星ちりばめたる旗

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (371ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591155745

作品紹介・あらすじ

日本人であることが、罪になる。
祖母は、母は、そんな時代を生き抜いた――

日本人というルーツに苦しめられた祖母、ルーツを捨てようとした母、そしてそのルーツに惹かれる私。
アメリカ在住日系人家族の三世代を描く百年の物語。

太平洋戦争を挟んでの日本とアメリカの姿とともに、時代に翻弄されながら生きる人々のアイデンティティのありようを描き出し、現在の世界に巻き起こる問題をも浮かび上がらせる骨太な感動作。

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1916年、既にアメリカに移住していた大原幹三郎のもとへ「写真花嫁」として嫁ぎ、海を渡った佳乃。
幹三郎と佳乃の末っ子として、戦争間際にオレゴン州で生まれたハンナ。
ハンナの娘である「私」、ジュンコ。
三世代の母と娘たちの関係には、「日本」と「アメリカ」、そして「戦争」が大きな影を落としていた。

感想・レビュー・書評

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  • 太平洋戦争時に多くの日系人がアメリカの捕虜となった。
    ぼんやりとした知識は持っているけれど、詳しくは知らないし、この史実をもとにした小説や映画もまったく触れた事はない。

    戦後70年を超え、徐々に戦争が風化している。
    戦争からたった30年しかたっていない頃に生まれた私でさえ、戦争についての知識は乏しい。もう平成も終わるこの日本にあって、今の若者たちの戦争への意識はどんなものなのか。

    改憲に向けての流れは変えられないのかもしれない。
    9条の重みは薄れ、自国は自国で守るべきなのかもしれない。
    でもその前に知らないといけない。
    日本が最後に戦ったあの戦争で何が起こったのか。
    日本で、アメリカで、中国で、マリアナ諸島で、マレーシアで。
    知識こそ一番の武器だ。

    この本には日系人が戦時下において、どれほどの辛酸をなめたのかが描かれている。
    小手鞠るいさん、書いてくれてありがとう。
    私に知識をもたらしてくれてありがとう。
    アメリカ在住の作家さんならではの切り口で、日系人のリアルな生活感が伝わってきて良かった。

    作品によってだいぶ評価が乱高下してしまうけれど、「アップルソング」やこの作品のようリアリティのある作品の方が性に合ってる気がする・・・。

    • nejidonさん
      vilureefさん、こんにちは♪
      わぁぁ、なんて面白そうな本でしょう!
      いや、面白いというのはアミュージングじゃなくてインタリスティン...
      vilureefさん、こんにちは♪
      わぁぁ、なんて面白そうな本でしょう!
      いや、面白いというのはアミュージングじゃなくてインタリスティングの方です。
      いつも素敵な選書ですよねぇ。
      さっそく検索したらこちらの図書館にはなくて、近隣の市町村の図書館にもなくて。
      早く読んでみたいけどどうしましょう、というところです。

      私の本棚の「戦地の図書館」にも書きましたが、戦争中の日系アメリカ人への弾圧は本当に凄まじかったのです。
      世界とは、一皮むけばこういうものだということですか。
      70年経過してから、口に出すことが出来たのですね。辛かったですよねぇ。
      何としても入手して読みたいです。
      銀河鉄道より先になっても叱らないでくださいね・(笑)
      2018/02/02
    • vilureefさん
      nejidonさん、いつもコメントありがとうございます(*^_^*)

      小手鞠るいさん、知名度低いですよね・・・(^_^;)
      私も片手...
      nejidonさん、いつもコメントありがとうございます(*^_^*)

      小手鞠るいさん、知名度低いですよね・・・(^_^;)
      私も片手くらいしか読んだことないので詳しくはありませんが、もともとは恋愛小説家なんでしょうか?
      でもこういったどっしりとしたテーマで書くとなかなかに良い作家さんだと思うのですよ(笑)

