- Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
- / ISBN・EAN: 9784594057213
感想・レビュー・書評
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何だろう……期待(?)していたよりは普通だった。『隣の家の少女』ほど衝撃を受けなかったのは、決して作風に慣れたからというわけではないと思う。いろいろなものを見せてくれるのは幅が広いということで本来喜ばしいはずだが、「これ、別にケッチャムじゃなくてもいいんじゃない?」と考えてしまうのは、一読者のわがままだろうか。視点が変わりすぎて少々読みにくい面もあったし。収録作の中では『ヒッチハイク』が面白かったが……やはり『オフシーズン』に挑戦してみるかなあ。
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もういやー、もういやーと思いながらも頁をめくる手が止まらなかった。
暴力と性暴力の連続で最後に救いがあるのは、他のケッチャム作品よりは読めるのかな。 -
この中では『雑草』は異色、いつものケッチャム。
『閉店時間』『川を渡って』が白眉。ケッチャムの懐の深さがうかがえる。 -
ケッチャムはエログロだけじゃない。中編4篇収録。西部劇「川を渡って」がめちゃくちゃかっこいい。「トゥルー・グリッド」を思い出した。
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2018/12/30購入
2019/9/2読了 -
これは面白かった!なぜかランズデールと間違いそうになりながら、ケッチャムだよねぇ?と確認しつつ読み進めました。なんだろ、この既読感。。埋もれている中篇、短篇があるなら、まとめて出版して欲しいなぁ。
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ケッチャム追悼。
表題作はあまり面白くない。非常に地味でおブンガクしている。何もかも中途半端に見える。
他の中編はそこそこよかった。弁護士が主人公のやつはカルト団体の存在そのものを仕掛けに使う店やいかれた女がいかれっぷりを表すまでの気まずさ、その前に主人公がいかれ女に嘘をついてしまうときの心の動きが繊細に描かれており、その後の怒涛の展開とギャップがあってダイナミック。
変態夫婦の話はとにかく猟奇的でよい。
ウエスタンの話はそこそこ面白かった。決闘のシーンが淡々としていて迫力がないのが味わい深い。 -
そこまでケッチャム節は炸裂してなかった(と思う)
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とことん絶望的な状況というのは、別に無敵の宇宙人が攻めてこなくても、とても身近なところにあって。日本人にとっては、でもやっぱりちょっと別の世界みたいに思えるんだけど、米国に住んでいる人にとって、これは全くの絵空事でもないんだろう。日本にいて良かった。
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鬼畜系小説。嵌まれば嵌まる。
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ケッチャムの中短編集。「閉店時間」「ヒッチハイク」「雑草」「川をわたって」の順で好き。
全く違う話だけど「川をわたって」はイーストウッドの『許されざるもの』をふと思い出した。正統派ウエスタン。 -
ケッチャムの鬼畜さの安定感。たまらないです。「隣の家の少女」は別格として、長編よりも短編の方が出来が良いのではないでしょうか。
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世の中、怖いものは多い。
お化けも怖いし、猛獣に襲われるのもキツい。想像だけど。
でも詰まるところは人。人間は実にバイオレンスになりうる。しかも毎日顔を合わせる―知り合いであれ、赤の他人であれ。
本書は一部でカルト的人気を誇る鬼畜小説家ジャック・ケッチャムの中篇集である。
「閉店時間」、「ヒッチハイク」、「雑草」、「川を渡って」の4篇が収録されており、どれも然るべき描写に満ち溢れている。
そもそもこの著者の作品を手に取る人は、この手の内容であることを知っての狼藉であろうから、敢えて著者の他の作品と異なる点について述べてみたい。
なんつうか、「ヒッチハイク」と「川を渡って」にはカタルシスがあるんです。
いつもは実にまざまざと暴力を見せ付けていて、それでいて読み進めてしまうという印象があるのだけれど、この2作はちと違う。
悪人の破滅が、割と爽やかな形で描かれている。
これには驚いた。
個人的にはケッチャムは娯楽作家ではないと勝手に思っている。
過剰(あるいは悪趣味)とも言える暴力描写は、目を背けたくなるような陰惨なものだけれど、一方で酷い事件や出来事は実際に存在する。そう考えると、とても誠実に人の有様を書いているともとれて、「勧善懲悪」とかいう言葉の入る余地のないストイックな作風にふと安心感を憶えている自分がいる。
一方で、やっぱり悪人は死んで欲しいよねという思いを抱くのもごく自然なことだ。生々しい救いのなさ、欺瞞に満ちたカタルシス、その両方が書けるという懐の深さが、この作品群の魅力なのではないだろうかと。
そういうの好きな人向け。 -
ケッチャム最高!
鬼畜でも何でもいいのぉ
ブラム・ストーカー賞ってのが何だか判らなくてもカッコいい
賞受賞の「閉店時間」より「ヒッチハイク」が面白い
そしてさらにウエスタン「川を渡って」が最高 ありきたりな話なはずなのに、何故かわからないが熱くなる
他の作品とは違う作品 -
ハリウッド映画の脚本案「ヒッチハイク」が混ざっているせいか
救いようのないエログロ鬼畜だけど
正しいストーリー(ざまぁみろ、と溜飲が下がるラスト二つ)運びで大変良い。
ヒッチハイクのビッグが好きだー。 -
「隣の家の少女」「地下室の箱」のジャック・ケッチャムの短編集。
*閉店時間
*ヒッチハイク
*雑草
*川を渡って
の4編が収録されている。帯には「暴走する嗜虐、非情のリリシズム。鬼才の精髄、ここに極まれり」とあって、もうこれ以上の言葉は必要ではないんじゃないかと思う。
描かれているのは、暴力。
それも、容赦ない、非情な、それなのに単純な暴力だ。
解説にもあるが、これが2001年の911テロの後に書かれた意味の重さをいやおうなしに感じる。
人は、暴力の連鎖から逃げることは出来ないのだろうか。
愛だって、振り切れてしまえば、それは暴力という形を見せる。また、憎しみも、境界を越えればたやすく他者を傷つける。そして、愛も憎しみも、そういう感情もなく、ボーダーを軽々と飛んでしまう人だっている。
「雑草」の怖さは、これにつきる。
ボーダーを越えるということは、そんなにたやすいことなのか? その危険は、他者のものではなく、自分の中にもあるものなのかと。
「閉店時間」で、すぐ側にある危機を描き、「ヒッチハイク」で自己の平安の危うさを描き、「雑草」で自分の中の危険に警鐘を鳴らしている。
平和に、安らかに生きていたいというささやかな願いは、悲しいぐらいもろい。それが、本当に悲しい。
ケッチャムの作品は、暴力的であることは確かだ。
けれど、「川を渡って」のように、悲劇的な結末の中に一縷の望みがある。それは、暗闇の中の小さな光のようだ。
光を見たいから、多分、ケッチャムを読むのだとこの短編集でわかった。