本の子

  • ポプラ社
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本棚登録 : 231
感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591154571

感想・レビュー・書評

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  • 「宇宙は原子ではなく、物語でできている」
    ・・そんなミュリエル・ルーカイザーの詩の一節から始まる。

    脇明子さんの言われる「想像力」をビジュアル化したような本。
    表紙画像が見えにくいが、中央の赤い本の背に金文字で作者と翻訳者のお名前。
    鍵穴にピッタリの鍵は、裏表紙にある。本に腰かけた女の子が「本の子」だ。
    物語の世界からやってきて、言葉の道を案内してくれる。

    開くとまず見返しで圧倒される。すごい文字の量。
    何これ?と顔を近づけてみて気が付く。
    名作のタイトルと作者名がぎっしり書かれているのだ。数えたら40作あった。
    間違ってないか、皆さんも数えてみて。

    「本の子」がある家の男の子を誘う。
    家の中には「ビジネス」「重要なもの」「シリアスな話」と書いた新聞を読むお父さん。
    どうやら「本の子」のことをすっかり忘れたらしい。

    言葉で出来た波や雲、空想の山におとぎ話の森、家に続く道。画面にぴったりの言葉たち。
    そのどれもが名作のフレーズたちで、細かな文字を追っていくうちに物語の世界に誘われる。
    波の場面はドリトル先生、ガリヴァー、海底二万里、ロビンソン、モンテ・クリスト伯。
    アリスと井戸に落ち、ピーターと一緒に空を飛ぶ。

    ああ、夢中になってどっぷりと本を読んでいた頃。想像はいつも無限大だった。
    大好きだった本から困難を乗り越える力をいっぱいもらっていた。
    泣きたい時は「アン」に登場する「ステイシー先生」の言葉を思い出していた。
    私もまた、「本の子」だったんだ。
    こんな妖精にはなれなかったけど。 

    「わたしたちの世界を わたしたちは物語から作った。
    そしてわたしたちの家は あたらしいものが 生まれる家。
    だれでもみんな 来られる」

    物語の旅をした男の子は、表紙の赤い本を抱えて帰る。
    そして最後の一行は、
    「なぜなら 想像力は 自由だから」というタグが付いた鍵の絵。
    本は、「想像力」という名の鍵で開けるんだね。

    アーティストであるオリヴァー・ジェファーズは手書きの文字でお話を進める。
    そこだけ読むと1分もかからない。
    でも言葉たちを丹念に追うと30分以上かかる。
    フォントサイズを変えてくれたらもっと楽しいのにと思うが、それはここだけの話。
    久々に原文で読みたい本に出会った。
    私も「本の子」だったよと言う方、この指とまれ!

    • りまのさん
      、、、(おずおずと)漫画含め、「本の子」だったとおもいます。学校の図書室や、市内の図書館が、大好きな場所でした。百科事典や、シートン動物記、...
      、、、(おずおずと)漫画含め、「本の子」だったとおもいます。学校の図書室や、市内の図書館が、大好きな場所でした。百科事典や、シートン動物記、世界の謎の本、お菓子作りや、料理の本や、何故か、フランスの物語(ルパンシリーズが、最初に覚えている物語です)が、大好きで、くり返し読んでいました。子供のころ、クジラやイルカが、大好きで、 「シロナガスクジラ 最長40メートル」などという絵のついたページを、繰り返し見ていました。本を読んでいる時が、とても楽しかったです。
      りまの
      2021/02/10
    • nejidonさん
      りまのさん(^^♪
      おずおずとコメントを下さってありがとうございます(*^^*)
      学校図書館や市の図書館がお好きだったなんて、素敵なお子...
      りまのさん(^^♪
      おずおずとコメントを下さってありがとうございます(*^^*)
      学校図書館や市の図書館がお好きだったなんて、素敵なお子さんだったのですね。
      しかもかなり広範囲の選書で、とても楽しそうです。
      私も百科事典や図鑑が大好きでした!
      ルパンもシートンもクジラもイルカもみんな!
      家にいるのも学校にいるのも、友だちと遊ぶのも本を読むのも、何もかもが発見の日々で面白かったです。
      りまのさんの方が、純粋な意味では「本の子」かもしれませんよ(*'▽')
      2021/02/10
  • 表紙の女の子を見ると、守護霊のように儚くも見えるが、れっきとした「本の子」です。

