([ほ]4-1)活版印刷三日月堂 (ポプラ文庫 ほ 4-1)

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  • / ISBN・EAN: 9784591150412

感想・レビュー・書評

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  • /_/ 感想 _/_/_/_/_/_/ 
     
    久々にこのシリーズを読み直そうと思い手にしました。私の大好きな作品です。全シリーズ購入して持っているので、好きなタイミングで読めるのがいいですね。ゆっくり、全巻読んでいきます。

    祖父が経営していた印刷所を、孫娘の弓子が継いで再開するお話なんですが、活版印刷と弓子の想いを通じて、皆が前に進んでいきます。

    弓子は活版印刷を再開したばかりで、新しいことに挑戦していきますが、「慣れたことだけをしていてはダメ」という言葉に共感します。今までに経験していない新しいことにいつまでも手を出していきたいと思わせてくれます。それこそ、活版印刷をやってみたいという気持ちは、以前この作品を読んだ時から持っています。来年はやってみようと思います。

    以前読んだ時は、感想を書いていなかったためか、記憶にない部分が多くて、初めて読んだような感じでした。序盤からジワっと涙が溢れてきて、とても心が動かされました。

    とても温かさを感じる作品で、多くの悲しみや迷いの感情の中で、ジワリと幸せを感じることができる作品です。この作品を読むと、静寂に包まれる感じになるとともに、前へ進んでいく気持ちになります。


    /_/ あらすじ _/_/_/_/_/_/

    連作短編集です。
    各話で主人公となる人物と、弓子と活版印刷を通じて、皆が前に進んでいくお話です。

    ■世界は森 ハル
    ハルの息子の森太郎が北海道大学の入学に合わせて、巣立っていきます。
    弓子は活版印刷でレターセットをつくります。

    ■八月のコースター 岡野
    喫茶店を経営する岡野、元経営者の叔父さんと自分を比べて苦悩する日々を送っています。
    弓子は活版印刷でショップカードとコースターをつくります。

    ■星たちの栞 遠田
    宮沢賢治の作品に関わる思い出を持つ遠田先生と、生徒二人が、活版印刷のワークショップに関わっていく。
    弓子は活版印刷のワークショップを開き、栞をつくります。

    ■ひとつだけの方じゃ 雪乃
    結婚を控えた雪乃が祖母が持ってい活字を使って招待状を作りたいと考える。
    弓子は活版印刷で結婚式の招待状をつくります。


    /_/ 主な登場人物 _/_/_/_/_/_/

    ■三日月堂
    月野弓子 28歳、不器用、気まじめ、職人気質

    ■ランニング仲間
    市倉ハル 川越運送店
    市倉森太郎 しんたろう、ハル息子、北海道大学、大学生
    大西 観光案内所のバイト、文具フェチ、20代、大学院生
    柚原 30代後半、背が高い
    葛城 ガラス店兼工房経営、男性

    ■桐一葉
    岡野

    ■私立鈴懸学園(高校) すずかげ
    遠田真帆 おんだ、先生
    村崎小枝 文芸部部長、高校2年生
    山口侑加 〃

    ■結婚を控えた2人と友人
    雪乃 大西の一年先輩、司書
    宮田友明 結婚相手
    金子 デザイナー


    /_/ 機械 _/_/_/_/_/_/

    ■手キン
    手刷の機械

  • 活版印刷、と聞いてすぐに思い描いたのは宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』。
    ジョバンニが活版印刷所で働いていたシーンが浮かんできた。
    必要な活字を一つ一つ探しあて、丁寧に並べて紙に刷る。
    それら全てがアナログの手作業。
    独特の濃いインクの香りが読んでいる私の周りにまとわりつく。

    亡き祖父の活版印刷所「三日月堂」を引き継いだ28歳の弓子は、印刷所を訪れる悩み深き人達にそっと寄り添う。
    紙に刻み込まれる選ばれし文字達。
    けれど刻み込まれるのは文字だけではない。
    文字を選んだ人達の思いも刻み込まれ、大切なあの人へと伝えられる。
    僅かな凹みが与える心地よい紙の手触りから生まれる温もり。
    文字一つ一つの息遣いまでもが聴こえてくるようだった。
    活版印刷の持つ味わい深さと柔らかさがじわりじわり心に染み入る。
    みんなの優しさに何度も泣けた。
    〈桐一葉〉のコースターは私も欲しい。

