「あの商店街の、本屋の、小さな奥さんのお話。」 (花とゆめCOMICS)

著者 :
  • 白泉社
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784592217145

作品紹介・あらすじ

時は昭和中期。田舎から、東京郊外の本屋の旦那様の所に嫁いできた“奥さん"。しかし旦那さんはすぐに亡くなり、奥さんは本屋を一人で切り盛りすることに。商店街の人々をまきこみながら、独自の書店商売を繰り広げる奥さんの「恋物語」。 2013年12月刊。

感想・レビュー・書評

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  • 時は戦争が終わって10年経った昭和中期。
    「生活でそれどころじゃない時代だからこそ、もっと本を読んで貰いたい」という
    亡き夫の意志を継ぎ、
    商店街の小さな書店を切り盛りする若奥さんチイの奮闘記。

    あの「いいひと。」「最終兵器彼女」の高橋しんが少女漫画を描いたということで気になってたけど、
    本という表現媒体と
    昭和の昔懐かしい本屋さんへの愛情に溢れた
    あったかくて胸を打つお話でした。


    主人公は貧乏な家に育ち
    農作業以外何も教えてもらえなかった未亡人のチイ。

    何かと世話を焼き、小さくて頑固者のチイを陰で支えるのは
    亡くなった旦那の親友で
    八百屋のハチ。

    チイは、ハチから
    『人が本を読むのは
    知恵を授かり無数の生きる方法を知るためなのだ』と教えられ、
    辞書を一晩で読み、
    料理書の料理をマスターし、
    亡き夫が遺した様々な本を読み漁り、
    生きる術と意味、
    そして次第に本の奥深い魅力に取りつかれていきます。

    大きなリュックにお店の本を詰め、
    子供たちの空き地には
    童話を、
    奥様連中がいるパーマ屋には
    裁縫の本、
    近所の井戸端会議には
    恋愛小説を、
    お年寄りが好きな碁や将棋の会館では
    必勝本を、
    妊婦にはお産がラクになる本をと、
    人が集まる場所に出かけては
    本の素晴らしさとその効用を
    自ら読み実践して
    その人に合った本を売り歩いて、
    チイは少しずつ少しずつ
    本屋に来てくれるお客を増やしていきます。

    それにしても
    ハチとチイの淡い恋心が香るような、
    物干し台に二人並んで座って
    別々の本を静かに読むシーンは、
    幸せってもしかしたら
    こういうことを言うのかなって
    柄にもなく(笑)うっとりしてしまったなぁ~

    また、チイの亡くなった旦那さんの
    『本を読むと明日が変わる。
    昨日までの自分ではなくなる。
    僕はその未来の笑顔を見たいから
    本を売る』
    なぁ~んて言葉がいいんですよ(。>A<。)


    お店の本の棚の位置を毎日変えることで売れなかった本を生き返らせる工夫や
    八百屋さんに「おおきなかぶ」の絵本を置いてコラボしてもらったり(笑)、
    幼稚園での読み聞かせ、お年寄りのための本の配達、
    お客さん一人一人に棚を作ってオススメの本を補充するなど、
    チイが試行錯誤の末に作り上げたお店は本当に愛が溢れてるし、
    なんて贅沢な本屋なんだろ。
    (それと同時に経営の厳しさや、手荒れのことや力仕事、個人の本の趣味はプライベートな内容だけに誰かに恨まれることもあるなど、書店を継続する苦労もちゃんと描かれている点も好感が持てます)


    降りしきる雨の中、
    失恋した少女に手渡した一冊の本。
    それは本を愛し、結婚して一週間で亡くなった夫が遺した最後の一冊。
    チイが苦悩した末に理解した
    ひとつの真理には胸打たれたなぁ~(。>ω<。)


    人の想いは決してなくならない。
    目には見えなくとも、
    形はなくとも、
    言葉は人の心を支え
    誰かの胸の中で生き続ける。

    少女漫画誌に掲載されていたので
    ちょっと甘さも多めだけど(笑)、
    本が好きなら、
    本屋さんが好きなら、
    必ず楽しめる全一巻の漫画です。

    巻末おまけの
    作者高橋しんさんと某有名書店の店員さんとの
    本好きならではの座談会にも
    読書好きならニンマリできますよ(^^)

  • 新聞の書評と皆さんのレビューで気になっていた一冊です。

    戦後間もない頃、東京の郊外で苦しいながらも倹しく生活を営んでいる人々。小さな町にある、これまた昔ながらの本屋さん。狭い間口の店の中、天井高く積まれた本棚、店の奥に店主とレジスタのある風景、とても懐かしい。

    本と本にまつわる人々の暮らし、暖かな人情にあふれ、人と人のつながりが豊かだった時代を思い出します。横丁のご隠居と熊さんも出てきそう?