    内容は、物語の素晴らしさを本の子が教えてくれるということなのですが、その構成が面白く─例えば、海の絵は、海が舞台の色々な物語の文章で構成されている─しかも、物語として実際に読めるところが、また太っ腹(?)というかすごいと思い、私もいかだのシーンでは、思わず本の向きを変えて、「モンテ・クリスト伯」や「さらわれたデービッド」等を、読み耽ってしまいました(面白そう)。

    読みたい本を見つけるのもそうですが、本書を読んで改めて実感したことは、物語って、無限に存在し続けられるものなんだということでした(まさに宇宙ですね)。

    物語は作者の想像力でできているのと共に、読む側の想像力で形作ることも、同じくらい楽しく素晴らしいことであって、しかもそれがひとりひとり違った世界になって、また広がってゆく。

    そこに正解なんておそらく無いだろうし、想像力は人を選ばず、誰でもすぐに物語の世界に飛び込み、楽しむことができることの素晴らしさは、一度体験したら中々抜け出せない、ワクワクする瞬間。

    そのはじめの一歩を踏み出すきっかけとして、最適な一冊かと思います。

    ただ、絵本だけど、物語の文章はそのままで漢字に振り仮名もないので、ちょうど海外の名作小説に興味を持ち始める頃、小学校高学年、中学生くらいが対象でしょうか。
    あるいは、物語の素晴らしさを忘れかけている方に。

    目に見えるものだけが、世界ではありません。


  • 「この本の世界は、かなりの部分が文字どおり、本から出来ています。」
    どういうことかと思ったが、なるほど!と。
    想像を超えた本でした。

    ついつい絵(?)に目がいってしまいますが、詩がいいです。

    懐かしいタイトルがいっぱい。
    本好きにはたまらないですね。

    表紙の絵が印象的で、子どもの目を引いたようで。鍵穴を見て、「ホンモノみたい!」、裏表紙を見て、「あ、鍵もある」と喜んでました。

  • 三回読んだ。
    本の妖精さんのような女の子(本の子)が物語を携えて男の子を本の世界に誘うお話。

    例えば冒頭の本の子が男の子を迎えに行くシーンでは、海の上をいかだに乗って進んでいく。そしてその海は、いろんな海の物語の言葉でできている、という仕組み。ドリトル先生、ロビンソン・クルーソー、ガリヴァー旅行記など懐かしい物語ばかり!

    想像力の宇宙の拡がりが、海や山や宇宙を使って表現されていて、部屋にいて本書を読んでいる、それだけなのに世界が頭の中でばーーーんと拡張していく錯覚におちいり、それがすごく楽しかった。

    この、眺める読書が一回、大まかなストーリーラインを追うのに二回、ドリトル先生などの細かい文字を読み込むのに三回目の通読をして、「三回読んだ」。

    懐かしのストーリーだけじゃなくて、本の世界を忘れた大人の読んでいる新聞に、「あるシリアスな組織が紛失したあるシリアスな文章をめぐってシリアスな人々の一団が懸念を表明した。」って書いてあるのめちゃくちゃ面白かったです…笑


    Muriel Rukeyser
    “The universe is made of stories, not of atoms."
    「宇宙は原子でではなく、物語で出来ている。」

  • 「本の子」が誘う、名作の文字でできた世界! そう、文字たちは本の扉を開ければ即座に、目くるめく世界に連れて行ってくれるのです。このときめきを可視化してくれたような絵本です。

  • 〝わたしは本の子...物語の世界からやって来て、想像力の筏に乗って浮かぶ...言葉の海を旅してきた。 いっしょに行こうと、あなたを誘いに...この言葉の道にそって、あなたを連れていってあげる。一緒に、空想の山を旅しよう...ここは、私たちの世界。わたしたちは、物語でできている...誰でも、みんな来られる。何故なら、想像力は自由だから〟・・・本の世界からやって来た「本の子」は、文字どおり本の文字に埋め尽くされた、読書の世界へと誘ってくれます。『ドリトル先生航海記』『ドラキュラ』など本づくし絵本!

  • 不思議な絵本でした。

    「言葉」で描かれた本。様々な名作の文章で出来上がっている「絵」

     結構記憶に残る1冊になりました。

  • 本のこと、読書の事、おすすめする時ぴったりなフレーズ、
    文字をコラージュ的に配置したデザイン性の高いイラストが詰まった絵本。

  • 本の子ちゃん、とっても頼もしい…

  • 「想像力は自由だから」

    漢字にふりがながないので、中学生以上向けかな。

    全身青白い幽霊?妖精?のような女の子のイラストがややシュール。

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著者プロフィール

Oliver Jeffers

「2023年 『おうちに おばけが すんでいます』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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