すぐそばにある「貧困」

著者 :
  • ポプラ社
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感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591146569

感想・レビュー・書評

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  • 身近にある多くの要因が重なり働きたくても働けない状況から住む場所を持つ事ができない人がいる事が分かった。
    そして簡単では無いけど、大西さんの活動により、困った人が一人でも社会保障にたどり着ければとも思った。
    もう一つは、人には居場所が必要なんだなぁ
    2021.8.22

  • 積読解消プロジェクト遂行中。

    本書の中に出てくる湯浅誠さんのお話を伺う機会があり、確かそれをきっかけに手に取った本だったと記憶してます。ずいぶんと積読してしまいました。

    貧困は、日本に、しかもかなり身近に存在しています。それは間違いありません。
    それを直視できるかどうか。身近な、あるいは我が事として考えられるかどうか。

    我が家は、世帯収入だけ見れば貧困にはあたりません。
    だからと言って裕福な家庭とは言えないし、収支で見ればかなり厳しいやりくりを強いられています。一時期は心療内科の症状で病休も取り、ますます厳しさも増しました。
    そういう状態で読んでいるからか、全く他人事とは思えません。むしろ、恐怖さえ感じます。

    我が家は、私は、大丈夫なのだろうか。

  • 経済大国ニッポン!
    などと言われつつも実は日本人の6人に1人は「貧困」に陥っているという

    その「貧困」の現実はよくわかっていない人が多い

    「生活保護をうけるということ」
    「なぜホームレスの人は簡易宿泊所を紹介されても行かないのか?」
    「働けるのに働かないってなまけものなんじゃない?」
    とか…

    「貧困」を知らない人はその現実を知らない。
    いや、考えていないし、知る必要もないと思っているのかもしれない。
    とエラそうに書いている私もその一人なのかもしれない

    病気や近親者の暴力、リストラなど…
    ふとしたことから人は「貧困」に陥る
    そしてその可能性がある
    それは誰にでもあり
    他人事ではない

    この本はそんな貧困の現実、生の声を教えてくれる

    大西さんたちもやいのスタッフやボランティアの皆さんの活動のすごさに頭が下がる
    その反面、心身ともに削るように活動している大西さんたちが心配になった

    人は一人では生きていけない…

    「さびしかった…」というクロダさんの言葉がしみた

  • 生活保護をめぐる問題や子供の貧困。ニュースは日々あれこれと耳にするけど、「貧困」って具体的にどういう状態なのか? 
    生活困窮者の自立サポートを目的とするNPO法人「もやい」理事長が、支援に携わるまでの自らの道のり、そして実際にサポートした人たちの事例を綴る1冊である。

    肩書は理事長だが、1987年生まれ、20代の若者である。しかもどちらかというと、信念に燃えた熱血漢というわけではなく、ごくフツーの青年のように感じられる。
    不登校で町をふらふらしていた高校時代、著者はホームレスの人たちに親切にしてもらったことがあり、そのときのことがどこか、心に引っかかっていた。高校卒業後、フリーターとして働く中、友人に誘われて参加した炊き出しをきっかけに、徐々に支援の世界に深く足を踏み入れていくことになる。

    著者が携わる「もやい」の仕事の中心は、生活困窮状態にある人の相談に乗り、行政との橋渡しを務め、自立生活を送れるように支援することである。夜回りのパトロールをしてホームレスの人たちに声を掛け、相談会を開いて個別の事情を聞き、生活保護の申請に同行する。時間も不規則だし、ときには困窮者が緊急的に宿泊する際の代金を肩代わりすることもある、いってみれば、割に合わない仕事である。

    貧困者とひと言で言っても、なぜ支援を必要とするほど困窮したか、その原因は人それぞれだ。
    父親からのDVに遭って家を飛び出してきた若者。老親の介護のために退職した後、自身も病気に倒れた人。精神疾患を持つ家族に暴力を受け、心身のバランスを崩した人。暴力団から一度抜け出て再起を図ったが、淋しさからまた元の世界に舞い戻ってしまった人。
    そうしたそれぞれの状況に合わせ、一方でまた、行政の側の事情に合わせて、適切な支援を引き出し、当てはめていくためには、双方を知る仲介役が必要になってくる。

