コンビニコーヒーは、なぜ高級ホテルより美味いのか (ポプラ新書)

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591146927

感想・レビュー・書評

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  • 世界的な「コーヒーハンター」がコーヒーの最新事情を説く一冊。
    著者の川島良彰氏はエルサルバドルの大学に留学し、エルサルバドル国立コーヒー研究所に入所。その後UCCに入社し、ジャマイカやインドネシアなどでコーヒー農園の開発を行った日本人です。
    その川島良彰氏が、昨今話題になっているコンビニコーヒーを解説する。なぜ100円でおいしいコーヒーが提供できるのか。どうしてホテルのコーヒーは1000円もするのにコンビニコーヒーよりもおいしくないのか。おいしいコーヒーはどのようにして栽培され、私達消費者の手元に届くのか。そんな疑問に応える一冊となっています。

  • ただ、ひたすら著者の珈琲への愛情、熱が伝わってきました。この想いに共感した人が増えれば、珈琲に対する理解も変わってくるのかもしれません。

  • ブルー・ボトル・コーヒーが日本上陸、などのニュースが出ていた頃この本のタイトルと触りを読み、興味があって今般手に取りました。
    川島さんのお名前をよく知らず、西洋至上主義を批判するような内容なのかなと思っていましたが
    コーヒーに対する愛情、現在の日本のコーヒー業界への疑念など
    兎に角コーヒーへの愛情に溢れた本でした。
    今までコーヒーに興味がなかったこともあり、
    日本は世界第4位の消費量を誇るコーヒー大国だということを知りませんでした。


    ミカフェートは知っていたので、プロフィールを見てなるほどと思いましたが、この本を読んで川島さんというのは
    本当に凄まじい人だなと感服しました。

    自分はコーヒーより紅茶派で、その理由は正に
    飲めないほどまずいコーヒーはあるけれど飲めないほどまずい紅茶は無いから。
    普段は勿論、お店に行ってもコーヒーを頼むことはありませんでした。
    苦くて渋いもの、酸っぱいもの、砂糖やミルクを入れないと味がしないもの、まずいもの、そうしたイメージだったからです。

    おわりに に書いてあった通り、この本のお蔭でコーヒーについて知ることができましたし、
    自分は恐らく本当においしいコーヒーを飲んだことがないし、
    是非とも飲んでみたいと思いました。


    コーヒーの抽出の仕方をYoutubeを見て覚えたとか
    売れさえすればいいから抽出器具のメーカーも正しいやり方を教えない
    というエピソードは驚きでした。
    商習慣で、豆の契約をしてくれたら器具を無料貸出というのが普通になっていて、納入される豆は会社任せというのも驚きでしたが
    そんな状況ではこれまでコーヒー豆にこだわろうというお店が出てこなかったのも納得です。

    抽出後20分以内でないと美味しくないという話は、
    確かに以前某ドーナツ屋さんでバイトしていたとき、コーヒーは抽出して30分保温したら全て捨てて新しく入れ直していたことを思い出しました。

    コーヒーはフルーツであるという感覚、確かに今までありませんでした。そう聞けば、鮮度や輸送、保管、パッキングの方法など全てが大切になってくること、容易に理解できました。
    コーヒーといえば麻袋というイメージ、確かに持っていましたが、まさか軽くて安いから、というだけの理由とは。

    焙煎は料理というのもなるほどと思いました。料理の技ももちろん大切ですが、普通なら素材も吟味するでしょう。

    コーヒーの価格が飲食店の格で設定されていて、本当の意味では適性価格ではないのに
    それが普通になってしまっているコーヒー業界にも消費者にも問題があったのだと思います。
    ホテルやレストランで食後のコーヒーにがっかりしたこと、
    確かにあるのですが、そんなものだと思っていましたし、
    だから自分はコーヒーは好きではないのだと思ってもいました。
    酸味と酸化は違うという言葉に、多分自分はそれを混同していただろうと思います。

