ぼくは君たちを憎まないことにした

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制作 : 土居佳代子 
  • ポプラ社 (2016年6月20日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (149ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591150900

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ぼくは君たちを憎まないことにしたの感想・レビュー・書評

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    2017年では114冊目

  • 2015年11月13日に起きたパリ同時多発テロ。惨劇の現場のひとつ
    となったバタクラン劇場での犠牲者のなかに、ひとりの女性がいた。

    女性の名はエレーヌ。17カ月になる男の子の母親で、ジャーナリスト
    の夫と3人で暮らしていた。そのエレーヌの夫であるのが本書の著者
    アントワーヌだ。

    愛する妻を理不尽に奪われたアントワーヌは喪失感のなかでテロリスト
    への手紙を綴り、Facebook上で公開した。「憎しみを与えない」との言葉
    が含まれた文章は多くの人々に共有され、日本のメディアでも取り上げ
    られた。

    初めはネット上で拡散した文章を、家人に翻訳してもらって聞いた。
    その後、新聞紙上に掲載された日本語訳を読んだ。

    少なからず衝撃だった。日常が、正体も分からぬ何者かによって奪われ
    る。喪失感、絶望、苦悩、悲しみ。いろんな感情が錯綜したことだろう。
    そうして、命の簒奪者に対して怒りや憎しみが湧き上がるのは自然な
    心の動きなのだろう。

    だが、著者は憎まないという選択をした。怒りを持続させたり、憎しみを
    燃え上がらせたりするにはエネルギーがいる。でも、心の作用としては
    憎しみを洗濯する方が簡単なのではないだろうか。

    そこに思い至った時、この文章は手元に残しておかなければと思った。
    新聞に掲載された翻訳文は、私のスクラップブックに仲間入りした。

    その「テロリストへの手紙」を含め、エレーヌを失ってからの2週間を散文
    のように綴ったのが本書だ。

    著者は「書く」という行為で、愛する妻を失った現実と向き合おうとして
    いるかのようだ。ネット上を駈け廻った文章だけを読めば、強い人だ
    と感じるのだが、そこにいたのは幼い息子とふたりだけ取り残されて
    途方に暮れているひとりの平凡な男性に過ぎないではないか。

    幸せだと意識せぬほどの当たり前の日々は再生できない。だって、
    ふたりに欠かせない「エレーヌ」というピースは永遠に失われてし
    まったのだから。それでも日常は連綿と続く。残されたふたりは、
    明日も明後日も、生きて行かねばならないのだから。「エレーヌ」と
    いう宝物を抱えて。

    憎しみは新たな憎しみを生む。だから、どこかで断ち切らなければいけ
    ない。多分、誰もが分かっているはず。それでも憎悪の連鎖は続くのだ。
    断ち切るのが難しいことだから。

    だから本書を読んで考えたい。もし、愛する者を突然奪われたら、私は
    相手を憎まないとの選択が出来るのか…と。弱くてもいいのだ。憎しみ
    の連鎖を断ち切る気持ちを持てるのであれば。

    尚、以下にテロリストへの手紙の、本書収録の訳文を掲載する。メディア
    によって少々訳文が違うようだけれど。

    「 金曜日の夜、君たちはかけがえのない人の命を奪った。その人は
    ぼくの愛する妻であり、ぼくの息子の母親だった。それでも君たちが
    ぼくの憎しみを手に入れることはないだろう。君たちが誰なのかぼく
    は知らないし、知ろうとも思わない。君たちは魂を失くしてしまった。
    君たちが無分別に人を殺すことまでして敬う神が、自分の姿に似せて
    人間をつくったのだとしたら、妻の体の中の銃弾の一つ一つが神の心
    を傷つけるはずだ。

    だから、ぼくは君たちに憎しみを贈ることはしない。君たちはそれが目的
    なのかもしれないが、憎悪に怒りで応じることは、君たちと同じ無知に
    陥ることになるから。君たちはぼくが恐怖を抱き、他人を疑いの目で見、
    安全のために自由を犠牲にすることを望んでいる。でも、君たちの負け
    だ。ぼくたちは今までどおりの暮らしを続ける。

    ぼくは今日、妻に会った。夜も昼も待って、やっと会えた。彼女は金曜日
    の夜、出掛けて行った時と同じように美しく、十二年前、ぼくが狂おしく
    恋した時と同じようにきれいだった。もちろん、ぼくは悲しみに打ちひし
    がれている。このことでは君たちに小さな勝利を譲ろう。でも、それは
    長くは続かない。ぼくは彼女がいつの日もぼくたちとともにいること、
    そして自由な魂の天国でまた会えることを知っている。そこに君たちが
    近づくことはできな。

    息子とぼくは二人になった。でも、ぼくたちは世界のどんな軍隊より強い。
    それにもう君たち関わっている時間はないんだ。昼寝から覚める息子
    のところへ行かなければならない。メルヴィルはまだやっと十七か月。
    いつもと同じようにおやつを食べ、いつもと同じように遊ぶ。この幼い
    子供が、幸福に、自由に暮らすことで、君たちは恥じ入るだろう。君
    たちはあの子の憎しみも手に入れることはできないのだから。」

  • 全編に「悲しみ」が満ち溢れている。
    人はあまりの悲しみに直面すると、人を憎むことなど忘れてしまうのだ。

  • テロリストの目的は憎しむを生む事であるという言葉を耳にした事がある。悲劇の中、それでも、世界を愛するなんて綺麗事ではなく、「憎しみを与えない」という一人の男から紡がれた言葉が胸に響いた。

  • フランステロで妻を失うも、負の連鎖を作らないよう生きる努力をした人。小さい子供もいて(いるからこそ頑張れた?)、母の死をどう伝えるのか。
    フェイスブックで「テロリストにあてた手紙」で有名。

  • 愛する妻が死んでも
    世界は変わらずまわっていく
    その残酷さ
    人間としての
    苦悩や弱さに 胸が痛くなります

    食べて 眠り
    ママを思って泣いて
    父親に笑いかける
    小さなぬくもりが
    どうぞ これからは 
    守られますように

  • 2016/11/18読了。
    そうか、あれから一年たったのか。
    彼がSNSにあげた、犯人たちへの手紙はすごく印象に残って頭の片隅にあった。
    この本がそれだったとは。
    子供はいないけれど、ラストシーンには目頭が熱くなった。
    負の感情は連鎖する。
    憎しみや悲しみの連鎖を自分で止めたこの人は、本当に強い人なんだな。

  • 原文がフランス語だからか、読みにくい。まどろっこしい。ニュース記事でよかったかな。このジャーナリストの言わんとしていることに私は大変共感した。「妻をテロリストに殺されても、私はあなた(テロリスト)を恨まない」ってことに尽きる。
    まぁ、でも残された家族は今まで通り生活して行くわけだが、そこまではだれもケアしてくらないよね。

    20161117

  • 偶然この書籍を読み終えたのがパリ祭当日だったが、かなしい内容とは裏腹のあまりに美しい描写に心はむしろ凍りつき、泣くことさえ忘れて一気に読み進めた。フランス語は全く分からないので翻訳からしかこの執筆者の真意を読み解くことが出来ないが、宗教の壁の下に埋まって行った一人の無念を私も共に心に留めて行くだろう。
    Pray for Paris, あらためて合掌_◯

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