    深刻な問題ではあるが、著者はこうした事例を、非常に読みやすく、わかりやすくまとめている。貧困者という名札の向こう側に、血の通った人の姿が見えてくる。支援対象者・行政・著者のそれぞれの視点を丁寧に記すことで、まるで短編小説のように、支援対象者の来し方や現状が描き出される。
    合間に挟まれる貧困者を巡るデータもわかりやすい。
    読み進むにつれて、貧困を取り巻く日本の「今」が、徐々に浮かび上がってくる。

    人が貧困に陥る場合、多くは複合的な要因が絡む。身体の病気、過労、DV、借金、依存症、孤立。1つの問題は、往々にして、別の問題の芽となっていく。複数の問題が複雑に絡み合った場合、1つの問題を解決すればよいというものではなくなる。
    ひとたび貧困に陥ったら、抜け出すことはそう簡単ではない。一方で、貧困への入口そう
    狭くない。本書の事例はそれを物語る。

    困窮者のための支援として生活保護があるわけだが、不正支給に対するバッシングに代表されるように、世間の目は厳しい。だが現場に関わる人の感覚としては、不正受給の率は、ゼロではないが、相当に低いというのが実感であるという。

    全般に、高みから見下ろして糾弾したり、批判したりという色合いがない。
    義憤がないわけではない。問題があると感じてはいる。が、拳を振り上げて闘うというよりも、今現在、困っている人に寄り添い、ともに考える姿勢がある。
    そこにはこれが「他人事」ではないという実感がある。同時に、この問題がいつか解決されるはずだという静かな希望もある。
    貧困を考えるさまざまな視点をくれる1冊である。

  • 一気に読んでしまった。本当に身近な貧困問題、考えさせられた。ここ数年貧困を理由に生活保護を受けることなく亡くなるというニュースを聞く度に、なぜ?と心が痛む。生活保護を受ける権利があるのに、ほんの一部悪質な不正受給者の問題から、全てが不正だと言わんばかりの報道や政府の生活保護制度削減などでのしめつけ、制度がただしく説明されてないために生じる誤解、受けることへの抵抗感、世間の偏見などがこの問題をますます複雑にしてる。6人に1人が貧困という現実。一度貧困に陥るとなかなか抜け出せない穴のような、存在。今必要なことはその貧困の現実を知ること、そして自分には、何ができるかを考えたい。

  • 面白かった。面白かった、っていうのは変かもしれないけど、ページをめくる手がとまらなくって一気読み。タイトルからしたら暗い話が並んでるのを想像してたけど、大西さんの実体験を基に、職員の人たちとの会話もたくさん盛り込んであって、リズミカルに進んでいく。大西さん自身も書いてたけど、最後が2012年のところで。出版した時期からしたら、かなり前のところ。それだけ濃い毎日を過ごしてらっしゃるのだろうな。
    日本は紛争やテロが起こっているような国ではないけれど、思っている以上に貧困に陥っている人が多い現実が分かりやすく書かれていた。

  •  日本には絶対的貧困は少ないといわれる。絶対的貧困とは1日に生きていくためのお金が足りないということ(乱暴な説明だけど)。
     相対的貧困とは生きていくことはできるけれども、平均と比べて貧困であるということ。日本はこれが高い。いわゆる格差社会ということか。

     内容については、ああ……いろんな人がいるなぁと思うのだけれども。よりキャッチーな命に係わる人を助けてます!とかショッキングな事例は取り扱わず、もやいの日常に焦点を当てているところがポイントで。
     生活保護を受けるべき(受けたほうが当人のためになる)ときでも、受けない気持ちが分かるような気がする。弱者であると認めたくない。
     生活保護に限らず、社会においても、有益である人間であることが望まれている。
     その有益さって、誰にとってなんだろうか、自分にとってならば幸せなんだけれども、会社や社会や他者にとって有益のみであり、自分にとって不利益ならば、それは不幸なんじゃないかなぁ。
     生きるということはなんなんだろね、と考えさせられる。

  • 大西さんと10個のエピソード。
    章間のコラムはデータを使用しての解説。
    身につまされるように読んだ。

  • 考えても考えても正解が分からない。
    解決の糸口はどこか。自分がまず動けることは何か。現業と照らし合わせて考えたい。

  • 難しい言葉を使わずリズムが良く、一章も短いので自分のような知識のない者にも分かりやすかった。中学生以上なら読めると思うので、是非お勧めしたい。

    余談ですが、筆者の大西連さん、麻布学園出身なんですね。進学しないのはかなり珍しかったと思いますが、いわゆる地頭の良い方なんだろうなと、この本を読んで思いました。

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