生ける屍 (扶桑社ミステリー)

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制作 : Joyce Carol Oates  井伊 順彦 
  • 扶桑社 (2004年7月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594047566

生ける屍 (扶桑社ミステリー)の感想・レビュー・書評

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  • サイコ・サスペンス

  • ここ数年、ノーベル文学賞候補に村上とともに上がっているアメリカの作家。
    ノーベル賞候補作家の書くジェフリー・ダーマーをモデルにしたサイコサスペンスでブラムストーカー賞受賞、しかも書名が「生きる屍(原題:Zombie)と気になっていた本がようやく手に入った。

    乾いた文体、断片的なテキスト、間に挟まる雑な挿絵が、ヴォネガットを思わせる。ユーモアのないヴォネガット。いや、ユーモアはある。ピントのずれたたユーモアだけど。
    気にいった少年にロボトミー手術をして自分の言うことをきくゾンビを作り、一緒にベッドに入って聞こえる鐘の音を数えながら同時に眠りにつきたい、と乙女のような夢を持つ主人公。でもロボトミーには何度も失敗。

    物語に起伏なく続く日常は、空虚だが妙に前向き。前向きの空虚さ・・・って変な感じ。

    凶悪事件が起こると、犯人のトラウマなど「過去」に原因を求めようとするが、この主人公は、時計の針を引っこぬき、過去など現実でないとか、過去に対して一切の悩みを感じたことがない、など過去の価値を一切認めてない。

    読み終わった後、帯のコピーに、

    「もっと実りのある人生の提案をプレゼント」

    なんと悪趣味な冗談かと思えば、投資不動産の広告・・・。

  • かなりぶっ飛んだ異色のサイコ・サスペンス。少年に対する猥褻行為で保護観察中の主人公Q・Pが生ける屍、ゾンビを手に入れようとロボトミー手術を行おうというストーリー。作中に掲載されているイラストが何とも不気味。作者はノーベル賞候補だとか。

  • ノーベル文学賞候補作家が、実在する殺人鬼・ジェフリー・ダーマーをモデルに描いた作品、らしい。

    暗くてドロドロした話かと思いきや、中身はいたってPOP。
    タイトルの「生ける屍」とは、ロボトミー手術を施した、自分の思い通りになる生き人形の事。
    (ちなみに主人公はホモセクシュアルなので、選ばれるのは美しい体をもった青年or少年)
    気に入った相手を見つけると、すぐに勝手なニックネームを付けたり、感極まると「おれのゾンビ!」と身もだえたり、感情豊かな殺人鬼である。
    何度も手術に失敗して(TVと図書館の本で調べただけなんだから当たり前だ)も、めげずに次を探すポジティブな殺人鬼でもある(なんてハタ迷惑な・・・)。
    ネタばれになるので多くは語れないが、ラストも軽妙。
    とうとう警察に捕まるのか、それとも理想のゾンビを作り出せるのか、この殺人鬼の運命はどちらになるんでしょうねぇ。

  • 31歳のクウェンティン・Pは独身の白人男性。ミシガン州の小都市にある祖母の持ち家である3階建ての下宿館で、アジア・アフリカ系の留学生の世話をする住み込みの管理人として働き、彼自身も聴講生として大学に在籍している。彼は黒人少年に対する猥褻行為により執行猶予の判決を受けて保護観察中の身。彼は人知れず恐ろしい欲望を抱いていた。医学書を読み漁って得た知識を基に、気に入った少年の眼窩から脳へ針を通してロボトミー手術を施して生ける屍―ゾンビを造り上げ、それに対する絶対権力者たらんとしていたのだ。だが手術はなかなか成功しない。そしてクウェンティンは理想的な少年を見つけ、自分だけのゾンビとするために計画を練り始める。

    本作は1996年度のブラム・ストーカー賞を受賞しているが、通常のホラー小説の如く展開の盛り上がりやクライマックスもなければ、結末らしい結末すらない。淡々と主人公の手記の体裁を採った独白が続いていくだけだ―そう、Q.Pは現代社会の中で懐中に闇を隠して生き続けているのだ。彼が携えている闇、その理由を彼の生い立ち、家庭環境、過去の経験といったものから探ろうとすることに意味はない。彼にあるのは(一般常識に照らし合わせれば)狂った欲望だけである。そして彼の狂気の理由を見出そうとする他者の考察を彼はあっさりと拒絶しているのだ。ある意味全くもって救いのない作品だろう。

    さらには……Q.Pと同様、凶行の理由を探ろうとする他者の考察をはねつける人間が少なくないということだ。マスコミの報道は「その犯罪を理解したいがため」環境や生い立ちにその理由を求めているに過ぎないようにも思う。何ともひどい世の中になったもんだ。

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