    「人生は道、世界は森、結婚は橋」
    「自分で自分の道を決めて、そこで人の役に立つ仕事ができるのが大人」
    「素敵であり続けるには、ちょっとずつ更新しなくちゃいけない」
    ハッとする文章も多かった。
    このシリーズはぜひ読破しなくては。

    • いるかさん
      mofuさん

      はじめまして。
      私もこの本を読んで感動しました。
      そして活版印刷にもすごく興味をひかれました。
      結局シリーズ全部 ...
      mofuさん

      はじめまして。
      私もこの本を読んで感動しました。
      そして活版印刷にもすごく興味をひかれました。
      結局シリーズ全部 一気に読みました。
      続きにレビューも楽しみにしていますね。
      よろしくお願いいたします。
      2020/03/07
    • mofuさん
      dolphin43さん、はじめまして。

      私もとても感動しました。
      全ての章で泣きました。
      活版印刷の丁寧さ、とてもいいですね。
      このシリー...
      dolphin43さん、はじめまして。

      私もとても感動しました。
      全ての章で泣きました。
      活版印刷の丁寧さ、とてもいいですね。
      このシリーズは図書館で4冊一緒に借りれたので、続けて読みたいと思います。
      三日月堂の柔らかな余韻に暫く浸りたいと思います(*^^*)

      コメントをありがとうございました!
      2020/03/07
  • 活版印刷の店を受け継いだ若い女性。
    手作りの小さな印刷物のいとしさ、しっとりした雰囲気の連作短編集です。

    川越の町の一角に、ひっそりと「活版印刷三日月堂」があります。
    ドアから覗くと、大量の活字が上から下までびっしり並んでいる迫力な店内。
    店主の弓子はまだ若い女性だが、もう身内がいないのでした。
    祖父から受け継いだ店の、大きな印刷機はもう使えない。
    それでも子どもの頃の思い出が懐かしく、小さな印刷機を動かしてみると、活字を一つ一つ選んで並べた仕上がりには、独特な味わいがありました。

    そんなお店があることにふと気づいて、やってくる人々。
    依頼するお客さん達の視点で描かれ、話を聞いた弓子さんの提案によって、小さな願いや悩みが少しずつ整理されていきます。
    巣立つ息子へ送る名前入りのレターセットや、月替わりのコースター、結婚式の招待状など。
    本人の好みと、受け取る相手への優しい思い。
    微妙に不ぞろいだったりする活字のどこか古風な雰囲気に、気持ちがこもっていて、手に取った人が笑顔になる。

    6作を、楽しみに読んだシリーズです。
    だいぶ前だし、色々な方がレビューされていたからいいかとも思ってましたが。
    やはりこれは好みなので、アップしておきます。

  • とても良かった。
    心の奥から温かい何かが溢れてくるような、包まれるようなじんわりとしたもので涙が溢れた。
    誰かを大切に想う気持ちと文字や言葉を通じての温かさ。
    古くからあるものを通して感じる、時の流れと活版印刷によって吹き込まれる文字に生命が生まれる感じ。
    とても心地よい読後感で大満足の読書になった。

  • ブクログで出会った本。印刷会社で働いていたのと、活版印刷の独特の風合いが好きなので、タイトルで惹かれた。読んでみると予想以上に素敵なストーリーだった。
    舞台は川越にある小さな活版印刷所、三日月堂。身寄りを亡くした弓子さんが祖父のあとを継いで再び店を再開し、持ち込まれる様々な依頼を通じて周辺の人々と関わり合い、それぞれのご縁を紐解いていく展開。最初と最後の章が特に好きだった。家族との繋がりを考えさせてくれた。

    自分もDTPの仕事をしているけど、今も使われている「組版」という言葉は字面通り「版を組むこと」だったんだなということが実感できた。文字にはそれぞれ重さや長さがあり、物質的なものだったのだということ。最終章のデザイナーの金子くんの言葉にはすごく共感できたな。「仕事してても指にはマウスとキーボードの感触しか残らないし、実体のないものをパソコンの中で動かしていくだけ。だからこそ自由に発想できるんだけど、脳の中だけで仕事してるみたいな感じもして、手触りがない」
    宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を改めて読んでみたくなった。

