洗礼ダイアリー

著者 :
  • ポプラ社
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感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591151471

作品紹介・あらすじ

現代詩人の登竜門「中原中也賞」を18歳で受賞した、詩人・文月悠光さん(@luna_yumi)が〈生きづらさ〉を研ぎ澄まされた言葉で解き放つ初のエッセイ集。ポプラ社のウェブマガジン「WEB asta*」の大人気連載、待望の書籍化。

言葉の繭の中に住んでる文月さん。
時々手を伸ばしては、外の世界にこわごわ触れる。
その姿が滑稽で痛くて愛おしい。
───瀧波ユカリ(帯コメントより)

感想・レビュー・書評

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  • 全く存じ上げない詩人さんでしたが、(たしか、)以前朝日新聞で取り上げられていた一文にピンッっときて読んでみたら、エッセーでした。

    何の予備知識もなく読んでいたら、あら、この詩人さん、かなり若いのね…若い頃の感情を思い起こさせられ、自分も年取ったなぁと実感。

    若い頃は悩む時間や余裕や自由があり、悩む事、考える事自体が人生の意義のような、悩んでいれば何かしらをしている気になれていた気がしていた事に思い当たった。

    引用…
    一緒にいたい気持ちと、離れたい気持ち。私はいつも、どちらかが過剰みたいだ。誰かと一緒の時間に溺れたり、ひとりの時間に没頭して他人を遠ざけたり。我に返って「ごめんね」と水をやっても、相手はしおれ、色あせていく。

    詩人だけに、言葉のチョイスが絶妙で、ハッとする表現に度々出会えました。

  • 現代に生きる詩人のエッセイ。
    この面倒くささは親近感がわく。
    異性に恐怖を抱いたり、恋愛がうまくいかなかったり。
    この人可愛いのになぁ。
    人の目を気にしたり、SNSに投稿してみたり。
    同世代だからこその共感があった。

  • もし感情を形づくる粒子みたいのがあるとしたら、著者のは細やかで円やかなんだろうな。で、それを表現する言葉の解像度が高いので、読んでてぐっとしみてくる感じがある。こういう文章を前にすると、どうしても自分の精神のガサツさを省みてしまう。

    「人間スイッチ」が、初めはスキンシップというコミュニケーション形態への考察かなと思いきや、とちゅうから國分功一郎『中動態の世界』みたいな話になってきておもしろかった。

  • エッセイを読んでて1番危ないのは
    自分が賢くなったつもり、
    自分が何かを簡単に手に入れたと
    思ってしまうことだ。
    ただそれは諸刃の剣で(つもり)なだけで
    私は何も変わってない焦燥がある。

    その感覚がこの本にはある。
    プラスもマイナスもひっくるめて

    自分の事を詩人の感性なんてない
    垢抜けない普通の私の
    さして変わらない日常と言っているが

    現代において天然記念物の「生きる詩人」であることの難しさ、楽しさを
    ジップロックして凝縮してある。

    鮮度がいいうちに味わって欲しいので
    是非同じ時代に生まれた事を感謝して
    お早めにお召し上がりください。

  • 詩人・文月悠光さんのエッセイ集。装画・カシワイさん。
    文月さんのエッセイ集は2冊目。『臆病な詩人、〜』では直面した問題に対する悩み方・身の振り方に共感したりスッと理解できるポイントが多く、今作も文月さんに親しみを感じながら読んだ。
    『「かわいい」は疑え!』守られるために愛嬌を振りまき弱者を演じる、その必要がある社会的構造。
    『祖母の膝』祖母と母と私。

    詩集はまだ読んだことがないので、さすがにそろそろ読みたい。

  • "子どもの頃は、本ばかり読んでいた。授業中も、夏のプール教室の帰りもら修学旅行の列車の中でも。ただ、書き手としては特に意外性のないエピソードである。さらに聞かれるのは、「どんな物語が好きでしたか」「作家は誰を読みましたか」という本の内容についての事柄だ。内容なんて、実はほとんど覚えていない。読むという行為そのものが何より刺激的で、圧倒されるような「儀式」であったから。"

  • この臆病さやナイーブさはなんとなく私より少し若い世代の感覚。でも私にもわかる部分がたくさんあった。傷つき苦しみそれでも自分の中で少しずつ消化していくこと。自分を救えるのは自分しかいないんだよなあ。

  • “決められた仕事をこなしていると、自分の中の「認められたい」という欲求が息を潜めるのがわかった。エゴが殺されるその時間は、平らかで心地よかった。”(p.21)

  • 清廉潔白で、無垢な詩人の姿などここにはない。

    自意識を認めながら、生きることをもがいている姿がここにはあります。

  • 名前はずっと知っていた
    最年少で賞を受賞した詩人という新聞記事はあまりに衝撃的だった

    当時自分は詩を書き始めていた頃のような気がする

    「すごい人がいるなぁ」と
    海の向こうを見るような気持ちだったことを覚えている

    ――それから

    いくら歩いても 眩しさと同時に影も濃くなって
    喜びが増えた分 痛みも深くなった

    詩集を何冊か出版して
    自分は詩を書く人ではなくて 詩人なんだなって 思うようになって

    自分が信じた言葉は 決して間違っていなかったのだと
    受け取った人が 教えてくれた

    そうして出会った 詩人の物語

    海の向こうにいる どこか遠い人の理想ではなく
    きっと同じ思いを持って どこかで戦っている
    同じ風景を見た人なのだと 思った

    同志と言うには 大げさかもしれない
    仲間と言うほどの ものではないかもしれない
    でも、ちゃんと そういう人がいるんだって 安心した

    詩人という生き物は 言葉にならないものを背負うから
    きっと わけ隔てられることのない世界で 息をするのだろう

    人から見たら なんだか子供みたいで 可笑しくて 滑稽で
    時には呆れるかもしれないし 世間知らずって 責めるかもしれなくて

    圧倒的な孤独感と 触れるか触れないかの微かな温度差で
    言葉にしたもので この世界と繋がれるのなら

    それはきっと 救いのように 眩しかったから

    言葉に恋をしたように
    言葉というものが生きているこの世界が とても 愛しいのだと 思う

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著者プロフィール

詩人。1991年北海道生まれ。16歳で現代詩手帖賞を受賞。第1詩集『適切な世界の適切ならざる私』(ちくま文庫)で、中原中也賞、丸山豊記念現代詩賞を最年少18歳で受賞。詩集に『わたしたちの猫』(ナナロク社)など。エッセイ集に『洗礼ダイアリー』(ポプラ社)、『臆病な詩人、街へ出る。』(立東舎)。「空気の日記」を執筆した場所は東京。当時の恋人のアパート/自宅マンションで書きました。

「2022年 『空気の日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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