ダヤンと時の魔法 (Dayan in Wachifield (3))

著者 :
  • ほるぷ出版
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784593592272

感想・レビュー・書評

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  • エッチング/池田あきこ
    銅板刷り/加藤史郎版画工房
    デザイン/湯浅レイ子ar.inc、吉光さおり
    分解・製版/西川茂スタジオ・クロマ

  • ●池田あきこ

  • 長い冬が終わり、タシルの街は春の喜びにあふれていました。けれども、死の森の魔王は、かつて破られたことのない雪の神の掟をついに破って、ジタンの秘密の元になる命の泉をめざして北へ向かいました。怒った雪の神は、世界を氷一色の世界にしてしまおうと、恐るべき力をふるいはじめました。この危機を救うため、大魔女セは、ダヤンとジタンをはるかな過去へと旅立たせます。…わちふぃーるど創世の秘密にせまる、長編ファンタジー第3弾。

  • キマイラの動向が気になる。

  • ジタン…!

  • 再読
    突然のさよなら

  • わちふぃーるどの支配を企む死の森の魔王。使い魔のキマイラに、ジタンの秘密、命の泉は「北」にあるとそそのかされ、雪の神の掟を破って死の森を出て、北へ向かった。
    しかしそれを知った雪の神は怒り、死の森だけでなくすべてを氷で閉ざそうとしていた。
    そのため、アルスに住む大魔女セが、タシルへと戻ることに。リーマちゃんと、飼い犬のブーフも一緒にタシルへやってきた。伝説の大魔女セの帰還。タシルの皆は大喜び。
    セは、カシガリ山の三人の魔女とともに、時の魔法で、ダヤンとジタンを過去へと送り込んだ。

    ダヤン達の旅にはこっそりキマイラがくっついていた・・・

    この3巻は完結ではなく、次へ続く物語になってます。
    たったひとり過去についたダヤンどうなる? そして取り残されたジタンは。
    この過去へ戻るための旅が、なんだか『銀河鉄道の夜』をおもいだしました。

  • ワチフィールドはシリーズで好きです。グッツも皮などで出来ていて、かわいいです。

  • 本書は、『ダヤン、わちふぃーるどへ』、『ダヤンとジタン』に続く、
    ダヤンの長編ファンタジー第3弾です。

    今までは、それぞれの巻で完結している終わり方だったのが、
    この『ダヤンと時の魔法』については、
    音楽に例えるならば、終止コードではない感じです。

    ここで終わると困るから早く続きを・・・という終わり方なのです。

    最初の調子で1冊で完結すると思って、
    続きを持ち歩かなかったことを心底後悔してしまいました。

    本書の出版は2002年3月、
    この続きの『ダヤンとタシルの王子』が出版されたのは、2004年5月。

    リアルタイムならば、2年以上待たなければならなかったのですね。

    この待つ感覚がないのが、後追い読者の悲しさ/楽しさです。

    ということで、1冊1冊で、先の世界を知らないまま、
    「今の私」の所感を重ねていくことにします。

    さて、評者は、『ダヤン、わちふぃーるどへ』の書評では、
    ダヤンはなぜ特別な猫なのかについて、
    『ダヤンとジタン』の書評では、
    ダヤンとジタンのようにお互いを特別な存在と思うことについて、
    ふれました。

    また、『ダヤン、わちふぃーるどへ』の書評では、
    「時間が象徴的に使われるファンタジー」という表現も使いました。

    本書からまさにこの「時間」と「特別な存在」のテーマが
    さらに大きく展開していくことになります。

    『ダヤン、わちふぃーるどへ』は、
    小学校中学年くらいでいけそうかなぁという印象だったのですが、
    本書は、『モモ』や『はてしない物語』を読むほどの
    集中力と想像力を読者に要求するファンタジーになってきました。

