老人と犬 (扶桑社ミステリー ケ 6-4)

  • 扶桑社
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  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594027155

感想・レビュー・書評

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  • ケッチャムの新境地というか、新たな挑戦という表現が適切だと思います。

    オフシーズンから始まった所謂ケッチャム作品を期待しているなら、本作ではその期待は裏切られる。

    主人公である老人(ラドロウ)が愛犬(レッド)と共に森の中にある川で釣りを楽しんでいるところから本作は始まります。

    そこに現れた3人の少年。

    その中の1人(ダニー)はいきなりショットガンを老人に突きつけ、「財布をよこしな」と言い放つ。

    ラドロウは下手に抵抗する事もしなかったが、僅かなお金(20〜30$)しか持っていないし、それは道中に止めてきたピックアップトラックの中だと言い、少年たちに車のキーを渡そうとした。

    その刹那、ダニーは構えていたショットガンでいきなりレッドの頭を吹き飛ばす。

    ダニーと共にその場にいた2人も含め、「ほんとの赤(レッド)にしてやったぞ!」と笑い、去っていった。

    ラドロウにとって年老いたレッドは亡き妻メアリとの大切な思い出でもあり、常に側にいてくれる唯一の存在であった。

    そんなレッドを目の前で無残に殺され笑いながら去っていった少年たちをラドロウは〝然るべき裁き〟を求め追い詰めていく。

    手始めにレッドを撃った少年を突き止めるべく、銃を扱う店を訪れ聞き込みを行う。

    程なくして、それがマコーマック家の長男(ダニー)だとわかり、直接彼等の家を訪ねる。

    マコーマック家の主人マイケルにダニエルが私の犬を撃ったと告げる。

    マイケルはダニーをその場に呼び問いただすも、ダニーはそんなところに行ってもいないとウソをつく。

    ラドロウは正義を求め、自分のやった事を後悔し、常識的な範囲での罰を受けて欲しいと求めるも、マイケルはそれを拒否し、全ては老人の戯言で何の証拠もないと言いはった。

    次にラドロウは警察に相談するも、起訴出来るかは微妙だと告げられる。

    ラドロウはダニーが犯人である事を証明する手がかりを求め、ときに付き纏いながら行動を続けていく。

    有能な弁護士も雇い、力(権力)でラドロウの主張を否定し、名誉毀損や不法侵入などの対抗策を講じながらマイケルも着々とラドロウを黙らせる準備を続けるなか、大切にしてきたラドロウの店が放火により火を放たれ燃えてしまう。

    表題にあるように本作の主人公は老人(ラドロウ)と犬(読み終えたからこそ敢えてレッドとは記さない)。

    つまり、ラドロウはたった1人でどうやって〝然るべき裁き〟を受けさせるのか。

    物語のラストに描かれる仔犬の登場に最後は少し心温まる作品となった本作は、オフシーズンから魅了されたきた私は本作も同様にもっと血生臭く、脳の中をえぐられるような内容を勝手に思い描いていましたが、それは大きな間違いでした。


    説明
    内容(「BOOK」データベースより)
    老人が愛犬と共に川釣りを楽しんでいる。そこへ少年が三人近づいて来た。中の一人は真新しいショットガンをかついでいる。その少年が老人に二言三言話しかけたかとおもうと、いきなり銃口を老人に向け金を出せと脅した。老人がはした金しか持っていないと判るや、その少年は突然、銃を犬に向けて発砲し、頭を吹き飛ばした。愛犬の亡骸を前に呆然と立ち尽くす老人。笑いながらその場を立ち去って行く少年たち。あまりにも理不尽な暴力!老人は“然るべき裁き”を求めて行動を開始する。

  • 犬を殺された老人の復讐劇です。

    犬が登場するのは最初と最後だけですが、犬を殺されてそこまでするとは相当な犬愛のお話です。作家の犬好きと思われる表現もところどころにあります。

    なお、表題にあるREDは殺された犬の名前でした。

  • 2019/8/19 読了

  • とにかく訳が綺麗でとても読みやすいです。いきなり惨殺される家族である飼い犬、静かな老人の怒り。家族との絆、現れていく老人自身…。クズとしかいいような少年たちと親への復讐が成功するのか、じりじりする不安を抱えながら完璧なハードボイルドをぐいぐいと夢中で読み進みました。最初の斬殺部分よりもすべてが落ち着いた後の「あなたがわかる」シーンに号泣してしまいました。残虐非道な話を書く鬼畜系ホラー作家との評判だそうですが、これは異色なのかメインはそこではないです。逆に残虐非道な方もちょっと読んでみたくなりました。

