日本解体―「真相箱」に見るアメリカGHQの洗脳工作

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  • 扶桑社
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594047948

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  •  敗戦後の日本では、GHQによる民主化と非軍事化が施行されて、大日本帝国から新たな日本へと生まれ変わった。本書はその期間に放送されたラジオ番組「真相はかうだ」をもとに、GHQによる工作で日本がいかにして戦後民主社会へと変貌するのかを検討する。
     GHQの方策として、旧日本軍の汚点をメディアで繰り返し国民に伝えた。また、新英米派や権力側にいた者を味方につけて、徹底的に旧体制を貶めた。とくに陸軍に責任があると強調して旧体制の悪事を国民に知らせた。また、天皇に関して、裕仁とは呼ばずに「天皇陛下」という言葉を選んだ。これは日本人に配慮した構図となっている。GHQはひたすら指導者と国民との分断を図ったが、その一方で、アメリカのあらゆる分野の優位性も強調する。これにより、日本はアメリカにはかなわないという構図を作り上げる。日本を占領統治するうえで、どのような日本人像がのぞましいのかを、予め計算して自分たちの価値観を日本国民に刷り込む。これは 『プロパガンダ戦史』(中公文庫)でも指摘されたように、大衆には感情で、知識颯には論理で自分たちの価値観、正当性を訴えるのが、上手に宣伝するための鉄則である。主体的に自分で思考しないと、無意識のうちに相手側の思惑にはまってしまう、というのが著者の読者に対する主張である。

  • まず、この本を読み終えて感じたことは、最近の中東での戦争・テロでのことでした。
    湾岸戦争から始まり、9・11を経てイラク戦争などでのアメリカのイラク占領や撤退のやり方を見て、日本の敗戦時の時の占領政策と比較して、とても同じ国の占領政策とは思われない程に杜撰な感じがしました。
    特に、今話題のイスラム国については、イラクの旧フセイン体制で政権を担っていた政治家・軍人・公務員などが、イラクでの居場所は失った結果、イスラム国の中核を担っている、と言われています。

    本題に戻り、この本では、アメリカ(GHQ)が日本の占領政策に関して、彼らが如何に考え抜き、巧妙に実行したかがよく分かる。
    「真相箱」というのは、アメリカの占領政策の2大柱(非軍事化と民主化)の一環として始められた日本国民への啓蒙ラジオ番組(昭和20年12月9日~21年12月4日に放送)で、後に本として出版されている。

    アメリカが日本に対して何を最も不安に思ったかといえば、「何故こんな無謀な戦争を始めたのか」「こんな異常な選択はない。勝つわけがないのに何故戦うのか」ということだった。
    結局、アメリカが考えたのは、日本の国家を自分たちと同じような形にするとうことだった。アメリカの占領政策が骨格として掲げていた方針は日本の国家解体であり、そしてこの問題の核心は個々の国民の内にあると見ていた。
    アメリカは大日本帝国の諸制度、法体系の解体を次々に行っていったが、それと並行して、思考方式、思考内容について「占領状態」にしてしまおうという事が行われた。その結果世界でイギリスに次いでの親米国家が出来上がった・・・

    この思想改造政策の内容は本当に巧妙で、結果として日本の占領政策を成功(?)させ、今日に至っているわけだが、それに比べるとイラクでの占領政策は杜撰だし、そのことが今日の「イスラム国」の成立を招いたと言ってよいだろう。

    アメリカ一強時代が傲岸な態度を取らせ、今日の事態を招いたのか、あるいは本来アメリカ自体が内包している「正しい事をやれば、神の判定により成功する」というアメリカ・プラグマティズムが原因なのか、あるいはその両方なのかは分からないが、今日の中東情勢を見ていると、ウォール街の拝金主義と同様の狂ったアメリカを見ているような気がします。

  • 『ぼくらの頭脳の鍛え方』
    文庫&新書百冊(佐藤優選)144
    戦争・歴史・天皇

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