血と暴力の国 (扶桑社ミステリー)

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制作 : 黒原 敏行 
  • 扶桑社 (2007年8月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594054618

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血と暴力の国 (扶桑社ミステリー)の感想・レビュー・書評

  • 私達は普段、法律や道徳、倫理、良心といった「規範」を、(無意識のうちに)信頼しています。もちろん、自分や相手がそれを常に守り、破ったことがないとは言えないかもしれませんが、それでも最後には自分も相手もそれを守ることになり、それが私達を守ってくれるのだと、信じている面があります。

    しかし、もしそれを信じていない人がいたら? 規範というものに欺瞞性を見出して、それを破ることに何の罪悪感も抱かない人がいたら?
    私達はその人を理解することができませんし、同時にその人も私達を理解しないでしょう。
    そして、私達はその人の前では無力です。なぜなら、規範を持たない人間は何でもすることができるのですから。

    本書では、そういった私達の理解を超えた「不条理」と遭遇してしまった人々の運命が交差する様が描かれています。
    また、本書のテーマは、著者の次作『ザ・ロード』にも受け継がれています。気になったらそちらも読むべきです。

  • たまたま線が交りあったから殺される。
    納得できないが、
    不条理ってそういうものなんだろうな。

  • 保安官の回想で終わるとは予測ができなかった。ベトナム戦争は背景ではあるが、主題ではなく、撃ち合いが主に印象に残るが、あっさりと殺されすぎる。

  • 所謂、ピューリッツァ賞作家が描いた犯罪小説。翻訳者のあとがきにあるように、本作には様々な解釈が可能だろう。まるで全てが幻影であるかのように、輪郭をぼかしたままに物語は進み、前後の流れをぶつ切りにして、屍の山だけが築かれていく。純粋悪を象徴するという正体不明の殺人者の罪と罰に触れることもなく、無為なる殺戮を朧な文体でひたすらに描写するのみ。救済という概念すらない。
    読後に残る虚無感の理由は、娯楽小説に徹することができない作者自身が絡め取られた文学という楔であろう。
    これがノワールかと問われれば、否と言わざるを得ない。そもそも作者にその意図があったようには感じない。さらにいえば、哲学的な含みも浅い。あからさまな不条理は、なにものをも指し示すことはない。コインの裏表で命運を決める殺し屋は凡庸であり、人生を語る保安官の独白に心に沁む訓戒がある訳でもない。つまりは、格好付けたスタイルだけの小説という結論になる。最大の欠点は、血塗られた大国の有り様を嘆きつつも、遂に純粋悪と対峙することの無かった保安官の極めて薄い存在感である。

    どんな文学でもいえることだが、作者はあれこれと説明を加える必要はない。理解できない部分は、如何様にも読者が脳内で補完するからだ。この作品に対する高評価は、それを表している。

  • 映画とは所々異なっていたが、共通していたのは面白いということ。

    訳者があとがきで触れていたが、会話と描写に全く区別がないため多少の読みにくさは感じさせられるが、話の面白さで読まされてしまった。

    他の作品が気になります。

  •  アメリカの犯罪小説。偶然、銃撃戦のあった現場から大金を見つけた主人公が殺人者に追われ、事件に巻き込まれていく。読点を極力省き、鉤括弧を使わない文体。
     独特の文体ではあるが、人物の行動に焦点をあてる描写と相まって、違和感はない。いかにもアメリカらしい乾いた狂気といった感じ。おそらく、これが湿っぽい描写だったら、雰囲気に合わず、単に読みにくいだけだっただろう。鉤括弧のないセリフに関しても、各セリフが短いことでそんなに混乱しないし、サラッとしているが印象深い。映画になっているようだが、確かに向いている気がする。
     話の展開としては、主人公モスが死ぬシーンの描写がうまいと感じた。保安官の話に移ったと思ったら、何の前触れもなしにモスが死んでいる。あたかも、今までに死んだ他の人間と大差がないように。非常にやるせない気分になる。だが、これが殺されるということなのだろう。
     最後の夢のシーンはとても印象深かった。生き延びる運命、死ぬ運命。それは誰が決めるのか。殺人者シュガーはその運命の執行人なのか。保安官ベルは最後、運命に引き寄せられたと感じたようだが、どうなのだろう。個人的には、それは本人が決める問題だと思う。ベルがそう思うのなら、やはりそれは運命なのだ。

