて、当時のことがいまの人にもわかりやすく描かれていればいいんだ。それこそが「演義」んばんだし、物語をつくる講談師も正史と違うことなんて百も承知でやってるのだから、そんなことをいちいち詩的するのは無粋だと思う。だから時代錯誤の武器や戦術が出てきたとしても、それは物語を面白くするためだと思えばいい。唐三蔵の西天取経の講談には妖魔が出てきたりするけど、それを「嘘だからつまらない」と怒るのは見当違いだろ」
P188「知識があれば面白くなる。知ってると知らないとじゃ、おなじものを見ても面白さがぜんぜん違うからな。書もそうさ。『三国演義』や『水滸伝』も、史実を知って読むのと知らないで読むのとでは、面白さがまったく異なる」
P280「劉将軍、玉策が書きだしたのは、変えられたかもしれないあなたの未来だ。だけどあなたは愚かにも玉策
にそれを書かせ、天命を決めてしまった。あなたほどの才があれば変えられたかもしれない未来を、あなたは自分の力を信じずに、玉策に頼ることを選んだ」
「それがあなたの器だということだ。ぼくには講談を書くという夢がある。だけどそれには、玉策
の力は必要ない。ぼくは自分を信じている。それに物語を結末から読むことなど、決まった未来をなぞることなど、何が面白い。だから愚か者だといったのだ!」
何より本と物語が好きな少年・呉承恩と、金篋から転がり出た、本を食べる少女・玉策の物語。涙がこぼれるあたたかいファンタジー!
呉承恩は、西遊記の作者(とされている)らしい
http://www.poplar.co.jp/shop/shosai.php?shosekicode=40520130