      改めてnejidonさんの「戦地の図書館」のレビュー読んできました。なかなかの重厚さ。
      読む前にしり込みしてしまいそうです・・・
      それと比べるとこの小説はさらっと描かれているかもしれません。
      nejidonさんには物足りないかもしれませんよ(^_^;)
      2018/02/06
  • 再読。『二つの祖国』を読み、思い出して再度手に取りました。

    アメリカンドリームを夢見た大原幹三郎とその妻佳乃から始まる日系人三世代の家族の話。
    語り手は三世に当たるジュンコ。
    母ハンナはアメリカ人として生き、子供達にもアメリカン人として生きることを望んでいたが、ジュンコだけは日本を焦がれ、日本人の心を求めていた。

    『二つの祖国』ほど、アイデンティティに悩む人達の姿を感じることは無く、史実に基づいた実際にあった人種差別の、そして、母娘の話として読み進めていました。

    戦争が生んだ更なる人種差別。
    この歴史を知り、今後そんな不幸が起こることのないようにと願います。

    二羽の鶴に有刺鉄線が絡まるブロンズ像、思わず画像を検索してしまいました。
    こんな簡単なものでは無いはず…、は著者の言葉だと思いました。

    教科書で学ぶことのなかった歴史です。
    本との出会いで知れて良かった。
    まだまだ知らなければならないことは、きっとたくさんあるのだと思っています。


    2017.11.02 初読

    3代に渡る日系アメリカ人家族の物語。

    アメリカンドリームを夢見た日本人達がいた事は、無知の私は知りませんでした。
    そして、第二次世界大戦中の、日系人の苦悩もまるで知りませんでした。
    敵国の血を持つ者がどんな目に合うかは想像出来るようで、その域はきっと越えていることでしょう。
    悲しいことです。

    立場が違えば、戦争に対する見方も感じ方も変わります。
    でも、誰も幸せではない。
    戦争は、今後決して起こしてはいけない悲劇だと思います。
    興味深く、とても素晴らしい本でした。
    多くの人に読むべきものだと思います。

  • 小手毬さん作品は、あまり触れてこなかった。
    ふと手に取ったこの作品がいかなる展開、ポリシー、作者のメッセージを持っているか感慨で胸が熱くなり、読後、しばし喧騒から解き放たれての思いにふけった。

    山崎氏作品でも知られた日系2,3世の苦悩、強制収容所の実態、彼カノジョらのアイデンティティの揺らぎがここでも語られている。
    戦後の生まれとはいえ、兄や姉から配給時代の話を聞くくらいで詳細は、このような作品を通じて知るだけ・・戦争は遠くなったといわれるゆえんだろうか、今では生き証人が激減している、

    従軍し参戦した父は、ご多分に漏れず一言も語らず逝った。
    子供、学生時代学んだ現代史は今思うと都合の良いような教育で伝えられていたと思える。
    安保闘争、首脳外交、国会論議・・して改憲が叫ばれ
    、パワーポリティックスを思うと、何が正解なのか読めない。
    ただ思うのは【平和は勝ち取るものでも、声なき民をそっかに置くものでもない。ただ、無能無策の元で棚ぼたで得られるものではない】ということ。

    最近頻回に見る東欧、北欧の映画。かつて見聞きしてきた欧米の価値観が近視眼的であったことを今更ながら気づかされる。

    作品に出てくる「何者でもないものとして生まれてきた小さき者が、何者かになろうとし懸命に努力し、結局何者にもなれないまま死んでいったとしても、その人が生きてきた時間は、決して無駄なものではないのです…一瞬であったかもしれないけれど、確かに輝きを放っていた星なのです。・・その営みを、その儚い運命を、私は尊く美しいものだと思っています」に作者の想いが収れんされていると嚙み締めた。

