かがみの孤城

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (554ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591153321

感想・レビュー・書評

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  • 5月の終わり。入学したばかりの中学校で仲間外れや嫌がらせを受け、学校に行けなくなっていた安西こころは、行こうと思ったフリースクールにさえ行けなかったことに落ち込んでいた。その夕方、自室の光る姿見に気づき、うっかりその表面に触れたところ、孤城の建つ、別の世界に入り込んでしまった。狼面にドレスを着た少女に迎えられたこころは、必死で逃げ出したが、「願いが何でも一つ叶う」という少女の言葉と冒険への憧れから、翌朝再び光りだした鏡の世界へ入っていく。そこには、彼女と同じ年頃の男女6人と自称「オオカミさま」の狼面の少女がいた。毎日9時から5時まで開いているその世界で、3月末までに、そこに隠された「鍵」を見つけ「願いの部屋」を開けると、何でも一つ願いが叶うのだと言う。もとの世界に戻った後、しばらくは城を再訪することを躊躇していたこころだが、勇気を出して鏡を潜ることに。

    同年代の不登校の子ども達との触れ合いから、勇気と思いやりとを学ぶ思春期の姿を描く。



    *******ここからはネタバレ*******

    前評判があまりに良かったので、期待した分残念な作品。

    「不登校」の子を6人も集めているが、どの子も明確に胸を張って言える理由を持っている。自分は「悪くない」と言えるので、学校へ行かない罪悪感はそこまで強くないのではないか。不登校の、これは最も解決策の考えやすい分野だろう。

    7年ごと生きている年代の違う子どもたちが集められたが、衣服・話し言葉・話題等々、かなり違う筈。同じ学校なら、校長や担任、保健室の先生や生徒会長の名前でも、容易に違いに気づけるだろう。
    最後の最後まで誰も気づかないこと自体が驚きである。

    オオカミさまがリオンの姉だというのも無理がないか。舞台設定をして楽しんだというのはわかったとしても、彼女はリオンを含め、6人の子どもたちを食べ、その為に、こころによる救出後も彼らから恐れられることになる。もし、こころも食べられていたら、もし、こころが鍵を見つけることに失敗していたら、リオンの姉は弟の未来を消してしまったのか?それだけのリスクを冒す価値のある場だと考えたのか?理解に苦しむ。

    アキが将来の喜多嶋先生というのも難しい。こころとより14歳年上としても、面影くらいはあるだろうし、声は変わりにくいものである。こころだけでなくマサムネも気づかないなんて、とても不自然。


    「同じ中学校で、別々の時代を生きる不登校の子たちが孤城に集められる」という設定と、何人かがその後に再会してお互いの人生に大切な人となるという設定はおもしろいが、全体的に説明が多く、このストーリーを維持するために「作られた感」が強い。

    「たかが学校」と言いながら、ラストでこころは学校へ行く。
    留年したアキと進学したスバル、転校したリオン以外がどうしたかは不明だが、「たかが学校」ならば、一人くらい不登校のまま中学を終わり、社会で成功した姿を見せて欲しかった。


    あくまで個人的な感想ですが、残念ながら私にはこの作品が何を描きたかったのか、わかりませんでした。

  • 評判通り感動して泣けた。
    特に後半は一気読み。
    大人の誰もがかつて通ってきただろう切なくも厳しい道に、自分の過去と自分の娘の現実を照らし合わせて胸が痛くなる。

    中学生にとって大きな存在の「学校」に各々の理由で行けなくなってしまった7人。
    大切な居場所をなくした7人が出会った、鏡をくぐり抜けた先にあるお伽噺に出てくるような不思議な孤城で、願いの叶う部屋の鍵を探すことになる。
    「いじめ」とか「喧嘩」とか簡単な言葉で決めつけられない「何か」に怯える子供達は、自分のことを肯定し認めて貰える安心感を孤城の中でゆっくり育んでいく。

    「頑張ってるの分かってる」
    「もう闘わなくてもいいよ」
    そう優しく言って励まし、子供達が安心して選べる選択肢を沢山用意してあげることが私にもできるだろうか。
    大丈夫だから安心して大人になって、と辻村さんから温かいエールを貰えた。

  • テレビ放送を子供達が涙を流しながら観ていた姿をみて、私は本を読んでから!と敢えてテレビを見なかった。

    中学生の頃の繊細な心の動きが、現実に起こっているかのように伝わってくる。自分自身が中学生に戻ったみたい…。色々な事情を抱える子供達、あの頃の自分は、その子達と真っ直ぐ向き合っていただろうか??後半、ある男の子の事情が分かってくるが、涙なしでは読めない。554ページの長編だがあっと言う間に読み終えた。
    録画した映像を観るのが楽しみ。子供達には本を勧めたい!

