大奥 12 (ジェッツコミックス)

  • 白泉社
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784592145462

作品紹介・あらすじ

医療編、衝撃の結末! 田沼意次、青沼、平賀源内、黒木、伊兵衛、そして十一代将軍・家斉…。連綿と受け継がれた赤面疱瘡撲滅への強い意志。その想いが辿り着いた場所は──。 そして、新しい時代が始まる───!
2015年6月刊。

感想・レビュー・書評

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  • 母たちの諮り事が成功した理由は、究極に独善的な治斉の頭の中に「子供のためなら全てを投げ出せる」という考え方が微塵もなかったからだろうなあと思う。あの何が起こったか理解できない顔は、息子たちを処分してしまおうと決めた顔と同じくらい衝撃的。
    そして殺されかけても母の息の根を止めようとしない息子と諦念混じりにそれを許す妻。後半の家斉の足早で強硬な姿勢は、御台と向き合えば直視せざるを得ない罪と苦しみを少しでも紛らわせたかったからかもしれないなあと。
    次巻から激動の幕末が来るというのに嵐の後のように呆けてしまう1巻だった(そしてまた10巻あたりから読み直しループ)。

  • この巻で物語の柱の一つであった赤面疱瘡の克服に一区切りがつけられる。
    吉宗が見つけた始まりの記録、それにより吉宗がまいたあらゆる種を彼女が見出した田沼が育て、皮肉なことに吉宗自身によく似た面差しを持った定信がそれをいったん潰し、逆転して以来初の男性の将軍である家斉がそれをもう一度育てる。
    将軍家や幕閣という読者にとっては遠い存在の間のドラマだけではなく、そこには三巻かけて描かれるマイノリティや市井の人々の熱い戦いがある。
    よしながふみの最大の強みは構成力だと思うが、12巻でこの内容を過不足なく詰め込む技量は同世代の作家には正直見られないと思う。多すぎたり少なすぎたり冗長だったりするものだから。

    御台所と滝沢の策略は読者の半分以上は読んでいたと思う。けれど、治済のサイコパスぶりのすさまじさにはらはら感を最後まで持ち続けられた。
    家斉を殺すことに決めた彼女の表情、共感性のかけらもない化け物が我が子に裏切られたと知った時、それは悲しみではない純粋な怒りの表情。
    狂った妻が赤面疱瘡特効薬の話に目を潤ませ『男の子の母親すべてが持つ病の恐怖からの解放』だと感激するのを、家斉は胸をつかれたような表情を見せる。それまでの誇らしげな晴れやかさではない。
    そうではない母親を彼はひとり知っていたからだ。
    そしてすべてが終わった時、彼があんなにも愛していた妻を遠ざけたのはそんな母親を救ってしまった自分の弱さを直視したからだろう。
    子供は彼の子供でもあるのに、彼女たちは仇討を彼に持ちかけなかった。
    一人は命すら捨てたのにもかかわらず、自分の懇願を聞き届けた。
    優しさはもちろんだが、彼女たちは自分の弱さに気づいていてそれを許せるほど強かった。
    御台は自分が彼を裏切ったからしようがない、と理解しているが、おそらく彼は恥じていたのではないかと思う。
    愛も知らない子供の仇の化け物をただ母だというだけで、殺せない弱い自分を許せなかったのだろう。
    だからこそ、臨終の際すべてが終わったとき、幸せだった二人の姿でその時は描かれた。
    同じころ黒木も息を引き取る。
    尊敬していた友人たちや、ともに歩んでくれた朋と飲みあい、愛した女に別れを告げて、そのすがすがしい最期は同じやり遂げた男であっても家斉のものとは違う幸福感に満ちている。

    そして今から怒涛の幕末編だ。
    敢えて女将軍に戻し、さらにあの阿部正弘を女幕閣として登場させる。
    どうなるか非常に楽しみだ。

  • とうとう、赤面疱瘡の克服へ。

  • 全巻までは、次期将軍争いのため、生きていて欲しい人も亡くなってしまった。赤面疱瘡の予防注射もできるようになったが、次は何が起こるか。

  • 毎巻読む度に感情の振れ幅が凄すぎて、一体何を書いたらよいのやら、わからなくなる。濃縮還元200%

    ホッとして、ゾッとして、快哉を叫んで、ヨカッタヨカッタと思ったのに、やっぱりそうではなくて、人生はあっという間で、切なくて切なくて苦しい。乾いて渇いてカッピカピ。

    カバーを外すと笑い合う三人。泣ける。

    次巻は黒船来襲!

