どぶどろ (扶桑社文庫 S 12-1 昭和ミステリ秘宝)

著者 :
  • 扶桑社
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  • Amazon.co.jp ・本 (492ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594032883

感想・レビュー・書評

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  • 「半村良」の連作時代小説『どぶどろ―昭和ミステリ秘宝』を読みました。
    ここのところ時代小説が続いています… 「半村良」の作品は、少年の頃に『石の血脈』、『産霊山秘録(むすびのやまひろく)』等のSF伝奇小説を読んで以来なので約40年振りですね。

    -----story-------------
    「半村良」の時代小説の傑作、ここに復刊
    江戸の下町吹き溜まり、そこに降って沸いた怪事件。
    夜鷹蕎麦屋の親爺が切り口鮮やかな一刀のもと殺された。
    殺しの真相を追う「平吉」がたどり着いた真実とは?
    人気作家「宮部みゆき」に「いつかこんな小説を書いてみたいと思いました」と言わしめ、また彼女の長編時代小説『ぼんくら』のヒントともなった傑作。
    -----------------------

    市井の人々の哀歓を細やかな筆致で謳いあげる大江戸人情世話ミステリ… 絶版となっていたようですが、2001年(平成13年)に「昭和ミステリ秘宝」シリーズのひとつとして復刊された作品です。

     ■いも虫
     ■あまったれ
     ■役たたず
     ■くろうと
     ■ぐず
     ■おこもさん
     ■おまんま
     ■どぶどろ

     ■平吉の"幸せ" 宮部みゆき
     ■解説 日下三蔵

    魔が差して掛け取りの金に手を付けてしまった莨問屋の手代「繁吉」の苦悩を描いた『いも虫』、

    亭主に先立たれ商売敵の囲い者となった女房… その子どもたちに乞食が放った痛切な台詞が印象的な『おこもさん』、

    等々、江戸時代の一般庶民の悲哀を描いた独立した短篇7篇が続いた後、、、

    本所で発生した夜鷹藁麦殺し… 「山東京伝」の従者「平吉」は、その謎を追ううちに、意外な真相に到達するという長篇の捕物帳『どぶどろ』に前7篇が収斂されていくという展開でしたね。

    短篇7篇は、それぞれ短篇として成り立っているのですが、やや物足りない感じ… でも、それは『どぶどろ』を描くための伏線だったからなんですねー

    全8篇がひとつの長篇と理解した方がわかりやすいかも… 巧みな構成が愉しめましたね。

    『どぶどろ』は、短篇に登場する善良な人々が事件に巻き込まれ、それを追及する「平吉」は親と慕う人々の正体を知る… そして、いままで自分が偽物の人情の世界で生かされていたことを知るという切ない展開、、、

    暗くて重くて救いようのないエンディング… 敵があまりにも巨大で、非力な弱者は太刀打ちができず、勧善懲悪の清涼感はなく、印象深いけど、ただただ辛いくて受け入れ難い結末だったなぁ。

  • いにしえの名作なので、読んでおこうと思って。
    途中で少し飽きてしまった。
    丁寧な書き方をしているのだろうと思う。
    1冊の本の中でのつながり方が面白くて、こういう構成なのか、という驚きがあった。

  • 宮部みゆき「ぼんくら」の原型。

    一見無関係に見える複数の短編とそれに続く長編で一つの物語を成す。

    宮部みゆきに比べてハードボイルド感が強く、シビアな結末となっているが、宮部みゆきによれば主人公は幸福だったとのことだ。

  • 短編数編は人物紹介に近い。単体でも完成はしているが、何となく印象がつかめないまま終わる。長編「どぶどろ」の背景事情とか、スピンオフのような感じ。
    歴史に明るくないからかもしれないが、最後までわかったような、分からないようなという感じで終わった。少し違う視点を持つだけで全てが逆転して見える、知ることによって不幸になったという平吉は、純粋であったがゆえに逆への触れ幅も大きかったのだろう。でも世の中なんてそんなもので、それぞれの立場に立てば違うものが見えるのは当然、京伝はそれを教えてくれていたのではないのかな。

  • 何も知らなければ、幸せなままでいられたのだろうか。
    社会の裏側を知ってしまった平吉の結末がなんとも切ない。
    小さな幸せでさえも、その陰には誰かの犠牲があるのかもなぁ。

    「しあわせになる為には、いろんなことから目をそむけなくては・・・見て見ぬふり・・・」

  • 最後に登場人物が結びつく点は面白かったが、物語の最後に救いがない。
    藤沢周平の前期作品に通じる感じ。

  • 2010.12.2(木)。

  • 68

  • 独特の構成をもつ作品。宮部みゆき『ぼんくら』『日暮らし』も本書をリスペクトして同様の構成をとっているけど、構成の妙は本家であるこの作品のほうが上だと思う。切ない結末に《無力》という言葉をただ思う。

  • 宮部みゆきが好きな本に挙げていたので読んでみた。短編だと思って読んでいたので、後からあれ??ってなって、誰が誰だか分らなくなったのと、いろんな人の関係が分からなくなったりもしたけれど、金持ちに貧乏の気持ちは分からないし、結局貧乏人からお金を吸い取って金持ちは生きてるっていう図は今も変わらないんではないかと思う…あ~やだやだ…でもおもしろかった。もう1回読んだらもっとおもしろさが分かる気がする…

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著者プロフィール

1933年東京都生まれ。都立高校卒業後、紙問屋の店員、板前見習、バーテンダーなど様々な職業を経験した後、広告代理店に勤務。62年「SFマガジン」第2回SFコンテストに「収穫」が入選。71年初の単行本『およね平吉時穴道行』刊行。73年『産霊山秘録』で泉鏡花文学賞、75年「雨やどり」で直木賞、88年『岬一郎の抵抗』で日本SF大賞受賞。『石の血脈』『戦国自衛隊』『妖星伝』など著書多数。2002年逝去。

「2023年 『半村良“21世紀”セレクション1 不可触領域/軍靴の響き 【陰謀と政治】編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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