愛すべき娘たち (Jets comics)

  • 白泉社
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784592132950

作品紹介・あらすじ

「女」という不思議な存在のさまざまな愛のカタチを、静かに深く鮮やかに描いた珠玉の連作集。オトコには解らない、故に愛しい女達の人間模様5篇。 2003年12月刊。

感想・レビュー・書評

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  • 三浦しをんさんが、エッセイ「乙女なげやり」において「自信を持って、男性でもお勧めできるコミックスである」との発言があった、とKazuさんが紹介していたので紐解いた。

    よしながふみは2002-3年で女性誌「メロディ」でこの連作短編を描き、そのあと「大奥」を連載始めたらしい。「きのう何食べた?」等の長期連載のエッセンスがこの短編の中に凝縮されている気がする(「大奥」は原作未読だけど映画とテレビドラマは観た)。つまり、テーマはジェンダー問題なんだけど、人々のさりげない行動を描くのが上手く、また視点がどちらかというと男性・女性両方からみた世界観の感じがして、確かに「男性が見るべきジェンダーマンガ」になっている。2000年代初頭に、此処まで(精神的な意味での)骨太の作画ができているのにビックリする。2009年に「大奥」で手塚治虫文化賞マンガ大賞を獲っただけある。

    アラサー雪子の家族と友人にまつわる、様々な事情をほぼ1話完結方式で見させてくれる。その1話1話には、サラサラと描かれている割には考えさせるものが多いのだけど、詳しく語ろうとすると、どうしても自分と比べながら語りたくなってしまうという厄介な構造になっていて、それはあまりにも恥ずかしいので、語れないという「内容」である。なんのこっちゃ。

    いやあ、確かに名作です、三浦さん。
    14巻で止まっていた「きのう何食べた?」を最近巻まで読んでみよう!

    • Kazuさん
      kuma0504さん、こんにちは。

      早速読まれましたか。
      三浦しをんさんの「乙女なげやり」は2004年7月発行なので、しをんさんも「...
      kuma0504さん、こんにちは。

      早速読まれましたか。
      三浦しをんさんの「乙女なげやり」は2004年7月発行なので、しをんさんも「愛すべき娘たち」を速攻で読んですぐにエッセイで紹介したんですね。
      皆さん行動が早い!
      あきらめずに何処かの図書館にないか探したら置いてあるところを見つけました。
      利用対象が 日本国内在住の方 となっているので、散歩がてら利用登録をしてきます。
      私も「名作」にたどりつけそうです。
      2023/05/03
    • kuma0504さん
      Kazuさん、紹介ありがとうございました!
      「このマンガが凄い!」上位入賞者の漫画を順繰りに読んでいてそんなに凄いとは思わないのですが、これ...
      Kazuさん、紹介ありがとうございました!
      「このマンガが凄い!」上位入賞者の漫画を順繰りに読んでいてそんなに凄いとは思わないのですが、これはなかなか凄かったです。「自分語りをしたくなる作品」というのは、それだけ身近な問題を描いて鋭く突っ込んでいるということで、このマンガが無冠なのは不思議なくらいです。他のレビュアーが「イグアナの娘」のアンサー漫画と書いていましたが、頷くところあります。

      近くの図書館にあってよかった。お楽しみください。
      2023/05/03
  • 三浦しをんさんが「女性同士の会話がまさにコレ」と言ってた。
    つまり"本質的な感情"が書いてあるのだろうと思って読んだ。

    しをんさんが「男性にもお勧め」と言うので読みたいと思ったのだが、凄いものを読んでしまった感が強く残った。
    このように勧められなければ男性は手に取りにくい本なので、しをんさんの推しに感謝だ。

    父と息子だと愛情は希薄だが、母と娘の間の愛情は複雑に感じてしまうのは自分が男だから?