  • 米国で物語が進んでいくのですが、やはり戦争物…ツライ、辛すぎる物語でした。
    日本だけじゃなくて、アメリカでも中国でも人々が被った戦争の悲惨さは変わらないんですね。日系アメリカ人という視点でみるとそこに人種差別が絡んできているので、更に理不尽さが加わり、やるせない気持ちになりました。
    日系アメリカ人の過去にそんな辛い物語があるなんて全然知りませんでした。

    あと、メインは戦争下でのおはなしですが、その裏にある親娘の複雑な関係性が描かれていたように思います。愛したいけど愛せない関係もある。戦争と同じくらい暗くて怖い。

  • ある一家の日系移民の3代にわたる苦難の歴史が綴られた物語。その中の言葉が心に沁みる。「何者でもない者として生まれてきた小さき者が、何者かになろうとして懸命に努力し、結局、何者にもなれないまま死んでいったとしても、その人が生きてきた時間は、決して無駄なものではないのです。それらの命は宇宙のかたすみで、一瞬であったかもしれないけれど、確かに輝きを放っていた星たちなのです。わたしたちはみな、流れ星と同じように、空に輝いたあと燃え尽きて、流れ落ちていくのです。その営みを、その儚い運命を、わたしは尊く美しいものだと思っています」

  • 山崎豊子さんの二つの祖国を思い出しました。

    子どものころは、好奇心も手伝ってか、昭和時代のことを知りたいと思って様々な情報に触れるようにしていました。
    が、大人になってからは祖国や世界の残酷な過去を知ることは恐ろしく、積極的な接触はできませんでした。

    ただ、やはり思うことは、わたしたちにできる唯一のことは、歴史を知るということです。知らないことは幸せなことですが、真実が何なのか事実が何なのか、知ることから始めなければいけません。

  • 1904(明治37)年にアメリカに移民した大原幹三郎を祖とする家族三代の物語です。
    メインとなるのは幹三郎の妻の佳乃であり、その子のハンナと孫のジュンコの3人の女性です。
    皆さんの評価は高い。しかしそこには背景となった日系移民について、この本で初めて触れた人が多い為では無いかと思います。
    家族三代の物語として見た場合、描かれてきた登場人物像がくるりと姿を変える様な事がしばしば起こり、結構なキャラの脇役像も、なぜそこまで娘が反抗的になったのかとか、暴行を受けて言語障害になった伯父がどう日常を生きていたのかなど、どうも未消化な所が多く、色んな所でアレ?アレ?と思いながら読んでいました。
    ==============
    再渡航と家族の呼び寄せ以外の日本人の移民が禁止された後に、米国に移住した男性と写真・履歴書などだけで、実際に会うことなく婚姻届けを出し、妻として渡航した女性たち「写真花嫁」、日本人の土地所有を禁止した「排日土地法」、太平洋戦争開戦後に在米日系人を収容した「日本人強制収容所」であり、日系人で構成されヨーロッパ戦線で奮戦した「442連隊」など様々な話題が、物語の主要な背景として描かれています。
    私の大叔父(祖父の長兄)は幹三郎の一年前、1903年にカリフォルニアに移民しました。主人公と違うのは一旦ハワイへ移民し、その後に転航している事。夫婦での移民であり、ハワイで生まれた娘を連れていた事などです。また、この物語の主人公・佳乃は1916年に写真花嫁として幹三郎の元に嫁入しますが、私の大叔母二人はそれぞれ1910年と1918年に写真花嫁として渡米しています。
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E7%B3%BB%E4%BA%BA%E3%81%AE%E5%BC%B7%E5%88%B6%E5%8F%8E%E5%AE%B9#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Florin,_Sacramento_County,_California._A_soldier_and_his_mother_in_a_strawberry_field._The_soldier_._._._-_NARA_-_536474.jpg
    442連隊に志願した息子が強制収容される母を手伝いに帰って来たところを写し、「日本人強制収容」の悲劇を示す写真としてしばしば用いられるこの写真の人物は、1910年に移民した私の大叔母です。(この本の中で佳乃の息子は強制収容後に志願しますが、大叔母一家の場合はそれ以前に志願していたようです。)
    そんなことも有って知識はあったのですが、もう少しリアルな生活イメージが得られればと手に取った本です。ただ、主題は家族の物語であり、背景として描かれるために、私の知識から大きく変わる事はありませんでした。
    忘れたならないのは、日本においても大戦中に米・英・仏人などの強制収容が有り、米国における日本人と同等の扱いを受けていた事です。つまり、この類は米国、あるいは日本といった国や人の問題では無く、「戦争」が引き起こす悲劇だという事です。

