四丁目の夕日 (扶桑社文庫 や 4-1)

著者 :
  • 扶桑社
3.78
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本棚登録 : 405
感想 : 53
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  • Amazon.co.jp ・本 (175ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594028381

感想・レビュー・書評

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  • 何度も読むものでもないが軽やかに始まる前半を何度も読み返してしまう。キチガイになる前に彼はハッキリとわかっていたのだ。この世に「差」があり自分がその低い側にいることを。それは競争というような牧歌的な話ではなかった。人間に挟まれて生きる僕らは、そんな平和な生き方をしていない。改めて何が幸せで何をして生きるのかを問うことになる。そしてこれを読んでしかその生き方を噛み締められない自身に何か引っかかりを感じながらも、やはりこれは生涯心に残る傑作だと思う。世の中の99.99%の共感は得られないはずだが、この作品を持って自分は漫画が好きだと思った。

  • この作品に星をいくつ付けるかで人間性が判る気
    がする。
    星5つつけた人は自分も含めて、おそらく悪趣味だ。
    星一つの人は作品から逃避し、ネガティブな物語を拒絶した人だ。
    勿論、喧嘩を売っているわけではないが、正直物語も画もわざわざ持ち上げられるような深いものではない、ただ、酷評するにはフックがありすぎる。
    星2〜3をつける人が最も公平性を持っている。
    それほどまでに酷い読後感だし、ここまで救いのない話を僕は知らない。真に胸糞悪い話は切った張ったで容易に作れる代物ではない。

  • これは間違い無く『ガロ』の路線だな。主人公のたけしが見舞われる不幸の連鎖。確かに1980年代を感じさせる。JAZZ喫茶で大音量のJAZZを聴きながら、珈琲をすすり、『ガロ』を読んでた頃を思い出す。

  • 作者本人のあとがきを読んでどのような心境で書いたのかがわかります。
    間違って読んでトラウマになった人が何人がいるようですので取扱い注意。

  • 「これを抜きにしてサブカルは語れない」と文庫本の裏のあらすじみたいなところに書いてある。
     読んでから、サブカルチャー(カウンターカルチャー)とはなんだろうというようなことを考えた。
    タイトルからしてカウンターであり、つまりは西岸良平への山野一なりの応答というか、昭和という時代に生きる人達とその生活の、「三丁目の夕日」とか「サザエさん」とかに描かれていない別側面の寓話を描いたのだと考えれば「四丁目の夕日」は確かにサブカルである。寓話と言うのは、いくらなんでも都合良すぎるだろうと思っちゃうからだけど、こんなことがもしかしたらあの時代にはリアルに起きたということが絶対にないとは言えない。だけどリアルかどうかというのはそもそもが創作であると明言されているその時点でどうでもいいか。
     鬼畜系 とかいうジャンルがかつてサブカルの中にあって、私は鬼畜系とかは大して興味もないしだから詳しくもないし「四丁目の夕日」が鬼畜系なのかは分からないが、私が対して興味もなく詳しくもない鬼畜系だとか、それに当てはまるかどうかはともかくとして「四丁目の夕日」に感動し愛読した人たちが一定数いるということを私は自分の読後感を基準にして「そんなバカな」とか「悪趣味すぎる」と一蹴することはできない。それがサブカルチャーの存在意義だと思うから。
    その意味で、四丁目の夕日を抜きにしてサブカルは語れない という文言は、言い得ていると納得した。
     ただ個人的には私は、この本は誰かに勧められるという出逢い方をすべきではないように思う。大きな潮流の速さや勢いにあぶれ打ち上げられてしまった魚が支流や土手でようやく息をつく時に気づける水底に舞う沈殿した泥、それがサブカルであると思うから。

  • むかしむかし日本には鬼畜系というジャンルがあってだな…

    祝重版。懐かしく読みました…
    80年代の鬼畜系って、一番言われるのはバブルでぎんぎらしていた世相の影、から来ているのだけど、現代のグロ怖好き若者が読むとどう思うのかしらねー。

    一番の違いは、マイノリティの扱いだろうな。そこにひっかかりそう。
    タブーを壊していく、というのも80-90年代の一つの流れではあったので。
    今ってそこからの大きなバックラッシュが起きてるんだろね。

