([み]5-1)少年十字軍 (ポプラ文庫)

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著者 : 皆川博子
  • ポプラ社 (2015年4月3日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (379ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591144626

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([み]5-1)少年十字軍 (ポプラ文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 13世紀フランス。
    天使ガブリエルから「エルサレムへ行け」という天啓を下された少年エティエンヌが、聖地を目指して十字軍を率いる物語。

    特別な力を持つことで、平穏無事な生活を失ってしまうことの哀しさが漂う。
    純粋な子供たちと、彼らを私利私欲の対象としてしか見ていない狡猾な大人と対比がえぐい。

    何を目指し、歩むのか。
    結末を予想出来て尚、エティエンヌたちを愛おしく感じることがこの作品の要であるように思う。

  • 少年十字軍の悲劇を知っていれば
    この子達にどんな結末が待っているのか
    それを作者がどれだけ耽美、爛れた
    退廃的な世界に描くのかと思いながら
    読んでいったのだけど。。。
    神への信仰を表面にあらわしながら
    俗な人間の欲にまみれ浸りきった大人たちに
    (あぁ大人の世界を縮小版で濃縮している
    レイモンにもか)利用され、試され、裏切られ、
    翻弄される子供たちが、ただ一心に信じている
    苦難からの解放、自由な世界、導いてくれるはずの
    エティエンヌ。
    染まって汚れたものも、純粋なものも、全て背負い
    その身を削りながらたどり着く先は。
    ぜひ読んで、余韻に浸ってみてください。

  • 何とも冷静であり、シニカルな小説だと思った。

    そして最後まで、「神」と「奇跡」の正体についての謎が明かされていない。
    結局、発端となる事件の真相については、それが人為的に仕組まれたことなのか、それとも本当に神による奇跡なのか、断定的には書かれていない(と私は読んだ)。
    その正体が最後まで巧妙に隠されていて、まるでミステリー小説のようにスリリングですらある。

    見ないで信じる者は幸いである。

    それならば、見た上で、それでも信じ続ける者はどうだろう? 哀れだろうか? 不幸だろうか?

    神はいるのか?
    奇跡は誰が起こしたのか?
    分からないけれど、少なくとも歴史を作り出したのは人間だ。

  • 中世ヨーロッパ、エルサレム奪還のための十字軍遠征がさかんに行われた時代、羊飼いの少年に率いられた子供たちばかりの十字軍が存在したという史実をベースに、さまざまな登場人物たちの思惑が錯綜する皆川ワールド全開の長編。

    神の啓示をうけたという羊飼いの少年エティエンヌ(12歳)を筆頭に、序盤から彼につきしたがう子供たちは下は7歳から上は13歳まで。のちに加わる助修士のドミニクとジャコブでさえ15歳。彼らに対抗するように自ら十字の焼き印をつけて救世主たらんとする領主の息子レイモンもまた14歳の少年にすぎず、虚栄心の塊だけれどある意味彼はまだ純粋。

    そんな子供たちに比べて大人たちは皆一筋縄ではいかない腹黒さ。レイモンに従う騎士ベルトランはまだしも、聖職であるはずの修道士たちや、裕福なはずの領主や貴族さえ信用できない。そして記憶を失っている謎の男ガブリエル。

    ガブリエルが幻視する悪魔など、随所に幻想的なシークエンスもちりばめられているけれど、エティエンヌの行う奇跡は、たまたま目覚めてしまった治癒能力以外は、実は周囲が作り上げた眉唾もの。控え目で優しいけれど私欲がないゆえ流され体質なエティエンヌよりも、野生児のルーや、得体が知れないところがありながらも頼りになるドミニク、読者の視点にいちばん近い普通の子ジャコブなど、脇の子供たちが個性的で面白い。

    最終的に彼らは思いがけない人物の裏切りでグロテスクな試練に立たされるのだけれど、その乗り越え方、そして記憶を取り戻したガブリエルと子供たちの再出発で終わるラストはとても良かった。宗教的モチーフを扱っていても神秘や奇跡をクローズアップするわけではなく、どちらかというと危機を乗り越える力になるのは少年たちの信頼関係と機知なところも好きでした。

    解説:三浦しをん

  • 青少年向けのため、いつもの皆川先生らしくないかもね(笑… 叙述トリックもない ドロドロな展開もない、芳醇な描写や余韻たっぷりのエンディングが相変わらずいつもの皆川先生です。昔十字軍東征の映画を観たが、今回小説のベースの少年十字軍のお話は知らなかった。今度古屋先生の漫画も読もうかな〜

  • 奇跡を起こす羊飼いの少年エティエンヌと、そこに集う少年少女と狡猾な大人達がエルサレムへ向かう物語!

    弩使いの少年ルーは誰よりも頼りになります。
    フルク修道士はムカつきます。
    レイモンにもムカつきます。
    ピップの『エティエンヌが居るから大丈夫』にも段々ムカついてきます。


    キリスト教の失敗は教会という組織を作った事かと思います。

    それと金を払えば罪が赦されるというのも教会と罪人が得をして被害者は救われないよね!とも思えます。

    何れにしても信仰というのは他人に迷惑を掛けず自分の為に心の中だけで祈っていれば良いのにと思います。

  • 13世紀に実際にあった少年十字軍をテーマに描かれたお話。
    難解そうに見えて、意外にさらさらと読める。それは、登場人物は多いのに、それぞれが生き生きと魅力的に描かれているせいかも知れない。
    エティエンヌに心酔する子どもたち、信じてはいないけれど追随する者、利用しようとする者、そして訳も分からずただ参加する者。様々な思惑が絡み合いながら旅は続く。
    神の不在、死後の世界と無宗教の人間には正直理解できない部分はあるけれど、中世的なちょっと暗くて閉鎖的な雰囲気は伝わってくる。
    身勝手な大人たちに腹が立つと同時に、エティエンヌがいれば大丈夫と無邪気に繰り返す子どもたちの残酷さにも慄然とする。すべてを背負い込もうとするエティエンヌが痛々しくて切ない。
    でも、史実よりも少し希望の持てるラストに救われる。

  • 世界史上、有名なエピソードに基づくお話。

    「少年十字軍」と言えばいい印象を持っておられる方は少なかろう。
    当時のヨーロッパや聖地をめぐる云々、縁のない日本で育ったものにはなかなか理解しがたいものがあるし、安穏と状況に納得いかぬことが多々ある。

    それはおそらく、当事者においても同じことであったろう。

    哀れな少年と彼をめぐる仲間たち、愚かな大人、誰一人幸せを享受できぬまま終わるストーリー。
    この先、彼らに平安が訪れるかどうか、かすかな希望すら打ち消される不安感。
    ヨーロッパや中東、アフリカ北部は歴史的にもこの先安定することはないことを知っている現代のわたしたち。

    悲哀のもとに終わってゆくであろう彼らに、つかの間の安息を願ってやまない。


    著者は昭和5年生まれの方、ということだが、古さを感じさせないどころか、新人作家のようなみずみずしさを含んでいる。故に作品中の哀れな人々の描写を冷静に受け止めることができた。

    前知識がなくとも楽しめる1冊なので、機会があれば是非読んでいただきたいお話である。

  • ハードカバーで読了。

  • 一点の染みもない潔癖な少年と無垢な子供たちが、乳と蜜の流れる聖地を目指す。罪に汚れた大人たちに利用されながらの旅の果て、新たな試練の始まりのラストに光明と切なさが入り交じる♪。

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