- Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
- / ISBN・EAN: 9784594027155
感想・レビュー・書評
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2019/8/19 読了
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とにかく訳が綺麗でとても読みやすいです。いきなり惨殺される家族である飼い犬、静かな老人の怒り。家族との絆、現れていく老人自身…。クズとしかいいような少年たちと親への復讐が成功するのか、じりじりする不安を抱えながら完璧なハードボイルドをぐいぐいと夢中で読み進みました。最初の斬殺部分よりもすべてが落ち着いた後の「あなたがわかる」シーンに号泣してしまいました。残虐非道な話を書く鬼畜系ホラー作家との評判だそうですが、これは異色なのかメインはそこではないです。逆に残虐非道な方もちょっと読んでみたくなりました。
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初ケッチャム。
スゴ本ブログの「新幹線の通り魔が読まなかった本」という刺激的なタイトルの記事がきっかけ。
ケッチャムに関してはあまりに前情報が多すぎて、恐くて手を出せていないが、これは恐くなさそうだ、というチキンな理由で手に取る。
とても静謐で濃密な文章を堪能できたので、調子に乗って他に手を出すとたぶん震えるんだろうな。。 -
何故REDが老人と犬になってしまったのか。老人と海じゃないよなぁ。そうでもなきゃ勘違いした犬好きが買ってしまいそうじゃないか。それはさておき、この爺さんがじんわりと恐ろしくてやばい奴で、でもなぜか普通のいい奴みたいに描かれて、周りの皆もそう思ってる感じが、更にクレイジー。
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『隣の家の少女』に続き2作目。犬好きに勧めたい一冊。
開始十数ページで可愛い飼い犬「レッド」の頭がショットガンで吹っ飛ばされるというショッキングな始まり方をする。そうそうと退場してしまう「レッド」だが、現代が彼の名前“RED”とあるように、飼い主「ラドロウ」を動かし続ける力としてその役割を負う。
一応爽やかな終わり方をしており、『隣の~』に比べると物足りない感じがしないでもない。ラドロウは話す、「どういう形であれ正義を求めているだけです。」と。
ただ、淡々と物事をこなしていく老人を見ていると、なんだか怖くなってくる。蛆の涌いた犬の死骸を掘り起こしたシーンに到った時には、もう狂っているのかと思った。正義という概念に身を委ねているうちに、正義という後ろ盾を持った狂人に成り果ててしまった・・・というのは、あまりにも陳腐かも知れないけど。「あの少年を傷つけたかった。どうにかして。」(p.63)という独白から、その兆候は見えていたのだろう。
とはいっても、読んでいる最中はそんなことは微塵も考えていなかった。主人公は何も悪くない可哀想な社会的弱者(強いけど)で、相手は目の醒めるようなクズ。胸糞悪くなるを具現化したかのようなストーリーから、主人公の残虐極まる復讐劇を期待している自分がいた。
大団円とはいえ、すべてを失った「イーディス」、重すぎるであろう罰を受けることになった「ハロルド」など、悲劇と言えば悲劇でもある。それにも拘わらず、大人しい終わり方だとか、もっとやれだとか考えていた自分も、少しおかしくなっていたかも知れない。
『隣の~』を好な時にも、自分自身に胸糞悪さを感じており、今回は飲まれないぞと思っていたが、結局駄目だった。物語に引きずり込む力が本当に強い。
若いうちに読んでおけば良かったと思う本はたくさんあるけれど、この本は若いうちに読まなくて良かったと思う本、と呼べるかもしれない。 -
帯の「動物愛護暴力小説」はさすがに演出過剰。ケッチャムだからと覚悟を決めて読み進めたが、期待したような事件は起きず、淡々と終了してしまった。もちろん物語としての起伏はあり、読ませる水準を保ってはいるのだが、期待過剰な部分を差っ引いても凡庸なストーリー。著者的には「たまには息抜きも必要だよね!」なノリなのだろうか…。とりあえず本作のことは一旦忘れ、引き続き関連作品を漁っていきたい。