    おそらくこの先もそうでしょう。

    小学校高学年以降が対象というところでしょうか。

    大人の再読や深読みにも向いています。

    冒頭から仲間たちは、時間について興味深い会話を展開しています。

    「ねえ、そういえば時間って川に似てるわね」。

    これはうさぎのマーシィの言葉。

    ダヤンは、少年らしく、でもまっすぐに本質を突く問いを立てています。

    「あのさ、時があっちからこっちへ流れてるとして・・・・・・今ってどこだろ?」。

    あの大きな目で無邪気に深遠なことを語っていることにも気づかないで
    核を掴んでいるのがダヤンのすごいところ。

    その後は、今はどこかについて、仲間たちは思い思いに語るのです。

    「真ん中のとんがった石が今なんじゃないの?」

    「いや、おれはあのアメンボこそ今だと思うぞ」

    そして、次の問いを発するのが、またまたダヤンなのです。

    「石は動かないで川を見てるね。アメンボは川の中にいる。
    ねえ、ジタン? ぼくたちの今ってどっちなの?」

    ジタンは、その問いに心の中で答えていました。

    ジタンは、過去の自分と今の自分を、ダヤンの問いの中に見ていたのです。

    この時間について語る場面の最後にジタンがつぶやいたのは、
    「そうか、今は時間じゃなくて永遠なのかもしれない」。

    この言葉は、本書の最後につながっていくことになります。

    さて、ストーリーの概略ですが、
    はるか昔、雪の神は、
    「以降魔王は死の森を出ることかなわじ」という決まり事を定め、
    以来、魔王はそれを守ってきました。

    ですが、自らの体が朽ちかけてきている魔王は、
    命の泉を自ら目指すべく、
    とうとうその決まりを破るのです。

    それが雪の神の怒りにふれ、魔王は氷柱に閉じ込められます。

    そして、雪の神は、過去の自分の決断をも変えてしまい、
    完璧な雪と氷一色の世界を創ることを目指すのです。

    雪の神は、わちふぃーるどすべてを氷一色の世界にしてしまおうと動き出し、
    長い冬が終わって春の喜びにあふれていたタシルも冬に逆戻りしてしまいます。

    この危機を救うため、ダヤンとジタンは、大魔女セにより、過去へ、
    わちふぃーるどとアルスが分裂する前のアビルトークへ旅立つのです。

    途中、怪我をしたダヤンの治療をするために、
    少しだけ昔に戻ったタシルに寄り、
    小さい頃、若い頃の仲間達に会うというイベントもあり、
    それは心和みます。

    ジタンにいたっては、過去の自分に会ってしまったりもします。

    ファンタジーに欠かせないのが、小物の悪役のようで実は、
    必要だったというキャラクターです。

    それはおそらくキマイラでしょう。

    一見途中で意味のない買い物をして、
    それが実は重要アイテムだったりもします。

    一瞬濃厚な出会いをしてそれで名前も聞かずに別れた存在。

    それはそのときに助けてくれる縁を持っていたのです。

    などなど、ファンタジー的世界観で日常を見ると、
    無駄なものはひとつもないのですね。

    普段キレそうになったときは、
    そういったことを思い出す余裕がほしいものだと思います。

    さて、本書の最後のあたりで出てくるキーワード。

    それは、「ナンニモナイ」です。

      あのあたりで時の魔法の世界はおしまいになる。

      あとはナンニモナイがどこまでもつづいているだけだ。

    このあとさらに、ダヤンとジタンへの指示が続くのですが、
    それは直接読んでいただくとして、
    私が注目したのは「ナンニモナイ」でした。

    ちょうど同じように「ナンニモナイ」を
    カタカナで綴っているものを先日読んだばかりだったのです。

    それは、『おくりものはナンニモナイ』。

    翻訳絵本ですからそちらはもともとはnothingだったわけですが、
    おそらくは、本書の著者も、あちらの絵本の著者も、
    言葉は違っても、「ナンニモナイ」の本質をきちんと捉えているのです。

    体が震えました。

    本書は、いったいどうなってしまうのだろうという終わり方をします。

    ですが、やはりあのように終わるしかなかったのだとも思います。

    ダヤンの「本質」、ジタンの「本質」、
    なぜダヤンとジタンはお互いがお互いを必要としていたのか、
    そして、時間とは今とは・・・。

    楽しく、どきどきしながらも、
    そんな深遠な問いとの向き合いが本格的に始まったのです。

  • 長編シリーズ3作目。

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著者プロフィール

本名:池田晶子。東京都吉祥寺生まれ。
1976年、革工房「わちふぃーるど」創設。1983年に東京都自由が丘本店のシンボルキャラクターとして「猫のダヤン」を描く。その頃から不思議な国・わちふぃーるどを舞台にした物語を描き始め、絵本や画集、長編物語、旅のスケッチ紀行など、多方面で執筆活動を続けてきた。現在までの著書は130タイトルを超える。
2023年はダヤン誕生40周年にあたり、6月の松屋銀座での記念原画展を皮切りに、全国で巡回の予定。

「2023年 『猫のダヤン ポストカードブック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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