かしこいモリー

  • ほるぷ出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784593505142

作品紹介・あらすじ

モリーはふたりの姉とともに森で道にまよい、人食い大男の家にたどりつきました。あやうく食べられそうになりましたが、知恵をしぼって逃げだします。ところが、おしろに住む王さまの頼みでまた大男の家にしのびこむことに…。イギリスにつたわる昔話に、イメージの魔術師エロール・ル・カインが華麗な絵をつけました。

感想・レビュー・書評

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  • 『かしこいモリー』は、イギリスに古くから伝わる昔話とのことですが(なんと数百年前とか)・・正直、こうしたお話を、今の年代で初めて読むと、どうリアクションしていいのか、ちょっと困ってしまう。

    もちろん、当時の女性の立場を慮れば、貧しい女性の、その機転を利かせた、勇気ある冒険は、とても痛快だし、読んでいて、喝采を送りたくなるような気持ちになるのは、とても分かるのだが(短剣を持って走るモリーの姿が特に好き)、捻くれている私は、どうしても突っ込みたくなる気持ちを、止めることができません。

    まず、その名前の通り、本当に人を食べてしまう恐ろしい、「人食い大男」に、かみさんと娘三人がいること。

    まあ、確かに、エロール・ル・カインの絵で見た、人食い大男は、愛嬌のある憎めない感じもありそうだが、それにしても、自分は愛されているから大丈夫だと思っているのか、他の人間を食べることを公に認めている、この感覚って・・愛の形も色々なんだなと。ただ、人は良さそうに見えるから、そこが救いかとも思えるけれど。

    それから、モリーに依頼する王様の意図も、私は気になってしまい、まだ人食い大男が盗んだ、他人の物を取り返すとかなら、分かるんだけど、これって大男の私物なのでは・・・


    なんて、天の邪鬼な事を書いてしまいましたが、要するに、ファンタジー、おとぎ話ですもんね。
    そう堅苦しく考えなくても、いいんじゃないかと思える、ユーモラスな雰囲気を感じられるのも事実で、人食い大男も、毎回、モリーに出し抜かれて、本来なら捨て台詞吐くくらいじゃ、済まないでしょうとも思えるし(橋の向こうから物を投げるとか、橋自体を切るとかは、思いつかないのね)、内心、モリーとの駆け引きを楽しんでるのでは(ルパン三世と銭形警部みたいな)、なんて、またまた捻くれた考えを抱いてしまいました。

    それから、改めて、エロール・ル・カインの絵、素晴らしいと思いました。

    古き良きアニメーションを観ているような、少し淡い色合いのノスタルジー漂う、海外の王道ファンタジーの世界観を、見事に表現しており、そのこと細かい、装飾のデザインに感じられる、品位ある美しさや、夕暮れの鮮やかなグラデーション、絵画のような芸術性を感じました。

    ただ、人食い大男の三人娘の寝顔の絵は、ちょっと悪意を感じるかな(笑)

  • 何か見たことある絵だなと思ったら『おどる12人のおひめさま』と同じエロール・ルカインの絵でした。
    絵本をさほど読んできたわけでもないし、絵に素養があるわけでもない自分ですら、ん!?と思う特徴がある絵っていうのはそれだけで惹きつける力があるなぁ、と。

    3人姉妹が森で迷い、辿り着いたのは人食い大男の家。
    末娘のモリーの機転でピンチを切り抜け、近くの城に逃げ込むと、そこからはモリーの独壇場。
    城の王様にとって、かねてからの因縁の相手だった大男に対して、モリーに宝を奪ってくるよう依頼。
    成功報酬は王子様達との結婚。

    「やってみましょう」
    余裕すら伺わせるモリーの活躍にすかっとする思い。
    大男との3度の対決という繰り返しもさることながら、一度捕まった場面で大男の失策を誘導した、「いぬとねことはさみと...を一緒に袋に入れて...」の言葉のたたみかけも読み聞かせとしては盛り上がりポイントでした。

  • 貧しい三姉妹が森に捨てられ迷ってしまう。三人は人食い大男の家にたどり着いてしまうが、末っ子モリーの機転によってピンチを切り抜ける。モリーの賢さと胆力を見込んだ王様は、人食い大男の家に戻って剣と財布と指輪を盗み出すようモリーに言いつける。モリーは3回の課題に全て成功し、三姉妹は幸せの結末を迎える。

    エロール・ル・カインの濃密な絵に誘われ、あっという間に昔話の世界に引き込まれていく。
    隅々まで眺めたくなる美しい絵だけど、不思議と気が散らず、物語の展開にぐっと集中できる。

    赤マントを羽織って大男の家に再び忍び込もうというモリーの横顔の絵は、緊張感が漲っていて素晴らしく、この本の表紙にもなっている。

    他に私が特別好きなのは、かみのけ橋が描かれている2枚の挿し絵。深い谷間にかかる髪の毛1本の細い橋。こんなドキドキする橋を、モリーは軽やかな足取りと表情でヒョイッと渡って逃げていくのだ。