    ●印象に残った言葉
    「自分で自分の道を決めて、そこで人の役に立つ仕事をできるのが大人」
    「だれも、だれかの代わりになんて、なれませんよ」
    「版も活字もないけれど、印刷された文字はこうし’残っている。実体が消えても、影は残る。影が実体になって、いまもあり続けている。」
    「文字がくっきりして見えるのは、凹みじゃなくて『マージナルゾーン』というもののせい」
    「生きているものはみなあとを残す」
    「仕事はいつだって探せる、でも人の縁はそうそう見つかるもんじゃない」
    「空白っていってもなにも入ってないわけじゃない」
    「過去が私たちを守ってくれる。そうして、新しい場所に押し出してくれる」

  • ブクログ談話室で知った本
    以前『「本をつくる」という仕事』という本を読んで、本を作るためのいろいろな側面を知り(とても面白かった♪)、
    その中で知った「活版印刷」という言葉に惹かれて手に取りました
    ほしおさなえさんも『三日月堂』もはじめて知り、2017年12月5日に新版のシリーズ3冊目が発売されてシリーズものなのだとも知り、3冊目は図書館予約済
    3冊目が発売されたからか2冊目の図書館予約数が結構あったので2冊目は古本で見つけたので購入しました^^*

    気のせいかな?
    こちらの文庫本、紙質がとてもしっかりしていて、字の感じもひとつひとつの字間(?)かな?
    何か他の本とは違う感じがしたのですが・・・
    思い込み過ぎ?(笑)

    4つのお話しがあって
    ひとつひとつのお話しのはじめの頁の活版印刷に関わる写真が凄いっ!!中でも活字の写真!!!
    活版印刷三日月堂のある街(町?)川越で生活する人たちと活版印刷
    活版印刷に関するいろいろな細やかな説明と人と人との関わり方、つながりに
    胸にじぃ~んとくるポロリと涙が出るお話しばかりでした
    2冊目、3冊目を読むのも楽しみです

  • 古びた印刷所「三日月堂」が営むのは、昔ながらの活版印刷。活字を拾い、依頼に応じて一枚一枚手作業で言葉を印刷する。そんな三日月堂にはいろんな悩みを抱えたお客が訪れ、活字と言葉の温かみによって心を解きほぐされていくが、店主の弓子も何かを抱えているようで…。

  • 職場の先輩に、ぜひ読んでみて!!と勧められた本。
    活版印刷って、今まで見たことがあるのかないのかわからないくらい、そんなに興味があるものではなかった。
    でも、こんなに人を惹きつける「物として実体のある印刷」、実際に見てみたいと思う。
    四つの連作短編小説。心にじんわりしみて、心が優しくなる。
    シリーズ化されているので、続編も読む予定。楽しみ!!

  • 活字に重さや長さを感じられる活版印刷。パソコンやメールが当たり前の現代に、新鮮な感覚でした。弓子さんや周りの人たちのあたたかさに、現代社会に忘れられたものを思い出せるような本でした。

  • 本が好きだからなんとなく文字にも興味が惹かれ「活版印刷」「三日月」という言葉、そして装丁…読みたい!と思って手にした一冊。
    思った通りとても好きな本でした。
    活版印刷の文字を通して人と人との繋がり、想い、温もりが心地良く、終始穏やかな空気感が漂っている。でもなんでだろう…すごくファンタジックなものも感じた。
    今迄この系統の小説は好んで読んできたけれど、こんなふうにファンタジックさを感じたのは初めてかもしれない(あくまで個人的な感想です)
    続編が沢山出ているようなので楽しみ♪

著者プロフィール

1964年東京都生まれ。作家・詩人。95年「影をめくるとき」が第38回群像新人文学賞優秀作受賞。2002年『ヘビイチゴ・サナトリウム』が、第12回鮎川哲也賞最終候補作となる。16年から刊行された「活版印刷三日月堂」シリーズが話題を呼び、第5回静岡書店大賞(映像化したい文庫部門)を受賞するなど人気となる。主な作品に「菓子屋横丁月光荘」シリーズ、『三ノ池植物園標本室(上・下)』など。

「2021年 『東京のぼる坂くだる坂』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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