摩利と新吾: ヴェッテンベルク・バンカランゲン (第1巻) (白泉社文庫)

著者 :
  • 白泉社
3.95
  • (60)
  • (29)
  • (56)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 359
感想 : 36
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784592882015

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • もっと有名であってもいい作品のひとつだと思う。

    明治〜昭和の激動の時代を、命ある限り全力で生きた少年たちの物語。

    漫画において前半と後半でガラリと作風・方向性が変わることはよくあることだが、この「摩利と新吾」もそのような例のひとつであるといえる。
    普通はそれは単なる作者の方向転換でしかないのだが、この作品は後半がシリアスになればなるほど前半の「平和な時代」のお祭り騒ぎの青春がどれだけ輝かしく儚く愛おしいものであったのかを実感できる構成になっている。
    後半の陰を描くには前半の光が必要だったわけで、その二項対立の構成で描き手側の事情を上手くカバーできているのが凄い。

    作中の言葉の節々は心にぽつぽつと印象を残す。
    それだけ木原氏の言葉の選び方が巧みだということなのだろう。

    後半の展開は本当に胸に迫るものがあって、誰もが摩利と新吾のその関係性の純粋さと切なさを愛おしく思わずにはいられないだろう。
    彼らの幸せ(というか摩利の幸せ)は決して叶わないことだと知っていても尚、幸せになってほしいと心から祈りたくなる。

    今際の際に咄嗟に叫んだ新吾のあの言葉こそが、彼自身も知らなかった彼の本心であったのだと思う。
    それだけできっと摩利は、報われる。

  • 木原さんらしい明るさもありながら、結構シビアなところもあると思います。
    しまりんごや皆が楽しくわいわいやってるのが微笑ましくて・・・思い出すだけでぐっとなる。
    読み終わったあと涙が止まりませんでした。数日間思い出しては泣きました。
    生活に支障をきたした作品のひとつ。

  • 日出処の天子読んだ後、いつもセットで紹介されていたので(同時期に連載だったのかな)気になって読んだ漫画。
    普段はこういう精神的な愛情と絆で結ばれている二人が一番いい!と思っているけれど実際ここまで貫かれるとくっついてくれ…!と思わずにはいられない
    大好きなんだけど2巻以降はなかなか読み返せない…

  • 全巻再読 文庫版は全8巻
    主に明治末から大正初期の旧制高校を舞台にした青春もの
    特に前半の出力の大きさだけで歴史的傑作といえるできばえ
    卒業後は抜きというか余韻であって
    本編外の作品や尺者の他作品をみても
    本作出だしのみが特に魅力的であるのは明らかか

  • いろんなひとたちの思いびとへの記録と懐かしい母校での記憶。

    新吾が恋に目覚めるところで、そこまでうじうじ悪びれなかったから新吾のことがキライになれなかったし、やっぱり何度読んでも1番に好きだと思う。摩利はせつないというよりくるしい気持ち、なぜなら愛するものはいつだって苦しまねばならん、ということ。

    紫乃さんが亡くなったところから最後にかけて、うおんうおん泣いた。しあわせな最初の頃が懐かしくて何回も見てしまう。すごい好き。

  • 本作はLaLa昭和52年(1977年)の3月号に初掲載、
    もう38年前のスタートになるんですね。
    でも元々の
    時代背景が明治~大正の旧制高校なんで、
    今読んでも違和感は無くスンナリとお話に入り
    込めます。

    勉学に運動にストーム?に
    愛すべき五目飯達が笑いに涙に真剣に生きてる
    エピソードが綴られて・・・・・

    あの時代の男子学生の青春群像を描いた
    お馴染みの学園モノ?と最後まで読み進んで行くと・・・・・

    明治43年からラストは太平洋戦争の戦後まで
    長~いストーリーで
    途中からガラリと内容が重くなります。

    全て読み終わると・・・
    スタートからは想像も出来なかった程の
    胸が締め付けられるような切なさが。

    舞台を欧州に変えてからは、
    摩利の内面の苦悩がより深く掘り下げられてる感じで
    多分、作者も書きながら
    読者も読みながら共に辛さを抱えたのでは?
    でもでも、それだからこその素晴らしい作品です。

    その中で、
    主人公たちが卒業するまでの
    泣いて笑って、皆が悩みながらも輝いてた
    持堂院時代!の1巻
    読んでいて心置きなく楽しめました。

  • 最初に読んだのは中学時代。プリンセス復刻A5版の本だった。とにかく木原敏江さんのキャラクターの掘り下げ加減が半端なく、序盤のドタバタ劇から、中盤の青年期の悩み成長から、最後の戦後を描くまで・・・まるで自分もそこにいたように摩利と新吾と、仲間と、その時代を生き抜いたかのような読後感に圧倒される。何度も泣いて泣いてよんだ「夕暮れ銀杏」の章。前半の話では圧倒的に好きな話だった。