  • オーディオブックで聴いたので、音響効果と相まって、感情移入がしやすく、ストーリーにどんどん引き込まれました。主人公のこころの揺れ動く感情が丁寧に丁寧に描かれており、読み応えがありました。ラストに分かる真実や伏線の回収がとても優しかったです。たくさんの人に読んでいただきたい作品です。

    • マメムさん
      初コメです。
      原作小説では3回号泣しました。こころちゃんが風花のプレゼントを買いに行くシーンは感情が伝わりすぎて、切なすぎて、でも愛おしすぎ...
      初コメです。
      原作小説では3回号泣しました。こころちゃんが風花のプレゼントを買いに行くシーンは感情が伝わりすぎて、切なすぎて、でも愛おしすぎて涙が止まりませんでした。

      ホントに同窓会して欲しいと思うばかりです。
      2022/12/31
    • はなさん
      マメムさん 共感できて嬉しいです。その後、映画も観に行きました。すごく心が揺さぶられました。
      マメムさん 共感できて嬉しいです。その後、映画も観に行きました。すごく心が揺さぶられました。
      2023/08/13
    • マメムさん
      はなさん、お返事ありがとうございます。

      私も映画観ました^_^
      尺の都合で描かれなかった場面は残念ですが、イメージしていた通りの描写も多く...
      はなさん、お返事ありがとうございます。

      私も映画観ました^_^
      尺の都合で描かれなかった場面は残念ですが、イメージしていた通りの描写も多くて良かったです♪
      2023/08/13
  • 主人公中一女子こころちゃんの心情が、リアルすぎて読むのが苦しかった。
    常に応援しながら、助けてあげたいと思いながら読みました。

    鏡の中の世界と現実を行き来するお話なのでファンタジーなのですが、違和感なくサクサク読めた。
    伏線の回収やエピローグ、オオカミさまの正体…
    などなど、仕掛けがたくさんあり面白かったです。

    『どこに行っても、いいことばかりが待っているわけじゃない。
    どうしても嫌いな人は必ずいるだろうし、いなくならない。
    でも、ここだけが居場所じゃない。
    自分には、他にも行ける場所がある。』
    物語のラストには、堂々としているこころちゃんが、とってもカッコ良かった。

    • あゆみりんさん
      ほん3さん、コメントありがとうございます♪
      もう全員を応援しちゃいましたよ、希望に溢れたラストが嬉しかったですもん。
      ほん3さん、コメントありがとうございます♪
      もう全員を応援しちゃいましたよ、希望に溢れたラストが嬉しかったですもん。
      2022/06/09
    • ゆうきさん
      こんにちは~
      自分の家の鏡が光ってほしいな〜と思いました!
      すごく自分に似ているので感動しましたよ、、、。
      こんにちは~
      自分の家の鏡が光ってほしいな〜と思いました!
      すごく自分に似ているので感動しましたよ、、、。
      2022/06/10
    • あゆみりんさん
      ゆうきさん、こんにちは♪
      自分の家の鏡、光ってほしいですよね。
      違う世界も見れた事で救われた皆に、ジ〜ンときちゃいました。
      ゆうきさん、こんにちは♪
      自分の家の鏡、光ってほしいですよね。
      違う世界も見れた事で救われた皆に、ジ〜ンときちゃいました。
      2022/06/10
  • 最後まで読んで良かった、一冊。

    いじめ描写のつらさでずっと栞を挟み途中で止まっていた作品、乗り越えられた。

    丁寧に描かれていく心情描写、深まる謎に包まれながら連れて行かれた終盤、エピローグ、全ての繋がり、出会いに言葉にならない想いがひたすら込み上げてくる。

    そして涙。

    これは間違いなく好きな辻村作品だ。

    今だけが全てじゃない。いつか大切な誰かに会える喜びを胸に今、立ち止まっている人が一歩踏み出せますように。孤独な“孤城”じゃない、希望へと弧を描く“弧城”を胸に踏み出せますように。

    最後まで読んで良かった!

  • ある事が原因で学校に行けなくなったこころ。それは行かないのではなく、行けないのだ。母親とは気まずくなり、人目が気になり外にも出られなくなる。こころの居場所はどんどんなくなっていった。
    そんなある日部屋の鏡が光り、こころは中に吸い込まれていく。鏡の中には城があり、オオカミさまがこころを迎えてくれた。そこには、こころの他に6人の中学生がいた。共通点はみんな学校に行けていない事とそれと…。

    それぞれ色々な事情があって辛い思いをしている子供たちがいる。「あなたを、助けたい」帯の言葉が胸に響く。

    どうして鏡のお城ができたのかがわかった時涙が出た。全てが綺麗に繋がり読み終わった時には色んな想いが込み上げてきて胸がいっぱいに。
    あの子たちはこれからを空想する。もちろん幸せな未来を空想をする。

    悩んでいる人たちにも読んでもらいたい。我が子にはたくさんの選択肢があるということを伝えてほしい。自分が今どうしたいのか、それを聞いてあげる事が何より大事。選ぶ事は逃げではない。