  • コーエン兄弟による映画化作品が思いの外意味不明だったので、原作である本書を読んで再確認しようと思い購入。会話に引用符をつけず句読点も最小限に抑えた独特の文体はなかなかとっつきにくく苦労した。しかし、ベトナム戦争の後遺症に悩まされるモスや、本書には理不尽な死が頻発するが唯一それをを受け入れたカーラ、「世界の闇」であり死をもたらす悪魔のようなシュガー、そしてもっとも魅力的な主人公であるベル。など、登場人物がいずれも非常に魅力的かつ個性的なので、その点は楽しく読むことができた。

  • 本作がもとになった映画「ノーカントリー」がその年の俺的洋画ベスト1だったので、
    原作は前から気になっておりました。

    念願かなってやっと読めたわけですが、読んでびっくり。
    世界観とか文体とか、独特だけど面白いし、映画も原作に忠実で
    ほんと、この手の作品では珍しいくらい win-win の関係なんじゃ
    ないでしょうか?

    本作は、ジャンルはミステリーにカテゴライズされてるけど、
    なんというか、犯罪小説的というか、にしては文学的というか、
    そういうジャンルに括れないところが一つの魅力なんじゃないかな
    と思います。

    だから、とっつきにくい人にとっては本当に何が面白いんだか
    全く分かんない作品だと思う。ハマる人はハマる。興味ない人には
    全くひっかからない。でも、その感じがとても好きなんだよなぁ。

    なんか日本の最近の日本の小説って誰が読んでもそこそこ面白く
    できてるような作品しか話題に出てこないような気がします。

    だから、こういう風に、ちょっと読者を突き放すような作品に
    出会えるととても嬉しい。孤高というか、なんと言うか。

    色んな人が感想に述べていますが、本作の魅力は悪役「Chigurh」
    の圧倒的な存在感でしょう。作中で飛び出す彼の存在感と、
    彼の口から語られるその哲学が本作の面白さに一役買っていること
    に、読者は異論は無いはず。

    映画でも、ハビエル・バルデムが最高の演技をしておりました。

    「ノーカントリー」が好きな人は本作もぜひ読んで欲しい。
    本作を読んだ人は「ノーカントリー」をぜひ観て欲しい。

    久しぶりに心に残る小説を読みました。

  • これをミステリーと思って読むのか?それにちょっとビックリ。
    特にラストあたりの世界観はマッカーシー節たっぷりだもん。

  • まさかモスがあの段階で…。と言うのがひどく衝撃的だった。あんなにも簡単に…。でもそれがリアリティなのかも。

  • 物語、登場人物、会話、すべて素晴らしい。

  • コーエン兄弟によるヴィジュアライズを待つまでもなく、物凄くイメージが鮮烈。世界の巨大な無慈悲さとひたむきに生きる人間を描き出すマッカーシーの真骨頂。

  • 映画にもなった作品。映画は映画なりに、
    乾いた世界になってて面白かったけど、
    この小説はもっと面白いと思う。

    頭の中でアントンがハビエルでしか表示されん…。

  • タイトルが怖すぎるが、
    原題は「No Country for Men」(老人の住む国にあらず)。

    荒涼的で乾いた雰囲気と暴走するが冷めた語り口がたまらない。
    心理描写が一切無く、物語が淡々と進む。

    ところどころ保安官のささいな仕草の描写がニヤっと笑える。
    こういうところが文章家として魅力的。

    ラストの保安官の父親に関する夢の話は胸を打つ。

  • 人物の魅力、シュガーの魅力。物語は否応なしにシュガーを中心に動いていく。正直めちゃくちゃ面白い。

  • No Country for old man.

