ルピナスさん: 小さなおばあさんのお話

  • ほるぷ出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784593502097

作品紹介・あらすじ

ルピナスさんは、海をみおろすおかのうえにある、小さないえにすんでいます。いえのまわりには、あおや、むらさきや、ピンクの花が、さきみだれています。ルピナスさんは小さなおばあさんですが、むかしからおばあさんだったわけではありません。世界中を旅行しましたし、「世の中を美しくする」ためにステキなことを思いつきました。この絵本は一人の女性の人生の輝きを、ルピナスの花に託して、静かに語りかけてくれます。バーバラ・クーニーは、板に水彩絵の具で描き、色えんぴつでアクセントをつけるという独特な画法で、詩情あふれる物語世界を作りあげています。6歳から。

感想・レビュー・書評

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  • ルピナスおばあさんが子どもだった頃におじいさんから遠い国のお話をたくさんしてもらっていた。

    大きくなったら私も遠くに行く。
    おばあさんになったら海のそばの町に住む。
    そして、もうひとつしなくてはならないことは
    「世の中をもっと うつくしくするために なにかしてもらいたいのだよ。」とおじいさんと約束をした。

    子どもの頃の約束を忘れずに遠くへ行って、いろんなところを旅して、海のそばで暮らした。
    花の種をまいた。
    風が種を運び、春になるとあちこちに咲いていた。
    夏になると種をいろんなところにまいて、次の春にはルピナスの花が咲き、とてもうつくしくなった。

    とても美しく優しい絵に輝く未来を見た。
    生きがいとは、目標を持つことで心豊かな気持ちになり毎日楽しくなるものだと改めて思った。

  • 世の中をもっと美しくするためにするなにか。
    私にできることはなんだろう。
    ルピナスさんは種を植えた。
    私にはなにができるだろう。

  • 原題は『Miss Rumphius』。
    邦題は『ルピナスさん』で小さなおばあさんのお話、というサブタイトル付き。
    これは、ミス・ランフィアスという女性がルピナスさんと呼ばれるようになった話。
    どうして呼ばれるようになったのか、それには理由があります。

    お話しの語り手はアリスという少女。
    ミス・ランフィアスはアリスの大叔母に当たります。
    幼い頃アリス(こちらはその後のミス・ランフィアス)は、海辺の町におじいさんと住んでいました。おじいさんの仕事は、船首像を彫ったり、看板の絵を描いたりすること。夜になると、おじいさんから遠くの国々の話をよく聞かされます。アリスはいつも言いました。

    「大きくなったら、わたしもとおいくににいく。そして、おばあさんになったら、海のそばの町にすむことにする」

    「それはけっこうだがね、もうひとつしなくてはならないことがあるぞ」とおじいさんが言います。

    「世の中を、もっとうつくしくするために、なにかしてもらいたいのだよ」

    何をすればいいのか分かりませんでしたが、「いいわ」とアリスは約束しました。

    大人になったアリスは、まず図書館で働き、そこで、遠い国々について書かれた本に、たくさん出会います。
    今ではもう、ミス・ランフィアスと呼ばれています。
    ある日本当に南の島に行って楽しい経験をしてきます。
    その後は雪山に登ったり、ジャングルに分け入ったり、砂漠に行ってみたり。
    そこで忘れられない人たちにたくさん出会います。

    ところがあるとき、ラクダから降りるひょうしに背中を痛めてしまい、「遠くの国々はもうじゅうぶんだから、海のそばで暮らしましょう」と、心に決めます。
    ミス・ランフィアスは海のそばの家でお日さまを眺めながら、素晴らしい毎日をおくります。しかし、三つ目の約束を、まだ果たしていません。

    「しなくてはならないことが、もうひとつある。
    世の中をうつくしくしなくてはならないわね。
    それにしても、なにをすればいいのでしょう?」

    考えても答えの出ないうちに、ミス・ランフィアスの痛めた背中が、また悪くなりました。
    ほとんど寝たままで過ごす彼女の目にうつったもの。
    それは、前年に蒔いた種が芽を出し、花を咲かせている光景でした。

    「ルピナス。わたしのいちばんすきな花」

    やがて快復した彼女が散歩しながら見た物は、遠くまで咲いている、たくさんのルピナスの花たちでした。

    「わたしのにわから、風がたねをはこんでくれたのね!
    きっとことりたちも、てつだってくれたのでしょう!」

    この時から、あちこち歩き回って種を植え、村中がルピナスの花であふれていくのです。
    おじいさんとの約束で目にうつった花。
    大好きな花の持つ美しさに、あらためて心を打たれます。
    その感動を、そのまま行動に移したのです。
    この「気づき」の場面には、いつも胸がいっぱいになります。

    そして、少女・アリスにも、おじいさんと約束したように、伝えるべきものを伝えていくのです。特別な人生ではないけれど、生きていく勇気を静かに教えてくれるように思います。

    作者のバーバラ・クーニーさん(米・1917~2000)の絵は、板に水彩絵の具で描き、色鉛筆でアクセントをつけるという技法を用いています。
    どのページを開いても優しく穏やかで、いつも遠くを見るようなルピナスさんの横顔があります。

    余韻を残す最後の3行は、あえて書きません。
    どうぞ皆さんの目でお読み下さい。
    大声で自己主張などしなくとも、力強く歩いて行けると、今日という日を大切に思う一冊です。

    訳者が掛川恭子さんというのも、わたしには嬉しいことでした。
    『赤毛のアン』のシリーズであまりにも有名ですが、『フランバーズ屋敷の人びと』という本も、すり切れるほど読みました。全3巻は、今もわたしの宝物です。