    2枚目のかみのけ橋の挿し絵(3回目の課題成功のシーン)では、崖っぷちの向こう側で怒り狂う大男に向かって、モリーは笑って手を振りながら言う。
    「もうにどと、けっして、いかないわ。あんたのことなんか、わすれちゃう!」
    これは、いつも冷静沈着で賢いモリーの余裕たっぷりの決め台詞だったのだろうか?
    細い細い髪の毛1本の橋が放つ存在感と緊迫感が凄すぎて、私は、モリーは本当は怖くて怖くてたまらなかったのかもしれないな、と思った。恐怖の反動の高揚感から出た言葉だったかもしれないな、と。
    濃く、暗く、だけどユーモアや軽快さもある挿し絵をどう読むかも楽しい絵本だ。


    「かしこいモリー」は、東京子ども図書館の『おはなしのろうそく1』でも読むことができる。
    語り用の本で挿し絵は少ないが、力強い文章でどんどん展開していくとびきり面白いお話なので、こちらもオススメ。
    私は『おはなしのろうそく』版モリーに先に慣れていたので、この絵本版モリーの読み聞かせのテンポ感を掴むのに少し時間がかかった。絵本版の方が、登場人物達の状況や一つ一つの言動がより丁寧に描写されている。

    ところで、モリーに恩を仇で返されてしまう大男のおかみさんは本当に気の毒だ。何も悪いことをしていないのにひどい目に合う大男の娘達や犬猫も可哀想。
    耳で聞く分には、モリー目線でぐんぐんお話が進むのでそこまで強く気にならなかったけど、絵でしっかり描写されていると、モリーの賢さがふと悪賢さにも感じるほど印象が変わることにも、少し驚いた。

  • イギリスの昔話とのこと、なかなかに、らしい物語。

    陰のある独特の絵が、いかにもな素敵な雰囲気を出している。
    シルエットでの表現も素敵。おとぎ話らしい。

    確かにモリーはかしこい。
    けど、王様は勝手でずるいし、大男は、ここまでひどい目にあわされないといけないのかしらと考えてしまう。
    特に、おかみさんはかわいそうだ。
    まあ、人食いってだけで、十分罪なのだろうけど・・・。

    子どもが読んだら、感じ方も違うのだろうかと思った。

  • 小2の長女がストーリーテリングで印象に残ったとのことで絵本を借りました。
    私は初めて知りましたが、イギリスに伝わる昔話だそう。

    末っ子が賢いというのはよくある話ですが、それが勇敢な女の子なのでより痛快で楽しめました。
    人食い大男と妻のおかみさんはちょっと間抜けで憎めないキャラクターでした。
    モリーのピンチを何度も救ってくれる髪の毛のように細い一本橋の「かみのけ橋」もユニーク。

    イメージの魔術師と言われるエロール・ル・カインの絵がとても魅力的でした。
    骨太で迫力があるという『おはなしのろうそく』のバージョンも読んでみたいです。

  • 「モリーはふたりの姉とともに森で道にまよい、人食い大男の家にたどりつきました。あやうく食べられそうになりましたが、知恵をしぼって逃げだします。ところが、おしろに住む王さまの頼みでまた大男の家にしのびこむことに…。イギリスにつたわる昔話に、イメージの魔術師エロール・ル・カインが華麗な絵をつけました。」

  • 人食い大男の家から無事逃げ出すのみならず、3回も忍び込んで宝物をまんまと盗み出した、賢い末娘モリー。ご褒美に王子さまと結婚、となりましたが、しっかり者の嫁を貰った王家こそ、めでたしめでたしなのでは?

  • かしこいモリーが人食い大男から色んなものを取ってくるのだか、賢いと同時にとても勇敢である。
    王様からの依頼をクリアすると王子様を結婚できるとあるが、それよりもなんとかして大男を出し抜いて目的を達成させることが面白いのかなと思った。

  • エロール・ル カイン (イラスト), Errol Le Cain (原著), Walter de la Mare (原著), 中川 千尋 (翻訳), ウォルター・デ・ラ メア

  • 利口な女の子が主人公.絵本というより物語,童話.

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著者プロフィール

1873-1956年。イギリスの小説家・詩人・児童文学作家。ケント州チャールトンに生まれる。セント・ポール大聖堂の聖歌隊学校を中退後、アメリカの石油会社のロンドン支社で働きながら創作に励んだ。第一詩集『幼年の歌』(1902)、長篇小説『ヘンリー・ブロッケン』(04)で注目を集め、1908年、職を辞して作家生活に入る。長篇『ムルガーのはるかな旅』(10)、『死者の誘い』(10)、『侏儒の回想録』(21。ジェイムズ・テイト・ブラック文学賞)、短篇集『謎』(23)、『魔女の箒』(25)、『子供のための物語集』(47。カーネギー賞)、詩集『耳をすます者たち』(12)、『孔雀のパイ』(13)など多くの著作がある。

「2022年 『アーモンドの木』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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