(046)「本が売れない」というけれど (ポプラ新書 な 3-1)

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  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591142233

感想・レビュー・書評

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  •  ピーク時(1996年)からの17年間でじつに36%も売上が落ち、しかも下げ止まりがまったく見えない日本の出版界。
     寒風吹きすさぶその現状を、本の流通・販売にも造詣が深い(元書店員でもある)ベテラン・ライターが、改めてじっくりと考えてみた本。

     著者が挙げる「本が売れなくなった要因」は、ブックオフの台頭、ネットとスマホの普及、少子高齢化の進行など、誰もが思い当たることばかり。なので、「そうだったのか!」と膝を打つ驚きはほとんどない。

     ただし、だからつまらないかといえばそんなことはない。ブックオフの台頭、スマホの普及などがどのように本(新刊書)を売れなくしていったかが、改めて整理されて説明され、ことの本質がクリアに見えてくる面白さがあるのだ。

     とはいえ、私が知らなかったこともけっこう書かれていた。
     たとえば、最近の本の初版部数が少なめなのは、「本が売れないから」だけではなく、印刷製本技術の革新にもよる、という指摘。

    《皮肉なことに、大量かつ高速で印刷できる機械は、少部数の印刷が苦手だった。少部数つくろうとすると、どうしても1部あたりのコストが高くなった。ところが技術革新により、少部数でも安く印刷・製本できるようになった。だったら、いままで半年かけて3000部売っていた本は、最初に1500部だけつくって、あとは500部ずつ3回増刷すればいい。そう考える出版社が増えた。》

     なるほどなるほど。
     
     また、街の小さな本屋さんがどんどん淘汰され、書店がアマゾンとメガストアに収斂されつつある現状についても、わかりやすく解説されている。

     著者の文章は、「ライターの文章」のお手本のようだ。読みやすくて平明、無色透明で、けっして自分の個性を読者に押し付けてこない文章(ゆえにどんな色にも染まり得る)なのである。

     本書のもう1つの価値は、本が売れない主因は「読書離れ」ではないことを、データから改めて浮き彫りにしている点にある。
     日本人の読書量(必ずしも「本」ではない、文字を読む量だが)は昔に比べて落ちておらず、本や雑誌を「買って読む」量が激減しているだけなのだ。

     エピローグでは、“どうやって「本の文化」を守っていけばよいのか?”という、著者が考える処方箋が開陳される。ここも、同意するかどうかはともかく一読の価値がある。

  • 「もういちど、本屋へようこそ」を読んだので、再読。
    出版業界と書店と出版不況の現状について、客観的にまとめられた本。

    私の通勤圏でも、本屋が不動産屋に、本屋が保険代理店に。
    それを残念に思っている私も、近所の本屋で買うのは雑誌とマンガの新刊のみで、あとは大型書店かネット。
    本の中でが紹介されているように、ユニークな本屋さんやがんばっている本屋さんはたくさんあるけれど、それは局地戦で、全体の流れとしては、本屋がなくなるのはもう止められない感じがした。

  • 書店、出版社、電子書籍など様々な角度から見た「本」について。書店が減っていったのは、活字離れやアマゾンのせいだけではなかったという事実が衝撃的でした。
    ヴィレッジヴァンガードなど、小さくても新しいコンセプトの書店について好意的に取り上げているのもいいです。

  • 永江さんの本は以前にも読んだんですけれども…確か「不良のための読書術」とかいう本なんですけれども…あちらが主に読書に関して綴られてあったのに対し、この本はアレですねぇ…出版業界の内情とかね、まあ、氏も以前は本屋にお勤めされていたみたいですし、そう考えると説得力あるかもしれません!

    つまりは「本は今も昔も読まれている」と…出版不況だからといって昔から読んでいた人が突然に読書を止める、なんてなことは無いんですなぁ…社畜死ね!!

    ヽ(・ω・)/ズコー

    まあ、個人的には出版社の内情とか出版されるまでの経路というのか、どういう経路をたどって出版まで漕ぎ付くのか、というところが知れて良かったですけれどもねぇ…。

    僕も氏同様にキンドルとかいうのに手を出す日が来るんでしょうか…うまくその時代に対応できればよいのだけれども…さようなら。

    ヽ(・ω・)/ズコー

  • 2014年11月4日、初、並、帯無
    2016年4月30日、伊勢BF

  • この数十年、日本のあちこちで、映画館、個人商店、本屋などが消えて、増えたのはドラッグストア、ファストフード店、コンビニのような気がします。2001年、2万1千店あった本屋は2014年は1万4千店以下になってるそうです。街の本屋の黄金時代は1970年代の10年ぐらいでしょうか・・・。1970半ばにはセブンイレブンが登場して雑誌の販売を。1980年代、郊外型書店(レンタル複合店)の出現。1990年にブックオフ、2000年には地引網のようなメガストアとアマゾンの日本上陸。2010年、辞書や地図は電子の時代に。

  • 一言で本が売れないと言っても、その要因は様々。
    これからどういう形で本や本屋が残っていくのか。
    なくならないけれど、なくならないなりにどう変わっていくべきか、
    ヒントはたくさんある。
    まあ私が本を買わないのは、お金とスペースがないからと、
    興味のある範囲が雑多なせいだな。

  • 2014/11/22

著者プロフィール

1958年生まれ。ライター。書籍輸入販売会社のニューアート西武(アールヴィヴァン)を経て、フリーの編集者兼ライターに。90~93年、「宝島」「別冊宝島」編集部に在籍。その後はライター専業。「アサヒ芸能」「週刊朝日」「週刊エコノミスト」などで連載をもつ。ラジオ「ナルミッツ!!! 永江朗ニューブックワールド」(HBC)、「ラジオ深夜便 やっぱり本が好き」(NHK第一)に出演。
おもな著書に『インタビュー術!』(講談社現代新書)、『本を読むということ』(河出文庫)、『筑摩書房 それからの40年』(筑摩選書)、『「本が売れない」というけれど』(ポプラ新書)、『小さな出版社のつくり方』(猿江商会)など。

「2019年 『私は本屋が好きでした』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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