    こころのウジウジが私に似ていてわかる、わかる〜と何度も思った。親の立場としてはお母さんの気持ちもよくわかって苦しい時もあった。

  • 辻村深月さんの作品、ブクログ登録は2冊目になります。

    著者、辻村深月さん、どのような方かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。

    辻村 深月(つじむら みづき、1980年2月29日 -)は、日本の小説家。山梨県笛吹市出身。
    2002年に千葉大学教育学部を卒業。千葉大学を選んだのはミステリ研究会があったから。卒業後は甲府にある県庁村会事務所で団体職員として働きながら執筆を続け、2004年「冷たい校舎の時は止まる」で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。

    で、本作は、2018年には本屋大賞受賞作になります。

    本作の内容は、次のとおり。(コピペです)

    同級生から受けた仕打ちが原因で不登校が続き、子供育成支援教室(スクール)にも通えずに部屋に引き籠る生活を続けていた主人公の中学一年生の女の子「こころ」が、5月のある日自室の鏡が光り、その向こうにお城で自分と似た境遇を持つ中学生6人と出会い、彼らとともに冒険していく。

    著者が37歳位の時に書かれた作品であり、中学生の不登校を扱えるのも、その年齢故かなと思いました。
    私は61歳であり、さすがに、中学生の不登校には関心度が低いのですが、最後まで読み通すことができたのは、本作の出来映えが素晴らしいからでしょう。

  • 本屋大賞1位ということで、ずっと読みたいと思っていた作品。やっと読めました。

    ラスト140ページから怒涛の展開。ページをめくる手が止まりませんでした。
    散りばめられた伏線も最後にかけてキレイに回収されていき、気持ち良かったです。
    物語の終わりも心温かくなる終わり方で、温かく優しい気持ちになれました。

    主人公の心理描写がとても丁寧に描かれていて、それが時々、人の言動をとても気にする自分と重なる時もあり、物語の中に引き込まれました。

    久し振りにいい作品に出会えました。
    オススメしたいし、また読みたい作品です。

    辻村さんの他の作品も読みたいと思います。

    • マメムさん
      初コメです。
      私の中での辻村深月さん作品No.1です^_^
      本当に号泣した数少ない良作です♪
      初コメです。
      私の中での辻村深月さん作品No.1です^_^
      本当に号泣した数少ない良作です♪
      2023/10/29
    • オミさん
      コメントありがとうございます。
      テーマがいじめと暗いですが、それを超える温かさが終盤にかけてあり、感動しました。
      コメントありがとうございます。
      テーマがいじめと暗いですが、それを超える温かさが終盤にかけてあり、感動しました。
      2023/10/29
  • 文庫がようやく出版され通勤時間で読もうと思い購入しましたが、ほとんど土日で読み切ってしまいました。
    ある条件の下、鏡の城へ集められた7人の子供たち。
    見つけた一人だけが願いを叶えられるという「願いの鍵」を探すため、それぞれの思いを胸に城へ通うこととなります。

    ふしぎな世界での少女の成長物語は、なんとなく「千と千尋の神隠し」を連想させるなと思いました。
    「千と千尋」と違うのは、記憶としては残らないまでも城での日々が心に潜在的に残っているということです。

    深く考えていくと、
    ①城で過ごしたことで行動や未来が変わったとしたら未来は変わってしまうのではないか
    ②“オオカミさま”は結局何がしたかったのか
    ③こころがあの日城へ行っていたらどうなっていたのか
    などの疑問が出てきますが、そこは考えないようにします。

    こころだけは実際に現実世界での友だちができたわけですから、2年生からはその子と一緒に学校へ行くことができます。
    他の子達は変わらず一人きりで闘わなければならない点には少し不平等さを感じましたが、エピローグでの晶子の話を読んで、多少救われる心地がしました。

    • かりうささん
      ゆうママさん、そうなんです…勉強のため、しばらく本は読めません。(読書は息抜きでもハマっちゃうので自粛します^^;)

      たくさんおすすめいた...
      ゆうママさん、そうなんです…勉強のため、しばらく本は読めません。(読書は息抜きでもハマっちゃうので自粛します^^;)

      たくさんおすすめいただいてありがとうございます!角田光代さん以外読んだことがない作家さんで、とても面白そう。
      合間を見つけて読んでみますね!
      2021/04/05
    • アールグレイさん
      かりうささん、では資格取得チャレンジ、持っている力を存分に発揮して下さいね(^-^)
      では、どうしても息抜きの本という時には連作ではない...
      かりうささん、では資格取得チャレンジ、持っている力を存分に発揮して下さいね(^-^)
      では、どうしても息抜きの本という時には連作ではない、完全な短編集はどうでしょう?
      根詰めすぎないように
      たまに、コメントさし上げてもいいでしょうか? \(^_^)/
      2021/04/05
    • かりうささん
      短編集いいですね!
      ゆうママさんのおすすめはありますか?

      そう言っていただけて嬉しいです、
      私も本は読まないまでも、たまに読みたい本を見つ...
      短編集いいですね!
      ゆうママさんのおすすめはありますか?

      そう言っていただけて嬉しいです、
      私も本は読まないまでも、たまに読みたい本を見つけに伺いますね(*^^*)♪
      2021/04/05
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著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

辻村深月の作品

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