  • こういうタイプの小説をあまり読まないので映画を見ている気分だった。


    私たちはどこへ行くのか
    私たちはどこから来たのか
    私たちは何者なのか
    星ちりばめたる旗のもと
    私たちは生きて死ぬ
    何者でもない者として

  • 読みごたえはすごいけれど読むのは苦痛ではない、そんな話だった。根底に「家族とはなにか」を考えさせられる、感じさせられる。

  • 小手鞠るい 3作品目。

    明治初期、移民政策でUSAへ渡った幹三郎と写真花嫁・佳乃の太平洋戦争終戦までの物語。

    物語は、ニューヨーク近代美術館、ジャスパー・ジョーンズの「旗」の場面で終わる。
    この旗を掲げ、この旗を守るために、いったいどれほどの人間が命を落としたことだろう。星ちりばめたる旗の掲げる理念、理想、正義のために、どれほど多くのネイティブアメリカンが、メキシコ人が、太平洋戦争時には日本人が殺され、…。その続きに暇はない。

    本当は、日本を追い出された移民(棄民)は、米国で所帯を持ち、定住し、できるならば「アメリカン・ドリーム」の実現を夢見るしかなかった。しかし、それが、子孫たちが日系移民の苦しい時代の最後の遺産を受け継ぐだけともしらないで。
    きっと、「個人的な関係によって、人種差別も乗り越えられる」ハズだった。ただ、真珠湾攻撃が、反日感情を、強制収容に仕上げていったに過ぎない。移住にかけた燃える気持ちをすべてを奪い去って。戦争が、すべての人を理不尽な暴力にさらされていく。そして、民族に溜まる闇が牙を剥くチャンスを与え、集団の力となって噴出するとき、より弱い者に悲しい運命が訪れる。

    星ちりばめたる旗、星条旗はずるい、と思う。星の意味するもの、個人一人ひとりの生き方から、コミュニティ、そして州へと広げている。同時に、光の速さの限界に紐づけて、理性の限界をも示している。
    私たちの目にする星は、何万年も前に燃え尽きたもの。けれど儚さと同時に強いきらめきを放つ星は、一人ひとりの人生のようでもある。一瞬を生きていく力に。

    明治初期の移民政策に関する書籍については、
    南米移民:垣根 涼介 『ワイルド・ソウル』、北 杜夫『輝ける碧き空の下で』(未読)
    写真花嫁:ジュリー オオツカ『屋根裏の仏さま』
    カナダ移民:ジョイ・コガワ『失われた祖国』(未読)
    頑張って、読み続けてみよう。

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著者プロフィール

1956年岡山県生まれ。同志社大学法学部卒業。ニューヨーク州在住。
『欲しいのは、あなただけ』で島清恋愛文学賞、『ルウとリンデン 旅とおるすばん』(講談社)でボローニャ国際児童図書賞を受賞。主な著書に『優しいライオン やなせたかし先生からの贈り物』(講談社)『星ちりばめたる旗』(ポプラ社)ほか、主な児童書に『心の森』(金の星社)『やくそくだよ、ミュウ』(岩崎書店)『シナモンのおやすみ日記』(講談社)など多数。

「2024年 『新装版 まほうの絵本屋さん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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