  • 麻薬密売人の金を盗んだモス、モスを追う殺し屋シュガー、そして殺し屋を追う保安官ベル。
    3人それぞれの視点から、緊迫した逃亡劇が描かれる。

    でも、この本の面白さはそのスリルではない。

    誰がどこで撃たれたとか、どうやって逃げられたかとか、雑多な“点”をつなげたときに見えるのは、登場人物たちの運命。
    関係ない出来事も全て必然に思えるような、すべてを決定する大きな力に圧倒される。

    普段のなにげない一歩が、自分の最期を決めるレールへ乗り出すことになっているのかもしれない。
    しかし一度つけた足跡は二度と訂正することはできない。
    立場の全く異なる3人が呟く言葉の根底には、ひとつの共通した人生観が流れているように思えた。

  •  メキシコ国境に近い砂漠でベトナム帰還兵のモスは銃撃戦の傷跡生々しい三台のトラックと死体を数体見つける。麻薬取引のもつれらしい。現場に残された240万ドルを前にして思う。「自分の全生涯が眼の前にあった。これから死ぬまでの陽がのぼり陽が沈む一日一日。そのすべてが鞄の中の重さ四十ポンドほどの紙の束に凝縮されていた。」彼はその金を持ち逃げする。そのせいで殺し屋シュガーに追われることになるわけではない。一度トレーラーハウスに戻って若い妻カーラ・ジーンの横で一眠りしたあと、何の気紛れからか現場に舞い戻ってしまう。その気紛れが死神(シュガー)に取り憑かれる原因だ。運命は往々にして気紛れに左右される。死神に睨まれて逃れる術はない。金を返したからといって許される法もない。シュガーはまさに死神のように移動の過程を感じさせず、いつの間にか背後に迫っている。
     死神と死神に取り憑かれた一人の男の追走劇を察した老保安官ベルがその痕跡を追い掛けるが、死神を追い詰めることなどありえない。ただ一度だけベルがシュガーの眼の前を横切る場面がある。
     各章はベルの独白で始まり、その後乾いた筆致でモス、シュガー、ベルの行動がパラグラフに別れて描かれるのだが、同じパラグラフにシュガーとベルが同居する唯一のくだりには緊迫感が漲っていて凄みを感じる。(p.317~)
     登場人物の内面には踏み込まず、作品は状況描写と対話、各章冒頭の独白で構成され、読点が極めて少なく、地の文と会話が地続きで描かれる。鉤括弧を排した科白は特権的な地位を獲得出来ず状況描写の延長にある。いくつかの銃撃戦はあるが、筆致は冷静で静かである印象を受ける。シュガーがモスを仕留める場面も、追い付いたベルが地元の保安官に受けた状況説明だけで済ませている。(p.311)
     作品の香りが感じられる場面を二カ所。

     ウェルズは眼を閉じた。眼を閉じて顔をそむけ片手をあげてよけられないものをよけようとした。シュガーはウェルズの顔を撃った。ウェルズがこれまでに知り考え愛したものすべてが背後の壁をゆっくりと伝い落ちた。母親の顔、初聖体の儀式、かつて知った女たち。彼の前にひざまずいて死んだ男たちの顔。よその国の道路脇の溝で死んだ子供の死体。ウェルズは頭を半分なくしてベッドに横たわり両腕を広げ右手の大部分をなくしていた。シュガーは立ちあがり小さな敷物の上から空薬莢を拾いあげ息を吹きこんでからそれをポケットに入れて腕時計を見た。新しい日までにはまだ一分あった。(pp.231-232)

