月のぶどう

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591153345

作品紹介・あらすじ

実家である天瀬ワイナリーを営み発展させてきた母が、突然倒れ、かえらぬ人となった。
優秀で美しい母を目指して生きてきた双子の姉・光実(みつみ)と、二十六歳になっても逃げることばかり考えている弟・歩(あゆむ)は、自分たちを支えてくれていた母を失い、家業を継ぐ決意をする。
デビュー作『ビオレタ』で高い評価を集めた期待の新鋭による、優しい涙がこみあげる感動作。

感想・レビュー・書評

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  • 出来のいい光実と出来の悪い歩。二卵性双生児の二人が母の死をきっかけに家業のワイナリーで一緒に働くことに。
    周りの双子を思い出しても、なぜだか対照的な性格なことが多い気がする。この二人も相手を羨ましく感じたりコンプレックスを抱えているのだけど、ワイン作りを通して徐々に解き放たれていく様が心地よかった。
    そして、祖父がいい味を出している!結婚式の言葉がよかった。

  • 寺地はるなさん…双子の成長物語です。
    こう言うの書かせたら間違いないですね〜

    ちょっと読むのに時間かかりました。
    わたしの姉妹達(三姉妹です)と両親との思い出が
    作品と似ていたから(u_u)

    兄弟姉妹って最初のライバルかもしれませんね。
    「出来のわるいほう」歩の気持ちが良くわかります笑

    父親、祖父、友人達…理解のある人達に囲まれて
    二人が成長し素敵なワインを作り出す日を楽しみに待ちたいとそんな気持ちになりました(^ ^)


  • 10作目、
    読書のテンポと作品のテンポがなかなか合わず。内容とかではなくて、相性が「カレーの時間」の時に感じた感覚に近かった。

  • 実家である天瀬ワイナリーの中心だった母が、突然かえらぬ人となった。優秀で美しい母を目指して生きてきた双子の姉・光実(みつみ)と、二十六歳になっても逃げることばかり考えている弟・歩(あゆむ)。家業を継ぐ決意をする歩むと光実の物語。
    ワイナリーで働く人や出会った人とのお話だが物語は淡々とすすむ。家族だからわからないこともあるし、家族だから支えられることもある。「血のつながり」がしんどいなと思わせる描写もあったが、読み終えた。
    本文でいいなと思った言葉。
    ****************
    「大切やない、必要のない仕事はない。必要でなかったら、それは職業としてせんからな。」この世の仕事はすべて必要で重要。

  • 「月のぶどう」は、天瀬ワイナリーを経営していた母の急逝により、双子の姉・光実に説得され、ともに稼業をつぐことになった弟の歩の物語です。

    「この状況で『自分のせいで』とかなんとか考えはじめるのって、それって逃避ちゃうの。自分に罰を与えたら、お前はある意味楽になるかもしれんけど。自分で自分のこと責めて、楽になりたいんかもしれんけど」(278ページ)

    読んでいて、姉・光実のまっすぐで頑固すぎる生き方に、自分でもびっくりするくらいイライラしました。

    なぜこんなにも光実イライラするのか…?
    それは、わたし自身のの生き方も光実に負けず劣らず、頑固でまっすぐすぎたからであり、光実へのイライラはわたし自身へのイライラでもあったからです。

    だから、弟の歩から光実に投げかけられたこの言葉は、光実だけでなくわたしにもグサッときました。
    けれどその反面、とてもスカッともしたのです。

    起こってしまったことを、全部自分のせいにして、自分を責め続けることで徳をするのは「自分」です。
    自分を責め続ける限り、まわりから非難されることも少なくなります。

    けれどそれは結局、現実から目をそらし、逃げ続けている。
    責任は自分にあると言いつつも、なにもせずとどまっていることと同じなのです。
    それは傍目からみていると、ひどくイライラする生き方なのだということが、光実の生き方を通してよくわかりました。

    歩と光実は、小さいころからお互いを比べ、それぞれのコンプレックスを育ててきました。
    でもコンプレックスから「目をそらさず」、向き合っていけば「コンプレックスは武器になり得る」(216ページ)のです。

    「月のぶどう」はわたしにとって、ひどくイライラするお話でもありましたが、歩と、2人の祖父の存在が、そんなイライラを和らげてくれました。

    まっすぐ頑固に生きている人にとっては、耳の痛い物語ではありますが、そんな生き方をやめたい人にはうってつけの、ガツンと活を入れてくれる小説です。
    起こってしまったこと、欠点もそのままに、包みこんで前に進みたいあなたへ。

  • ワイナリーを営む家の中心だった母が突然亡くなる。双子の姉、光実を手伝う事になった弟の歩は、出来の悪い方だと思っていた…。なんだろう、この作者の作品は、じわじわ心に刺さる、泣きそうになる。自分の事ばかり考えちゃうが、みんな誰かに支えられている。自分の方が上だと思うとホッとしてしまう心理や成長の様子が刺さる、ほんと。

  • 双子の光実と歩
    家業を継ぐ光実と何をしても飽きてしまう歩
    優等生で美人の光実。
    何をやってもうまくいかない歩。

    母親が急死し、家業をやることになった歩。
    ワイン作りはわからないことだらけ。少ない従業員とも上手くいかず…。

    母親である人物や家族へのそれぞれの思いやコンプレックス。
    特に母親の死に対しては家族もどこかギクシャクしている空気も伝わってくる気がした。

    でも、心に残るような文章やはっとさせられる言葉があちらこちらにちりばめられていて、励まされた。
    仕事のこと、家族のこと、色々なことが作品に溢れていて素敵な作品でした。

  • 天瀬ワイナリーが舞台。
    ワイン造りを学ぶ歩と双子の姉の光実、周りの人たちとのかかわりで2人が人として成長していく。
    そのままドラマになりそうな感じ。

    普段はイタズラ好きの祖父が、時たま発する言葉に重みがあった。
    平気で弱みをみせられる人がほんとうに強い人だ、という言葉や、結婚する光実への言葉は、とてもよかった。結婚生活が長い人にも響くと思う。

    デザートワインが出来上がる頃、歩とあずみが笑顔でまた会えますように。

  • 真ん中あたりからググッと引き込む展開はさすが。

    今回一番ハッとしたフレーズは、

    「『ぜんぶ理解できんでもええんや。親族とはいえ、他人なんやから。共感もするな。共感なんてもんは、なんの役にも立たん』
     ただお前は、誰にでもいろいろある、ということを理解するだけでええと思う。それが、他人を尊重する、ということや。」

    これは寺地さんの作品を読むようになって、私がたどり着いた境地のようなもの。

    私自身は姉妹で比べられたという気はしていないけれど、双子の姉たちは常に感じていたかもしれず、特に自己肯定感が低いと最近になって私に話してくれた下の姉に読んでもらいたいと思います。

  • 双子の姉弟が家業のワイナリーを亡き母の後に継ぐために試行錯誤する。
    二人の考え方、性格の違いが引き寄せあったり反発したりする。周囲の人達の優しさに支えてもらいながらお互いの目指すところがはっきりとしてくる。
    頑張れ!と応援したくなる。

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著者プロフィール

1977年佐賀県生まれ。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。他の著書に『わたしの良い子』、『大人は泣かないと思っていた』、『正しい愛と理想の息子』、『夜が暗いとはかぎらない』、『架空の犬と嘘をつく猫』などがある。

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