  • 平賀源内の無念が、青沼の信念が、後世にて繋がった。

    遂に赤面疱瘡が、この日本を揺るがし、女性が将軍になったきっかけの病気に手立てが。

    なんとも印象的だった、平賀源内の死と青沼の死罪から時を経て、意志を継いだ者たちの執念がようやく実を結びます。

    それには治済のもと何もできなかった家斉の力添えがあってこそだったわけですが、まあ御台所が素敵なこと。
    命を懸けてのやりとりがね。家斉を救うんだけど、そこでもう御台への愛が途絶えちゃうのがね、この男の器といいますか、おぼっちゃんの限界なんでしょうね。
    そこからまめまめしく愛を育んでほしかった。
    でも、そうなれないのが男性なのかなあ、とも思ったりしました。

    高橋景保の、その最期の説明を見て、ああ、いたなあこの人!と歴史の教科書の記述を思い出したわけですが、こういう教科書では1行に表される人の人柄、人生を活き活きと伝えてくれるマンガであり、小説でありというのは本当に素敵な世界だな、と思わされます。

    次巻13巻は2016年初夏発売予定。5月かな。
    これはどうも、15巻では終わらない気がしてまいりました。もっと読みたいですしね。

  • ついに、治斉が死んだ。

    もうこの人だけは許せない、と思い続けてきたけれど、ふさわしい最後でした。
    ある意味でのサイコパスだったのかな、と。

    定信の元気なさまも見れたのもうれしいところ。

    ただ御台所と家斉のことは残念だったなぁと。
    家斉は悪い人ではなかったのに・・・。弱いだけで。

    さて、いよいよ幕末。
    次巻では阿部正弘と、多分慶喜が出てきますね。
    篤姫役も?楽しみです。

  • まさに激動だった。漫画の最初の頃からのテーマであった赤面疱瘡がやっと、やっと撲滅してくれた。まさか、お志賀の方と御台所が協力しているとは思わなんだ。しかし、家斉の晩年があんなに母親の治済のようになるとは思わなかった。黒木と家斉の死が切なく、幕末へと進む時代で未だに女将軍が立つというのはどんな展開なのか気になるものだ。

  • おお・・・。

    11代将軍がどういうふうに母親と対決するのかと思いきやそうかーそうくるかー。
    そうだよねー。
    女ならぴんとくるものがあったんだろうねぇ。
    しかし、最大のといってもいい裏切りに、将軍は様変わりするしかないっていう・・・。

    赤面疱瘡の撲滅に成功したという点ではよかったんだけど。

    この「大奥」で幸せな将軍がでることはないのだろうか。それとも、現代の日本の一夫一婦が常識になっている視点からするといびつに見える制度では、一般的な(現代の)幸せはおとずれないのだろうか

    でも、過去の将軍たちでも別に不幸せなばっかりではなかった・・・と思うんだけど・・・。政治的に成功(キャリアを積む)反面、私生活では必ずしもパートナーに恵まれない、もしくは跡継ぎに恵まれない(子供の問題や子供がいない)・・・私生活と仕事のバランスがとれない・・・って、現代の女性が抱える幸せ不幸せの問題とかなり近いのでは?!
    で、あるからこそ、このパラレル大奥の世界が他人事でないように感じられるんだろうなぁ・・・。

  • まってた最新刊!
    どうなる事かと思っていましたが、史実とさほど変わらずこのような方向に持って行くとは…!と。
    大奥を読む際は、1回目はざっと読み、2回目はじっくり読み、3回目は日本史系のページを開き、にらめっこしながら読んでいます。
    治済の堕落から繋がる最期、残した負の遺産、家斉の表に出せない努力、お志賀と御台の執念、どれ一つとして無駄な部分が無く、全てが繋がっていく様は読むにつれて心が躍ります。

    残す将軍もあと2代。
    時代は海外との交流を図り始めた頃に入ってきました。
    続きの単行本は1年後とか…長いですが読み返しながらゆっくりと待つとします。

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著者プロフィール

東京都生まれ。代表作の『西洋骨董洋菓子店』は2002年、第26回(平成14年度)講談社漫画賞少女部門受賞。2006年、第5回(2005年度)センス・オブ・ジェンダー賞特別賞、第10回(平成18年度)文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。ほかの作品に、『大奥』『フラワー・オブ・ライフ』『愛がなくても喰ってゆけます』『愛すべき娘たち』『こどもの体温』などがある。


「2022年 『きのう何食べた?(20)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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