     かりにきみが今どこだか知らない場所にいるとする。するときみが本当に知らないのはほかの場所がどこにあるかってことだ。あるいはそれがどれくらいの距離にあるかってこと。だからといってきみが今いる場所について何かが変わるわけじゃないけどね。
     女の子はそれについて考えた。あたしその手のことは考えないようにしてるから。
     きみはカリフォルニアへ行けば一から出直せると思ってるだろう。
     そうしようと思ってるけど。
     そこが肝心な点だろうな。一方にはカリフォルニアへ行く道があってもう一方にはそこから戻ってくる道があるけど一番いいのはただ向こうに現われることだ。
     向こうに現われる?
     そうだ。
     つまりどうやって着いたかわからないやり方で?
     そう。どうやって着いたかわからないやり方で。
     どうやったらそんなことができるのかわかんないな。
     おれにもわからない。そこが肝心な点だ。
     女の子は食べた。まわりを見回した。コーヒー飲んで良いかな?
     なんでも飲むと良い。きみは金を持ってるんだから。
     女の子はモスを見た。なんか肝心な点がよくわかんないんだけど。
     肝心な点は肝心な点なんかないということさ。
     そうじゃなくて。あなたが言... 続きを読む

  • ちょっと読みにくかったけど、まぁまぁ面白かったです。
    私の好みからすると、少々文学的過ぎるかなと。
    殺し屋?シュガーは面白かったので、もっと活躍してほしかったですね。まぁ、作者が書きたかったのはそこじゃないんでしょうが。

  • 血潮と脳漿の飛び散る描写が最低限に抑えられ
    乾いた世界をいっそう際立たせる。
    シュガーは、No Country For Old Menである血と暴力の国
    として無慈悲にかわりゆき、乾きゆく
    この世界を悪と闇を象徴しているシンボル。

    出来心か、運命か拾ってしまった者と
    追う者のいき詰まる追跡劇、果たして逃げ切れるのか
    追い詰められるのか、第三勢力の登場で混沌とする物語
    という、ありきたりな展開に対する期待は簡単に裏切られる。

    かぎ括弧を使わない会話と
    そぎ落とされた味気ないほどの短い文章の連続が
    物悲しい湿り気を運んでくる。

  • 圧倒的な緊迫感。
    マッカーシーの文章は乾いた、ざらりとした感触の中に、血なまぐさい展開にもどこか美しさを感じさせる。ひたすらに重ねられる情景描写から想起される展開を、息を詰めて見守るばかりだった。
    「俺ルールに従わないやつは全部殺す」な絶対悪の存在・シュガーが語る話は哲学的で、確固たる信念を感じさせる。それが傍から見れば理不尽極まりないことであったとしても。

    ベル保安官の語りは、「越境」の中の挿話を思い出させられた。
    その中で語られた“火”の存在は「ザ・ロード」に通じるように思えた。

  • 8月3日読了。「このミステリーがすごい!」2008年度の海外編第12位の作品。ハンティング中に荒野で麻薬取引のカネ250万ドルを手に入れたベトナム帰還兵・モス。メキシコに逃げようとする彼に冷酷無比な殺人者シュガーが迫り、彼らを追うベル保安官は変わり果てたこの国を嘆く・・・。コーエン兄弟の映画「ノーカントリー」の原作。映画のメッセージがイマイチ分からなかったので読んでみたがなるほど心理描写を省く、人物同士の短い会話をつないでいく乾いた印象のこの小説をうまく映像化していたのだなあと感じる。シュガーによって多くの血が流されるが殺人のシーンはキングなどの小説とは違い1行くらいで終わってしまうが、そこがまた底知れない不気味さを漂わせる・・・モスの逃避行やシュガーの追跡の結末など、読む側の安易な結末を志向する期待感を裏切り、緊張感に満ちた小説だ。

  • アメリカ!って小説。映画化もしやすいだろうし、そういうのはわかるけど、なんなかわいた感じが好きじゃなかった。

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血と暴力の国 (扶桑社ミステリー)の作品紹介

ヴェトナム帰還兵のモスは、メキシコ国境近くで、撃たれた車両と男たちを発見する。麻薬密売人の銃撃戦があったのだ。車には莫大な現金が残されていた。モスは覚悟を迫られる。金を持ち出せば、すべてが変わるだろう…モスを追って、危険な殺人者が動きだす。彼のあとには無残な死体が転がる。この非情な殺戮を追う老保安官ベル。突然の血と暴力に染まるフロンティアに、ベルは、そしてモスは、何を見るのか-"国境三部作"以来の沈黙を破り、新ピューリッツァー賞作家が放つ、鮮烈な犯罪小説。

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