  • 初ケッチャム。
    スゴ本ブログの「新幹線の通り魔が読まなかった本」という刺激的なタイトルの記事がきっかけ。
    ケッチャムに関してはあまりに前情報が多すぎて、恐くて手を出せていないが、これは恐くなさそうだ、というチキンな理由で手に取る。
    とても静謐で濃密な文章を堪能できたので、調子に乗って他に手を出すとたぶん震えるんだろうな。。

  • 理不尽な暴力によって愛犬を殺された主人公ラドロウ。彼は過去にも大した理由もない暴力によって、愛する者を奪われていた。その傷を癒してくれた愛犬を失ったラドロウは、激しい怒りを覚えつつ、理性的に行動して正義を求めようとする。だがずる賢い犯人とその父親によって逆に窮地に陥れられるのだが、そこからのラドロウのブチ切れぶりがすさまじい。一度埋葬した愛犬を掘り起こす場面は、グロテスクながらどこか神々しさを感じる。自分を襲う理不尽さに屈せず戦い抜こうとするラドロウに引き込まれる。ケッチャム作品であんなに温かいラストに出会えるとは思わなかった。

  • 何故REDが老人と犬になってしまったのか。老人と海じゃないよなぁ。そうでもなきゃ勘違いした犬好きが買ってしまいそうじゃないか。それはさておき、この爺さんがじんわりと恐ろしくてやばい奴で、でもなぜか普通のいい奴みたいに描かれて、周りの皆もそう思ってる感じが、更にクレイジー。

  • 『隣の家の少女』に続き2作目。犬好きに勧めたい一冊。

     開始十数ページで可愛い飼い犬「レッド」の頭がショットガンで吹っ飛ばされるというショッキングな始まり方をする。そうそうと退場してしまう「レッド」だが、現代が彼の名前“RED”とあるように、飼い主「ラドロウ」を動かし続ける力としてその役割を負う。
     一応爽やかな終わり方をしており、『隣の~』に比べると物足りない感じがしないでもない。ラドロウは話す、「どういう形であれ正義を求めているだけです。」と。

     ただ、淡々と物事をこなしていく老人を見ていると、なんだか怖くなってくる。蛆の涌いた犬の死骸を掘り起こしたシーンに到った時には、もう狂っているのかと思った。正義という概念に身を委ねているうちに、正義という後ろ盾を持った狂人に成り果ててしまった・・・というのは、あまりにも陳腐かも知れないけど。「あの少年を傷つけたかった。どうにかして。」(p.63)という独白から、その兆候は見えていたのだろう。

     とはいっても、読んでいる最中はそんなことは微塵も考えていなかった。主人公は何も悪くない可哀想な社会的弱者(強いけど)で、相手は目の醒めるようなクズ。胸糞悪くなるを具現化したかのようなストーリーから、主人公の残虐極まる復讐劇を期待している自分がいた。

     大団円とはいえ、すべてを失った「イーディス」、重すぎるであろう罰を受けることになった「ハロルド」など、悲劇と言えば悲劇でもある。それにも拘わらず、大人しい終わり方だとか、もっとやれだとか考えていた自分も、少しおかしくなっていたかも知れない。
     『隣の~』を好な時にも、自分自身に胸糞悪さを感じており、今回は飲まれないぞと思っていたが、結局駄目だった。物語に引きずり込む力が本当に強い。

     若いうちに読んでおけば良かったと思う本はたくさんあるけれど、この本は若いうちに読まなくて良かったと思う本、と呼べるかもしれない。

  • 帯の「動物愛護暴力小説」はさすがに演出過剰。ケッチャムだからと覚悟を決めて読み進めたが、期待したような事件は起きず、淡々と終了してしまった。もちろん物語としての起伏はあり、読ませる水準を保ってはいるのだが、期待過剰な部分を差っ引いても凡庸なストーリー。著者的には「たまには息抜きも必要だよね!」なノリなのだろうか…。とりあえず本作のことは一旦忘れ、引き続き関連作品を漁っていきたい。

  • 愛犬を殺された老人が、不良少年に復讐を企てる。

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著者プロフィール

ジャック・ケッチャム(Jack Ketchum)
1946年11月10日 - 2018年1月24日
ホラー作家として知られる。ボストンのエマーソン大学で英文学を専攻。卒業後は俳優、教師、営業、ライターなど様々な職業を経験するが、ヘンリー・ミラーの出版エージェントをしていたことはよく知られている。1981年『オフシーズン』で作家デビュー。1994年”The Box”で、ブラム・ストーカー賞短編賞を受賞して以来、多くの受賞歴がある。2015年にはブラムストーカー賞生涯功労賞を受賞。代表作に、実在の事件を元に、映画化もされたモダンホラー『隣の家の少女』。
(2018年5月10日最終更新)

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