皆川博子作品精華 迷宮ミステリー編

  • 白泉社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784592750048

感想・レビュー・書評

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  • コレクション読了済なのと短編集を絶賛読み倒し中ですので、既読のものも割とありました。やっぱり千街晶之先生も、この短編とかこの短編とかこの短編がお好きなのね…と皆川博子フリークとしての共感の嵐。黒い背徳と惡の華咲き乱れる伏魔殿へようこそ。
    「漕げよマイケル」これが…有名な…。欲しいもののためなら手段を選ばない。それなのに欲しいものを選べなかったのは、誰のせいなのか。そして思ったよりストレートに同性愛しててびっくりした…。
    「蜜の犬」飼育少年。飼われるのは、あなただけれど。児戯も愛欲も何もかも、決して無垢はありえない。
    「舟唄」弱者はどこまでも弱者で、だからこそ辿り着く場所がある。あなたにはどうしたって、見えないけれど。
    「黒塚」狂っている。分かっている。この胸に花開く闇があなたには分からないし、分かってもらう気は毛頭ない。
    「春の滅び」人はよりまし。おおいなる狂気をかたどった、入れ物なのだ。
    「化粧坂」めちゃんこ好きな空気感だった…。あの日の記憶が、確かに動いた感情が、搦め捕られた視線が、この心の臓に刻み込まれているのだと、本当は気が付いていた。
    「水の館」皆川博子先生が男性アイドルグループモティーフを…!!?これもめちゃんこ好きだ…。少年に執着する年上男ってのも…。
    「廃兵院の青い薔薇」これも好きだ…。『薔薇密室』とか『伯林蝋人形館』もっかい読みたくなった…。でもさすがに従卒がさらっと少尉殿に獣姦まで激白するのびっくりしたよね…。でもそれ以上に、振り向かない相手への一方的な愛の奔流の激しさが…身勝手で盲目の愛…一つになりたい欲望…。皆川博子節で最高だなあ…。

  • ミステリー・幻想小説・時代小説の各分野にわたって活躍する著者の、入手困難な作品を含むジャンル別傑作選集第一弾。迷宮ミステリー編には、書き下ろし作品ほか17編を収録。(アマゾン紹介文)

    迷宮には頷けるけれど、ミステリーとしてはどうでしょう。推理できるようなのは『ラプラスの悪魔』くらいではないでしょうか。
    ただ、頁をめくる指は止まりませんでした。既読な話も多かったけれど、一気読み。あぁ、面白かった。

  • 好:「水底の祭り」「火焔樹の下で」「私のいとしい鷹」「廃兵院の青い薔薇」

  • 皆川さんの文体は、華麗で堅牢である。
    凄艶という言葉が似合うだろうか。
    個人的には妖異譚のようなものの系統の方が好みだが
    この本もやはり面白くて、一気に読んでしまった。
    とろりと濃い闇の中を、黄金のオペラグラスで覗くような
    陶酔感と、堕ちていく快さ。冷たい美しさがあるように思う。

    人の心の迷宮は、なんて不可思議なものか。

    他の巻も是非精読しようと考えている。

  • 幻想文学に移行する前、中間小説誌に発表されたミステリーを選出。とはいっても皆川博子の筆にかかればそんじょそこらのミステリーとは一線も二線も画す。禁忌を破る愛、ネクロフィリアにみられる異形への愛…冷ややかな狂気と耽美が潜在する。そして案の定うっとり呆けるのである。

  • 残念ながら読み切れなかった。(便宜上「読み終わった」登録にしてあります)
    作品の内容とか図書館の返却期限ではなく、私の方がどうにも作品世界に入り込めなかった。ちょっと暗くてどろっとした雰囲気はけして嫌いではないんだけど。
    でも、戦中戦後を扱った短編、「水底の祭り」は引き込まれました。先日読んだ「倒立する塔の殺人」もそうだけれど、戦中の描写がとてもリアル(と、いっても私はリアルを知らないけれど)で、良くも悪くも目を逸らせないです。

  • 面白くなかったというわけではなく、ほとんどが既読だったというところで、☆三つ^^;

    もちろん初読の短編もありましたが。
    個人的には、いわゆる殺しのトリックだのなんだの、ミステリー色が前面に出ているものより、人の情念とか、夢と現実が曖昧な感じの内容のもののほうが好きです。
    もしくは、主人公の独白めいたもの。

    「黒塚」が一番好きかも。
    八十歳間際の女の犯罪。鮮烈。
    そこに至る諸々が、これほど短い話なのに、人生の長さ、変遷を思わせるところがスゴイなあ、と……
    芝居小屋モチーフはいい……
    「春の滅び」は、何が何だか分からなくて、そしてそう来る!と、本当にびっくりした。
    よくぞあんな展開を思いつくなあ@@

    タイトルがすべて秀逸。
    そして書き下ろしの短編がたまりません。
    皆川先生大好きです。

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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