  • ルピナスさん
    これは本当の名前ではなく花の名前だった。
    ルピナスという花を
    この絵本で初めて知りました。
    小さいころにおじいさんに言われた
    「世の中を、もっとうつくしくするために、なにかしてもらいたいのだよ」
    という約束を。
    いろいろなところを旅したあと
    小さいころの夢の海の近くに住んで
    考えて長い年月を経て果たすお話。
    絵がとても素敵。
    文章も淡々と静かに進んでいって
    とてもいい。
    だが、小さい子には退屈だったようで
    読んでいる途中で
    膝の中から消えていきました。
    でも、私にはここちよい絵本です。

    小さいころ、わかいころは
    いろいろと忙しいので、
    自分のことでいっぱいいっぱいかもしれないけれど
    年齢を重ねおちついたら、
    ひとのためになにかできることを
    さがしていきたいな。
    と思わせてくれる絵本でした。

  • お祖父さんと約束した、「世の中を美しくする」ために選んだのは、ルピナスの花をたくさんたくさん咲かせることでした。バリバリ働いている時や世界中を回っている時ではなく、傷めた身体を養っている時に思いついた、というのが、何か象徴的に感じます。彼女の本名が忘れられて、「ルピナスさん」と呼ばれることこそ、約束が果たされた証なのだと思います。

  • 種をまくという行為は
    苗を植えるのと違って
    育つか育たないか分からない
    でも 種をまけば いつか芽が出て
    花が咲くかもしれない
    美しさの種をまく凛とした絵本

  • ルピナスはマメ科の植物でピンク、藤色、濃い紫などの多様な色を
    有し、藤の花を逆さまにしたイメージで、和名は昇藤とも呼ばれる。

    バーバラ=クーニーの描く絵の色彩は、ルピナスの花の色のように多彩
    に描かれています。幼い頃アリスと呼ばれていた時期のローズピンクの
    基調大人になり青い空と海が目立ち、年老いて幼い孫の世代のアリス
    と話場面で再びローズピンクの色彩に戻っていく。

    物語はルピナスさん(アリス)が幼いころ、おじいさんとの約束を実行し
    て、遠くの国に出かけ、年老いて海辺の町に住むことができました。
    そして最後に残った約束「世の中をもっと美しくする」を実現していきます。

    年老いてモスグリーンのガウンをまとい、ポケットにはルピナスの種で
    いっぱい。町中を散歩していきます。次の年の春、村中には色とりどり
    のルピナスの花が咲き誇り、町中を鮮やかな色彩で埋め尽くしていき
    ます。

    家で育てた朝顔から沢山の種が取れました。翌年、公園のフェンスの周
    りに捲こうかと思いましたが、迷惑だからやめなさいと家の者に止められ
    ました。朝顔ではダメですね。

  • 〝 世の中を、もっと美しくするために、何かしなくては 〟・・・アメリカの絵本作家バーバラ・クーニ-(1917-2000)が、「ルピナスの花」に託して、ひとりの女性(アリス~ミス・ランフィアス~ルピナスさん)の人生の輝ける生き方を語った、静かな感動を呼ぶ美しい名作絵本。

  • バーバラ・クーニーさんがこの絵本を世に出したのは1982年。彼女は1917年生まれだから、引き算すると、彼女が65歳ごろの作品!
    それで合点がいった。ミス・ランフィアスさんことルピアスさん=小さなおばあさんは、彼女自身だったんだ。そして彼女も「世の中をもっとうつくしくするために何をしたらいいか」を、ずっと考え続けていたんだ。

    おそらく海を見おろす丘の上に住み、ルピアスの花の種をまいたという話自体は実話ではなく彼女の長年の願望だったのだろう。だけど彼女は絵本作家として作品を世に出すことで少しずつ夢を現実化してきた。
    そして実際にルピアスの種をまかなくても、色彩豊かで美しいたくさんのルピアスの花の絵と、ひとりの女の子が紆余曲折の人生をたどりながらも、おじいさんから教えられた「世の中をもっとうつくしくするために、なにかしてもらいたい」ということを忘れずに、とうとう実現させるという素敵な物語とを絵本として作品にしてくれたことで、多くの読者の心に花を咲かせてくれたんだ。

    だからこの絵本は子ども向けに書かれたようでいて、実は、髪が真っ白になって、杖をついて歩くようになった、おばあさんやおじいさんと呼ばれる世代のための本だ。
    もしその世代の方が、小さな子どもに何かをプレゼントしなきゃいけなくなったとき、プレゼントにはゲーム機とかテーマパークに連れて行くこととかじゃなくて、この絵本を読み聞かせたり贈ってあげたりしたら素敵だろうな。

    小さな子どもがこの本の美しさと贈った方の心遣いとを素直に理解して喜んでくれたらうれしいし、万が一その時点では子どもにあまり喜ばれなくても、いつか、種が育って花になるかのように、子どもの心を成長させるはずという期待が、祖父母世代にとっての心の糧になるはずだから。

    そのことこそ、クーニーさんが望んでいた「世の中がもっとうつくしくなるための、なにか」のひとつにちがいないと真剣に思う。

  • これが1987年初版ということに感動した。結婚や育児というのがまったく出てこない女性の一生の絵本 珍しくないですか。いいはなしなんです。

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著者プロフィール

アメリカを代表する絵本作家。アメリカでその年に刊行された絵本の中で、最も優れた作品に与えられる「コルデコット賞」を二度受賞。生涯110冊以上もの絵本を残した。主な作品に、『ルピナスさん―小さなおばあさんのおはなし』、『エミリー』(共にほるぷ出版)、『ちいさなもみの木』(福音館書店)など。

「2016年 『ちいさな曲芸師 バーナビー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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