  • だいぶ昔に買って売ってしまった本。時々読みたくなる。
    胸糞漫画読んでひたすら落ち込みたい時にはうってつけ。
    人生が軌道に乗りつつある主人公の身内が事故に会い始めてからどんどん転落していく話。
    不幸なシーンが少しコミカル調に描かれててそれが事態の深刻さとチグハグで余計目を覆いたくなります。

  • 「私は山野一の漫画そのものは大好きだし、よく出来ていると思うけど、彼の1番好感を持てる部分というのは、刃でめメッタ切りした相手を尚も機関銃でハチの巣にしてしまうような、殺る時は容赦しません、徹底的にやりますよ、というような彼の作家的態度だ」……(解説・根本敬より)

    80年代のサブカルコミック、漫画雑誌『ガロ』等を語る上で避けて通れないのがこの作品、「三丁目の夕日」ならぬ『四丁目の夕日』である。私は『ガロ』という前衛雑誌の存在を、ねこぢるという作家を契機に知ったのだが、そんな彼女の衝撃的な作品の数々を読んでいくうちに浮かび上がって来たのが、ねこぢるの夫であり同じく漫画家の山野一だった。して、読む前から不穏な感じを抱きつつ、私は初めてこの山野一という作家の作品、その本質に触れてしまったのだ……。

    内容自体はとてもシンプルで、ねこぢるのような超次元的さや、理解不能な場面はほぼなく、むしろリアリティのある、腥ささえ感じる、所謂「鬱」展開が多かった。聡明で堅実な主人公、別所たけしの別所家が不幸のどん底に落ちる、落ちる、落ちる、落ちる、落ちるで……。冒頭たけしのセリフ「なんなんだろうなこの“差”は……」のまさにその“差”が、後半でかなりジクジクと胸を抉る。不幸な事故から不幸な巡り合わせ。すべてが徒労。所詮うまくいかない。心の支えも、希望もない。(◻️チガイになったたけしがマンホールの下で「たけしきち」をつくり、そこで自分の輝かしいであったろう別の世界を幻想するシーンがあるのだから、より一層、である。)ラストに少しだけ希望を持たせてはいるものの、どうしても拭いきれない“不穏さ”が蟠る。「『第二の人生の出発だ』なんて終わり方しとるけどな〜、もうこれどうしようもないやろ」と読者の私でさえ思ってしまう。別所たけし……なんて可哀想な主人公なんだろうか。

    しかし、私はこの作品にある種のリラクゼーション、あるいはカタルシスを感じる。それは解説の根本敬が実に言い得て妙なことを言っていて、(僭越ながら)私からすれば、山野一の漫画以上に摯実な精神リンチができる漫画は無いのではないか、と思ってしまったのだ。これはねこぢるにも言えることだが、山野一は「タブーに挑戦してすらいない」のだ。それが私を魅了してやまない。それが何よりも私にとって『四丁目の夕日』を特別な作品にした重要な要素で、リラクゼーション的な憂鬱を感じた原因だと思う。

    まとめると、この話は酷い。しかし、狂おしいほどにすばらしい。私にはこれからこの作品が自分へのリラクゼーションを得るための大切な一作になることを、今からひしひしと感じざるを得ない。

  • なかなか衝撃的な内容でしたねぇ…著者の漫画をもっと読みたいと思い、検索をかけてみましたけれども、絶版ばかりでろくに買えませんねぇ…残念…社畜死ね!!

    ヽ(・ω・)/ズコー

    時代を感じる漫画でしたけれども、その強烈さは今読んでも十分に伝わってくるように思いましたねぇ…社畜死ね!!

    ヽ(・ω・)/ズコー

    今もこういった泥臭い? 感じの工場ってあるんでしょうかねぇ…もう衰退しているのかと思いきや、意外と都内にもあったりするものなのかもしれません…。

    というわけで、これはブックオフには売れませんね…フフ…折を見て読み返すことに致しましょう…。

    さようなら…。

    ヽ(・ω・)/ズコー

  • 突き抜けて清々しい傑作。

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