  • 感動作です!
    永遠の名作です!
    明治時代の男子高校を舞台にした物語。
    主人公はロシア人と日本人の混血、摩利とその幼馴染の新吾。
    クールで美しい摩利と天然で明るい性格の新吾。
    性格は全く違うものの、二人は「お神酒どっくり」のようにピッタリのコンビで、その二人に魅せられるように素敵な仲間が集う。
    やがて摩利は自分の気持ちに気づく。
    実は新吾を親友としてでなく恋愛対象として見ていることに-。

    この時代の硬派の中には、今風でいうボーイズラブの関係って結構あったようですね。
    でもこのお話は過激さは全くありません。
    それというのも新吾があまりに鈍感でお子ちゃまだから・・・。
    それにお話の中心はそこだけでなく、二人の周囲の個性的な友人、先輩たち、当時の時代背景とかが描かれていて、あくまで爽やかな青春ストーリーです。
    とにかく出てくる登場人物が皆いい人たちだし、魅力的。
    摩利と新吾の仲を引き裂こうといやがらせの限りを尽くす篝ですらも何故か憎めない。
    女の子たちは皆いじらしいし・・・。
    ひたむきに摩利に片思いのささめちゃん、同じく新吾に片思いの一二三ちゃん。
    何と言っても摩利の新吾を思う気持ちはせつなくて・・・。
    でも最初はそういう設定にするつもりじゃなかったのかな?と思います。
    摩利も恋は花のような乙女と~と言ってたし。
    ストーリーもその辺はドタバタっぽくて方向性が決まってなかった感じ。
    あれ?こんなもんだっけ?とこの文庫版を読み返して思いました。
    摩利が自分の気持ちに気づく3巻あたりからこのマンガは面白くなります。
    摩利も新吾もそれまでと違い、つらい状況になる事が多々でドラマがあります。
    すごい昔のマンガですが、今読んでも面白くて読み始めると最後まで読んでしまいます。

  • 木原敏江さんの作品はいつも読後に清純な気持ちにさせられる。終わってからももっとキャラクター達を追いたくなる、そんな魅力と愛を感じる。
    この摩利と新吾もそんな作品で、二人の青春期の成長を描いている。少年期から青年期への雰囲気、心情の変化など描写が細かく、人物描写の多彩さがすごい!
    私の中でこの作品の盛り上がりのピークは新吾の成長だった。どんどん追い詰められていく新吾だったが、それを受け止めたくましく飛躍する新吾。それまでの人物描写が丁寧であったからこそ、一緒に見守り、涙することができたんだと思う。

    というわけで私の中ではその後は割りと蛇足だったのだが(最後まで一気に読みましたとも)、彼らの最期を見なければ私はここまですっきりとした気持ちになれなかっただろう。
    木原先生ありがとうございます。

  • 木原敏江の不朽の名作。交わりそうで交わらない、恋愛のようで恋愛とは違う幼馴染みの少年ふたりの成長物語。・・・というのが何も知らない人向けの説明ですが、これじゃ全然!この壮大なスケールの漫画の良さは伝わらないですね(笑)。大正~昭和の激動の時代を生きた日独ハーフの美貌の鷹塔摩利。彼の親友であり密かな恋の相手でもある印南新吾。ある意味究極のファンタジーです。
    木原先生は二人を決して「そういう関係」にしないと決めていたそうな。理由は「対等でなくなってしまうから」。男の友情が至高であるという考えも。・・・昭和の少女マンガの限界かもしれません。

全36件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

木原敏江

1948年(昭和23年)、東京生まれ。1969年「別冊マーガレット」に掲載された『こっち向いてママ!』でデビュー。77年、旧制高等学校に通うふたりの少年を描いた『摩利と新吾』を発表する。この作品は、その後7年間にわたって描き継がれ、明治末から大正、昭和と、三つの時代を舞台に展開する一大大河ロマンに結実した。84年『桜の森の桜の闇』『とりかえばや異聞』の発表で始まった連作「夢の碑」シリーズも、97年まで執筆が続いた大作。85年、同シリーズにより第30回小学館漫画賞を受賞。『アンジェリク』『大江山花伝』『紫子―ゆかりこ―』は宝塚歌劇団で舞台化された。そのほかの作品に『どうしたのデイジー?』『エメラルドの海賊』『銀河荘なの!』『天まであがれ!』『杖と翼』などがある。

「2021年 『ワイド版 マンガ日本の古典28 雨月物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

木原敏江の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×