    最終話の最後の雪子のセリフ「あたしは、お母さんが死んだら……」がぐさりと刺さったなあ。
    この物語を締めるのに相応しいセリフだ。

    読み終わって結構な衝撃が残っている。
    名著だと思います。

  • 『大奥』『きのう何食べた?』のよしながふみさんの連作短編集。
    2003年のクリスマスイヴに発売された。
    傑作です。…という言葉でしか表したくないくらい。
    もう、古典ってことでいいじゃないですか!
    と、誰彼構わず言いたいくらい。
    それくらい普遍的なことが描かれていると思う。
    第四話の莢子の台詞「恋をするって―――」は、天変地異みたいな衝撃だった。
    最終話での雪子のモノローグ「母というものは―――」は、私に母親という存在の見方を変えさせてくれた。
    急に読みたくなり、十数年ぶりに読んだが、やはり胸に響く。
    すべての『娘たち』へのラブレター。

  • 新刊、古書と買い、今回は図書館で…
    そんなに好きなら手元に置いとけば?と家族に言われましたが、置いときたくない…そういう本。
    たまに読み返して、納得する本。どなたかも書いてらしたのですが、古典なのです。

    母と娘、母と息子、男女のあり方などが書かれていますが、父親の存在だけは薄い。唯一牧村の父について言及。若林の祖父は、ある意味父親とも言えますが…。

    言霊、呪詛…それがテーマではないのはわかっているつもりですが、勝手に深読みしています。
    「分かってるのと許せるのと愛せるのとはみんな違うよ」(P199)
    辛い言葉です。

    言葉で人を傷つけたり縛ったりしたくない。でも実際はそうしてしまい、互いにつらくなることが多い。かと言って、誰とも関わらずに生きれないし…

    私にとってそういう本なのです。
    たまに読み返したくなる。でも、そばには置いときたくな
    い本なのです。

    NHKのある番組で紹介されたことをきっかけに再読。
    若林のエピソードが一番心に残り続けています。
    第二話の女の子と、牧村はニガテです。
    若林のお見合い相手たちも…(龍彦さんのおかあさんも)
    龍彦さんも、何か抱えてますよね、と深読み…

  • よしながさんの作品の中でも、名作と評判の一冊。ようやく読んでみて、たくさんの読者に支持されるのも納得の、大変素晴らしい作品でした。
    母子家庭で生きてきた、娘の雪子と母の麻里。彼女達を軸に展開される様々な愛の形を描いた連作短編集。1話目は大病から生還した母が、よりによってアラサーの娘より年下の、駆け出しの俳優(元ホスト)・健と再婚を決める。当然ながら複雑な心境の雪子。展開的にはそう珍しい話ではない、と思いながらも、ラストシーンに涙がぶわっとあふれました。
    2話以降は健の友人、雪子の友人やかつての同級生がメインとなるが、それぞれ描かれる恋愛模様は、どこかいびつなようだけど、不器用で、自分や相手に真摯であろうとする…それゆえ導かれた結果にどきっとさせられる。その手法が鮮やか。登場時は一瞬ぎょっとするけれど、次第に愛おしく感じられるキャラクターの描写も秀逸で、彼ら彼女らの生き方にどんどん引き込まれていく…その過程もお見事。
    最終話は再び母娘の話だが、今度は母:麻里と祖母の「母娘」関係。美しい母の麻里が長年抱く外見のコンプレックスの理由など、いくつかの伏線が回収される最終話もまた巧くて!麻里の再婚相手の健が、実にいい味出している。
    どのエピソードも印象的で、モノローグのひとつひとつが心に深く刻まれる。もう素晴らしすぎて、読了後すぐにはレビューを書けなかった。こうやって言葉にしてみても、本書の素晴らしさをうまく表現できてないなぁと若干歯がゆいくらい。
    文学的な抒情性をマンガで表現できる人は本当に一握りだと思う。よしながさんの振り幅の広さを再確認しました。