    欠点豆を取り除くだけで変わるというのは、以前別の本でも読んだことがあります。
    知識がないと、袋で買ってきたらそのまま使えるものだと思いがちです。
    安い豆を買ってまずいまま飲むか、たくさんの欠点豆を取り除くかと、高いけれど欠点豆が入っていない豆を買って飲むかでは
    多分後者の方がいろんな意味でお得なのだと思います。


    何品種も同じ畑で育てていては交雑してしまうし、
    土地に合わない品種を無理に育てても良いものは育ちません。
    知識がなくて「これが◯◯種の苗」と嘘をつかれても信じてしまうというのは
    嘘をつく方がもちろん悪いのですが、知識が無いということの問題を感じます。

    プロジェクトの話で、
    おいしくないコーヒーを可哀想だから買ってあげるというのではなく
    本当に美味しいコーヒーを育ててもらうというスタンス、とても尊敬できます。
    MUJIcafeが賛同してその豆を使うというのも流石です。

    流石と言えば、フレンチの料理長やジャンポールエヴァンが川島さんのコーヒーを認めるというのもすごいエピソード。
    やはり本物の味が分かる人には分かるということなのでしょう。

    ホテルニューオータニのグランシェフ、パティシエの中島さんが
    自分が作ったスイーツを6種持ってきて、一緒に食べてから
    合うコーヒーについて話し合うというのも素敵なエピソードでした。

    JALのコーヒー開発のエピソードには感動しました。
    みんなが本気で向き合ったからこそ、本物は完成するのですね。

    それにしても、川島さんのやり方は他の業者のように
    無償で機械を提供しないのは良いとしても
    こうしてそれぞれのクライアントの為に開発やトレーニングまで
    行ってしまうというのが凄いです。

    品質の高いコーヒーだから売れると思うなよとコーヒー関係者に言われたとのことですが、
    この本の中でもご本人が仰っているとおり
    高いコーヒーを売ればいいというのではなくて、
    包装の方法や輸送方法などケースバイケースで柔軟に対応し
    案件に対してベストな方法、商品をプロデュースしているという
    誠実さが実際に認められてきたのだと思います。

    本来の美味しさを発揮できない環境、輸送方法、管理方法下の豆を
    いくら焙煎や淹れ方に拘って淹れたところで
    本来の美味しさにはならないでしょう。
    これは根深い問題で、
    消費者は「高いのに美味しくない」と思い豆の評価が下がり、
    「高くてもおいしくないなら、安いもので十分だ」となって
    業界全体の質が低下していくことになるのですが、
    その深刻さを業界や消費者が把握していなかったように思います。

    川島さんのやり方を最初に認めてくれたのはワイン愛好家、
    次がシガー愛好家というのはなんだか面白いです。
    逆に言えば、今まではそうした違いがわかる、こだわりがある
    コーヒー愛好家が少なかったということなのでしょう。

    ボトル詰めコーヒーについて、採算が取れなければ普通はやめてしまうものを、
    川島さんは実現したというのがすごいです。

    コストがかかるのも詰めにくいのも売る側の都合
    そんなことでやめていたらコーヒーの価値を上げることはできない
    というコメントも、川島さんの情熱がうかがい知れます。

    生産者は自分たちの作った豆がどんなコーヒーになるのか知らない、
    飲んだことがないというのは、意外なようでよく考えれば当たり前のことでしょう。
    生産者に川島さんが作ったコーヒーを持参するという気遣い、なかなかできることではない気がします。

    日本流を押し付けるのはもってのほか、他の産地と同じことをやってもだめ
    その土地に古くから伝わってきたやり方や流儀を、尊重しつつ新しい技術を受け入れてもらう
    やって見せて納得してもらう、
    そうした地道で誠実な努力が実を結ぶのは、傍から見ていても気持ち良いことです。

    コーヒーのピラミッドという言葉にあるように
    ワインのように様々な場面でそれに見合ったコーヒーを選ぶというのは
    多分ハレとケを意識してきた日本人としては本来一番しっくり来る
    コーヒーの飲み方だと思います。
    スペシャルティだけがコーヒーではないのだと、コーヒーの専門家が言うことに意味があると思いました。