    ”本はただの文字の集まりじゃないんだ、人々の心の中に入り、新しい物語として読まれていくことが役割なんだ”とは然り。

    後記に、構想段階で図書店の方々と交わした座談会の記録がありました。ジュンク堂やら、小さな本屋さんやら、皆さん様々な工夫をこらして、本と読者の出会いの場を提供していただいているのですね、改めて感謝します。Amazonや図書館ばかりではなく、たまには買いにいかなきゃ。

  • 宝物な本の一冊

    奥さんの一途さがいいな。

    この本屋さんがあったら、行ってみたい。

  • 高橋先生らしい、ただただ息を呑むしかない美しい画と、森に射す柔らかな春の光を思い浮かばせる温かな優しいストーリーで綴られた、異色とも言える骨太な恋愛漫画
    病的、とまでは言わないが、とことんまで本を愛せ、本に選んでもらえる人種からしたら、ストライクな内容だと思う
    ともかく、本に対する「好き」がこれでもか、と詰め込まれていて、「その通りっっ」、「理解る!!」と登場人物らの言のほとんどに、力強く肯ける。ハチさんや問屋さん、そして、誰でもない、旦那様の言葉は、本に深く関わっている人間だからこそ言える、本の虫らしいもの。読んだ側、受け取る側が、どれだけ、本が好きかにもよるだろうが、本気ならば、ストンと心にハマる
    本が存在する意味、必要性、本を読む事で何が起きるか、変わるか、この作品の主人公はあくまで、小さくて愛嬌に溢れた、元気花丸印の奥さんだが、高橋先生は多分、私のような本が好きで好きで堪らない、多くの読み手を、『人生』と言う名の作品の“主人公”と考えて、この漫画を描いてくれたのではないか?
    何と言うのか、これを読んだ後、ジャンルは何であれ、次の一冊を読む時、背筋がシャンッと伸ばせ、作品に入り込もう、書き手の情熱を受け取ろう、『人生』を豊かにしてくれる、または、萎ませない「何か」を得よう、そんな風に、真剣に楽しく読めるようになる。そうして、読了後、感謝に溢れた状態で、その一冊を本棚へ戻せる
    食没ならぬ、読没を習得するには必須の一冊?
    多くの本を読み、多くの本屋に感謝し、多くの本好きに支えられ、愛されている漫画家の一人である高橋しん先生だからこそ描き切れた、やっぱり、ちょっと毛色の違う、でも、正道な恋愛漫画でした
    あぁ、やっぱり、小説だろうと漫画だろうとエッセイだろうと、本は人に必要だ
    私が本を読み続けるのは本能ですね。三大欲求に次いで、本能が優先する欲求と欲望が「本を読みたい」なんです。あくまで、自分で考えた理由ですが、多分、自分の中にある空虚さを、自分とは違う、感性や経験則に基づく考え方で埋めて、『自分』を作りたいんですよね。人によって、心を成長させる方法は違う訳で、私にとっては、本を読む事が一等に楽しい回り道かつ最短距離なんです
    イイ本は人生を豊かにしてくれますよねー、皆さん?
    あと、この作品を読んで、最も心が震えさせられたのは、79pで幼少時、私自身が大変、お世話になった名作絵本が登場した事
    高橋先生、いい選書センスしてるなぁ

  • 作者買い。成功。
    読み書きしかできなかった奥さんが、
    夫が残した本屋と夫の本屋への想いを探し残すべく奮闘するお話。
    何よりひたむきにそして頑固に突き進む真っ直ぐな奥さんの姿に感動。2話目にして泣いた。
    小さなことの積み重ねが成就したときの達成感は爽快である。
    絵本だった子供たちが純文学を網羅して問屋にお勧めするシーンがお気に入り。

  • すごく泣いた…
    切なすぎて…
    最終兵器彼女を思い出した。
    内容は全然違うけど、凄く切なくて凄く泣いたのを覚えてる。
    とてもイイ話だった。

  • 高橋しんさんの作品で初めて読んだのがこれでした。
    本にを全く知らない奥さんが、ほんとたくさん触れ合っていくお話ですごく感動しました

  • 所々に出て来る旦那様の包容力に萌え。身長差カップルも、頼りない女子と支えてくれる男子カップルも大好物です。
    奥さんの生い立ちと今後の事を考えるとなんか手放しに萌えにくい部分もありますが、周囲の人達に支えられて幸せに生きている事を祈ります。

  • 今やあたりまえになりつつある本屋のコンシェルジュ、それを昭和30年代にたった一人でやり遂げた小さな本屋のおかみさんのはなし。
    おかみさんといっても、田舎の農家の娘で、何も知らずにお嫁に来て、わずか一週間で頼りの旦那様が無くなってしまったという設定。ある意味、理想の本屋・理想の街を描いています。
    あたりまえだけれど、突っ込みどころはいっぱいありすぎるけれど(この時代に料理の本が650円は高すぎるだろうとか、トマトってそんなに一般的じゃあなかったんじゃあないのかとか、街の本屋にしては売り場面積広くない?)、楽しめました。

  • 戦後、数年後の東京のある町のお話。結婚後一週間で、旦那さんがなくなってしまった小さな奥さん。全くわからないところから、周りの人に助けられながらも本を売っていく。本屋にある本をすべて読めば旦那さんに恋することができるのではないか。旦那さんの本を売って生計を立てていこうと、健気にまっすぐに純粋な姿は読んでいて、とても切ない。ハチとの関係も気になるけれど、今回の終わり方はうるうるとしてしまいました。切なくてでも愛しいそんなお話でした。

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