  • 他のどの作品より、この連作短編集によしながふみの「巧さ」が凝縮されている気がします。

    いちばん好きなのは最終話。「母というものは要するに不完全な一人の女の事なんだ」というセリフはかなりガツンと来ました。

  • 高校生のときに読んで、「高校生にはまだ理解できない内容が多分にあるけれどこれは生涯心に残る傑作に違いない」と感じてずっと大事にとってある作品。

    その直感はおそらく当たっていて、折に触れて読み返してはその度に感じることが違うので、自分は女として刻々と変化しているのだなぁ、と気づくのです。

    他人を分け隔てることのできない女性のエピソードが一番好きで印象深い。
    恋愛中はもちろん、普段生活している中でふと彼女の生き方を思い出す、くらい心に刻まれています。
    だれかを好きになることはその人を特別扱いするということで、だれかを特別にしたいとかだれかの特別になりたいとか、その感情のなんて身勝手なことだろう、と思う。

  • 母麻里と娘雪子を中心とした5編の連作短編。

    よしながふみ先生が母娘の絆や呪縛を物語に落とし込むと、こうゆう怪作が生まれるのだなと。母、娘、女性、恋人、恋人未満、女友達…登場人物それぞれの細やかな心情が多くを語らず、でも痛いほど丁寧に伝わってくる。
    育ってきた環境も立場も生き方も異なるけれど、皆それぞれ誰かの「愛すべき娘」。
    でも人はいつだって不器用で、勝手で、不完全な生き物。愛を与える側も、愛を受け取る側も。

  • 2022.10.10市立図書館 →購入済
    (よしながふみさんの最新刊インタビュー本を読む前に過去の作品をさらっておいたほうがよさそうなので借りられるものを順番に読む)

    初出:メロディ(2002年7月号〜2003年10月号まで随時)の連作短編集。雪子を狂言回しに、家族や友人の女たちとの間の愛憎や友情などさまざまな「愛のカタチ」が描かれている。
    それぞれの短編でさまざまな年代、さまざまな問題を扱いつつ、6編を通してある母娘の微妙な距離がちょっと縮まる局面をていねいに描いていて、物語の構成・展開といいキャラ造形といい手練れというほかない。

    第1話 如月雪子(娘)と麻里(母)と母の若き再婚相手(大橋健)
    第2話 和泉清隆(大橋の友人)と滝島舞子(教え子)
    第3話[前編]若林莢子(雪子の大学の友人)の見合い行脚
    第3話[後編]若林莢子(雪子の中学の友人)続き
    第4話 牧村優子と佐伯友惠(雪子の中学時代の友人たち)の生き方
    最終話 雪子の祖母の女学校時代の経験と娘(麻里)の育て方

    第3話の、マルクス主義者の祖父の薫陶を受けた孫娘がだれにも分け隔てなくを目指した結果、恋や結婚が選択できなくなって修道院に入ったしまうというのは、ちょっと他人事とは思えない話だった。(どうでもいいことだけど、莢子とか雪子とか、かつて娘たちの名前の候補にあげてた名前ばかり…)
    あとすごいのは最終話、「母というものは要するに一人の不完全な女の事なんだ」、母親を反面教師にした娘の子育てという循環のなかで、完璧な親なんてどこにもいなくても仕方がないよねぇという諦念が伝わってきた。これは手元においてときどき読み返したいかも。
    高3の次女もおもしろく読んでるようだし。

    「分かってるのと許せるのと愛せるのとはみんな違うよ」とさらっと言えちゃう大橋健ができすぎ〜。やっとの時代劇デビューは大奥の第十四代家茂っぽくてどこかにスピンオフないのかなあ。

  • なんとも切ないというかやるせないというか、でも良い漫画だった

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著者プロフィール

東京都生まれ。代表作の『西洋骨董洋菓子店』は2002年、第26回(平成14年度)講談社漫画賞少女部門受賞。2006年、第5回(2005年度)センス・オブ・ジェンダー賞特別賞、第10回(平成18年度)文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。ほかの作品に、『大奥』『フラワー・オブ・ライフ』『愛がなくても喰ってゆけます』『愛すべき娘たち』『こどもの体温』などがある。


「2022年 『きのう何食べた?(20)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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