    今のコーヒー業界では、「こだわりのコーヒー」と謳っていても
    そのこだわり時代が間違いだったり思い込みだったりすることもままあるのでしょう。

    スタバやコンビニコーヒーを馬鹿にするのではなく
    それぞれの良さを認めつつ、それとは別にハレの日のちょっと良いコーヒーを飲もうと思った時
    それができる場所を提供してくださるというのは
    実はとてもすごいことあり、ありがたいことです。

    今まで価格しかコーヒーのものさしがなかったところに、
    セブンカフェというものが新たなものさしとして登場しました。
    消費者が美味しいコーヒーを意識し、様々なものさしを持つことで
    コーヒーの世界がより活発になれば良いなと思いました。

  • なぜホテルのコーヒーが、コンビニコーヒーより美味しくないのか?単純な話で、良い珈琲豆を使ってない、提供方法もアカン、ということかと思います。美味しいコーヒーを飲みたいですよね…。

  • この著者のような、コーヒーハンターが日本に居たとは知らなかった。
    コーヒー品質、味のピラミッドを作るのは本当に大切だと思う。食に対するコスト意識ばかりで、品質に対する部分が希薄になっているのは気になる

  • 一気に数時間で読んでしまった。しっかりした豆を買って、淹れたてのコーヒーを飲みたくなる。

  • コーヒー狂、川島氏の半生とともに、一般に平均してあまり知られていないコーヒーに纏わる真実の数々を解説している。『コーヒーは、ワインと違って品質に見合った価格かつけられていない』という、この言葉に始まりこの言葉に終わる業界の実態。コーヒー産業におけるスタバの位置づけを理解していないような人間は一読すべき。

  • 低価格から最高級まで、グレードの中でより良いコーヒーを目指す筆者の熱意が伝わる一冊。
    コーヒーにおいて、文化・商習慣的に価格と味が必ずしも一致しない現状が生まれた経緯と、目指すべき理想形が示されてて、美味しいコーヒーが飲みたくなった。

  • タイトルに書いてあることが本書のメインではないけど、それは新書のタイトルの定番なので、気にしたらダメ。
    でも、コンビニコーヒーは確かにコーヒーの基準になってしまった。100円よりも高いコーヒー飲んで、セブンイレブンより美味しくなかったらちょっと不機嫌になってしまう自分がいる。
    家で飲むコーヒーも値段と味のバランスを考えながら選ぶようになった。
    こんな風に消費者がコーヒーを選ぶようになれば、筆者の言う通りにワインと同じようになるかもしれない。

  • コーヒーはフルーツ。酸味を味わうもの。
    果実はコーヒーチェリーと呼ばれる。
    現在のベンチマークのコンビニコーヒーの原価は12~13%。
    コーヒー店のスペシャリティコーヒーも原価差は10円程度。
    ホテルのコーヒーは1杯ごとに挽いて淹れていない。
    それでいてコンビニの10倍の売価。

    品質のための最低限のこだわり
    1.単一品種栽培
    2.完熟
    3.精選
    4.空輸または定温コンテナ(温度管理しない場合との差は20円/kg)(麻袋は軽くて安いだけの理由)
    5.低湿定温管理
    6.焙煎後の密閉保管

    ブランドにあぐらをかいて品質を二の次にした結果、ブルーマウンテン、コナは神話が崩壊。

著者プロフィール

1956年静岡県生まれ。1975年中米エル サルバドル国立コーヒー研究所に留学し、コーヒー栽培・精選を学ぶ。大手コーヒー会社に就職。ジャマイカ、ハワイ、インドネシアで農園開発を手掛け、マダガスカルで絶滅危惧種の発見と保全、レユニオン島では絶滅したといわれた品種を探し出し、同島のコーヒー産業復活を果たす。2007年に同社を退職後、日本サステイナブルコーヒー協会設立し、2008年に株式会社ミカフェートを設立。

「2022年 『人生を豊かにしたい人のための珈琲(仮)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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